洋楽のトリビュート・アルバムの名盤。オススメの1枚
皆さんは、トリビュート・アルバムと聞いてどのような作品を想像しますでしょうか。
一般的には偉大なアーティストやバンド、場合によっては作詞家や作曲家にフォーカスを当てて、それぞれの名曲を複数のアーティストがカバーを披露するといったものがトリビュート・アルバムと言われていますよね。
今回の記事では、複数のアーティストやバンドが参加した洋楽のトリビュート・アルバムの名盤に焦点を当てて、時代をこえたオススメの1枚を選んでみました。
トリビュート・アルバムがこういった形で紹介されることはあまりないですし、この機会にぜひお楽しみください!
洋楽のトリビュート・アルバムの名盤。オススメの1枚(1〜10)
Stone FreeJimi Hendrix

ロック史に残る最高のギタリストにして、27歳の若さでこの世を去った伝説的なミュージシャン、ジミ・ヘンドリックスさん。
定期的に行われる音楽メディアの「史上最高のギタリスト」といった企画においても、頻繁に1位に選ばれているヘンドリックスさんがどれほど革新的であったのかを短い文章で語ることは不可能ですが、本稿で取り上げている名作トリビュート・アルバム『Stone Free: A Tribute to Jimi Hendrix』を聴けば、その圧倒的な影響力の一端が理解できるはず。
1993年にリリースされ、日本では『紫のけむり』というヘンドリックスさんの名曲にちなんだ邦題も付けられましたね。
エリック・クラプトンさんのようにヘンドリックさんと同時代を生きたスーパー・ギタリストを始めとして、さらに上の世代にあたるシカゴ・ブルースの第一人者であるバディ・ガイさん、異色のヴァイオリニストであるナイジェル・ケネディさん、パール・ジャムとサウンドガーデンというオルタナティブ・ロックのスターたちによるテンプル・オブ・ザ・ドッグがM.A.C.C.という変名で参加していたりと、実に興味深いラインアップとなっているのです。
ザ・キュアーによる『Purple Haze』辺りは評価が分かれそうですが、癖の強い個性的なミュージシャンたちがどのようにジミヘン楽曲を料理しているのか、寛大な心で味わうのもトリビュート・アルバムを楽しむコツと言えるのではないでしょうか。
Break On ThroughThe Doors

今もなお、妖しく危険なカリスマ性で聴き手を魅了し続ける伝説のボーカリストにして詩人、ジム・モリソンさんが率いたドアーズ。
ドアーズの音楽に影響を受けたというミュージシャンは数知れず、1991年には名匠オリバー・ストーン監督による映画『ドアーズ』が公開されるなど、さまざまなカルチャーに影響を与え続けドアーズのトリビュート・アルバムは2000年にリリースされた『Stoned Immaculate: The Music Of The Doors』が有名です。
このトリビュート作品の特筆すべき点は、やはりドアーズの残されたメンバーたちがどの楽曲でも何かしらの形でレコーディングに関わっている、ということでしょう。
その結果、散漫になりがちなトリビュート・アルバムにドアーズの世界観を壊さずに、統一感のある雰囲気を作り上げているのが特徴と言えましょう。
新旧のアーティストがそれぞれドアーズ愛、ジム・モリソン愛を爆発させているのが聴いていて楽しくなりますが、ストーン・テンプル・パイロッツやクリード辺りの90年代オルタナティブロック組は、明らかにモリソンさんを意識した歌い回しで、その影響源がありありと浮かび上がるパフォーマンスとなっていますね。
とくに前者のボーカリスト、故スコット・ウェイランドさんは破滅型のフロントマンということもあるのか、はまりきっていて恐ろしくなるほどです……!
Under PressureQueen

近年は不世出のフロントマン、フレディ・マーキュリーさんに焦点を当てた映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットで、若い音楽ファンからあらためて注目を集めた、イギリスが生んだ世界的なロック・バンドのクイーン。
当然ながら、彼らからの影響を公言するミュージシャンは世界中に多く存在していますし、彼らの生み出した楽曲も好んでカバーされている印象ですが、トリビュート・アルバムは意外と少ないようですね。
今回取り上げている、クイーンの名曲をタイトルとした『Killer Queen: A Tribute to Queen』は2005年にリリースされた作品で、2000年代以降にデビューを果たした当時の若手アーティストやバンドが多く参加しているのが特徴です。
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったポップパンク・バンドのSUM 41が、いかにもなパンキッシュ・スタイルではなく、かなり原曲に忠実かつストレートに『Killer Queen』をカバーしていたり、デビュー間もないジェイソン・ムラーズさんも『懐かしのラヴァーボーイ』を原曲のイメージを崩さない形で披露しているのが興味深い。
個人的には、この時点でまだ10代だったジョス・ストーンさんによる『Under Pressure』が実に美しく、パワフルな歌唱力に圧倒させられます!
洋楽のトリビュート・アルバムの名盤。オススメの1枚(11〜20)
D’Yer Mak’erLed Zeppelin

音楽史に残る記録的な成功を果たし、独創的かつ革新的な音楽性でハードロックというジャンルのさまざまな可能性を提示、多種多様なアーティストたちに影響を与え続けるレッド・ツェッペリン。
2020年代の今も、意外なミュージシャンがツェッペリンからの影響を公言していますが、1995年にリリースされたトリビュート・アルバム『Encomium : A Tribute to Led Zeppelin』に参加した面々を眺めるだけでも、影響力の大きさが伺えるというものですよね。
1990年代半ばのリリースということで、当時のオルタナティブロック系の若手が多く参加しており、代表的なところで言えばストーン・テンプル・パイロッツやブラインド・メロン、クラッカー辺りがその筆頭と言えるでしょうか。
デビュー・アルバムが大成功を収め、一躍トップ・スターの仲間入りを果たして間もない頃のシェリル・クロウさんによる『D’Yer Mak’er』なんかは、原曲以上にレゲエのリズムを意識したポップかつチャーミングな出来栄え。
デュラン・デュランの参加は意外に感じる方も多そうですが、彼らがカバーした『Thank You』をタイトルとした、さまざまなアーティストの曲をカバーしたアルバムが同年にリリースされているのでそちらにも注目を。
なお、御代ロバート・プラントさんが個性派シンガーソングライターのトーリ・エイモスさんと共演を果たした『Down by the Seaside』がラストに収められています。
VelouriaPixies

1980年代後半の初期オルタナティブロック・シーンにおける最も偉大なバンドの1つであり、あのニルヴァーナの故カート・コバーンさんがその音楽スタイルをまねしたと公言するなど、多くのアーティストたちに影響を与えたことでも知られているのがピクシーズです。
4枚のアルバムを残して一度解散していますが、後に再結成を果たして新作もリリース、2020年代以降の今も現役で活動中の彼らの音楽性は一見キャッチーでポップなギター・ロックと見せかけて、フロントマンのブラック・フランシスさんのキャラクターそのものといったような、どこかひねくれたバンド・アンサンブルが実に独創的なのですね。
そんなピクシーズのトリビュート・アルバムとして有名な『Where Is My Mind? Tribute to the Pixies』を紹介しましょう。
ストレートなカバーでピクシーズ愛を示したウィーザーなどの有名どころはもちろん、個人的な意見ですが90年代のポスト・ハードコアやエモコアといったジャンルとされるバンド勢が多く参加しているところに注目してほしいですね。
ゲット・アップ・キッズやファー、ブレイド、プロミス・リングにセンス・フィールドといった90年代エモコア好きにはたまらない面子が、どれほどピクシーズに影響を受けていたのかがよくかる内容となっていますよ。
ピクシーズのファンならずとも、当時のエモコア・シーンに興味がある方に大推薦の1枚です!
WinterlongNeil Young

カナダはトロント出身、その特異な個性で長きに渡りジャンルに縛られない活動を続け、2020年代の今もバリバリの現役アーティストとして活躍するニール・ヤングさん。
多くの後続のミュージシャンに影響を与えたヤングさんですが、いわゆるオルタナティブロック系のアーティストやバンドから熱狂的な支持を受けており、グランジのゴッドファーザーなどと呼ばれていることは有名な話で、1989年にリリースされた作品『The Bridge: A Tribute to Neil Young』は、まさにその証左といえるトリビュート・アルバムなのですね。
まだグランジやオルタナティブロックが本格的に商業的な意味でもムーブメントとなる前ということもあり、ソニックユースやピクシーズ、ザ・フレーミング・リップスやダイナソーJRなど、90年代の幕開けを予感させるアーティストたちが多く集結した作品で、オルタナティブロックの歴史を知る上でも興味深い1枚となっています。
残念ながら、ヤングさんはトリビュートという形式を快く思わなかったのか、本作の企画自体に怒ったそうです。
ニール・ヤングさんの熱心なファンでもオルタナ系のアーティストはあまり好きではない、という方もいらっしゃるでしょうが、今や若い音楽ファンにとっては90年代の音楽が生まれる前の古いロックとなった時代ですから、先入観を取り払った上であらためて本作と向き合ってみてはいかがでしょうか。
No SurprisesRadiohead

トリビュート・アルバムというと、何十年も前に活動していた大御所に対して作られるイメージが強いですが、90年代にデビューを果たしたレディオヘッドのトリビュート作品となる本作『Exit Music: Songs with Radio Heads』は2006年にリリースされていますから、そういう意味ではわりと早い段階で生まれたトリビュート・アルバムと言えるかもしれませんね。
もちろん、革新的な音楽性で知られるレディオヘッドのトリビュートということで、一筋縄ではいかない作品となっています。
いわゆるクラブ・ミュージック界隈のプロデューサーたちが参加しており、それぞれが独自の解釈でレディオヘッドが生み出した名曲たちに新たな命を吹き込んでいるのが興味深いですね。
レディオヘッドの音楽自体、ロックとクラブ寄りのサウンドを巧みに融合させた楽曲も多く、そういう意味では本作のような企画とは相性が良いというべきかもしれませんね。
2000年代初頭に頭角を現し、青春期にレディオヘッドに出会ったのであろう鬼才プロデューサーのRJD2さんによる、全編インストゥルメンタル曲として表現した『Airbag』や、R&Bを軸としながらも独創的なスタイルで知られるシンガー、ビラルさんをボーカルに迎えた初期の大名曲『High and Dry』における、ピート・クズマさんのジャジーでオシャレなアレンジが個人的にはお気に入りです!

