ボーカロイドのオケ制作から完成まで。クリスマスソング編
もくじ
基本はルートから、ベーストラックを作る
コードトラックの機能は便利ですが、コードトラックだけで全部済んでしまうわけではありません。
和音の構成でも少し変わった配置であったり構成音を抜きたい場合などに狙った音にならないことも多いですし、調号と関係なくコードを選択する必要があるため場合によっては表記がノンダイアトニックになったりしてややこしい場合もあります。
しかし、コードが決まっているということはルート音が分かるということですので、コードトラックが若干不格好であったり少し気に入らない時でもベースを先に作ってしまうと作業が捗ります。
今回はルートを基本にしたごく簡単なベースギターにしてみました。
音はいつも通りKONTAKTのPre-BASSを使用しています。
旋律でも若干前のめりにする部分は作ってあったのですが、ベースでリズムを取る段階になってスウィングよりもっとリズムを振ってシャッフルの方が合っているなと感じたのでベースの入力から基本のリズムを三連ビートにしてシャッフルに切り替えました。
リズムの主役、ドラムを入れる
ベースができたらそれに合わせてドラムを入力します。
ベースが先でドラムを入力してもいいですし、ドラムを先に決めてからベースを入れてもいいですし、この順番は好みで良いと思います。
個人的にはベースを入力してからドラムを追加した方が修正が必要な場合に楽なのでこの順番を好んで使います。
ドラムトラックはMIDIでの入力が厄介なトラックですが、DAWごとにドラム入力を支援するツールが備わっていますのでそれを活用します。
ここではCubaseを使用していますのでCubaseに付属しているBeatDesignerを使用して入力を行いました。
このツールを使うこととパターンを並べることで簡単にドラムトラックを作成できます。
ここまででメロディ・リズム・ハーモニーの3つの要素をそろえることができました。
もっと楽しくなるように編曲してみる
何となく曲らしい雰囲気が出てきた、と言えなくもありませんがこれだけでは全然クリスマスっぽさがありません。
前回のクリスマスっぽさを考えた時にも上げたグロッケンなどの高音で鳴る楽器やスレイベルなどが全く入っていません。
メロディを引き立てるためのリズムやハーモニーを彩る合いの手を入れていくのが今回の編曲の目標です。
今回の構成は基本的なポップスでAメロ→Bメロ→サビの構成になっています。
Bメロは赤鼻のトナカイのフレーズを当てはめているので短いですが転調しています。
ここで雰囲気を大きく変更できれば、サビへ大きく盛り上げてつなぐことができるのではないでしょうか?
Aメロのコードからバッキングを作る
全体の進行は最初にコードの流れを作った時点で決まっています。
若干不格好な音も混じっているので、少し手直しをしながらピアノでバッキングを作ってみました。
コードトラックではロングトーンしかありませんが、シャッフルのリズムで白玉だけでは面白さがないのでシャッフルビートに合う動きを付けながらコードの構成音を中心にしたバッキングを作ってみました。
パターンとしてはごく基本的な低音→高音の繰り返し、いわゆるズン・チャッというリズムにしました。
AメロからBメロで雰囲気を一気に変えてみる
Aメロはなんとなくいい感じにできた気がしますのでBメロに入ります。
Bメロでは大きく雰囲気を変えたいのでパートの構成を変えてみます。
ピアノパートはお休みにして、クリスマスソングの雰囲気の出るグロッケンやスレイベルを中心に組み立ててみます。
高音の短い音の楽器だけでは心もとないので、その後ろにはストリングとオルガンを配してみました。
構成している楽器がガラリと変わるので雰囲気の変化が明確になるのではないでしょうか。
一通りカタチになったらいよいよ歌の入力へ
ボーカロイドで作る、といいつつもボーカロイドの編集ができるのはここまできてからです。
曲が固まる前から歌を録音しても仕方がないですし、リズムの変更や文言の差し替えなどは展開のイメージによって流動的になったりします。
クリスマスソングなのでそれらしい歌詞を用意してみました。
ボーカロイドエディタに全部はりつけて一気に入力できればいいのですが、大体の場合一発では通らないのでAメロやBメロごとに入力していって、おかしな部分を修正していくことになります。
実はメロディの入力の時からボーカロイドの使用をある程度意識していたので、音符の数などはそれらしくなるように弾いていました。
それでもバッキングのリズムやドラムが入ったことでメロディにも手を入れることになったので、そのあたりは何度か調整しました。
とりあえずでも歌詞が入って歌になると、いよいよ音楽してるなあという雰囲気が出てきて楽しくなってきますね。
せっかくなのでツインボーカルにする
ボーカロイドのIAを使用してとりあえず通しで歌詞を歌わせることができたところで、せっかくなので妹のONEにも参加してもらおうかなと思い立ってこちらにもデータを投入することにしました。
CeVIOのエディタにはCubaseのプロジェクトからIAのMIDIトラックをSMFで出力したものをそのまま読み込ませています。
この方法だと歌詞のデータは移行できませんがタイミング情報はほぼ一致した状態でCeVIOのエディタにデータを展開できます。
ボーカロイドとCeVIOでは歌唱の癖が異なりますのでこれを近づける作業を行います。
CeVIOのエディタにはガイドとしてIAのボーカルトラックのデータを読み込ませて聴きながら合わせていきました。
唯一ビブラートの調整だけが難しい所ですが、これはそれぞれのエディタでビブラートのカーブを確認することで以前より簡単に処理できます。
クリスマスソングの完成
最終的にこんな感じになりました。
クリスマスソングっぽくできたでしょうか?
今回は折角の企画ですので動画にも力を入れることにして編集協力を依頼してみました。
イラストはTakefumi Hayashiさんに協力をお願いしました。
イラスト:Takefumi Hayashi(https://store.line.me/stickershop/author/1525)
実はそんなに難しくありません
今回はあまり難しく考えずにテーマに忠実に作ってみました。
雰囲気やテーマを決めてやってみると案外スムーズに進むものです。
難しそう……と尻込みせずに挑戦してみてください。
それでは皆様、メリークリスマス!!
ライタープロフィール
DTMer
みるくここあ
元IT技術者。
ウィンドシンセを使います。
VocaloidやCeVIOを使って曲を作ってみたり、ボーカルを迎えて曲を作ってみたりしています。
元々楽器の練習用にオケを作るだけだった半端なDTMerでしたがVocaloidに出会い、その変遷に付き合っていくうちに深みに嵌っていたただの音楽好きです。
Vocaloid 2 MegupoidとVocaloid 3 IA、そしてCeVIO Creative StudioのONEを使用しています。
ウェブサイト:http://milkcocoa.org
Twitter:milkcocoa_org