ブライダル音響のプロが教える演出効果のテクニック
披露宴・二次会などで、プロが実践している、音楽の演出効果を解説してみましょう。
皆さんは、披露宴などに出席した時、思わず感動してしまったり、涙してしまった事はないでしょうか?
皆さんの、心を動かしてしまったもの。
その正体の一つが、音響効果の力なのです。
今回はシーン別に、プロのオペレーターが心がけているテクニックを解説していきます。
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ケーキ入刀 〜ゲストの気持ちを代弁する〜
和やかな空気の中、前半の一番の見せ場であるケーキのセレモニーです。
ここに、会場のボルテージのピークを持って来れれば、音響としての使命の一つが果たされます。
会場や宴にもよりますが、ケーキが会場に運び込まれる場合があります。
ここで盛り上げてしまっては、その後のメインイベントが台無しです。
ここはグッと我慢で乗り切ります。
最高の音響効果を狙うには、ギャップ、落差が必要なのです。
入刀までは、指定されている曲を頭から、静かに、しかし場面転換を意識させる程度に流します。
イメージとしては「そこに音楽を置く」感覚です。
新郎新婦様がケーキの前へ誘導され、否が応でも期待値は高まります。
そして司会者からケーキ入刀のコメント。
「ケーキご入刀です!」
今まで流れていた曲がフェードアウトされ、ほんの一瞬の無音、ゲストの意識が下されるナイフの刃先に注がれた瞬間、同じ曲のサビ、一番印象的な旋律が大音量で流れます。
ケーキにナイフが入るタイミングと、サビが流れるタイミングがバッチリ合えば、最高の音響が出来たと自慢して構いません。
一斉にたかれるフラッシュ、ゲストはカメラに夢中でまだ拍手は起こりません。
少し遅れて割れんばかりの拍手。
この「間」を補うのも音響の役割なのです。
言わばゲストの感情を代わりに表現しているのです。
続けてファーストバイト、お互いへの食べさせ合いです。
スプーンでまずは新郎様から新婦様へ、会場のボルテージは保たれています。
各々ゲストから「もっと!」だの「少ない!」だの声援が飛び交います。
そして相手の口へ運びます。
「ア~ン」決定的瞬間です。
ここではサビだし編集は使ってはいけません。
ボリュームアップで十分です。
サビを使いたくなる気持ちはわかります。
ですがピークはあくまで入刀の瞬間です。
その印象を大切にする為に、同じ曲のサビは一度きりにしておきます。
次は新婦様から新郎様へ、ゲストから「まだいけるだろ!」だの「え~新婦やさしすぎ!」だの今度は冷やかしです。
スプーンに大量に盛られたケーキを半ば強引に口元へ。
「ア~ン」今回は一筋縄では行きません。
新郎様の口元から溢れるケーキに、会場も盛り上がります。
音響はボリュームアップで答えますが、諦めかける新郎様に少し意地悪をしてみます。
音量はそのまま、下げません。
ゲストもその音楽に乗せられて「まだまだ!」「いける!」と新郎様を煽ります。
会場を笑いが包み、幸せそうな新郎新婦様を祝福せざるを得ないことでしょう。
新婚生活を垣間見せる、素敵な演出が完成します。
新郎新婦中座 〜時空をも変化させるタイムマシン〜
披露宴、前半もクライマックスに差し掛かります。
新郎新婦様はお色直し(衣装チェンジ)の為、一旦会場を後にされます。
この演出は、新郎新婦様によって意味合いは様々です。
新郎新婦様がお二人揃って、退場される場合もありますが、多くの場合は「新婦様中座」の後「新郎中座」という流れになります。
その場合「エスコーター」と呼ばれる、付添人をお選びになられることでしょう。
誰を選ぶかによって、その意味合いは大きく変わってくるのです。
甥っ子様や姪っ子様など、会場の子供達を選ばれる場合、新郎新婦を、ディズニーの主人公のように見せる演出が効果絶大です。
BGMはあくまでお子様に合わせます。
音響はおとぎ話の中のような空間作りに徹します。
ご友人を選ばれる場合、新郎新婦を、その時代に返してあげましょう、
サークルで共に戦った瞬間に、不安や喜びを分かち合った時に、思い出の曲が流れれば、一瞬であの時代が蘇ります。
親御様を選ばれる場合、この時ばかりは、親子の時間を演出します。
- 子から親へは、言葉では伝えきれない感謝の思いを
- 親から子へは、立派に育った我が子への喜びを
- 音楽は親御様の大好きな曲や、両親に当てたメッセージソングなど
その「想い」を表現します。
音響がその場を、様々に変化させられる場面なのです。
お色直し入場 〜予定調和をサプライズに変化させるには〜
後半のスタートです。
ドレスチェンジされた新郎新婦様が、再びゲストの前に姿を現します。
当然、最初の入場ほどの感動はない筈です。
既に「初めて」の感動は消化されてしまっています。
そこで、音響の選曲の見せ所です。
洋装から和装へ、またはその逆なら、世界観や自分たちがいる場所まで、変わったかの様な錯覚を与えます。
司会者からは「装いも新たに新郎新婦の入場です!」と気の利いたコメントが発せられます。
ゲストの皆さんの中には、最初の入場のイメージが植えつけられていることでしょう。
そのイメージを逆手にとって、いい意味での期待を裏切るのです。
最初の入場が洋装で「明るく楽しいBGM」で入られたのなら、今度は、「静かで厳かなBGM」をチョイスします。
逆ならそれに習います。
こうする事で「2度目」という意識を取り払うのです。
加えて、お色直し入場には、様々な演出が盛り込まれます。
キャンドルサービスなどの光の演出や、ブーケ・ブートニアセレモニーなどの挙式風入場。
ゲストの皆様を巻き込んだ催しも、流れに変化をもたらす効果があるのです。
それが、楽しい明るい演出なのか、はたまた厳かな演出なのかを見極め、それに見合ったBGMでアプローチします。
ラウンド中、数曲をご準備する事が有ります。
その時も曲の順番に注意を払います。
入場曲の次に来るのは、少し落ち着いた選曲を、そこから徐々に盛り上がるように、曲を組みます。
ゲストのテーブルを回られた新郎新婦様は、改めてメインテーブルへ到着です。
その時メインテーブルのサイドには、メイン演出ステージが出来上がっています。
例えばキャンドルリレーなら、ひときわ大きなキャンドルが置かれています。
ゲストの皆様は今から何が行われるか、察しておられる事でしょう。
BGMも、そのまま同じ曲でメイン演出をしてしまっては、ますます感動は得られません。
サプライズとはいかないまでも、「バレている」上で最大の効果を引き出します。
ここでも緊張のエネルギーを利用します。
BGMはおもむろにフェードアウトし、会場を静寂へと導きます。
キャンドルなら、会場は薄暗く無音の効果も絶大です。
この時、会場に無音であることを意識させてはいけません。
あくまでさり気なく、ゆっくりと音を消して行き、緊張感だけが、ただ高まって行く様に思わせる事が重要です。
そして、メイン演出です。
ここでもサビ出し編集を使います。
解放させるには、ギャップが必要なのです。
燃え上がるキャンドルや、注がれる液体、手渡される花束。
どれを取っても、そこが最大の見せ場である事は一目瞭然と成ります。
披露宴で有効なテクニックのすべてが、その瞬間に注ぎ込まれるのです。