もはや知らない方はいないのではないでしょうか?
伝説的ザ・ビートルズのドラマー、リンゴ・スターの本当の実力についてお話します!
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リンゴ・スターの実力は過小評価されている!
ネットを見ていると「リンゴはなぜビートルズの一員になれたのか?」「リンゴはビートルズの一員だったから有名になれた」「リンゴのドラムの実力は大したことがなかった」などといった趣旨の記事を良く見かけます。
そして、実は、日本だけではなく、世界中のネットで同じような議論がビートルズのデビュー以来、50年以上にもわたりいまだに続けられているのです。
しかし、これはとんでもない誤解であり「リンゴが存在しなければビートルズは存在しなかった」といっても過言ではない程、彼は優れたドラマーだったのです。
今回はこのことについてお話しします。
なぜリンゴは過小評価されるのか?
これはなかなか難しい問題で一言で説明するのは容易ではないのですが、いくつか原因が考えられます。
1. 他の3人の実力が抜きん出ていたこと
ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、特にジョンとポールは、あまりにも傑出した実力を持っていたため、彼らがビートルズの中核を形成し、リンゴはそれについて行っただけであるかのような印象を受けてしまうのかもしれません。
2. ドラマーは縁の下の力持ち
そもそもドラマーは、ベースとともにリズムセクションを形成し、バンドの縁の下の力持ちとして、後方でバンドを支える役割ですから、もともと目立つ存在ではありません。
一番目立つのはメインボーカル、次にギターやキーボードですね。
3. 難しいことをサラっとやってのけた
ここが非常にリンゴが誤解されやすいところだと思いますが、テクニック的にはかなり難しいことをやっていても、彼は、それをサラッとやってしまうので目立たないのです。
彼自身目立つことが嫌いだったということもあるかもしれません。
一流のプロドラマーたちが「リンゴのドラミングの完コピは絶対にできない」と断言するのもこういうところを指しているのです。
グリーン・デイのトレ・クールは、「そばで見ていても彼がどうやってあのサウンドを出しているのか分からなかった」と語っています。
4. ドラムソロをやらなかった
先程の話とも関連しますが、リンゴはドラムソロが嫌いで、ビートルズ時代は「ジ・エンド」という曲を除いては全くやりませんでした。
もちろん、やろうと思えばできたのですが、目立つことが嫌いでやらなかったのです。
また、ビートルズの楽曲自体、特に前期は3分未満の短いものが多く、長いドラムソロは必要なかったこともあります。
5. 手数が少なかった
ドラマーに対する評価のポイントとして、ドラムを叩く手数がいかに多いかということが挙げられます。
確かに、それがドラマーとしての評価のポイントの一つであることには違いありません。
しかし、手数が多いからといっても、それがバンド全体のバランスを崩してしまっては、かえってぶち壊しになってしまいます。
リンゴは、それを嫌って曲に合わせた必要最小限度のシンプルなドラミングにしていたのです。
「叩きたいけどあえて叩かずシンプルにやる」ここが理解できないと、彼を過小評価してしまうことになってしまいます。
リンゴのドラムのどこがすごいのか?
では、具体的にリンゴのドラムのどういうところがすごかったのでしょうか?
1. ロックドラムの扉を開けた
ロックドラムのスタートがいつの時点であるか、明確に誰が始めたとは言えませんが、リンゴがその一人であることは間違いありません。
50年代のドラムは、バンドに正確なリズムを提供することが要求され、音量も抑えた繊細で軽いタッチが主流でした。
しかし、リンゴは、強烈なビートを叩き出し、ベースと協調してリズムセクションを形成し、バンド全体のグルーヴ感を出すというドラマーの重要性を明らかにしたのです。
そのため、ビートルズがブレイクしてからは、多くの音楽プロデューサーがドラマーに対してリンゴみたいに叩いてくれと要求したのです。
いろいろなドラムの違いを解説した動画です。
2. テクニックよりも独創性
手数が少なかったり、ドラムソロをやらなかったりといった点で、彼と同世代のドラマー、例えば、ジョン・ボーナム、ジンジャー・ベイカー、キース・ムーンたちと比較して、リンゴが劣っているかのように言われがちです。
しかし、そもそも彼らを同じ土俵で比較すること自体が無意味なのです。
それは、モーツァルトとベートーベンのどちらが優れているかと比較するようなものです。
なぜなら、リンゴの最大の特色はその独創性にあり、今までどのドラマーも考えつかなかったような独創的なドラミングを開発したことにあるからです。
例えば、「トゥモロー・ネバー・ノウズ」では、ドラッグ(スティックをスキンの上で弾ませるテクニック)を使うなど、非常にユニークでまるで空間で重金属が捻じ曲がるかのような不思議なサウンドを叩き出しています。
彼は、ドラムのスキンを思い切り緩くし、オリジナルのサウンドをリミッターで圧縮しました。
彼は、この曲の持つ東洋音楽を感じさせる神秘性を完全に理解したうえで、この奏法を選択したのです。
https://www.youtube.com/watch?v=Ah2ckzXgrx4
3. 「フィーリングの帝王」あるいは「マジック・タッチ」
リンゴを尊敬するドラマの一人である元ニルヴァーナのデイヴ・グロールは、リンゴのことを「フィーリングの帝王」と呼んでいます。
つまり、彼は、独特の感性を持っていて、常識では考えられないようなドラミングをしたのです。
また、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスは、リンゴのドラミングを「マジック・タッチ」と呼びました。
彼は、まるでマジックの様に誰にもわからない、不思議なタッチでサウンドを繰り出したのです。
4. ビートルズのドラムはリンゴに託されていた
リンゴは、他の3人が曲を作った時、そのガイド演奏をただじっと聴いていたのです。
聴き終わるとおもむろにスティックを取り、ドラムを叩き始めるのですが、そうするとほぼその曲のドラミングの8割から9割ぐらいは完成していました。
もちろん、他の3人がいろいろと注文をつけることはありました。
ジョンがあまりに注文をつけるため「ビートルズにはドラマーが2人いるみたいだな」と文句を言ったこともありましたが、基本的にどのようなドラミングをするかはリンゴに託されていたのです。
ですから、ビートルズのユニークなドラミングは、ほぼ彼のアイデアだったと断定して良いでしょう。
例えば「レイン」という名曲がありますが、このドラミングは、リンゴ自身がビートルズ時代の最高のパフォーマンスだったと語っています。
https://www.youtube.com/watch?v=bHIVClXx2TY
当時としては非常にユニークなドラミングで、タイトル通り雨が階段の上から下へダラ~っと流れるような、後ノリの典型的なサウンドです。
彼にしては珍しくフィルをこれでもかというぐらい多めに入れていますが、その効果により雨が激しく路面を叩きつけている光景を思い起こさせます。
どの曲でもそうなのですが、リンゴのドラムはポールのベースと非常によく絡んでいて、この曲でも見事な連携プレーを見せています。
バンドでありがちなのはベースとバスドラムが低音域で被ってしまい、お互いに打ち消しあってしまうことです。
しかし、リンゴは、この曲ではサビでポールが高音をキープしている間は、ドラムを抑えめにして彼のサポートに回っています。
彼は、どんな曲でもポールのベースが最大限に生かされるようにドラムを叩き、ボーカルやギターなどの邪魔もしませんでした。
5. 練習せずに完璧にドラムを叩いた
リンゴは練習が嫌いで5分もすると飽きてしまい、スティックを放り出してしまいました。
それでもプロデューサーのジョージ・マーティンは「私が記憶する限り、レコーディングでリンゴがミスったのは1度か2度しかなかった」と断言しています。
リンゴの素晴らしいドラミングを示す楽曲の数々
「チケット・トゥ・ライド(涙の乗車券)」では、シンコペーションを巧みに用いて主人公の悲しい気持ちにドラムをシンクロさせるとともに、とどろく遠雷のようなサウンドで楽曲全体に重厚さを持たせました。
後年、この曲のユニークなイントロをリンゴ自身が実演してみせています。
自分が左利き(正確には両利き)であることがユニークなサウンドを生み出したと語っています。
「アイ・フィール・ファイン」では見事なR&Bのシャッフルビートを刻み、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」ではサウンドに微妙な違いを持たせて曲に変化を付け、「カム・トゥゲザー」ではハイ・ハットとタムを巧みに操り、踊りだしたくなるようなリズムを繰り出し、「ヘルプ」ではリムショット(スネアのスキンとフチを同時に叩く)を使って主人公の激しい感情を表現しました。
しかも、これらはほんの一例に過ぎないのです。
リンゴがいかにビートルズのサウンドに大きな貢献をしていたか、お分かりいただけたでしょうか?