洋楽のトリビュート・アルバムの名盤。オススメの1枚
皆さんは、トリビュート・アルバムと聞いてどのような作品を想像しますでしょうか。
一般的には偉大なアーティストやバンド、場合によっては作詞家や作曲家にフォーカスを当てて、それぞれの名曲を複数のアーティストがカバーを披露するといったものがトリビュート・アルバムと言われていますよね。
今回の記事では、複数のアーティストやバンドが参加した洋楽のトリビュート・アルバムの名盤に焦点を当てて、時代をこえたオススメの1枚を選んでみました。
トリビュート・アルバムがこういった形で紹介されることはあまりないですし、この機会にぜひお楽しみください!
洋楽のトリビュート・アルバムの名盤。オススメの1枚
No SurprisesRadiohead

トリビュート・アルバムというと、何十年も前に活動していた大御所に対して作られるイメージが強いですが、90年代にデビューを果たしたレディオヘッドのトリビュート作品となる本作『Exit Music: Songs with Radio Heads』は2006年にリリースされていますから、そういう意味ではわりと早い段階で生まれたトリビュート・アルバムと言えるかもしれませんね。
もちろん、革新的な音楽性で知られるレディオヘッドのトリビュートということで、一筋縄ではいかない作品となっています。
いわゆるクラブ・ミュージック界隈のプロデューサーたちが参加しており、それぞれが独自の解釈でレディオヘッドが生み出した名曲たちに新たな命を吹き込んでいるのが興味深いですね。
レディオヘッドの音楽自体、ロックとクラブ寄りのサウンドを巧みに融合させた楽曲も多く、そういう意味では本作のような企画とは相性が良いというべきかもしれませんね。
2000年代初頭に頭角を現し、青春期にレディオヘッドに出会ったのであろう鬼才プロデューサーのRJD2さんによる、全編インストゥルメンタル曲として表現した『Airbag』や、R&Bを軸としながらも独創的なスタイルで知られるシンガー、ビラルさんをボーカルに迎えた初期の大名曲『High and Dry』における、ピート・クズマさんのジャジーでオシャレなアレンジが個人的にはお気に入りです!
Waterloo SunsetRay Davies & The Kinks

トリビュート・アルバムによっては、トリビュートされる側のミュージシャン本人が参加しているパターンが時折見受けられますが、2002年にリリースされた『This Is Where I Belong: The Songs Of Ray Davies & The Kinks』は、まさにそういったタイプの作品の1つ。
英国ロックの至宝にして、本国ではザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フーと並び称される存在のザ・キンクスのトリビュート・アルバムです。
キンクスのフロントマンにして天才的なソングライター、いかにも英国的な偏屈かつ変人とも言われるレイ・デイヴィスさん公認の作品ということで、キンクスのファンであれば必聴の内容となっていますよ。
ジョナサン・リッチマンさんやマシュー・スウィートさん、ロン・セクスミスさんといったアメリカのシンガーソングライターのカバーも、ファウンテンズ・オブ・ウェインやファストボール辺りのパワーポップ的なアレンジも、アメリカのミュージシャンたちがまねしたくでもできない、英国ならではの味わいを持つ楽曲に対する憧れのようなものが感じられて良いですね。
ジョアン・ジルベルトさんの娘でもある、ベベウ・ジルベルトさんによる『No Return』のボサノバ・カバーもオシャレでナイスな出来栄え。
ちなみにレイ・デイヴィスさんは『Waterloo Sunset』で、ブラーのデーモン・アルバーンさんと共演という形で参加しています。
新旧の英国ヒーローの共演という意味でも、イギリスのロック好きであれば必聴と言えるでしょう!
Wall Of DeathRichard Thompson

リチャード・トンプソンさん、と言われてもそれなり洋楽に詳しい方以外にはピンとこないかもしれませんが、イギリスが生んだ偉大なミュージシャンであり、1967年に結成されたフォークロック系のバンド、フェアポート・コンヴェンションを率いて英国フォーク~トラッドにおいて多大な貢献を果たした存在なのですね。
ソロ・アーティストとしてもグラミー賞にノミネートされ、2011年の新春叙勲式で大英帝国勲章を授与されるなど、ギタリストとしてもシンガーソングライターとしても高い評価を受けるトンプソンさんは当然ながら多くのミュージシャンがその影響を公言していますが、1994年にはトリビュート・アルバム『Beat The Retreat: Songs By Richard Thompson』がリリースされています。
ラインアップはアメリカ出身のアーティストたちが多く参加しており、ボニー・レイットさんやロス・ロボスといったベテラン勢がストレートにカバーしている王道のタイプと、ダイナソーJRやハスカー・ドゥ~シュガーの活動で知られるボブ・モールドさん辺りによる、激しいギター・サウンドで楽曲を再解釈したタイプの2つに分かれる印象ですね。
個人的には、トーキングヘッズのフロントマンにして鬼才、デヴィッド・バーンさんによる『Just the Motion』にさすがのセンスの良さを感じます!
YesterdayThe Beatles

数え切れないほどにリリースされているビートルズのトリビュート・アルバムの中でも、異色の作品と言えるこちらの『Tribute To The Beatles Reggae Style』を紹介します!
その名の通りレゲエのアーティストたちがカバーしたビートルズ楽曲集となる本作は、あのトロージャンがリリースしていることでも有名です。
トロージャンとは、ロンドンを拠点としてスカ、ロックステディ、レゲエ、ダブといったジャマイカ音楽の名盤を世に送り出し、絶大な人気を誇っている名門中の名門レーベルで、イギリスにおけるジャマイカ音楽のブームの中心的な役割を果たしたことで知られています。
レーベルを知らずとも、特徴的なロゴをTシャツなどで見たことがあるのでは?
そんな名門レーベルがリリースしたこのトリビュート・アルバム、あの『Abbey Road』のパロディとなっているジャケットからしてなんだかオシャレでクールですよね。
ビートルズがお好きで、レゲエという音楽を聴いたことがなかったり、なんとなく抵抗がある……という方もいらっしゃるかもしれませんが、ゆるめのレゲエらしいグルーブで生まれ変わった名曲は聴いていて心地良く、昼下がりのカフェのBGMとしてもばっちりハマりそうな雰囲気。
レゲエ好きはもちろん、そうでない方でもぜひ聴いてみてください!
HatefulThe Clash

今もなお、英国パンク・バンドの伝説的なヒーローとして尊敬を集め続けるザ・クラッシュのトリビュート・アルバムです。
邦題の『燃えよ!ロンドン~ザ・クラッシュに捧げる』からして強烈な熱量を感じさせますが、ノー・ダウトやランシド、311にマイティ・マイティ・ボストーンズスカパンクの要素を持つ納得の面子に加えて、アイス・キューブさんといったヒップホップ界のレジェンドもいれば、アメリカン・フォークミュージックの魂を歌い続ける女性二人組デュオのインディゴ・ガールズなど、ザ・クラッシュのパンクだけにとどまらない影響力の大きさを物語る豪華な参加面子が特徴です。
1999年というリリース時期もあって、サード・アイ・ブラインドやシルバーチェアーといった、当時人気を博していたオルタナティブロック系のバンドも見受けられますね。
個人的には、日本が世界に誇るベテランのパンクロック・バンドであるザ・モッズが自ら日本語に訳した歌詞を歌う『Clash City Rockers』がボーナストラックとして収録された国内盤を入手してほしいです!
おわりに
トリビュート・アルバムの楽しみ方の一つとして、好き嫌いは別にして原曲の新たな魅力や担当するバンドやアーティストのルーツを深掘りできる、といった点が挙げられますよね。
今回紹介したトリビュート作品の名盤たちを聴けば、あなたが日ごろ愛聴している楽曲のまた違った一面が垣間見えるかも?
もちろん、今まで聴いてこなかったアーティストを知るきっかけとしてもオススメです!