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ドラマーが語る経験談。ミスやトラブルとの付き合い方

ドラマーが語る経験談。ミスやトラブルとの付き合い方
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ドラマーが語る経験談。ミスやトラブルとの付き合い方

ミュージシャンとして活動を続ける中でのミスやトラブル。

今回はドラマーの立場での経験談を紹介したいと思います。

ご自身の活動の改善や準備に活かしてもらえれば幸いです。

ミスやトラブルとの付き合い方

スネア

ライブにおけるミスやトラブルは、絶対に付いてきます。

絶対に間違えない演奏なんて、人間界では存在しないものと思っております。

フレーズは間違えなかったとしても、音色だったり音のタッチだったり……そういう意味では、甘えではなく、そこを許せる寛大な考え方と心の余裕が必要かと思います。

不可抗力で起こるミス、未然に防げたミス、起こるべくして起こったミス。

いろいろあるとは思いますが、僕なりに経験したミスを告白します。

半分は、ビジネスマナーというか、当たり前の話だと思って御一読ください。

そして、反面教師にしてください(笑)。

演奏時におけるミス

最近では、生演奏の醍醐味(だいごみ)ではないかと、思えるようになりました。

若い頃は、間違えた!

ってなると針の筵(むしろ)に座っているような感覚がありました。

ライブにおけるミス。

録音ではないので出した瞬間に、その音は過去の音になってしまいます。

よほどの大事故でなけれクヨクヨしたって始まりません。

すぐに切り替えて先に進みましょう。

しまった!

って顔をした時点で間違いがバレます。

涼しい顔して叩いていれば、ミスとは認識されません(笑)。

ある雑誌のインタビューで某有名ドラマーは、自身が間違えた時に他人を睨むそうです(笑)。

「なに間違えてやがる!

俺が正しい!」ってね。

また、某バンドの某ギタリストに話を聞いたところ、気に入っているギターソロは1曲だけ。

あとは、悔やまれる部分もあるが、ボーカルの「それ、面白いから採用!」でその楽曲達は流通しています。

たぶん、誰しもが耳にした曲ではないかと思います(笑)。

Buddy Rich BANDでは、3回間違えたらクビだそうです。

緻密に作り上げられた楽曲とアレンジ。

人数が多いから余計にミスが目立ちます。

また、Buddy Richのカリスマ的人気がそうさせたのかもしれませんね。

ドラムコー:いわゆるマーチングバンドです。

スティックを回す箇所、スティックの上げ下ろしまで、全部指定されています。

個性なんて不要です。

必要なのは統率力。

僕も1度だけ経験がありますが、とても弱かった読譜が人並みに成ることができました。

上記内容だけでも、矛盾が生じていますよね?

間違えないことは素晴らしいことですし、商売という観点から言うならば当然のことなんですが、一歩勘違いすると「発表会」にもなりかねません。

これって、きっと自らを鼓舞して演奏に挑まなければならいのかもしれませんね。

機材トラブル

バスドラム

これもあるあるですね。

スネアを買うことができなかったキッズドラマーだった頃。

ライブハウスで演奏していた時にスネアのスナッピーが壊れ、ここ一発のスネア16分音符のフィルインが「ポコポコポコポコ!」カッコ悪かったですねぇ。

次の曲に行く前に、先輩から借りたスネアが、完全にヘビーメタル仕様で、ダキーンッ!

って鳴ってたのが今でも耳から離れません(笑)。

フロアタムの脚が落ちるなんてこともありますね。

その直後に、ドラム椅子がガクンと下に落ちるというダブルパンチに遭遇した時には、頭の中が真っ白です(笑)。

ボーヤ時代に師匠から「すべてのネジを絞めろ!」って言われました。

確かにその通りです。

これこそが、未然に防げる事故の例だと思います。

特に自身のドラムセットを持ち込む場合は、細心の注意を払ってください。

対バン形式での楽器の使い回しは、ある程度の覚悟と諦めが必要でしょう。

よほどに機材面が不安であれば、持ち込む手段も必要です。

機材面でのトラブルは、経験値で乗り越えられる部分もあったりします。

クラシックコンサートによく見られる「譜めくり人」さん。

あれはあれで、とても神経使うんですよ!

例えば、ライブで譜めくり人を雇えない場合、自分でめくらなきゃいけませんよね?

両手がふさがっているので、何とかして自分でめくらなきゃいけません。

これは、習うより慣れろで、自分で探してみてください。

めくる美学なんて考えなくて良いですからね。

スネアスタンドの角度が急に傾いたことがありましたが、演奏中に何とか戻すことも、経験を踏めば直す術も勝手に身に付いてきます。

しかし、そんなミスが起きないこと、起こさないことが大切です。

時間的ミス

ミュージシャンとしてというよりも、人としての部分が強いですよね。

僕自身はイベント主催や企画バンドの主宰をする機会が多いのですが、参加してくれる方への時間に対しては、なるべく寛容でありたいと思っています。

スケジューリングの問題は、ある程度は未然に防げるものと信じております。

売れっ子になればなるほど、スケジュールが分単位になってくると思います。

そこをキリッと管理できるだけのスキルと余裕と厳しい心を持つことが望ましいと思います。

なかなか難しいとは思いますが、断る勇気も大切です。

ある程度のことって無理をすればできると思っていますが、その無理をすることで必ず歪みが生じます。

自分が起こしたことなので自分に降りかかってくれば、自業自得と笑って許せる部分もあるでしょうが、これが他人に及んでしまうと、それは無理ではなく無茶になってしまいます。

言い換えれば迷惑です。

これ、意外と音に出ているんですよ。

僕が思う、真の売れっ子っていうのは、スケジュールがギッシリ埋まっているだけの人のことではない気がします。

そこを目指すことはとても大切なことですが、それだけを目指してしまうと、大切な何かを失うと思います。

忘れ物

パイステシンバル

演奏以外でも日常で起ってしまうことの第一位が、忘れ物ではないでしょうか?

替えの利くモノや調達できるモノなら、何とかなるのですが、替えの利かないものは、本当は駄目ですけど、遅刻してでも急いで取りに帰りましょう。

譜面を忘れたことがありますが、これはメンバーにコピーしてもらえば何とかなります。

決め込んでいたフレーズや、自分なりのリピート記号なんかは当然在りませんが取り敢えずは何とかなります。

忘れる自分が悪いのです。

強烈だったのが、ハイハットスタンドを忘れたことがありました。

これには正直参りました。

たまたま、現場がアコースティックなセットだったので、スネアのリムを叩くなどの措置でお茶を濁して帰りました。

幸い、リーダーからも何も言われなかったので、ホッとしてます(あきれて何も言わなかっただけだったかもしれませんが……冷汗)。

忘れ物を防ぐ方法としては、

  1. 必要なものをリストアップすること
  2. しまう場所・置き場所を決めておくこと
  3. 時間に余裕を持つこと

車を所有していれば、ある程度は積みっぱなしって方もいるかと思いますが、人間の記憶なんて曖昧なもので、よほど大きなものでなければ、一度車から全部出して確認するくらいの慎重さがあると良いかもしれませんね。

何にせよ、時間に余裕を持たせることは、何においても重要なことだと思います。

演奏前の飲酒

不得手なJAZZのライブのお誘いがありました。

編成は、サックス、ベース、ドラムのコード楽器が存在しないトリオ。

何かにすがらなければ自分を保っていられない!

そう思ったときに手にしていたのが、大量のお酒。

酒飲んで神様が降臨してくると思ったんでしょうね。

馬鹿なことしましたよ。

案の定、演奏にならず、お客様に胸ぐらつかまれて「金返せ!」っと怒号を喰らいました。

どうやら、真面目に向き合っている人にしか、神様は降臨して来ないようです(笑)。

昔の、それこそマイルス・デイビスの頃の映像が出てきました。

あの頃のお客さんって、それこそマジで聞きに来ている人が多いわけです。

母ちゃん質に入れて見に来たぞ!

みたいなジョークもあるくらいで。

それでいてプレーヤーがヌルい演奏をしていたら、そりゃ怒りますよね…..演奏中にプレーヤーを引きずり降ろして、裏でボッコボコに……

この、お互いが「マジ」って感覚が、僕は好きです。

そこに、正しい音楽だけを求めてしまうのは、少々もったいない気がします。

変な話ですが、この事件を経験したことでとても大きくなれた気がします。

今では、打ち上げの楽しみとして、キリッと飲まなくなりました(なるべく)。

某有名バンドのキーボーディストは、レコーディングの際にOKテイクが録れた後に「ワインテイク」っという、1杯だか1本だか(全く量が違いますが)飲んだ後に録音するそうです。

きっと、何か頭では考えられない面白いフレーズが出てくるんだと思います。

もし、演奏前に緊張が解けない場合は、1杯だけ飲むのも好いかもしれません(未成年者は絶対ダメ!

)。

1杯飲むことで、緊張している気持から少し和らいで、シラフの自分を取り戻せると思います。

個人差で量は変わりますが、ほどほどにしてくださいね(笑)。

縮みこんでしまってのミス・オーバープレイを求めてのミス

大先輩や著名人・憧れの人との共演は、アドレナリンが出まくってテンションもMAXになりますよね。

人間ですもの、仕方のないことです。

ビビってしまっていつもの演奏ができないのは、非常にもったいないことです。

自分に自信を持って強く演奏してください。

先に挙げました「お酒の力」をほんの少しだけ借りてみるのも好いかもしれませんw

また、オーバープレイになっちゃう人も良く見かけます。

ドラマーは特に、タイムキープ・グルーブキープが重要な役割になりますので、ソロ的な部分は長くても1分少々。

そこに力を注ぐくらいなら、残りの4~5分の通常演奏に力を注ぐことの方が、どれだけドラマーとして重要か。

そこを考えると、自ずと答えも出てくるような気がします。

もちろん、手数が多い・手足が速く動く方は、ドンドン挑戦してください。

問題は、「やかましい!」って印象を持たせないようにすることが重要です。

信頼を欠くことこそ最大のミス

セッション

ミスをした場合、相手の立場に立った時に、そのミスを許せるかどうか?

がポイントかと思います。

例えば、ノーミスで演奏できたとしても、人間的にツッケンドンな感じがしたら、好い印象としては映らないのと同じで。

最大のミスは、見限られることです。

ライブは人前で演奏しているので、聞きに来るのではなく見に来るものです。

演出的なモノではない限り、パフォーマンス無しの演奏は正直頂けません。

演奏が素晴らしくても、結局「家でCD聞けばよいじゃん」ってなってしまっては終わりです。

また、サポートミュージシャンと呼ばれる立場の方々はもっと大変で、目の前のお客さんを楽しませなければならいし、自分を雇ってくれたクライアント(これもある意味お客さん)を満足させなければなりません。

その答えが、果たして演奏だけなのでしょうか?

ミュージシャンの仕事は演奏するだけ。

その図式は古いと考えます。

野球選手は、打撃も守備も両方やらなければなりません。

BARのマスターは、美味しいお酒や料理を出す他に、軽妙なトークも必要です。

ミュージシャンは演奏するだけ、ってのは、少々虫が良すぎる気がします。

ビッグビジネスになれば、それで良いかもしれませんが、ある程度は、集客や明るく振舞うことも、演奏技術と同様に呼ばれていることと思います。

そこを、裏切らないようにすることが重要と考えます。

寛大な気持ちとストイックな気持ちを両方持つ

結局、人間である以上は、ミスは付き物なんです。

ミュージシャンである以上、取り返しがつくミスがほとんどだと思っています。

医療ミスやFXの入力ミスは、人生台無し・生死にかかわることだってあります。

それに比べれば、演奏のミスなんて、かすり傷程度のことです。

よほどのことがあったとしても、周りから嫌われるかドラムが叩けなる位なもんで、死ぬことはありません。

だからこそ、思いっきり挑戦して欲しいです。

でも、ミスを許し続けてしまっては、ドンドン自分に甘えてしまい、締まった演奏ができなくなってしまいます。

緩い演奏は、世間からすぐに飽きられてしまいます。

いつも近くにビリー隊長みたいな人がいればよいのですが、うっとおしいでしょ?

(笑)

自分の中にビリー隊長を作っておいて、たまに彼を起こしてあげればよいのです。

ミスと正面から向き合い、ミスと上手に付き合っていけるように頑張ってください。

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