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ピアノの先生がBABYMETALを調性で分析。4の歌、イジメ、ダメ、ゼッタイ他

ピアノの先生がBABYMETALを調性で分析。4の歌、イジメ、ダメ、ゼッタイ他
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ピアノの先生がBABYMETALを調性で分析。4の歌、イジメ、ダメ、ゼッタイ他

ピアノの先生がBABYMETALを調性で分析。

BABYMETAL DEATH、メギツネ他」はこちらです。

今回はその続きです。

1stアルバムの最後まで解説したいと思います。

はじめに

この調性の記事の観点が興味をそそるのか、Twitterやまとめサイトなどで取り上げていただき、光栄です。

さらにBABYMETALへの愛が深まるばかりですね。

分析という行為は、作曲者の意図するものを完全に読み取るというわけではありません。

意図せずできあがったもの、つまり感覚でできあがったものであっても、分析してみると「このような意図を読み取れることができる」ということもあるものだと思っております。

「名曲は分析に負けない」

そういう思いでこの分析記事を作っているということを忘れないでください。

また、あくまで分析、すごいのはつくったBABYMETALチームの皆さんなのです。

私は分析して楽しんでいるだけです。

分析が楽しいということは、その曲が名曲である、という意味なのです。

BACHの分析も面白いのです。

4の歌

嬰ハ短調(最も陰暗な調の一つ。

残忍、皮肉、悲愴、不気味)♯4つ– ホ長調(輝かしく、温和で喜ばしい。

高貴の調)♯4つ

嬰ハ短調とホ長調は、♯の数がどちらも4つの、平行調という近親調です。

短調と長調でありながら、使用する音階が基本的には同じですので、行ききしやすい調です。

ちなみに、♯や♭の増えていく順番というのは決まっていて、

という順で増えて行きます。

だから、平行調は使う音階が同じなんですね。

使う調号(♯や♭)が同じなのですから。

私の印象だと、♯が増えていけばいくほど、狂っていく感じ、♭が増えていけばいくほど重く沈んでいく感じがします。

そして♯が6つになった時、♭が6つになる時と、鍵盤上では同じ音となります。

この続きについては悪夢の輪舞曲で解説します。

さて、♯が4つの近親調に話を戻します。

♯が4つですから、ほどよく狂っています。

「メタルで「4の歌」なんて、子供番組の歌じゃないんだから!」なんて突っ込みたくなります。

狂ってます(笑)。

ヨンヨン!

「♯が4つ」

もう気づきましたか?

これは!

面白いですよね!

4に掛けていますね!

ダジャレなんですね!

※あくまで、私の気づきであり、作曲者に取材したものではありません。

これはBLACK BABYMETALです。

歌詞にもあります。

死ぬじゃない4(シ)。

喜びの4(ヨン)。

4というところを意味する日本語の不吉さ(BLACK)、そして、言葉遊びの面白さ(日本語)、ヨンという音の面白さとかわいらしさ(BABYMETAL)。

BABYMETALを海外に広げていくための第一歩なのかもしれませんね。

ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト

嬰ハ短調(最も陰暗な調の一つ。

残忍、皮肉、悲愴、不気味)♯4つ– ホ長調(輝かしく、温和で喜ばしい

高貴の調)♯4つ

もうわかりますよね?

「4の歌」と同じ調性です。

おまけに、「4の歌」では触れませんでしたが、嬰ハ短調は「いいね!」のダークな部分と同じ調、そしてホ長調は「ギミチョコ!!」のサビと同じ調性です。

そして、ギターの調弦の話になると、ノーマルのチューニングよりも半音下げチューニングをして演奏する曲ですよね。

その時点でかなりダークな印象になっています。

このダークで狂った印象の嬰ハ短調は、夜なべしてこれからが本番だー!

なんて言ってしまう、夜になると妙にテンションが上がってしまう、そういう邪悪で狂った感じを出しやすいと思います。

「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」ですから。

ホ長調のキラキラした感じになれるのは、若いから?

カワイイから?

どっちもかもしれません。

でもホ長調を挟むことがBABYMETALらしさを出しているのだと思うのは、皆が同意するところだと思います。

調性に関係ないのですが、実際に歌ってみて意外だったところを書いておきます。

この曲のメロディーは器楽曲のようなメロディーなんです。

歌ってみるとよくわかるのですが、音の跳躍が多くて、とても難しいのです。

構成音でメロディーができているところが多いからです。

だから、間違えると明らかにわかるようなメロディーなのです。

そして、きちんと歌えて当たり前のような、努力が報われない曲となっています。

クラシックでいうところのモーツァルトは、音を間違えるとはっきりわかってしまうタイプの作曲家です。

おなじようにこの「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」も音を外すとすぐにバレてしまいます。

su-metalの音感が試される曲に聴こえます。

BABYMETALのメロディーは音が飛ぶことが全体的に多いような気もしますけれどね。

※あくまで印象です。

Catch me if you can

短調(非常に暗く憂愁であるが、静かな期待と辛抱強い希望もほのめかす)♯2つ– ニ長調(高尚で華美、雄大で宗教的。

特に歓喜に適する。

活発なファンファーレにも用いられる)♯2つ

「紅月」と「悪夢の輪舞曲」に挟まれた5曲のうちの最後の曲です。

su-metalとBLACK BABYMETALのかわいらしさを強調するような、または紹介するような曲たちをsu-metalのソロ曲で挟み込むという曲順は、とてもわかりやすいものだと感じます。

紅月からおねだり大作戦に移った時は、いきなり恐怖の世界に突き落としましたね(笑)。

でも、この「Catch me if you can」は次の「悪夢の輪舞曲」の前の最後の楽しみ、次に悪夢が来るなんて予想させないような、魔法にかけてしまうような曲です。

「嵐の前の静けさ」ではなく、「悪夢の前の楽しさ」といったところでしょうか。

この曲の後で、また突き落とすんです(笑)。

「喜怒哀楽」の「喜」を表現するのがこのニ長調という調です。

ベートーベンの喜びの歌の調です。

2枚のアルバムを通してニ長調が他にはありません。

だって、ニ長調は、いかにもメタルらしくない(笑)。

前向きな喜びという調で表現しようとしたんですから。

「おいかけっこ」という、「子供の遊び」の純粋さを表現しようとしたのでしょうか。

このニ長調でメタルをやろうとしたところに、作曲家をはじめとした、BABYMETALチームのチャレンジ精神を強く感じます。

悪夢の輪舞曲

嬰ニ短調(ベルリオーズは緩慢な調と呼んでいる) ♯6つ変ホ短調(最も陰暗、陰気な調の一つ。

シューマンによると、神秘的な恐怖に満ちた調)♭6つ

バッハ作曲の平均律クラヴィーア曲集という、2巻シリーズのものがあるのはご存じでしょうか?

1巻につき、24曲ずつ入っているのですが、ピアノで言うところの、白鍵と黒鍵が主音の長調と短調が全て入っているという、

いわゆる全調が弾けるという驚きの曲集です。

今2巻に取り組んでいるところですが、偶然にも悪夢の輪舞曲と同じ調をやっています。

調号が多い上に、転調するにしても臨時記号が多く、ダブルシャープやダブルフラット(♯や♭が2つ分)もたくさん出てくるので、難しい上に、ハーモニーも難解になり、とても難しいのです。

レの♯(嬰二短調)、またはミの♭(変ホ短調)が主音のこの曲ですが、同じ音のため、どちらの調で書かれても同じように演奏します。

どちらで書いたとしても、調号の数が同じです。

そのため、この曲を楽譜にしようとすると、どちらの調で書くのか、とても悩みました。

また、調号が同じなので、♯系の特徴である狂った感じと、♭系の特徴である深く沈んでいく感じとが、両方感じられ、どちらとも言えない、より所のない、居場所を見つけられないような気分にさせられる調です。

そう、ちょうど、抜け出せない迷路に迷い込んでしまったような、「悪夢」という言葉がしっくりくる調です。

「迷路」という言葉は、この曲の「輪舞曲」を見て連想してしまうんだと思います。

「輪舞曲」とは、「ロンド」と読みますよね。

ロンドとは音楽の形式で、代表的にはABACAと、違うものを挟みながらAを繰り返す、というものです。

繰り返しながらも、同じところをぐるぐると回って出口が見えない悪夢…そんな雰囲気をこの調は感じさせます。

ちなみに、この曲は出口が見えないまま終わりますが、バッハの場合は、ピカルディ終止(長調になって終わること)なので、昇華、または救いがやってきます。

今回はあまり触れませんが、調以外にも「悪夢」や「輪舞曲」を連想させる音楽的要素がたくさんありますので、分析してみると面白いですよ。

ヘドバンギャー!!

ニ短調(不安、悲歓、荘厳、崇高。

シューマンによると、巨大な力を持つ調)♭1つ

みんなでヘドバンして巨大なエネルギーを享受しよう!

と言わんばかりの、ニ短調ですね。

初めてのニ短調です。

調号が♭1つという、いつになく調号が少なく、わかりやすい、親しみやすい調性です。

不安を感じる調性ではありますが、勢いがつくと、難しく迂回(うかい)せずにまっすぐ不安を吹き飛ばすような感じがします。

ストレート直球ど真ん中!

みたいな感じです。

当たりも強いですが、大きなエネルギーでぶつかれば、何も怖くない、みんなで渡れば怖くない、そんな感じです。

「ニ短調」の「ニ」は、ドレミの「レ」を意味します。

「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」は日本名で「は・に・ほ・へ・と・い・ろ・は」に当たります。

ちなみに日本国歌は「に」で始まり、「に」で終わります。

日本の伝統であります、雅楽旋法に基づいておりますので、完全にニ短調と一致するわけではないですが、何となく感じてしまうのは、私が日本人だからでしょうか。

それよりももっともっと強く感じるのは、この曲の存在です。

トッカータとフーガ ニ短調 BWV565

https://www.youtube.com/watch?v=1S4f0lgcUng

どうですか?

何か感じませんか?

私は、切っても切れない、または逃れられない運命みたいなものすら感じてしまいます。

イジメ、ダメ、ゼッタイ

嬰ハ短調(最も陰暗な調の一つ。

残忍、皮肉、悲愴、不気味)♯4つ

と続き、4曲めの嬰ハ短調の登場です。

このアルバムでこんなに多い調はこの嬰ハ短調だけです。

BABYMETALを表現した調として、この嬰ハ短調を選んだのではないかと思います。

この曲は、サビの「(イジメ、ダメ、イジメ、ダメ)かっこ悪いよー」の一時的な転調とギターソロのところの転調以外は、

一貫して嬰ハ短調です。

1つの調性で、この長さと聴いている人を飽きさせないというところに、この曲の素晴らしさを感じます。

いろいろな意味でアルバムの最終曲として相応しい曲だなぁ、という印象です。

調性には関係のないですが、テーマとなっている「イジメダメ」がBABYMETALの「明」の部分を表すことで、BABYMETALの代表曲であることを印象付けるのかもしれません。

1stアルバムが終わりました。

大まかにまとめますと、METALで始まり、BABYMETALの紹介、su-metalのキャラクター、BLACK BABYMETALの紹介、そして、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の嬰ハ短調により、強くMETAL、いや、BABYMETALを印象付けたところで、このアルバムは終わりました。

さて、2ndアルバムは、どのような構成になっているのでしょうか。

次回の記事をお楽しみに。

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