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ピアノの先生がBABYMETALを調性で分析。4の歌、イジメ、ダメ、ゼッタイ他

ピアノの先生がBABYMETALを調性で分析。

BABYMETAL DEATH、メギツネ他」はこちらです。

今回はその続きです。

1stアルバムの最後まで解説したいと思います。

悪夢の輪舞曲

嬰ニ短調(ベルリオーズは緩慢な調と呼んでいる) ♯6つ変ホ短調(最も陰暗、陰気な調の一つ。

シューマンによると、神秘的な恐怖に満ちた調)♭6つ

バッハ作曲の平均律クラヴィーア曲集という、2巻シリーズのものがあるのはご存じでしょうか?

1巻につき、24曲ずつ入っているのですが、ピアノで言うところの、白鍵と黒鍵が主音の長調と短調が全て入っているという、

いわゆる全調が弾けるという驚きの曲集です。

今2巻に取り組んでいるところですが、偶然にも悪夢の輪舞曲と同じ調をやっています。

調号が多い上に、転調するにしても臨時記号が多く、ダブルシャープやダブルフラット(♯や♭が2つ分)もたくさん出てくるので、難しい上に、ハーモニーも難解になり、とても難しいのです。

レの♯(嬰二短調)、またはミの♭(変ホ短調)が主音のこの曲ですが、同じ音のため、どちらの調で書かれても同じように演奏します。

どちらで書いたとしても、調号の数が同じです。

そのため、この曲を楽譜にしようとすると、どちらの調で書くのか、とても悩みました。

また、調号が同じなので、♯系の特徴である狂った感じと、♭系の特徴である深く沈んでいく感じとが、両方感じられ、どちらとも言えない、より所のない、居場所を見つけられないような気分にさせられる調です。

そう、ちょうど、抜け出せない迷路に迷い込んでしまったような、「悪夢」という言葉がしっくりくる調です。

「迷路」という言葉は、この曲の「輪舞曲」を見て連想してしまうんだと思います。

「輪舞曲」とは、「ロンド」と読みますよね。

ロンドとは音楽の形式で、代表的にはABACAと、違うものを挟みながらAを繰り返す、というものです。

繰り返しながらも、同じところをぐるぐると回って出口が見えない悪夢…そんな雰囲気をこの調は感じさせます。

ちなみに、この曲は出口が見えないまま終わりますが、バッハの場合は、ピカルディ終止(長調になって終わること)なので、昇華、または救いがやってきます。

今回はあまり触れませんが、調以外にも「悪夢」や「輪舞曲」を連想させる音楽的要素がたくさんありますので、分析してみると面白いですよ。

ヘドバンギャー!!

ニ短調(不安、悲歓、荘厳、崇高。

シューマンによると、巨大な力を持つ調)♭1つ

みんなでヘドバンして巨大なエネルギーを享受しよう!

と言わんばかりの、ニ短調ですね。

初めてのニ短調です。

調号が♭1つという、いつになく調号が少なく、わかりやすい、親しみやすい調性です。

不安を感じる調性ではありますが、勢いがつくと、難しく迂回(うかい)せずにまっすぐ不安を吹き飛ばすような感じがします。

ストレート直球ど真ん中!

みたいな感じです。

当たりも強いですが、大きなエネルギーでぶつかれば、何も怖くない、みんなで渡れば怖くない、そんな感じです。

「ニ短調」の「ニ」は、ドレミの「レ」を意味します。

「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」は日本名で「は・に・ほ・へ・と・い・ろ・は」に当たります。

ちなみに日本国歌は「に」で始まり、「に」で終わります。

日本の伝統であります、雅楽旋法に基づいておりますので、完全にニ短調と一致するわけではないですが、何となく感じてしまうのは、私が日本人だからでしょうか。

それよりももっともっと強く感じるのは、この曲の存在です。

トッカータとフーガ ニ短調 BWV565

https://www.youtube.com/watch?v=1S4f0lgcUng

どうですか?

何か感じませんか?

私は、切っても切れない、または逃れられない運命みたいなものすら感じてしまいます。

イジメ、ダメ、ゼッタイ

嬰ハ短調(最も陰暗な調の一つ。

残忍、皮肉、悲愴、不気味)♯4つ

と続き、4曲めの嬰ハ短調の登場です。

このアルバムでこんなに多い調はこの嬰ハ短調だけです。

BABYMETALを表現した調として、この嬰ハ短調を選んだのではないかと思います。

この曲は、サビの「(イジメ、ダメ、イジメ、ダメ)かっこ悪いよー」の一時的な転調とギターソロのところの転調以外は、

一貫して嬰ハ短調です。

1つの調性で、この長さと聴いている人を飽きさせないというところに、この曲の素晴らしさを感じます。

いろいろな意味でアルバムの最終曲として相応しい曲だなぁ、という印象です。

調性には関係のないですが、テーマとなっている「イジメダメ」がBABYMETALの「明」の部分を表すことで、BABYMETALの代表曲であることを印象付けるのかもしれません。

1stアルバムが終わりました。

大まかにまとめますと、METALで始まり、BABYMETALの紹介、su-metalのキャラクター、BLACK BABYMETALの紹介、そして、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の嬰ハ短調により、強くMETAL、いや、BABYMETALを印象付けたところで、このアルバムは終わりました。

さて、2ndアルバムは、どのような構成になっているのでしょうか。

次回の記事をお楽しみに。

ライタープロフィール

西岡裕美子

ピアノ講師

西岡裕美子

【プロフィール】 幼少からヤマハ音楽教室に通い、音楽の研鑽を積む。

北海道札幌北高等学校普通科卒業。

北海道教育大学札幌校芸術文化課程音楽コース卒業。

現在、(株)エルム楽器ヤマハ音楽教室講師。

石山東音楽教室主宰。

合唱や声楽の伴奏、自身の音楽活動も行っている。

読み聞かせユニット「ピアノストーリア」での作曲・語り、童謡・お子様向けピアノアレンジ楽譜サイト「童謡楽譜わらべえ」での童謡編曲・BABYMETAL「イジメ・ダメ・ゼッタイ」ピアノ用編曲なども手がけ、活動の幅を広げている。

【講師歴】 講師歴は、16年になります。

ヤマハ音楽教室のシステム講師として、2歳からご年配の方まで指導経験がございます。

北翔大学にて幼稚園、小学校の免許取得に必要な、音楽の実技指導経験がございます。

信念と情熱で石山東音楽教室を盛り上げていきます。

【取得資格】 中学校・高等学校教諭一種免許(音楽) ヤマハピアノ演奏グレード3級 ヤマハエレクトーン演奏グレード4級 ヤマハ指導グレード3級 【受賞歴】 2004年 東京国際芸術協会第新人賞受賞 2007年 ピティナ・ピアノコンペティション(デュオ部門)奨励賞受賞 2007年 旭川市新人賞(ピアノ部門)受賞 2008年 ANP全日本ピアノデュオコンクール奨励賞受賞 2008年 ヤングアーチストピアノコンクール(2台ピアノ部門)奨励賞受賞 2008年 旭川市新人賞(アンサンブル部門)受賞 などとありますが、 やはり現在の演奏に対する心・姿勢と、向上心を大切にしています。

【師事歴】 下家香世子、秋山由美子、佐々木朋香、二宮英美歌、石橋克史、各氏のもとで、ピアノを学んでまいりました。

【所属している会】 東京国際芸術協会、フェリーチェ楽友会、ハイメス・アーティスト、各会員。

【ブログ】ピアノ演奏と音楽教室の意義について

http://ihmusichappy.blog.fc2.com/

【YouTube】童謡楽譜わらべえ

https://www.youtube.com/channel/UCvv2tm3e8_-T02tZM2Hx_xA

【お問い合わせ】 ishiyamahigashi.music@gmail.com

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BABYMETAL Ijime Dame Zettai – Piano Solo FULL / イジメ、ダメ、ゼッタイ – ピアノソロ

BABYMETAL / No Rain, No Rainbow Piano Solo

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