(株)ラグインターナショナルミュージック取締役
じわりん工房代表

5年前のある日、父から電話がありました。「癌が見つかった。」

私の実家はお寺です。小さい頃から父のお経を聞いて育ちました。
お経を唱えている時の父は家族団らんの時とは違い、キリッとして厳かで違う世界にいるみたいだなと幼いながら思っていました。
大学に入り、お正月やお盆に帰省した時も変わらない父の姿や読経、お線香の香りに、実家に帰ってきた事を実感して安堵したものでした。

5年前のある日、父から電話がありました。
「癌が見つかった。」
その声はか細く、元気なく、、、。
まさかもうあのお経を聞けなくなってしまうの?
いままでは思ってもみなかった不安が脳裏をよぎりました。

もし録らなかったら、私は一生後悔することになるだろう。

おかげ様で早期発見で大事には至らず、父は今も僧職を続けています。
しかし、「いつまでも続く命はどこにもない」という事を実感した出来事でした。

今まで大変な心配をかけながらもなんとか音楽の会社を続けて来ることができて、録音の技術やCDを製品にまで仕上げるノウハウも持つ事ができるようになりました。
「こつこつと積み上げてきたスキルを活かして、少しでも元気なうちに父のお経を録音しておきたい。
もし録らなかったら、私は一生後悔することになるだろう。」
そんな思いが日増しに強くなり、いよいよ今春、スタジオのスタッフ達とともに、実家までレコーディングに行ってきました。

父はスポットライトを浴びたスターのように輝いて見えました。

その日はお彼岸の中日。まず彼岸会のお講の模様をライブ録音しました。
マイクを前に、いつものようにキリッとした表情で読経する父はスポットライトを浴びたスターのように輝いて見えました。
その後、現住職である弟と二人で、地域特有の読み方のお経や今はもうあまり読まれなくなったお経を収録しました。
弟も、貴重な記録が出来たと喜んでくれました。

手紙をくれる事などめったにない父からの手紙。またひとつ宝物がふえました。

帰京して録音を聞いてみました。
CDから流れるお経や鐘の音はとても懐かしく、安らかな空気を私に運んでくれました。
またCDジャケットのデザインも出来てきました。
中面には、父と弟が向かい合って読経している写真が背景に配してありました。
私にとってはどんな素晴らしいCDとも比べようのない、かけがえのない宝物になりました。
しばらくして父から礼状が届きました。

「先日は天候にも恵まれ、楽しかったと思います。
活力を頂きました。有難う。父」

手紙をくれる事などめったにない父からの手紙。またひとつ宝物がふえました。
父にとってもレコーディングは心に残る出来事だったのだなあと、改めて思い切ってやってよかったと思いました。

だれにでも、大事にしたい思い出、残しておきたい宝物があります。

父が長い人生、毎日読んできたお経は、他の人にはただのお経であっても、家族にとっては思い出が次々によみがえる、「魔法の銀の円盤」です。

だれにでも、大事にしたい思い出、残しておきたい宝物があります。
それが音楽でも、お話でも、お経でも、音に関するものであったなら、どうぞ一度じわりん工房にご相談下さい。
皆様の心にじわりんとしみる、そんなCDを作るお手伝いをさせていただきたいと思っています。