洋楽のトリビュート・アルバムの名盤。オススメの1枚
皆さんは、トリビュート・アルバムと聞いてどのような作品を想像しますでしょうか。
一般的には偉大なアーティストやバンド、場合によっては作詞家や作曲家にフォーカスを当てて、それぞれの名曲を複数のアーティストがカバーを披露するといったものがトリビュート・アルバムと言われていますよね。
今回の記事では、複数のアーティストやバンドが参加した洋楽のトリビュート・アルバムの名盤に焦点を当てて、時代をこえたオススメの1枚を選んでみました。
トリビュート・アルバムがこういった形で紹介されることはあまりないですし、この機会にぜひお楽しみください!
もくじ
- 洋楽のトリビュート・アルバムの名盤。オススメの1枚
- Across the UniverseThe Beatles
- Nothing Else MattersMetallica
- Rocket ManElton John & Bernie Taupin
- Stone FreeJimi Hendrix
- Break On ThroughThe Doors
- Like A Rolling StoneBob Dylan
- SuperstarCarpenters
- I Dreamed About Mama Last NightHank Williams
- A Case Of YouJoni Mitchell
- Under PressureQueen
- (You Can Never Tell) C’est la VieChuck Berry
- Hard luck womanKISS
- D’Yer Mak’erLed Zeppelin
- WinterlongNeil Young
- VelouriaPixies
- No SurprisesRadiohead
- Waterloo SunsetRay Davies & The Kinks
- Wall Of DeathRichard Thompson
- YesterdayThe Beatles
- HatefulThe Clash
洋楽のトリビュート・アルバムの名盤。オススメの1枚
Across the UniverseThe Beatles

ビートルズが及ぼした影響力の大きさは、あらゆるジャンルにおいて数え切れないほどのトリビュート・アルバムが定期的に発表されていることからもわかりますよね。
その中でも代表的な作品を1枚挙げるというのは難しい選択ですが、今回は2002年にリリースされたサウンドトラック盤という変則的な形のビートルズ曲のカバー・アルバム『I am Sam』を紹介しましょう。
2001年に公開され、高い評価を受けたアメリカ映画『アイ・アム・サム』を彩るビートルズの楽曲たちを、大人の事情で原曲を使用するのが困難と判断、急きょ他のアーティストやバンドがカバーするという構成となった作品で、ある意味偶然の産物といえるアルバムなのですね。
映画のそれぞれのシーン自体が原曲のビートルズ楽曲と合わせた想定で作られていたため、演奏時間やテンポなどを変えない形でカバーしているため、トリッキーなアレンジを期待してはいけませんが、そういったルールの中でカバーを担当したアーティストたちのビートルズ愛と個性が発揮されている素晴らしいトリビュート作品となったのです。
2000年代初頭という点も踏まえると、1990年代に活躍したオルタナティブロック系のアーティストも多く参加していることも特徴的で、パール・ジャムのフロントマンであるエディ・ヴェダーさんによる『悲しみはぶっとばせ』はチャートで好成績を収めていますね。
Nothing Else MattersMetallica

2021年でリリース30周年を迎えた、メタリカを世界的なビッグ・バンドへと押し上げた記念碑的アルバム『メタリカ』。
通称『ブラック・アルバム』とも呼ばれ、グランジのブームが巻き起こった1991年にリリース、全世界で3,500万枚という驚異的な売上を記録した名盤中の名盤であることは今さら語るまでもありませんが、今回紹介している『The Metallica Blacklist』は、その『ブラック・アルバム』の収録曲を何と53組ものアーティストやバンドがカバーした作品なのです。
参加したミュージシャンたちの多さはもとより、ロックやパンク、シンガーソングライターからポップスにラテン、カントリーにヒップホップにいたるまで、あまりにも多彩すぎるラインアップを見れば、メタリカがメタル以外のジャンルへ及ぼした影響力の大きさ、その偉大な功績をあらためて実感することでしょう。
たとえば2021年6月にMVが公開された名曲『Nothing Else Matters』だけ取り上げてみても、近年ルックスとともにロック愛を全面に押し出しているマイリー・サイラスさんがボーカルを務め、エルトン・ジョンさんと世界的なチェリストのヨーヨー・マさん、リズム隊にメタリカのロバート・トゥルージロさん、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスさんが参加というジャンルの区分けなどがまったく意味を成さない挑戦的な内容となっているのですね。
メタリカの楽曲を通じて、今まで聴いてこなかった分野のアーティストを知るきっかけとなるかもしれません!
Rocket ManElton John & Bernie Taupin

世界的なシンガーソングライター、エルトン・ジョンさんの楽曲の多くは作詞家のバーニー・トーピンさんとのコンビによるもの、というのは有名な話ですが、1991年にリリースされたこちらの『Two Rooms: Celebrating the Songs of Elton John & Bernie Taupin』は、エルトン・ジョンさんとバーニー・トーピンさんによる楽曲を取り上げたトリビュート・アルバムとなっています。
リリース時において、すでに長いキャリアを持ったビッグ・アーティストが多く参加しており、それぞれの色を出しながらエルトン・ジョンさんへの敬意を感じさせるアレンジとなっているのが印象深いですね。
個人的には、1990年にリリースしたセカンド・アルバム『蒼い囁き』が大ヒットを記録しながらも、過激な発言などでも話題を集めていたシネイド・オコナーさんによる抑制の効いた歌唱が美しい『Sacrifice』や、レゲエ調のカバーでヒットを記録、高い評価を受けた鬼才ケイト・ブッシュさんの『Rocket Man』などが出色の出来栄え。
ティナ・ターナーさんの豪快なヴォーカルが楽しめる、邦題『あばずれさんのお帰り』というインパクト大なタイトルでも知られている『The Bitch Is Back』はグラミー賞にもノミネートされていますね。
女性陣の個性が際立った1枚、と言えるかもしれません!
Stone FreeJimi Hendrix

ロック史に残る最高のギタリストにして、27歳の若さでこの世を去った伝説的なミュージシャン、ジミ・ヘンドリックスさん。
定期的に行われる音楽メディアの「史上最高のギタリスト」といった企画においても、頻繁に1位に選ばれているヘンドリックスさんがどれほど革新的であったのかを短い文章で語ることは不可能ですが、本稿で取り上げている名作トリビュート・アルバム『Stone Free: A Tribute to Jimi Hendrix』を聴けば、その圧倒的な影響力の一端が理解できるはず。
1993年にリリースされ、日本では『紫のけむり』というヘンドリックスさんの名曲にちなんだ邦題も付けられましたね。
エリック・クラプトンさんのようにヘンドリックさんと同時代を生きたスーパー・ギタリストを始めとして、さらに上の世代にあたるシカゴ・ブルースの第一人者であるバディ・ガイさん、異色のヴァイオリニストであるナイジェル・ケネディさん、パール・ジャムとサウンドガーデンというオルタナティブ・ロックのスターたちによるテンプル・オブ・ザ・ドッグがM.A.C.C.という変名で参加していたりと、実に興味深いラインアップとなっているのです。
ザ・キュアーによる『Purple Haze』辺りは評価が分かれそうですが、癖の強い個性的なミュージシャンたちがどのようにジミヘン楽曲を料理しているのか、寛大な心で味わうのもトリビュート・アルバムを楽しむコツと言えるのではないでしょうか。
Break On ThroughThe Doors

今もなお、妖しく危険なカリスマ性で聴き手を魅了し続ける伝説のボーカリストにして詩人、ジム・モリソンさんが率いたドアーズ。
ドアーズの音楽に影響を受けたというミュージシャンは数知れず、1991年には名匠オリバー・ストーン監督による映画『ドアーズ』が公開されるなど、さまざまなカルチャーに影響を与え続けドアーズのトリビュート・アルバムは2000年にリリースされた『Stoned Immaculate: The Music Of The Doors』が有名です。
このトリビュート作品の特筆すべき点は、やはりドアーズの残されたメンバーたちがどの楽曲でも何かしらの形でレコーディングに関わっている、ということでしょう。
その結果、散漫になりがちなトリビュート・アルバムにドアーズの世界観を壊さずに、統一感のある雰囲気を作り上げているのが特徴と言えましょう。
新旧のアーティストがそれぞれドアーズ愛、ジム・モリソン愛を爆発させているのが聴いていて楽しくなりますが、ストーン・テンプル・パイロッツやクリード辺りの90年代オルタナティブロック組は、明らかにモリソンさんを意識した歌い回しで、その影響源がありありと浮かび上がるパフォーマンスとなっていますね。
とくに前者のボーカリスト、故スコット・ウェイランドさんは破滅型のフロントマンということもあるのか、はまりきっていて恐ろしくなるほどです……!
Like A Rolling StoneBob Dylan

2021年、御年80歳を迎えながらも新たなツアーの開催が決定するなど、生ける伝説でありバリバリの現役ミュージシャンとして活躍するボブ・ディランさん。
1962年のデビューから、常にシーンの第一線を走り続けてきたディランさんは同業者のみならず、音楽以外のアーティストやクリエイターからも尊敬を集める偉大な存在ですよね。
そんなボブ・ディランさんをテーマとしたトリビュート・アルバムはいくつかリリースされていますが、今回取り上げる『Chimes of Freedom』は2012年という比較的最近リリースされた作品です。
国際人権団体「アムネスティ」創立50周年を記念したトリビュート・アルバムでもあり、CD4枚組で全73曲という大ボリュームの内容も特徴ですね。
ジャンルも世代もこえた多彩なラインアップは、クレジットを眺めるだけでも伝わりますよね。
たとえばパティ・スミスさんのように、70年代ニューヨーク・パンクを代表するシンガーソングライターであり詩人でもあるアーティストの次に、ポリティカルな姿勢を持ったメロディックなハードコア~オルタナティブロックを鳴らすライズ・アゲインストのようなバンドが並ぶ、というのはなかなか他のアーティストでは見かけないものでしょう。
全部聴き通してみれば、ボブ・ディランさんの楽曲は、アメリカの音楽およびカルチャーの歴史そのものである、という事実が浮かび上がってくるかもしれません。