佐藤弘樹さん(プロフィール

自作詩でポエットリーディングアルバムを作った佐藤弘樹様

「ちょっとぜいたくな大人の遊び、趣味のアルバムを作る」

FM京都朝の番組「αMORNING KYOTO」の人気パーソナリティーにして、大学の英語講師、趣味は詩作と朗読という、多彩な顔を持つ佐藤弘樹さん。

「遊びでCDアルバムを作るとしたら、どんなものをお作りになりたいですか?」というじわりん工房からの問いかけに応えてくださり、素敵なポエットリーディングアルバムが出来上がりました。

もくじ

  1. CDはラブレター
  2. 大人の遊び 趣味のアルバム作り
  3. 詩人のCDアルバム
  4. SATOさんのこれから

朝日新聞2009年3月14日夕刊掲載

思い入れのある「音」を、プロの手でしっかり記録したい。そんな思いに応える試みが、京都のライブハウスで始まった。国際日本文化研究センターの井上章一教授(54)は、さっそくCDを作ったひとり。本では一般的になった「自費出版」が、音の世界にも広がるか。

井上さんの趣味はピアノ演奏で、『アダルト・ピアノ−−おじさん、ジャズにいどむ』などの著書もある。「女性にもてたい」一心でピアノを始めて13年。自分なりに自信が生まれ、思い切ってCDを制作した。題名は著書からとった。真っ赤なジャケットに「ADULT PIANO(アダルト・ピアノ)」の黒い文字が躍る。

制作を手がけたのは、「ライブスポットラグ」を営む音楽企画・制作会社「ラグインターナショナルミュージック」(京都市)のCD制作部門「じわりん工房」。ラグは、サックス奏者の渡辺貞夫さんやジャズピアニストの山下洋輔さんらも定期的に演奏する老舗ライブハウス。専属グラフィックデザイナーがジャケットをデザインし、プロ用の機材を使い約3時間かけて録音した。「マイ・フーリッシュ・ハート」「サマータイム」「アマポーラ」など10曲が収録されている。

2月、CD発表記念のライブで、井上さんは約70人の観客に腕前を披露。「七五三でおべべを着せてもらった子どもの心境です」と照れた。「元文化庁長官の河合隼雄さんが、趣味のフルートのCDを出された時、『プロの音楽家でもないのに』とこき下ろした記憶がありますが、あれは僕の嫉妬でした」と井上さん。CDは千枚作り、親しい人に無料で配った。

「じわりん工房」が昨年発足したきっかけは、代表の河上ひかるさん(43)の体験だ。河上さんの実家は富山市の寺。6年前、僧侶として働く父親が前立腺がんになり、読経の声を録音しておこうと、春の彼岸会の時、寺の本堂にマイクを持ち込んだ。ジャケットには、父と寺を継いだ弟が向かい合って読経している写真を使った。再生するとお経や鐘の音が流れ、懐かしく安らかな気持ちになった。

「自分の表現を音にして残したい方ならプロ・アマを問わず、最高の形でお手伝いしたい。音楽のほか詩の朗読、お経など様々な需要があると思う」と河上さん。料金はレコーディング、ジャケットデザイン、包装込みで18万9千円から。

作詞家のもず唱平さんは「こうしたビジネスでは著作権が担保されるよう、注意が必要」としたうえで、アマチュアの演奏家によるCDが出回ることは大賛成だという。「アマチュアによる新しい感覚の演奏が、文化の活性化につながる可能性もある。井上さんが次にCDを出すことがあれば、ぜひオリジナルを一曲入れてほしい」。