ドラム打ち込みのコツ。フィルインの組み立て方
これまでに、
を解説してきましたが、今回はドラムのフィルイン(おかず)の打ち込み方法です。
もくじ
フィルインの捉え方
ドラマーがフィルインを組み立てるとき、頭に浮かんできたフレーズを音にするというよりは、手が動く範疇(はんちゅう)でフレーズを作っていることの方が多いのではないかと思います。
ドラマーはやれることしかやってはいけないのです。
凝ったフィルインのためにテンポがヨレてしまっては本末転倒。
これはバンドメンバーに一番嫌われるタイプのミスですし、また体の構造的に自然なフレーズの方がシンプルで曲へのなじみがかよったりします。
打ち込む上でのポイントを上げるなら
- 左右の手のそれぞれが届く範囲の楽器を鳴らすこと。これはフィルインに限りません。
たとえば右利きの普通のドラムセットにおいて左手でライドを叩くのは不自然です。
- ゴーストノートや休符も含め左右の手にアサインされている音符をしっかりイメージすること。その音をどちらの手が弾いているかをイメージしましょう。
今回はオルタネイト(左右の手が交互に動く)の手順で作ってみます。
- フィルイン中のビートを把握すること。
そのフィルインは8ビートなのか16ビートなのか、頭の中で把握しておきましょう。
拍の位置に左右の手が自ずとアサインされます。
- ゴーストノートをしっかり入れる。
ドラマーはゴーストノートで裏拍を取ってフィルインのリズムを安定させています。
上記4点くらいでしょうか。
以下右利きドラマーの設定で進めます。
組み立て方と基本パターン
これを頭に置いた上で作り方を見ていきます。
組み立ては1拍の短いフィルインをもとにそれを拡張していくことをオススメします。
8ビートも16ビートも共通です。
拡張前の基本パターンを3つくらい紹介しておきましょう。
他にもいろいろあります。
基本パターン①
「タカトンッ」ってやつですね。
最後にタムが入ります。
↑フィルインのビートは16分音符。
表拍に右手、裏拍に左手をあてるイメージです。
最後の16分の位置で左手が自由(休符)にですが、休符といえどアサインされるのは左手。
ゆえに次の1拍目のシンバルは右手で鳴らすことになります。
基本パターン②
「タッタカ」ってやつ。
スネアだけのフィル。
↑「ッ」で左手が自由になっています。
基本パターン③
「チキチーッ」ってやつ。
ハイハットだけのフィルインです。
↑最後の16分音符も左手が自由になっていますが、このフレーズのときはハイハットを叩くために身体をハイハットの方に向けているので最後の左手の可動域は他の2種類に比べると狭くなります。
フロアタムなんかは鳴らせませんね。
拡張する
それでは基本パターンをもとに拡張していきましょう。
尺を長くする
一番手っ取り早いのは基本パターンを組み合わせることです。
③→①を組み合わせるとこんな感じ↓開いたハイハットを踏むタイミングが大事だったりします。
↓ペダルを踏む位置。
次の小節の1拍目です。
②→①の組み合わせ↓
↓そのままつなげています。
他の楽器を入れてみる。
②→①で②の部分を少し変えてみます↓
↓ここでも左手と右手は大事です。
一打目のタムは左手になるので二打目のタムは右手が叩きやすい位置のタム、ロータムやフロアタムを当てています。
ハイタムの2連打でもOKですね。
ゴーストノートを入れる
生演奏らしいフィルインに一番重要なのはゴーストノートです。
スネアにゴーストノートを入れましょう。
強拍の前のロールが効果的です。
一気に生らしくなります。
左手と右手の関係は当然ロールを打ち込む時も同じです。
ロールをたくさん入れたフィルインも良いですね↓
↓こんなかんじ
さらに長くする
上記の要領でさらに拡張していけばいくらでもフレーズを作っていくことができます。
↓こんな感じで伸ばして
↓シンバルや3連符、キックのダブルなどを入れて華やかに。
大サビ前とかこれくらい派手にしたいところ。
キックについて
右利きであれば右半身は表拍を、左半身は裏拍を叩く方が体の構造的には自然です
ドラマーがフィルインで無意識にキックを入れるとき、同じ右半身の右手と同じタイミング(=表拍)でペダルを踏んでいることが多く、表拍に入れられたキックはフレーズに干渉しにくくなります。
そして右手の位置で入れられたキックはフィルインのフレーズラインには干渉しにくいです。
左手のタイミングでキックを入れるとき、それはドラマーが「入れるぜ!」と思っているとき。
すなはちキックがフィルインのフレーズラインの一部を担っているときです。
たとえばこれとか↓
これとか↓
用意すべきフィルインの種類
普通のポップスであればフィルインは4種類もあれば十分です。
そしてそのうちのひとつは上記の基本パターンをそのまま使ってしまってOKです。
ドラマーはバンドメンバーから口を酸っぱくして言われます。
「フィルインなんかがんばらんでええからヨレんといて!」
あぁ耳が痛い……
ドラマーたるもの、ここぞとばかりフィルインで頑張りたくなるのも分かるのですが、ドラムのフィルインは「うまく叩けて褒められるもの」ではなくて「失敗して怒られるもの」です。
DTMerは曲全体を俯瞰(ふかん)する訓練を積んでいる方が多いと思うのでフィルインを派手にしたがる方も少ないかとは思いますがドラマーの心理と葛藤も念のため押さえておきましょう。
作ってみた
前回の音源にフィルインを加えて作ってみました。
- ドラム経験者によるドラム打ち込みの解説。
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- ドラム打ち込みのコツ。
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フィルインの組み立て方
- ドラム打ち込みのコツ。
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- ジャズドラムの打ち込みのコツ
ライタープロフィール
作曲家・ギタリスト
odasis
サウンドクリエイター・ギタリスト。
・島村楽器「録れコン2017」グランプリ。
・島村楽器「録れコン2015」ベストプレイ賞。
・クレオフーガ「ラフ・ダイアモンドVOL.2」入賞。
ウェブサイト:http://odasis.net
Twitter:odasis