シティポップの名盤!定番のアルバム・オススメの1枚
日本生まれの「シティポップ」は、インターネットの普及とともに海外の音楽ファンが再発見、ネット時代ならではのブームを巻き起こしています。
竹内まりやさんの『プラスティック・ラヴ』や松原みきさんの『真夜中のドア〜Stay With Me』といった曲が話題を集め、最近ではザ・ウィークエンドさんが亜蘭知子さんの『MIDNIGHT PRETENDERS』をサンプリングした楽曲を発表するなど、洗練された洋楽に影響を受けたシティポップが逆輸入のような形で海外の人々に受け入れられているのがおもしろいですよね。
本稿ではそんなシティポップをこれから聴いてみたい、という方に向けた「シティポップの定番の1枚」を紹介しています!
シティポップの名盤!定番のアルバム・オススメの1枚(1〜10)
君は天然色大瀧詠一

「シティポップ」をテーマとした記事で、真っ先に挙げられる歴史的名盤と言えば大瀧詠一さんの1981年にリリースされた『A LONG VACATION』でしょう!
20周年、30周年、そして2021年の40周年記念盤と節目ごとにアニバーサリー・エディションとしてリイシューされていることからも、本作の時代をこえた価値が理解できるのではないでしょうか。
翌年にはCDとして発売され、オリコンチャート初となるミリオンセラーとなった作品でもあり、音楽史において重要な位置を占めるまさに傑作中の傑作なのです。
「BREEZEが心の中を通り抜ける」という帯に書かれたキャッチコピーと永井博さんによるアルバム・ジャケットは、アルバムのカラーを表現した名文句およびアートワークであるのと同時に、シティポップのある種のイメージを決定付けたように感じます。
はっぴいえんど時代の盟友である松本隆さんが作詞家としてほとんどの曲に参加、代表曲『君は天然色』をはじめとして大瀧さんの天才的なソングライター、アレンジャーとしての才能がフルに発揮された色あせない名曲がずらりと並ぶ至福の全10曲。
「ナイアガラ・サウンド」とも呼ばれるエバーグリーンなきらめくポップスの魔法、夏の海や青空にリゾートを想起させる空気はいかにも80年代という時代を象徴しているかのようですが、繰り返すように時代をこえた楽曲の魅力があってこその大ヒットであり、もちろんシティポップの歴史を知る上でもまずは聴いてほしい1枚であることは間違いありません!
Plastic Love竹内まりや

インターネットが世界的に普及し、YouTubeなどで音楽を聴くスタイルが当たり前になった2010年代以降の海外の音楽ファンが「シティポップ」を再発見した、と今回の記事の冒頭でも述べましたが、そのブームを加速させた象徴的な名曲が竹内まりやさんの『プラスティック・ラヴ』です。
2017年の7月にYouTube上にて非公式という形でアップロードされたこの曲が爆発的な再生回数を記録したことで海外の音楽ファンはもちろん、日本の若い世代にも80年代のシティポップという素晴らしいジャンルを知らしめるきっかけとなったのです。
そんな『プラスティック・ラヴ』が収録された竹内さんのアルバム『VARIETY』は1984年にリリースされ、全ての楽曲の作詞作曲を竹内さんが手掛け、夫の山下達郎さんが全面的にプロデュースした日本の音楽史に残る傑作であり、女性シンガーソングライターの金字塔と言える1枚。
70年代後半にデビューした竹内さんは、その可憐なルックスも相まってアイドル的な人気を誇っていたのですが、裏方として多くのアーティストへ曲を提供、山下さんとの結婚と音楽活動の実質的な休止などを経て、シンガーソングライターとしての本格的な出発点となった作品でもあり、シティポップの名盤であることはもちろん、竹内さんのキャリアの中でも非常に重要なアルバムなのですね。
アルバム自体はバラエティに富んだ内容でシティポップとはまた違ったジャンルの楽曲も多く含まれており、60年代の洋楽に対する竹内さんの愛情もたっぷりと感じ取れますから、そういった点も踏まえてぜひ本作を楽しんでくださいね。
RIDE ON TIME山下達郎

日本を代表するシンガーソングライターにして音楽プロデューサーの山下達郎さんも、シティポップというジャンルを語る上では欠かせないキーパーソンの1人です。
大瀧詠一さんと同じようにさまざまな音楽に通じた「音楽マニア」である山下さんは、自身が影響を受けた洋楽の要素を卓越したソングライターとしての実力とアレンジャーとしてのセンスで昇華、日本の音楽史に残る多くの名曲を生み出し続けていることは今さら説明するまでもないでしょう。
そんな山下さんのソロ・アーティストとしての活動は1970年代から始まっていますが、セースル的にはなかなか振るわなかったのですね。
そして時代は変わって1980年、日本中が元気で若者たちが西海岸への憧れを如実に表現したポップ・カルチャーが登場する中、時代に呼ばれたように山下さんは名曲『RIDE ON TIME』を発表します。
まさに「シティポップ」を体現したようなカラフルで都会的、洗練されたサウンドはCMソングとしても起用されてヒットを飛ばしました。
同年の9月には同タイトルのアルバムをリリース、通算5枚目となる本作で山下さんは時代の申し子として本格的なブレイクを果たします。
多くの楽曲の作詞を吉田美奈子さんが手掛け、後に山下さんの作品やライブにおいて欠かせない存在となる、当時は弱冠22歳だったという名ドラマーの青山純さんが初めてレコ―ディングに参加するなど、山下さんの音楽キャリアにおいても重要な意味を持ったアルバムと言えるでしょう。
真夜中のドア STAY WITH ME松原みき

竹内まりやさんの『Plastic Love』に並んで、海外の音楽ファンによるシティポップ・ブームの象徴的な楽曲が松原みきさんの『真夜中のドア〜Stay With Me』です。
シティポップの生みの親の一人とも言える林哲司さんが作曲と編曲を手掛け、松原さんのデビュー・シングルとして1979年11月5日にリリースされた楽曲です。
当時としてもスマッシュ・ヒットを記録しているのですが、40年以上が過ぎた2020年にインドネシア人歌手RainychさんのカバーやTikTok動画での起用などのリバイバル・ヒットが巻き起こり、Spotifyのバイラルチャートで2020年12月より18日連続で世界1位を記録するなどのブームとなったのです。
同年には公式のリリック・ビデオが公開され、シティポップと同じように海外で人気の高い80年代風のレトロなアニメ調の映像が話題を呼びましたね。
シティポップ・ブームのきっかけを作った一人でもある、韓国の音楽プロデューサーNight Tempoさんによる公式リエディット版もリリースされるなど、その勢いは2022年の現在もまだまだ続いています。
本稿で取り上げている松原さんのデビュー・アルバム『POCKET PARK』は1980年にリリースされ、『真夜中のドア〜Stay With Me』はオープニング・ナンバーとして収録されていますよ。
アルバム自体もギタリストの松原正樹さんにベースとして後藤次利さん、その他にも名手とされるプレイヤーが多く参加した豪華な1枚となっており、シティポップらしい洗練された都会的なサウンドの中で伸びやかに歌い上げる松原さんの声とメロディも最高です!
ぜひ、曲単位ではなくアルバムを通して聴いてみてくださいね。
TOKYO TOWER角松敏生

夏の海やリゾート、車に夜の都会の喧騒といったシティポップ的なキーワードがちりばめられた作風で、まさに80年代という時代の申し子的なシンガーソングライター兼音楽プロデューサーとして20歳の若さでデビューを果たした角松敏生さん。
他のアーティストもそうですが、角松さんも当然ながらシティポップの枠内に収まらない活動を続けており、V6がカバーしてヒットさせた『WAになっておどろう』の作詞・作曲など他のアーティストへの提供曲も多く、J-POP史の中では欠かせない存在として2020年代の今もバリバリの現役として活躍中です。
とはいえ、やはりシティポップの話題で角松さんの作品を挙げざるをえないということで、本稿ではご本人にとって初のチャートトップ10入りを果たした名盤『GOLD DIGGER〜with true love〜』を紹介します。
1985年にリリースされた本作は前作『After 5 Crash』辺りから取り入れ始めたNYサウンドへの接近がより顕著となって、ファンキーなスラップ・ベースや当時としては先進的なDJのスクラッチなどを取り入れた先鋭的な音楽性はまさに大人が過ごす都会の夜、真夜中の首都高ドライブのBGMとしてもばっちりはまってくれますね。
打ち込みのサウンドと生の楽器によるグルーヴの融合といったバランス感覚もお見事の一言、文句のつけようがないモダン・ソウルの傑作であり、もちろんシティポップの文脈としても間違いなく楽しんでもらえる名盤と言えるでしょう!
Midnight Pretenders亜蘭知子

日本のシティポップが海外で大人気という事実は今さら説明するまでもないのですが、2022年2月にリリースされて大ヒットを記録中のザ・ウィークエンドさんによる通算5枚目となるアルバム『Dawn FM』に収録されている楽曲『Out Of Time』の存在は、シティポップの盛り上がりをますます加速させるきっかけとなるでしょう。
ロマンチックでメロウかつポップな『Out Of Time』のイントロから聴ける印象的なメイン・フレーズは、シティポップ史の中でも重要なアーティストとして知られる亜蘭知子さんが1983年に発表した『Midnight Pretenders』からの引用なのですね。
90年代において大ヒットを記録したビーイング系の名曲たちの作曲でもおなじみ、あの織田哲郎さんがソロ・デビュー間もない頃に携わった作曲仕事としても知られている『Midnight Pretenders』は、亜蘭知子さんにとって3枚目となるアルバム『浮遊空間』に収録されています。
アルバムの全曲を亜蘭知子さんが作詞を担い、プロデュースを手掛けたFENCE OF DEFENSEのベース兼ボーカリストである西村麻聡さんがほとんどの曲の作曲と編曲を担当している本作は、シティポップの名盤として高い人気を誇る1枚。
前述した『Midnight Pretenders』と『I’M IN LOVE』は、2020年代のシティポップ・ブームの流れで7inchシングルとしてリイシューされているほどですから、その人気の高さが分かるというものでしょう。
アルバム全体的には80年代のニューウェーブど真ん中のデジタルなポップスという趣が強く、当時の邦楽の先進性をも感じ取れる名盤ですよ!
悲しみがとまらない杏里

17歳という若さでJ-POP史に残る名曲『オリビアを聴きながら』でデビューを果たし、1980年代には「夏」や「海」といったイメージを押し出した作風で大人気を博した杏里さん。
2020年代の現在も第一線で活躍を続ける杏里さんですが、角松敏生さんや小林武史さんらと組んで生みだした80年代の名盤たちは、シティポップの観点においても人気の作品が多く、杏里さんは海外の音楽ファンからシティポップの女王といったような評価を受けているほどです。
そんな杏里さんのディスコグラフィの中でも、初のオリコン・チャート1位を獲得した1983年の名盤『Timely!!』を紹介しましょう。
この時点ではまだそれほど有名ではなかった角松敏生さんがプロデュースを手掛け、冒頭で触れた杏里さんのイメージを決定付けた1枚としても重要な作品なのですね。
同名のテレビ・アニメ作品の主題歌としてもおなじみのヒット曲『CAT’S EYE』や、同じく杏里さんの代表曲の1つ『悲しみがとまらない』を収録したJ-POPとして強力なポピュラリティを兼ね備えた1枚でありながら、シティポップ好きにはたまらない夏真っ盛りな名曲たちがずらりと並ぶ名盤中の名盤です。
『A HOPE FROM SAD STREET』や『LOST LOVE IN THE RAIN』といった楽曲では杏里さん自身が作曲を担い、シンガーソングライターとしての才能も発揮しているところにも注目していただきたいですね。