聴き手の心をつかめ!プロの作詞家が教える作詞・歌詞の基本
作詞とは、歌詞のある楽曲の、歌詞を作ること。
つまり音楽ありきで表現することです。
作詞の基本をいくつかご紹介しますので、オリジナルソングで歌詞を書く際に参考になればと思います。
作詞の重要性

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これまで、数々のヒット曲、後世に残る名曲が誕生しておりますが、全てに共通して言える事は、歌詞が優れているという点です。
その中でも私が感銘を受けたのは、「上を向いて歩こう」「夢の中へ」「Someday」「愛燦々」「五番街のマリーへ」「木綿のハンカチーフ」など……
ただ愛を語るのではなく、そこにはストーリー、匂い、時間、場所、もっと言えば、主人公の表情や生き方まで想像させてくれる珠玉の作品です。
作詞の基本
作詞をするにあたって、基本的な手法は以下の3点となります。
- タイトルをつける
- ストーリーを描く
- ストーリーを完結させる
とても単純な作業に思われがちですが、いかにインパクトのあるタイトルをつけるか、聴き手の心をつかまえるストーリーをどう描くか、エンディングにはどういった言葉を当てはめるかなど、大変奥が深く、過酷で孤独な作業であるべきです。
詞が先?
曲が先?
よく耳にする「詞が先?
曲が先?」についてご説明いたします。
詞先とは最初に歌詞があって、その歌詞に作曲家が曲をつけ、楽曲を生み出す手法で、例えば「木綿のハンカチーフ」などがそれに該当します。
逆に曲先とは、メロディーが先にあって、それに歌詞をつけていく手法です。
ほとんどが曲先のため、音楽的センスも日々兼ね備えておく必要があります。
作詞と日記は全く別物
先の「作詞の基本」にも記載しておりますが、作詞というものは本来過酷な作業です。
普段起こった出来事や、面白エピソードを描いたところで「歌」にはなりません。
万人の心をつかまえて、記憶にとどめてもらう為には、歌詞が日記であってはならないのです。
また、時がたてばすぐにすたれ、古臭く感じてしまうような歌詞も「日記」に該当しています。
作詞家のスタイル
作詞家のスタイルは大きく3つに分類することができます。
- 映画のようなストーリーを描く監督型スタイル
- 韻(いん)を一貫させ、言葉遊びを多用する都会型スタイル
- 断片だけを切り取り、サビのみに感情表現を置く天才型スタイル
どれも素晴らしい才能です。
どのスタイルを目標にするかは、作詞家を目指す方のタイプによるものと思いますが、個人的には、ストーリーを描く監督型スタイルが王道ではないかと考えています。
歌詞と時代背景
最近は、カバーソングブームの流れで、若い方でも古き良き名曲を知っている、という方も多いのではないでしょうか。
時代を彩ったヒットソングと共に、歌詞と時代背景の関係を分かりやすく説明したいと思います。
1960年代 ヒット曲
「上を向いて歩こう」「コーヒールンバ」「見上げてごらん夜の星を」「黒猫のタンゴ」「涙くんさよなら」「星影のワルツ」など。
- 背景:カラーテレビの登場や東京オリンピック開催など、活気に満ち溢れていた時代。
- 歌詞:悲しみを希望に変えてくれる歌詞もあれば、ルンバやタンゴなど、あえて外国の曲調を取り入れたエキゾチックでオリエンタルな歌詞も多い。
1970年代 ヒット曲
「また逢う日まで」「およげ!
たいやきくん」「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」「夢の中へ」「木綿のハンカチーフ」「五番街のマリーへ」など。
- 背景:ビートルズの解散やウォークマンの登場で、音楽の在り方が急速に変化していった時代。
- 歌詞:ストーリーを断片的に描いた歌詞や劇画のワンシーンを見るような個性的な歌詞、この時代は女性から別れを告げるような歌詞はまだ少ない。
1980年代 ヒット曲
「そして僕は途方に暮れる」「Someday」「飾りじゃないのよ涙は」「愛燦燦」「ルビーの指環」「待つわ」など。
- 背景:東京ディズニーランド開園、男女雇用機会均等法の施行。
女性の生き方に大きな変革を与えた時代。
- 歌詞:男性の哀しみを映画のような情景で描く歌詞とはうらはらに、女性の強さを凛としたリズムに乗せる歌詞が急速に増えていった。
女性から別れを告げる歌詞も多い。
1990年代 ヒット曲
「おどるポンポコリン」「どんなときも。」「CAN YOU CELEBRATE?」「LOVE LOVE LOVE」「夜空ノムコウ」「長い間」など。
- 背景:ジュリアナ東京オープン、携帯電話の急速な普及、バブル崩壊など、酸いも甘いも噛みしめた時代。
- 歌詞:踊り出したくなるようなリズミカルな歌詞や女性の悲しみや幸せを直球で描く歌詞など、多種多様な歌詞が登場し続け、70/80年代のように、家族みんなが口ずさめる歌が次第に少なくなる。
2000年代 ヒット曲
「PIECES OF A DREAM」「桜坂」「大きな古時計」「世界に一つだけの花」「千の風になって」など。
- 背景:FIFAワールドカップ開催、インターネットの普及等、世界との距離が急速に接近した時代。
- 歌詞:R&Bの流行もあって、英語の歌詞が多い一方で、60年代を彷彿(ほうふつ)とさせるような悲しみを希望に変えてくれる歌詞も多く、カバーソングも幅広い層に受け入れられた。
作詞というものは大変奥が深く、何よりも魅力的で、万人の心や感情を大きく揺さぶることのできる、数少ない職業のひとつです。
ぜひ、作詞にトライしてみてください!
ライタープロフィール
作詞家
渡邉シュウ
大学在学中に故・倉光薫氏に弟子入りし、楽曲制作のノウハウ、ボーカルの基礎を学ぶ。
日々、楽曲制作にいそしむ中、作詞の面白さに魅かれ、フリーの作詞家へ転身。
2013年7月、naminote (ナミノート)の「常夏のIkema-池間-」にて作詞家デビュー。
その後、「幸せの島」「Purple Sea」の作詞も担当している。
現在は、ブログでの楽曲配信と様々なアーティストへ向け、歌詞の提供を行っている。
ブログ
http://profile.ameba.jp/shuu-827
ウェブサイト:http://shuu827.seesaa.net