ボーカロイドで英語の歌詞はうまく表現されるのか!?
今回チャレンジしてみましたので、ここで方法などを紹介したいと思います。
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ボーカロイドで英語の歌詞に挑戦!
今回は少しだけテクニカルにボーカロイドで英語歌詞を歌う方法について実践してみたいと思います。
トライしてみた曲はこちらです。
boz scaggsのwe’re all aloneです。
ボーカロイドはIAを使用して歌わせてみました。
英語歌詞以外でも使えるテクニックもあると思いますので最後までお付き合いください。
英語で歌わせたい!
でも英語ライブラリがない!
初音ミク、巡音ルカ、メグッポイドなど、もともと英語対応を掲げるライブラリ以外は英語発音のデータを持っていないので発音をしても日本語のイントネーションで発音します。
この問題は英語っぽい歌唱を目指す上で大きな障害です。
例えばtrue(トゥルー)という単語一つを取っても単純に「トゥ」「ル」「−」と入力すればよい訳ではなく、アクセントのある「ル」を中心に発声したように聞こえる工夫をしないとベタな日本語英語っぽさが丸出しになってしまいます。
これを少しでもそれっぽくしていくためにパラメータの操作を工夫することになります。
VOCALOID4のクロスシンセシスで英語らしさを出しやすくなった
VOCALOID4からクロスシンセシスという機能が追加になったことは以前もご紹介したことがあります。
この機能は2つのボーカロイドライブラリを待機させておくことで、パラメータの調整によって両方をミックスしたり、待機していた側の声に切り替えることができる機能です。
ちょうどチャンネルに挿したエフェクタのミックス量の調整と同じようなイメージで使用が可能です。
参考:VOCALOID4発表!
目玉はグロウルと歌声間をモーフィングするクロスシンセシス : 藤本健のDTMステーション
これを活用することでボーカロイドでは難しかった巻き舌っぽい発音や、単語の中のアクセントの部分だけ強く発音するような表現がしやすくなります。
今回の曲の中では「more」や「close」といった発音でやや巻くような発音を混ぜたり、「be」は強く歌う箇所が多いためクロスシンセシスを織り交ぜながら歌わせています。
1音符に1wordが当たり前
英語の処理で必ずぶつかる問題は楽譜の1音符に対して容赦なく1単語が割り当てられていたりすることです。
16分音符に「cry」や「out」といった日本語で三文字になる発音ならまだ救われる方で、「chance」や「wait」など四文字以上の単語が入っていることも珍しくありません。
ボーカロイドはMIDIベースの入力システムを持っています。
これは互換性という意味でDAWや他のシステムと連携しやすいメリットであると理解はしていますが、実は歌詞の入力については上記の理由から得意ではないと考えています。
こういった場合ボーカロイドは三文字、四文字の発音のために1音符を文字数分の数に分割しなければなりません。
これは歌い出しの単語「out」です。
16分音符1つの間に「out」と発音するために16分音符を3つに分割しています。
こういった入力の場合DAWのスナップ機能をオフにして、カットツールは好きなところで切り取れるようにしておかないと作業性が著しく悪化しますので英語歌詞での入力時はスナップ機能はオフにしておきます。
今回の挑戦した曲では「out」や「cry」といった単語の他に「close」から始まるフレーズがあり、これが非常に短い音符に割り振られているために少し苦戦しました。
発声する音・消える音
これだけではまだまだ全然英語らしさは表現できません。
例えばこの「out」の場合、日本語の歌詞の上では「アウト」の三文字ですが、実際の歌唱で「ト」が発音されることはほぼありません。
かといって「アウ」という入力では三文字分の音価にはならず「ウ」だけ間延びしてしまったり、聞こえないはずの「ト」がないことによって前後のつながりにも不自然さが生まれてしまいます。
これを自然に歌わせるために少し工夫をします。
ボーカロイドエディタで音符を選択して右クリックするとメニューが開きます。
その中にある「音符のプロパティ」を選択すると音符の細かいステータスが表示されます。
ここでは「音符の歌詞」やアクセント量、音価の取り方(ディケイ)、次の音符に対して滑らかに音をつなぐかどうか(ポルタメント)の設定ができるようになっています。
1つ1つに大きな意味があるのですが「out」の発音しない「ト」に一番に重要なのは赤丸で囲んであるPhonetic(発声記号)の部分です。
ボーカロイドの発音はこの発声記号に基づいて行われます。
歌詞が「あ」と入力されていても発声記号が「to」となっていれば発音は「と」になります。
そしてこの発声記号の後ろに「_0(アンダーバーとゼロ)」を付けた場合、この音は無声音として扱われます。
これはスーっと空気が抜けるような音を発音させる命令です。
英語の場合語尾などにこういった音が抜ける単語がたくさんあります。
今回の「out」の場合歌詞が「out side the……」と続いています。
日本語で書くと「アウト サイド ザ」となり、トとサというつながりになっています。
実際の歌唱の場合、このトとサはほぼつながって発声されていてトは聞こえません。
この発声に近づけるために「ト」の音を無声化して消してしまうことで英語っぽい歌唱に近づけるようにしています。
フレーズの終わり(続きがない)場合でも音が消える単語もあります。
曲のタイトルにもなっている「we’re all alone」を歌う部分の「alone」です。
日本語にすれば「アローン」ですが、歌詞を聞いても「ン」ははっきりとは聞こえていませんし、これをアローンと言い切ってしまうと途端にリズム感も悪くなってしまいます。
末尾が「ン」でフレーズを終わるパターンはほとんどの場合文字を入れなくても大丈夫です。
最後の「ン」は入っていませんが、伸ばしている「ロ」のおしりのダイナミクスを下げて飲み込ませることで発声されない「ン」を表現できました。
Let it go(れりごー)は正しかった?
アナと雪の女王で有名にな歌詞「Let it go」。
日本語発音で「れりごー」と表現されたりしていました。
英語的にはちゃんと「it」なんですが、ボーカロイド的には「れりごー」で正解だったりします。
「we’re all alone」は「うぃ お ら ろ」としか入力していません。
「we’re」の「are」は16分音符に詰め込まれていてほぼ聞こえないのと、次の「all」の方が重要であること、そして「オール」の「ル」は次の「alone」とほぼつながってしまっているので「ル(ru)+ア(a)」で近似の「ラ(ra)」に吸い込ませてしまっています。
さらに「ラ」のアクセントを大幅に下げることによってアタック感を無くして「ラ」の発音をうまく溶け込ませてしまうことでフレーズとしてまとめています。
サビの後半に出てくる「let it out. let it all begin.」という歌詞はまさに「れりごー」と同じ入力で実現しています。
頭の「レ」はアクセントとディケイを全開まで高くして「リ」はやや弱めなアクセントにすると不思議なことに「let it」っぽく聞こえてきます。
今回はあえて「れりごー」な感じにしてみましたが、「ティ」や「イ」でも似たような感じができます。
これはライブラリや歌い方の雰囲気に応じていろいろ試してみるのが楽しい部分ではないかと思います。
we’re all alone feat. IA&IA Rocks
ここまでの調声を盛り込んで歌わせてみた結果を聴いてみましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=Dh-9WyKS8C0
どうでしょうか?
まだまだ課題はありますが、結構英語っぽく歌ってくれるようになりました。
工夫次第では難しいフレーズも歌いこなしてくれるボーカロイドにいろいろな曲を歌わせて見てください。
CeVIOでもやってみました
前回「冬のリヴィエラ」を歌わせてみたCeVIOでも同じ曲を歌わせてみました。
今回歌うのはIAと同じ1stplaceから発売されているIAの妹と呼ばれるONEです。
何が違うか聞き比べてみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=kutxPxt94n4
CeVIOでの調声については別途紹介していますのでよろしければそちらもご覧いただければ幸いです。
ボーカロイドとCeVIO、それぞれの特徴も何となく伝わったでしょうか?
それぞれ得意な事と苦手な事がありますが、工夫次第でいろいろな事が可能です。
今回はそんな工夫のほんの一部を紹介してみましたが、何かのヒントになれば幸いです。
ぜひ皆さんもすてきな曲をボーカロイドたちに歌わせてみてくださいね。