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ピアノの先生がBABYMETALを調性で分析。Road of Resistance、Amore -蒼星-他

ピアノの先生がBABYMETALを調性で分析。Road of Resistance、Amore -蒼星-他
最終更新:

BABYMETALを調性で分析の第3回です。

1stアルバムに続き、今回は、2ndアルバムの前半について、分析していきます。

1stアルバム前半:ピアノの先生がBABYMETALを調性で分析。

BABYMETAL DEATH、メギツネ他

1stアルバム後半:ピアノの先生がBABYMETALを調性で分析。

4の歌、イジメ、ダメ、ゼッタイ他

はじめに

ますます楽しくなっていく分析に、曲の面白さをさらに知ることができて、本当に良かったと思っています。

読んでくださる方々にも、この楽しさを共感していただけるとうれしいです!

読むのが大変かと思いますが、ぜひBABYMETAL愛を受け取っていただければと思います。

楽典の基礎知識はこちらでお勉強してください。

でも、すでに難しすぎて上の本では足りません。

この、「総合和声」でお勉強することをお勧めいたします。

では、2ndアルバムの始まりです

Road of Resistance

嬰ハ短調(最も陰暗な調の一つ。

残忍、皮肉、悲愴、不気味)♯4つ→嬰ヘ長調(色彩的な豊かさと柔らかみを持つ。

特に、ロマン的な趣を出す)♯6つ

はい、出ました!

BABYMETALの調、嬰ハ短調です。

1stアルバムでは「イジメ、ダメ、ゼッタイ」がこの嬰ハ短調で終わったばかりです。

また、1stアルバムでは、ダークなヘビィヘタルを表現する変ロ短調でスタートしていましたね。

2ndアルバムでは、すでに1stアルバムでBABYMETALの存在を知らしめた後ですから、BABYMETALを表現する調から初めても、何ら問題はない、どころか、喜んで受け入れられますよね。

また、堂々としたイントロで。

C♯マイナーのコードが、ジャーン!

おーっ!

となりますよね。

これは、最後の締めの調が今から何になるのか、楽しみですね。

実は、この曲のすごいところは、サビのところからです。

「さぁ、時は来た〜!」

の後からサビに入ります。

ここで何と「嬰ヘ長調」に転調します。

そして、ギターのソロの途中からニ長調(高尚で華美、雄大で宗教的。

特に歓喜に適する。

活発なファンファーレにも用いられる)[♯2つ]に転調し、そしてそのまま歌の「命が続く限り〜」のところに入ります。

そして、またサビの「Resistance〜」で嬰ヘ長調に戻って来て、そのまま終わります。

サビから後が基本的に「嬰ヘ長調」なんです。

嬰ヘ長調は「豊かさ、柔らかさ」と表現されていますが、BABYMETALの余裕を表しているように感じられます。

メタルに慣れてきて、女性らしさと柔軟性を表現しているように感じられます。

ニ長調は「Catch me if you can」で使われた調です。

BABYMETALの可愛らしさや遊びの楽しさを表現した調でしたね。

ここでのニ長調は、嬰ヘ長調に挟まれていますので、♯6つの中に♯2つの調が挟まれています。

嬰ヘ長調が「色彩的」と書かれている通り、いろいろな色が混ざり合い、少し複雑な色彩を感じさせます。

そんな中で♯2つの調であるニ長調に一瞬移ることで、1stアルバムとの関連性、風通しの良さ、若さ、若さゆえの柔軟性、そしてすぐに嬰ヘ長調に戻ることで「Catch me if you can」ではなかった雄大さ、進化が感じられるようになりました。

これからの分析で、強く感じられるであろう、「転調の嵐」を予感させます。

♯系の調は、やはりメタルを強く感じますね。

その中でも♯6つの調を使うということが、BABYMETALのさらなる進化を感じさせます。

ちなみに、嬰ヘ長調は初めて使われていますが、近親調である「嬰へ短調」はすでに1stアルバムで出てきました。

そうです、「紅月」の調ですね。

アルバムで統一性を持たせるということは大切なことです。

「紅月」という大切な曲との関連を、見逃してはいけないような気がするのは、私だけでしょうか?

KARATE

ト長調(若人の調。

誠意、冥想、優美、静かな田園的な風情。

春の調ともいう)♯1つ※ロ短調(非常に暗く憂愁であるが、静かな期待と辛抱強い希望もほのめかす)♯2つ※ホ短調(悲歓、悲痛、不安。

早い曲では激烈なものとなる)♯1つ

この曲の調は何だろう?

と思った時に、2度も裏切られることになるとは思いもしませんでした。

曲の冒頭からサビまで、B(ロ、シ)の音が支配する、ロ短調に聞こえました。

しかし、よく聞いてみると、コードがB7なんです。

B7はEのドミナントなんです。

ドミナントはトニックであるE major、またはE minorに解決します。

長いドミナントですね。

だから、サビの「まだまだセイヤソイヤ〜」からのホ短調につながっていただけなんですね。

じゃあ、ホ短調なのか?

と思って聞いていると、どうやら違うらしい。

これはト長調の曲なんです。

ホ短調に聞こえたのは、偽終止(ぎしゅうし)といって、6度調に終わったふりをするところだったんです。

※6度調……ト長調でいうと、主音のソから数えて6番目の音の調、

つまり、ソラシドレミと数えてミの調、ト長調はソに♯はつかないので、ミソシを1度とする調、つまりホ短調だから、この曲は本当はト長調。

だけど、ト長調に聞こえない。

だって、偽終止で終わるんだもの。

だから、ト長調の特徴である、若人らしさがあまりない代わりに、ロ短調の辛抱強い希望(しかも早くトニックに行きたいドミナントが延々と続く!

)=空手、ホ短調の激烈=メタルを感じさせるのでしょう。

いやいや、巧みな技を見ました。

ちなみに、1stアルバムでのト長調は「いいね!」でした。

やはり、1stアルバムからの進化を感じさせたいという意識が、強く感じられます。

あわだまフィーバー

ホ長調(輝かしく、温和で喜ばしい。

高貴の調)♯4つ※嬰ハ短調(最も陰暗な調の一つ。

残忍、皮肉、悲愴、不気味)♯4つ

「ギミチョコ!!」と同じ調性の、この曲。

ノリ的にはギミチョコ!!

と同じような位置づけを狙ったのでしょう。

音楽の曲の入りはEのパワーコードを強く出した印象ですね。

これはギミチョコ!!

と一緒です。

しかし、違う点が面白い。

ギミチョコ!!

と違う点は、Aメロとサビの調性にも出ています。

ギミチョコでは、Aメロがメロディーがなくて「ワタタタ」と叫んでBABYMETALを表現しています。

対するあわだまフィーバーでは、いきなりメロディーラインがホ長調の音階でできていますので、ホ長調のキラキラ感全開です。

でも神バンドの演奏は相変わらずEのパワーコード、メタル全開です。

また、ギミチョコ!!

はキラキラ感がサビになってから出てきていました。

対するあわだまフィーバーのサビは、ホ長調に変わりはないのですが、偽終止して嬰ハ短調のC♯マイナーに行きます。

いちいち偽終止。

サビの中は全部偽終止。

だから、キラキラ感よりもメタル感の方が強く感じます。

何度も書きますが、嬰ハ短調はBABYMETALの調です。

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」も「Road of Resistance」も嬰ハ短調。

そして偽終止のまま、曲は終わります。

メタルですねぇ、BABYMETALですねー!

ここからの3曲は、かなりヤバいDEATH!

覚悟してください(笑)。

なぜ、ヤバいか?

それは、私が好きな曲があるからなんですね!

熱く、長~くなっていきます(笑)。

では、お楽しみください。

ヤバッ!

ホ短調(悲歓、悲痛、不安。

早い曲では激烈なものとなる)♯1つ

初めてのホ短調です。

レギュラーチューニングで演奏されるからなのでしょうか、音が強く、鋭く感じられます。

「悲痛」という感じがぴったりです。

また、レギュラーチューニングだから、耳なじみが良いですね。

曲調についてとても気になったので、調べてみました。

よく似てると聴いて一発で思いつくのが「ジンギスカン」ですよね。

さらに調べてみました。

ジンギスカン (曲) – Wikipedia

ポイントとして気がついた点として以下をあげます。

まずディスコミュージックを意識した点ですが、ドイツ発祥なのに、本当に日本でなじみのある曲調で、親しみが湧きますね。

でも、ヤバッ!

になったとたん、ディスコミュージックではなくなりますね。

テンポも早く、タイトなリズムで、少しメタル寄りです。

次にイ短調という点。

今回の調性ですが、この親しみのあるディスコミュージックの曲調は、イ短調という調にも関係があると思います。

だから、ヤバッ!

もさほど複雑な調号をつけない方がいいですよね。

そこでメタルっぽい♯1つのホ短調、レギュラーチューニングでの調性にしたのはとてもいい雰囲気を出しているように思います。

メタルとディスコミュージックの「合いの子」のような感じ、でしょうかね。

この曲は、はっきり転調をしません。

ドミナントであるBマイナーとの間を行ったり来たりする、という印象が強いだけです。

メタルらしいといえばメタルらしいですよね。

BABYMETALとして「ジンギスカン」の要素という遊びを入れてみたのかもしれません。

調性の分析をすると、曲のイメージが変わって感じられる、そんな印象の曲です。

ちなみに私のこの曲の好きなところは、歌詞です。

「違いすぎて困る」全身で共感します。

Amore -蒼星-

変ニ長調(魅惑的、深刻、荘重。

長調の中で最も暗く痛々しい調の一つで、病的なロマン性も出す)♭5つ– 変ロ短調(変イ短調と共に葬送行進曲向き。

陰暗で憂鬱で悲劇的)♭5つ※ハ長調(単純、素朴、しかも確然とした感じを出す)調号なし

「変ニ長調」と「嬰ハ短調」は、ある意味、近親調です。

「変ニ(レ♭)」は「嬰ハ(ド♯)」と鍵盤上では同じ音だからです。

ある意味関連があるのかもしれませんが、印象で言うと「全く違う」というのが私の感想です。

長調とはいえ、♭が5つもつけば、そりゃあ、暗い感じがします。

例の調の特性でも「長調の中で最も暗く痛々しい調の一つ」と書かれています。

「病的なロマン性」とまで言われています。

私には、この調性は、2つのアルバムを通して、最もメタルらしくない調性だと感じられます。

この曲を作った作曲家は、恐ろしい冒険に出ました。

でも、ただ暗いだけじゃないんです、この調は。

「魅惑的」とあるように、なんとも言えない大人の女性のような魅力を感じるのもこの調性の特徴です。

この部分を、su-metalに求めてもいいのだと私は思います。

実際に感じている方もいらっしゃると思います。

しかし、BABYMETALです。

メタルじゃなきゃいけません。

だから、テンポを速くしたのでしょうか。

音も多すぎて、演奏も大変です。

その分、チャレンジ精神をかきたてられて、私としては、気持ちが盛り上がりうれしいです。

話を曲に戻します。

曲冒頭で変ニ長調-変ロ短調と書きました。

大まかに、サビから始まる変ニ長調は、変ロ短調へ転調し、また変ニ長調に戻り、行ったり来たりを繰り返して最後は変ニ長調で終わります。

変ロ短調はBABYMETAL DEATHの調です。

メタルです。

2つは調号がともに♭5つの平行調、とても似ているので行ったり来たりしやすいです。

また変ロ短調のトニックは変ニ長調の偽終止です。

だから、よく変ロ短調に行きます。

ちなみに超カッコいいベースソロのところは変ロ短調(ここは「なまら」好きです)、その後のギターソロの終わりは変ロ長調で終止、すぅちゃんが倒れ込んだ後、そのままの勢いで変ニ長調が続くと思いきや、なんとハ長調へ行ってしまいます。

ここのハ長調ですが、♭がたくさん付いていたところからいきなり調号がなくなります。

突然単純な調になります。

これは効果が高いです!

真っ白になって、生まれ変わった感じがします!

そう、すぅちゃんのあの羽のように真っ白な!

そして、思い出したかのようにまた変ニ長調でサビが来ます。

あぁ、超カッコいいです。

この、すぅちゃんが倒れ込む前後で転調するので、あまり空白が多くなり過ぎてしまうと、転調の効果が薄まっちゃうので、ほどほどにして先に進んで欲しい……と思いながも、倒れ込んだすぅちゃんに、客席からすぅちゃん起きて〜頑張って〜!

って叫んでみたいので、ライブでは倒れて欲しかったりします。

超カッコいいベースソロのところは、BABYMETALの楽曲の中でも部分的に「なまら」好きな部分なのですが、もう1つ好きな部分があります。

「誓いを立てし瞳は まばゆき未来を宿し 光まといし蒼き姿に さあ 翼広げて」

のところの転調です。

ここは心揺さぶられます。

ベースソロの次に「なまら」好きです。

なんでかというと、思い切った転調をし、その後次々と転調を繰り返すからなんです。

あんまりカッコいいんで、和音記号(I度とかV度とかのこと)でコード循環を確認しつつ、手書きで書いてみたメモです。

進行表

変ニ長調♭5つからあるコードを使って♯6つの嬰ヘ長調に転調しています。

同主短調のコードを使ってさらに2回転調します。

ホ長調、ロ短調、これで終わりかと思いきや、またあるコードを使って♭5つの変ニ長調に戻って来ます。

文にすると何も面白くないですが、転調しているのだ、と思って聞いてみてください。

コロコロと雰囲気が変わっていく感じがわかって、しかも意外性もあって、いい意味で裏切られて気持ち良くありませんか?

♯や♭の多い調での転調は、本当に、ドキドキします。

しかもテンポが速いので、流れに飲まれてしまいそうになります。

私はこの曲が大好きなのですが、その好きな理由は、すぅちゃんの「あいのことば」で始まる歌い出しの声と使った音。

その変ニ長調の魅力。

そして、先ほどのびっくりな転調の部分。

そして、なまらカッコいいベースソロとこの速すぎるテンポです。

私にとって調性がどれだけ大切か、そして、この曲がいかに好きか(笑)、わかっていただけたでしょうか?

META! メタ太郎

変ホ長調(柔和な中にも悠然さを持ち、響きが充実し、華麗で荘重最大の変化の表出に適するといわれる。

特に真剣な感情、壮大あるいは英雄的な気分を表すのによく使われる。

青空の調ともいう)♭3つ※同主短調[変ホ短調(最も陰暗、陰気な調の一つ。

シューマンによると、神秘的な恐怖に満ちた調)♭6つ]※平行調[ハ短調 (柔和の中に、真剣な情熱を持つ。

悲劇的な力、超自然的な感情激烈な感情)♭3つ]-嬰ハ短調 (最も陰暗な調の一つ。

残忍、皮肉、悲愴、不気味)♯4つ-ホ長調(輝かしく、温和で喜ばしい。

高貴の調)♯4つ

いきなりですが、この曲の調性は、とても不思議です。

何も考えないで聴いていた時には、単純に「聴こえた」この曲が、分析的に聞いてみると、案外転調を繰り返していたことに、気がついてしまいました。

まるで謎解きに成功した気分です。

前曲のAmoreとのつながりに関して違和感がなく、関連が悪くない(♭系が続くので)上に、後曲のシンコペーションとのつながりに関しても違和感がない(シンコペーションのイ短調のドミナントがホ長調の主和音だから)。

そして、外国版の後曲「From Dusk Till Dawn」にしても、嬰ハ短調ですから、♯が4つの平行調同士で違和感がないんです。

つながりが良すぎます。

でき過ぎです。

いや、素晴らしいんですよ。

信じられないです。

すべては「メタ太郎」内の転調にあります。

さすがに、半音階段を上がるように転調するところは気づいていましたが。

2回目のウォーウォーの間にちょっと雰囲気が変わりますよね。

ハ短調から半音上の嬰ハ短調になったところです。

それ以外のところも含めて流れで見ていきますと、以下のような感じです。

「メタ太郎」変ホ長調のサビからスタート。

そしてAメロは変ホ短調。

ウォー、君に聴こえているかはハ短調。

そしてサビはいつも変ホ長調。

そして長い間奏に入り変ホ短調になります。

次のウォーウォーの一節でやはりハ短調です。

ここまでは前の曲であるAmoreとのつながりがいいところです。

そしてどうなるかというと……二節目のウォーウォーから突然半音上の嬰ハ短調になります。

この半音上がったところは曲のクライマックスのように感じます。

当然、次の「メタ太郎」は同じように半音上がったホ長調。

嬰ハ短調もホ長調も♯3つの平行調というつながりがあります。

そして最後までそのままの調で終わります。

メロディーの最後の音ですが、第3音であるG♯で終わります。

第3音で終わると、まだ続くのではないだろうか、と思わせます。

曲が終わった感じがするのは、コードの主音であるEです。

それなのにG♯を選んだんです。

つなぎの曲として作られた、と受け取ることができますね。

見事な転調技でした。

私が見事だと思ったところは、転調したその調で終わるのではなく、転調した先の平行調で終わるところです。

つまり、変ホ長調からホ長調に行って終わるのはよくあるパターンです。

これは「メタ太郎」と変ホ長調で歌って、そして転調して「メタ太郎」とホ長調で歌うということです。

しかし!!

そうはせずに、手前の調のウォーの短調の間に転調したのが、面白いと感じます。

そうすることで、最後のホ長調の印象が強く残ります。

輝かしい雰囲気を残して終わるのですね。

ちなみにこのホ長調は「ギミチョコ!!」と同じです。

BABYMETALのキラキラ感は、ここでも輝いていますね!

ヤバさ、伝わりましたか?

うまく伝わっていないかもしれませんね……

でも、めげずに最後まで頑張ります。

あと、1回です。

お楽しみに。