RAGにて4回目となる3DAYS公演をおこなう林正樹氏。既存の概念をブチ抜く演奏はいかにして養われたのか?ピアニスト林正樹にじっくり迫りました!
Q:プロミュージシャンになったきっかけは?
ピアノは最初は5歳くらいから始めて、おケイコが嫌いですぐやめてしまいました。
自分でピアノが楽しいと思うようになったのが小学校の高学年くらいからです。高校生の時に初めてジャズを聴いてびっくり仰天して。それでジャズピアニストになりたいなって思って、高2くらいから日本を代表するジャズピアニストの佐藤允彦さんをはじめとする何人かの先生に教えてもらいました。
多喜雄さんの音楽は民謡がベースなんですけど、そこにロックとかジャズとか色んな自由な要素でアレンジされてる音楽なんです。それまでジャズを勉強してきたつもりだったんですけど、中々それだけでは対応できなくて。何故かというと多喜雄さんの音楽はほとんどの曲が1コード。
ジャズをやってると、コード進行が複雑に変わっているとそれを頼りに演奏すれば何となく音楽になっている様な気がしてたんですけど、実はそれは錯覚だったみたいです。全ての曲が1コードなんですよ(笑)。
何を弾いたらいいんだろう?っていう、初めての挫折じゃないですけど、音楽って何だろう?と考えさせられるとてもいい機会だったと思っています。
この多喜雄さんとの演奏が、いわゆるプロとしての活動のスタートだったと思っています。 それ以来「ジャズ」、とこだわってた気持ちが一気になくなって、様々なジャンルの自分がいいなと思う要素はどんどん取込む体制になっていったように思います。
Q:では、林正樹さんより3DAYSの紹介をお願いします
1日目「 間を奏でる 」
京都初登場でラグ初登場。僕が最近一番力を入れているユニットです。
ピアノとアイリッシュハープ、ヴァイオリン、フレットレスベース、あとパーカッションという編成なんですけれども、このユニットの一つの大きな特徴は、「PAを使わない」というこだわりです。PAを使わない代わりに、メンバーそれぞれが自分で音量、音色のコントロールをして、5人で1つの楽器を演奏しているかの様なサウンドを目指しています。11日のライブの時にはステージをラグの真ん中に持ってきます。ピアノを客席の真ん中に下ろしメンバー5人が円形になって、その周りをお客さんに囲んでもらって演奏しようと思っています。
「間を奏でる」これはいつものラグとは違った雰囲気になると思います。
2日目「スフォッフォ」
「スフォッフォ」は僕がやっている活動の中でも、極めてコミック度というかお笑い度が高いというか。 音楽で笑ってもらうには どうすればいいのかという事を、僕たちなりに真面目に考えています。自分達が思う以上に「スフォッフォ」の音楽を面白いと言ってくれる人が増えてきて。 ベース鳥越啓介、ドラムス田中栄二、ピアノ他色々で斉藤プリティとなっているのは、僕の「林正樹」としての活動とのギャップが大きくなってしまって、じゃあ林正樹は脱退して斉藤プリティ(実は林正樹)という人物が加わったらと、、、まあそういう流れなんです。
笑いたい人は是非来ていただきたいですね(笑)。
3日目「林正樹・鬼怒無月 THE DUO」
鬼怒さんとのデュオは、二人だけでちゃんとやるのはまだ二回目なんです。 プログレロックの顔もありつつ即興的なものもやったり、世界各国の民族音楽にもすごい興味を持ってる人で。僕はそういう鬼怒さんのスタンスはすごい共感しています。最近ではタンゴを深く研究されていたりと、いつでも勉強熱心な姿勢に頭が下がる思いです。 Salle Gaveau(サルガボ)というバンド中心に一緒に演奏させてもらってるんですけども、一緒にヨーロッパツアーに連れて行ってもらったり、クレンザーズというバンドも一緒にやったり、本当に色んな活動を一緒にここ数年やらせてもらっています。その中で今回デュオということで、じっくりとお互いが出来る色々な可能性を試してみたいと思ってます。すごくしっとりとした世界から、アヴァンギャルドな世界から、様々な音楽的試みをしてみようと頭の中でイメージが膨らんでいます。
Q:最後にみなさんへのメッセージをお願いします!
1日だけだと僕の考えていることが分からないかも知れません。特に2日目だけだと誤解されてしまうかも知れないので(笑)。
なかなかラグでこうして連続してライブできる機会はないので、是非とも3日間、あるいは2日間、1日でももちろんいいので足をお運びください! よろしくお願いします!
1978年東京生まれ。独学で音楽理論の勉強を中学時代より始める。その後、佐藤允彦、大徳俊幸、国府弘子らに師事し、ジャズピアノ、作編曲などを学ぶ。
慶応義塾大学在学中の1997年12月に、伊藤多喜雄&TakioBandの南米ツアー(パラグアイ、チリ、アルゼンチン)に参加し、プロ活動をスタート。 現在は自作曲を中心に演奏するソロピアノでの活動や、自己のグループ「林正樹STEWMAHN」、田中信正とのピアノ連弾「のぶまさき」、生音でのアンサンブルにこだわった「間を奏でる」などの自己のプロジェクトの他に「田中邦和&林正樹 Double Torus」「Salle Gaveau」『クレンザーズ』「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」「エリック宮城EMBand」「Archaic」「クリプシドラ」「宴」など多数のユニットに在籍中。 椎名林檎のツアーサポート、長谷川きよし、古澤巌、小松亮太、中西俊博、伊藤君子、ROLLY、牧野竜太郎をはじめ、多方面のアーティストとも共演。
温かみのある感性を持って、独自の情感豊かな音楽を生み出している。 近年「Salle Gaveau」のヨーロッパツアー、田中信正とのピアノ連弾ユニットでパリ、トルコツアーを行うなど活動の場所を国外にも広げている。
(写真左より)
小林武文(Per)
仙波清彦率『カルガモーズ』、小川美潮グループ、ハイパーパフォーマンス『チャンチキトルネード』、プログレジャムバンド、あまちゃんスペシャルビッグバンドなど数多くのユニットでの演奏はじめ、NHK Eテレ「大!天才てれびくん」の楽曲プロデュースなどでも活躍。マリンバ、ビブラフォーン、ドラム、チャンゴ、サックスからなる自己バンド「琴鼓’n管(キンコンカン)」の楽曲はANA国際線にて4~6月3ヶ月間にわたり紹介された。
堀米綾(irish harp)
クラシックを基本にしながらも、様々なスタイルの音楽を演奏するハープ奏者。 菊地成孔、溝口肇、KOKIA、北浪良佳、他、多くのアーティストと積極的に共演を重ね、アンサンブルの中でのハープを追求している。 現在放映中のNHKドラマ『ロンググッドバイ』のサントラに参加。9月、「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」で東京JAZZ出演予定。
磯部舞子(Vn)
伊藤多喜雄、早川義夫、中川五郎、板橋文夫、林正樹、メトロファルス、河村博司(ソウル・フラワー・モノノケ・サミット)など様々なフィールドのミュージシャンのライブ、レコーディングに参加。五弦バイオリンを奏で、ジプシーやアイリッシュのフィドルの匂いを纏い、遊ぶように物語を紡いでゆくその演奏スタイルは、聴き手の想像力を掻き立てる。
織原良次(B)
ブラジリアン「Bophana」で2007年メジャーデビュー、平行して鈴木勲『OMA SOUND』参加。ラテンフュージョンジャズ、クリエイティブジャズ、実験的音楽~ソロライブまで幅広く活動中。畠山美由紀、アン・サリー、橋爪亮督G、野本晴美トリオ、東京ザヴィヌルバッハ・人力スペシャル等に参加。
鳥越啓介(B,Vo,Cho)
高校卒業後、社会人の傍ら地元のビックバンドなどで活動。96年脱サラし上京。 99年“PHAT”でメジャーデビュー。 ジャズ・邦楽・ポップス・タンゴ・ブラジル音楽などその豊かな才能を駆使し、 「レラーブル」、「Salle Gaveau」、「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」「MALTA」、原田知世のサポートの他、自らのバンド、様々なセッションやレコーディングに参加。 繊細且つ大胆でハーモニーを感じさせるその演奏は、コントラバスという楽器の固定概念に捉われず、独奏楽器としての更なる可能性を追い求め、幅広い音楽活動を行っている。
田中栄二(Ds,Mc,Cho)
北海道出身、18歳よりプロ活動開始。
東儀秀樹、akiko、上妻宏光、葉加瀬太郎、吉田兄弟、今井美樹、塩谷 哲、佐藤竹善、野宮真貴(ピチカートファイブ)、辺見マリ、比屋定篤子、等のツアーサポートやレコーディングに参加。ロックインストバンドcoil、PotHeads、プログレバンドVOTOM、ジャムバンドappolo jam、他、様々なジャンルのバンドに参加。またミュージシャンで構成される劇団「ピンチ座」の座長としても精力的に活動している。
鬼怒無月(G)
’90年に結成した「ボンデージフルーツ」は海外フェスティバルに多数出演。今年15周年を迎える梅津和時・早川岳晴との「KIKI BAND」や「Salle Gaveau」は海外での公演を重ね、国内外を問わず高い評価を受けている。その他、チェンバーロックバンド「Warehouse」、ギターインスツルメント「Coil」、坪井彰久との「ERA」、吉田達也との「是巨人」、カルメンマキ「サラマンドラ」、その他、灰野敬二、レナード衛藤、ZABADAK、等とのコラボレーションやギターソロなど日々自己のスタイルを進化させ続ける異彩ギタリスト。