井上章一さんと河上ひかる(じわりん工房)

国際日本文化研究センター教授

井上 章一 様

プロフィール

もくじ

  1. 人生の山場
  2. ひかるの父のお経レコーディング
  3. 家族とピアノの切ない関係
  4. 山下洋輔さんからのメッセージ
  5. 文章と音楽のおいしい関係
  6. 河合隼雄先生を偲ぶ
  7. 井上山脈

河合隼雄先生を偲ぶ

井上

今回CDを作ってもらって、本当に嬉しい!のひと言に尽きるんですが、僕反省せなあかんことがあるんです。前ひかるさんにもお話ししたと思うんですが、僕の職場の元の上司で後に文化庁長官になられた...

ひかる

河合隼雄先生!大学で心理学を専攻していた私にとっては、神様のようなひとです!

井上

はい。フルートがお好きで、よくフルートを吹いたはったんですよ。ところが、お立場のある人で、CDも出されてるんですよね。自分も下手やのにこんな事いうとバチが当たりますが、河合さんもたいして上手くないんですよ。僕が40代半ばぐらいの時やったかな、じつは河合先生をなじった事があったんですよ。

ひかる
なんて?
井上

「世の中には才能があって能力があって、でも機会がなくって録音に恵まれないミュージシャンがヤマほどいる。河合さんはマスコミで引く手あまたやからそういう話もあるやろうけど、それは志があっても世に出られない音楽家を冒涜してる振る舞いではないか。」と。
「あつかましい。何を考えてんねやおっさん!」とね、そう言わんばかりの苦言を呈した事がありました。
その私が今、同じ事をしようとしてるんですよね。

ひかる
(笑)
井上

草葉の陰の河合先生がどう思ってらっしゃるのか。もう忘れたはるとは思いますけども。そんな事を言うと、「あ~井上くん、君も似たような道を歩み始めてるなぁ。」と思てくれるかもしれません。今振り返ったら、あのとき自分は嫉妬してたんやな、と思いますね

ひかる

そうですか。

井上

電話をいただいた時も、一瞬ためらわざるをえなかった大きい要因の一つに、自分自身が河合さんに、「おっさん何を増長しとるんや。」と数年前に言ってしまったという思いがありましたからね。

ひかる

ではCD完成記念ライブではぜひ一曲、河合先生に弾いて差し上げては?いろんな思いを込めて。

井上

そうですね。

ひかる

いろんな葛藤がありながらも世に出たCDだということがよくわかりました。2作目はありそうですか?

井上

河合さん、3枚出したはるんやね。

ひかる

では4枚は出さないと超えられませんね。(笑)

井上

河合さん、確か売り物にしたはったんちゃうかな?

ひかる

じゃあ次回からは売りますか?(笑)

井上

でもね〜。僕、桂の駅からバスでたまたま一緒になったプロのバイオリニストでまだCD出してない方に、河合さんのフルートについて複雑な思いを聞かされた事がありますからね、、、。

ひかる

何か新しいことをすると、必ず外野でいろんなことを言う人がいるのは世の常ですよね。
それを押してでもやっていこうという決意が自分にあるかどうか、ですよね。

井上

そうそうそう。何様や思てんねんと思われても、やっぱり嬉しいという思いね。

ひかる

レコーディングするっていうのは、本当に勇気のいることだと思います。あからさまに自分の音が残ってしまうわけで。だけど、それを承知で挑戦するからこそ、普段とは違うパワーが出てきますし、見えてくるものもあると思います。確実に上達しますしね。
客観的に自分を見たり、まっすぐに自分と向き合うチャンスなんて、日常そうそうあることではないですよね。

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