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シティポップの名盤!定番のアルバム・オススメの1枚

日本生まれの「シティポップ」は、インターネットの普及とともに海外の音楽ファンが再発見、ネット時代ならではのブームを巻き起こしています。

竹内まりやさんの『プラスティック・ラヴ』や松原みきさんの『真夜中のドア〜Stay With Me』といった曲が話題を集め、最近ではザ・ウィークエンドさんが亜蘭知子さんの『MIDNIGHT PRETENDERS』をサンプリングした楽曲を発表するなど、洗練された洋楽に影響を受けたシティポップが逆輸入のような形で海外の人々に受け入れられているのがおもしろいですよね。

本稿ではそんなシティポップをこれから聴いてみたい、という方に向けた「シティポップの定番の1枚」を紹介しています!

シティポップの名盤!定番のアルバム・オススメの1枚

LOVE TRIP

真夜中のジョーク間宮貴子

真夜中のジョーク – 間宮貴子(Takako Mamiya)
真夜中のジョーク間宮貴子

シティポップに限ったことではないですが、商業的な成功は収められず消えていったバンドやアーティストを深掘りすることで音楽ジャンルへの理解はさらに深まるものですよね。

有名どころよりそういった作品をもっと知りたい、という方もいらっしゃるはず。

本稿で取り上げている間宮貴子さんは、1982年に唯一となったアルバム『Love Trip』をリリースするも当時はほとんど話題にもならなかったそうなのですが、後に再評価が進み、当時リリースされたオリジナル盤のレコードは貴重な1枚として熱心なコレクターの方々にも重宝されたという経緯があるのですね。

リリースから30年が過ぎた2012年には初となるCD化を果たし、多くのシティポップ好きを喜ばせました。

これから初めて本作を聴くという方であれば、圧倒的な完成度の高さに思わず驚いてしまうのではないでしょうか。

ステキなジャケットに映る間宮貴子さんはまさに大人の色気を漂わせる都会的なカッコいい女性といった趣ですが、本作自体がそういったイメージをはっきりと打ち出しているというのがポイント。

決して押し付けがましいことはなく、ナチュラルでフラットな声質を持った間宮さんの絶妙な歌声を軸として、ジャズ・サックス奏者の沢井原兒さんがプロデュースを務め、椎名和夫さんや難波弘之さんといった手練れのミュージシャンが参加しており、まさに才能あふれる女性歌手をプロフェッショナルな音作りでバックアップしたといった趣なのです。

当時評価されなかったことは残念ですが、現代の音楽ファンにも未来の音楽ファンにも愛され続けるであろう作品が無事発掘されたのは素晴らしいことですよね。

midnight cruisin’

街のドルフィン濱田金吾

近年、海外のアーティストが日本のシティポップとして評価の高い作品やアーティストからの影響を口にすることも珍しくはないのですが、2020年代を担う存在として大きな注目を集めている2003年生まれのイギリスのシンガーソングライター、アルフィー・テンプルマンさんがシティポップの影響を公言しており、具体的な名前を挙げたアーティストの1人が本稿で紹介する濱田金吾さんです。

シンガーソングライターとしてはもちろん、作曲家や音楽プロデューサーとして多くのヒット曲や映画音楽にCM音楽を手掛けている濱田さんが1982年にリリースした通算4枚目のアルバム『Midnight Cruisin’』は、収録曲の『街のドルフィン』が『Crystal Dolphin』という英語名でサンプリングされ、TikTok動画のBGMとして大人気という現象も起きているシティポップの大名盤!

AORやフュージョンを下敷きとしたクールでスタイリッシュ、都会的なサウンドはシティポップ好きであれば間違いなく心をくすぐられてしまうはず。

先述したアルフィーさんも、本作『Midnight Cruisin’』がお気に入りなのだとか。

思いも寄らぬ形で海外の音楽ファンへと広まっていくというのも、シティポップのおもしろい一面ですよね。

バーベキュー

ピンク・シャドウブレッド&バター

ピンク・シャドウ ブレッド&バター LIVE 2007
ピンク・シャドウブレッド&バター

岩沢幸矢さんと岩沢二弓さんという兄弟で結成されたブレッド&バターは、兄弟フォーク・デュオとして知られている2人組ながら、フォークにとどまらずボサノバなどさまざまな音楽性持ったサウンドを展開、シティポップという観点においても人気の高い存在です。

出身地にちなんで加山雄三さんやサザンオールスターズといった大物と同じく「湘南サウンド」と親しまれている彼らの音楽は、フォークというジャンルに対するイメージを変えてくれるような個性が感じ取れます。

彼らが1974年に発表した『ピンク・シャドウ』はシティポップ・クラシックとしてその名を刻む大名曲として知られていますが、その名曲が収録されたアルバム『Barbecue』は間違いなくシティポップに興味を持っている音楽ファンがチェックすべき名盤なのですね。

フォークの形式から逸脱したメロディ・センスや歌詞は独特ですし、当時の歌謡曲やフォークソングとは全く違う洋楽からの影響を感じさせるグルーヴを生み出すアンサンブルは時代を考えても驚異的と言えそうですね。

何といっても参加メンバーの豪華さは特筆すべきもので、ティン・パン・アレー、サディスティック・ミカ・バンド、トワ・エ・モワ、ハイ・ファイ・セットといったグループのメンバーたちが参加しているのです。

日本のポピュラー音楽史の歴史そのものといった作品であることは間違いないですし、後に山下達郎さんが前述した名曲『ピンク・シャドウ』をカバー、1978年に発表されたライブ・アルバム『IT’S A POPPIN’ TIME』に収録されたということも意義深いですよね。

Reflections

ルビーの指環寺尾聰

寺尾聰 Terao Akira – ルビーの指環 (1981)
ルビーの指環寺尾聰

後世の音楽ファンに「シティポップ」として再評価されているアルバムやアーティストの中には、当時はあまり売れずに知る人ぞ知る存在であったというパターンも多く見受けられるのですが、1981年に発表された寺尾聰さんの『ルビーの指輪』は日本の歌謡曲史に残る大ヒット曲として世代をこえて愛され続けている名曲でありつつ、同曲を含むアルバム『Reflections』も含めてシティポップという観点においても非常に重要な1枚として知られている大名盤です。

何せ12週連続でアルバム・チャート1位を記録したというのですから、相当なヒット作品なのですよね。

同時に、改めて本作を聴けば分かるようにアダルティな魅力を放つ寺尾さんの低音ボーカル、都会の夜を連想させるスタイリッシュなサウンド・アレンジはシティポップのイメージの1つと言える「クールで洗練された大人」の香りが満ちあふれているのです。

俳優としても多くの名演を残している寺尾さんの歌唱は本人のクールなキャラクターそのものですし、シティポップというジャンルにおいて欠かせない存在の井上鑑さんのアレンジャーとしての見事な手腕が幸福な形で結実し、永遠に色あせない作品が生まれたのだと言えるでしょう。

井上さんが在籍していた伝説的なフュージョン・バンド、PARACHUTEのメンバーが集結し、名うてのミュージシャンたちが魅せる完ぺきなバンド・アンサンブルも最高です!

ヒット曲としての『ルビーの指輪』しか知らないという方も、ぜひ本作を聴いてみてくださいね。

Canary

瞳はダイアモンド松田聖子

80年代アイドルの楽曲にはシティポップ史においても重要なミュージシャンが多く参加しており、シティポップ的な人気を誇る名曲、名盤も多く存在しています。

今回は有名どころをピックアップいたしまして、永遠のアイドル松田聖子さんが1983年にリリースした通算8枚目のアルバム『Canary』を紹介しましょう。

ユーミンこと松任谷由実さんが提供した松田さんのシングルとしては初の失恋ソングとしても知られるヒット曲『瞳はダイアモンド』やファン人気も高い『蒼いフォトグラフ』などを収録した作品で、表題曲は松田さん自身が初めて作曲を手掛けています。

大村雅朗さんや井上鑑さんに松任谷正隆さんといった面々が編曲を担い、シティポップのキーパーソンと言える林哲司さんも楽曲を提供、来生たかおさんによる切ないバラードなど全体的に大人の雰囲気を感じさせる作品なのですね。

アイドルとしてのキュートな魅力はそのままに、少し背伸びしたような大人びた聖子さんが垣間見える本作は、上品なアンサンブルと先鋭的なアレンジがシティポップ的な魅力をも生み出しているのだと感じます。

松田さんのアーティストとしての急激な成長という意味でも、重要な位置を占めるアルバムだと言えましょう。

おわりに

シティポップの持つ洗練された都会的なサウンドは、海外の音楽に多大なる影響を受けて生まれたものですが、何十年も過ぎた今の時代に海外の音楽ファンから熱狂的に支持されているというのが実におもしろいですよね。

今後もさらなる再評価が進むことは間違いないシティポップは、今こそが旬と言えるかもしれません。

日本の音楽シーンがいかに優れた作品を生み出していたのか、今回の記事で少しでも伝わったのであれば嬉しいです。