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【作詞入門】K-POPアイドルの楽曲を訳詞と作詞でひもとく

数年前、大晦日に行われたNHK紅白歌合戦に何組もの韓国アイドル(歌手)が出場しました。

政治と擦り合わせた議論に無理矢理持ち込みたい人たちには格好の話題とはなりましたが、個人的には、せめて音楽やスポーツだけでも政治の世界を越えてheart to heartに人々の心に伝わって欲しいです。

もはや、韓国アイドルは終わってしまった……かのような風潮(?

)ですが、昨年は韓流アイドルグループのTWICEが紅白歌合戦に出場しました。

BIG BANGや防弾少年団の勢いも止むことを知らず、韓流音楽は若者の間ではすでに流行り廃り関係無いスタンダードミュージックとなっているのではないでしょうか。

今回はそんな韓流アイドルの楽曲を訳詞する、また楽曲そのものを作詞の視点からひもといてゆきたく思います。

お手本神曲:BLACK PINK|PLAYIING WITH FIRE

https://www.youtube.com/watch?v=GnDmLiVU3UQ

作詞家はTEDDY / Emyli さんです。

グループカラーと表層としての言葉

先ほど挙げたApinkのイメージカラーはピンクです。

そしてこのグループBLACK PINKのイメージカラーは、PINKの文字が入っているにもかかわらず、黒だと思います。

日本風でない湿度無い黒色

研ぎ澄まされた楽曲とスタイリッシュないでたちから、とてもクールな黒を連想させます。

このピンクの文字を持つ二つのグループは」、お互いのテリトリーに立ち入らないと言うより、各グループがそれぞれ我が道を突き進んでいるイメージです。

日本のアイドルはどうでしょうか。

現役のトップアイドルをざっくり分けると……の様な書き方をすると多方面から御叱咤の御意見頂く事とはなりますが、あえて分類すると(あくまで個人の感想です)

とでもなりましょうか。

お互い同じ時代を生きている意味ではライバル関係なのですが、微妙にそれぞれのフィールドを守っている様にも感じられます。

各自グループカラーを壊さない、とても忖度行き届いた歌詞にも注目できます。

例えばスターダストのアイドルが歌う楽曲にはドロドロとした恋愛は出て来ませんし、夜の恋を匂わせる言い回しもありません。

おそらくどのグループにもタブー単語や暗黙の了解とした言葉の聖域があるのでしょう。

離合集散定めないアイドル界では無理もないことですが、ただその「タブー」がグループの活動の幅を狭める場合もあります。

歌詞だけから読み解けば、その意味ではハロプログループが一番硬軟幅広いフィールドを用意してアイドルを育てている様に見えます。

もちろん歌詞の言葉から推測できるのはアーティストのほんの一面に過ぎません。

話を戻します。

ビジュアル、楽曲からしてBLACK PINKは韓流で一番クールなグループです。

はやりの洋楽を意識した楽曲作りは単なるアイドルの域では収まりません。

アイドルやアーティストの呼称ではフォローし切れないほどの大物感があります。

ママは言うわ

男には気をつけなさいって

愛は火遊びみたいに

火傷するから

ママにいつも言われてたの

男には気をつけて

恋は火遊びみたいで

ケガするからね

元歌詞、日本語歌詞、どちらも同じ様な意味に収まっています。

極力元歌詞を尊重するように作詞家が言葉を起こし、寄せています。

特に歌詞中「愛」を「恋」と置き換えている所にはドキッとさせられました。

日本人の言葉にとって「火遊び=恋」の認識はある程度はあるかと思います。

大袈裟に言えば言葉はその国の歴史の凝縮、また言い換えれば個人の経験の表層で、この「愛」か「恋」かの言葉は絶妙に変換されたものだと感じました。

日本人の感覚では遊びもありえるのが「恋」なのであって、おそらく重く集約された「愛」だけは、遊びに汚される事なく常に普遍的なものであって欲しいとの願望が込められているのでしょう。

単なる一楽曲の訳詞ではありますが、愛さえも火遊びと受け止められる大陸系的な恋愛観の懐の深さを思いました。

世界共通の歌詞言語

もう一つ上の歌詞の中で気になった所は「ケガ」のカタカナ表記です。

怪我と書くと切り傷やひっかき傷を連想させますが、カタカナの「ケガ」はそこまで重くありません

また「心のケガ」等の表記には比較的浅い恋愛での失敗を連想させる「軽み」もあります。

譜割りの関係で「ヤケドするからね」と歌詞を置けなかった都合もありますが、そのピンチを逆手に取って上手く言葉をあてたなと思いました。

以前にも言いましたが、歌われれば「怪我」も「ケガ」も「けが」も関係ありません。

歌詞は非文学であり、良い意味で反文学の精神さえも持ち合わせませんが、歌詞は歌詞なりに高いレベルで言葉の世界を構築する責任が作詞家にはあると思いたいです。

歌われてこその歌詞ですが、そのくらいの矜持は必要なのだなと心にいつも留めておきたいです。

震える恋心は

On and on and on

君に捧げた

あたしの全てを

Look at me Look at me now

君のせいだよ

韓国の人口は日本の約半分ほどです。

なので、韓国の企業は韓国国内だけをターゲットの市場としていては大きな売り上げは見込めません。

そこで、初めから世界を相手にしたモノ作り、コンテンツ作りに励んでいると聞いた事があります。

もちろん、同様に韓国のたくさんのアーティストたちは世界を股にかけた活動をしています。

歌詞の中に英語が多いのはそのためです。

サビがガッツリ英語というのも珍しくありませんし、半分近く英語の歌詞というのもあります。

上の歌詞の英語の部分は元歌でも英語です。

歌詞の一行置きに母国語を入れるパターンが多く見られます。

この例は日本のアーティストにも多いので、作詞の一つの型として覚えておけばいいと思います。

英語で示して、それを単に日本語にして追い掛けている歌詞も多いです。

I want to close you. 君のそばにいたいんだ

の型です。

多用すると面白みがないのですが、気軽に使えるコンビネーションです。

火傷しちゃう 消せない

この恋は ブルチャンナン

「プルチャンナン」は火遊びの意味です。

燃え盛る恋の炎、恋の火などの言い回しは世界共通の歌詞言語ではないかと思えるくらい目にします。

恋の火と言ってふとドアーズの『ハートに火をつけて』を思い出しました。

訳をしたのは鏡明さんです。

この楽曲の原題は『LIGHT MY FIRE』です。

同じ英語の歌詞が楽曲の中では「おれを燃やしてくれ」と言葉を変えて使われています。

こんな使い方もあるのだなと訳詞にはたくさんの勉強の素を発見できます。

ちなみにドアーズのジム・モリソンは、THE DOORSの連名を含め、100ほどの楽曲を残しているのですが(もっとありましたらファンの方申し訳ありません)、fire(火)の単語を他の楽曲の歌詞にはほとんど使っていません。

この『LIGHT MY FIRE』に思い入れがあってのことか、はたまた偶然なのか。

本人亡き今、調べよう、聞きようもないのですが。

もう 抑えられない

猛スピードで広がる火

ねぇ 止めないでよ

灰になるまで焼き尽くして

昔のロックに多用されていた歌詞や単語が今アイドルの楽曲に多く登場しています。

往年のガールズロックがアイドルの形をまとって再出している感はあります。

上単語「抑えられない」「猛スピード」「焼き尽くして」は典型的な恋の歌の歌詞です。

ロック全般に出て来る歌詞でもありますので、その辺りがBLACK PINKのクールさを過剰なまでに演出していると言えます。

気負いに似た詠嘆さえも感じさせ、全てをパフォーマンスで決着つけようとする彼女たちの姿勢は、これからもますますファンを増やすことでしょう。

ライタープロフィール

アイドル作詞家・俳人

瀧乃涙pin句

何のツテもないまま作詞を開始。

数年後、文化放送ラジオドラマ主題歌『全身全霊Open Now!』song byガールズジョッキーまでたどりつく。

SPATIO『泣きそう』『レジスタンスガール』、SPATIO kids『温泉サンバ』、ナナエ『シューティングスター』『恋の話しよ!』他、ご当地アイドル、地下アイドルに歌詞を提供中。

週末はもっぱらアイドルを追い掛けている。

Twitter:t_pink_t

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