【プロ直伝】後悔しないサックスの選び方。おすすめメーカーまとめ
サックスを始めるんだ!
と決心した時から欲しくなる憧れのマイサックス。
あれやこれやといろいろと妄想しながら迷うのもショッピングの醍醐味ですよね。
とはいうものの……いざ調べてみると、メーカーはいろいろある上、同じメーカーから何種類もサックスがリリースされ、カタログやホームページには美辞麗句や専門用語ばかり。
「値段もピンキリだし、一体何を買えば正解なの?」
「あぁ〜もう、迷うというより、悩んじゃう!」
そんなあなたに贈る、絶対後悔しないサックスの選び方をご紹介します。
ネット通販でポチッとしてしまう前に、楽器屋さんでうっかり契約してしまう前に、ぜひともご覧ください。
後悔しないためのポイント1|サックスメーカー御三家を知るべし
世界のサックス界を牽引しているのが、フランスのセルマー(フランス)、日本のヤマハとヤナギサワ。
この3社のメーカーが「サックス御三家」と呼ばれています。
独断と偏見ですが、簡単にその3社を紹介しますね。
(品番はアルトサックスで、2018年6月現在の税抜価格です)
Henri Selmer Paris(セルマー)
Henri Selmer Paris(セルマー)オフィシャルウェブサイト
サックスの生みの親、アドルフ・サックスから受け継いだ伝統と先進の技術。
つねにサックス界のトップランナーです。
現在のモデルは軽やかで華麗な音色。
最近まで高額モデルのみのラインナップでしたが、セルマーにとっては40万円程の廉価版モデル「アクソス」をリリースしました。
しかし、競合するヤマハのカスタムに対し分が悪い印象。
オススメは50万円程の「シリーズⅡ」、60万円程の「シリーズⅢ」。
価格は高いですが、所有感は抜群。
若かりし筆者にもネックに輝く「Sマーク」は憧れでした。
ちなみに筆者は学生時代「シリーズⅡ」を使用していました。
現在はアルトとテナーの「リファレンス」を所有しています。
YAMAHA(ヤマハ)
世界唯一にして最大、あらゆる楽器を手がける総合メーカーです。
また、日本中のヤマハで受けられるアフターサービスやメンテナンスも心強い(これが重要です)です。
高級機種「カスタムYAS-875」シリーズ(48.5万円)は、しっとりと豊かな音色でセルマーと一線を画し、愛用するトッププロも多く、フルモー氏や須川氏など、学生時代に筆者が憧れたプレイヤーも皆ヤマハのプレイヤーでした。
それにもかかわらず、セルマーを使っていましたが(苦笑)。
また、ジャズ・ポップス志向の「カスタムYAS-82Z」(39万円)は出色の出来。
13.2万円のエントリーモデル「YAS-280」は海外の自社工場製パーツを輸入し、日本で組み付けるという作戦でコストパフォーマンスが抜群です。
中級者まで十分に扱える偉大な存在です。
ちなみに筆者は現在「カスタムYAS-875GP」をメイン楽器として使っています。
ヤナギサワ
東京都板橋区の工場で造られる、メイド・イン・ジャパン、メイド・イン・トーキョーです。
ラインナップは27万円の「A-WO1」と、37.8万円の「A-WO10」という真鍮製の2機種を軸に、ブロンズやシルバーなどの金属を管体に使ったサックス作りが特徴。
素材によって音色が全く異なる(本当に全然違う!)が、音色の特徴としてはパリッと鳴ってくれる印象です。
どのモデルも全て日本製でクオリティは折り紙付き。
「セルマーは高すぎるし、みんなが使っているヤマハじゃいや!」というヤナギサワユーザーにたまに会います(笑)。
吹奏楽よりもジャズで支持されている印象です。
日本よりも海外での評価が高いようですね。
筆者はつい先日までA-991(WO10の前モデル)を所有していました。
とまあ、こんな感じでしょうか。
全ての機種ではありませんが、御三家の楽器を所有していたので、上記のコメントもそんなに的外れではないと思います。
また、リペアマンならば、この御三家ならば機種にかかわらず、問題なく対応してくれるはずです。
後悔しないためのポイント2|最安値サックスには手を出すな!
安いサックスについてウェブ検索すると、3万円程度のサックスがズラ〜っと出てきますよね。
これら「最安値サックス」とは一体どんなサックスなのでしょうか?
まず、サックスは実に600個にもなる、大小さまざまなパーツから成っている複雑な構造の楽器です。
まだまだ手作業の部分が多く、熟練の職人技が求められます。
また、メーカーは理想のサックスを作るため、素材やメカニズムの開発を日々行い、しのぎを削っています。
しかし職人の確保や開発にはコストがかかり、それらはサックスの価格に(もちろんノウハウも)反映されています。
一定レベル以上のサックスを作ろうとすると、それなりの値段になってしまうんです。
つまり、「最安値サックス」はその一定レベルを大きく下回っているのです。
何せ「最安値」で作るのですから、開発費用などなく、サックスの素材である真鍮の品質や塗装なども不純物が多く、粗悪でしょう。
また、各工程に熟練工がいれば、不良品が次の工程に流れていくことはまず有りえない上に、厳密な検品作業を工程毎に行っていますが、「最安値サックス」はそんな熟練工がいない上、各工程どころか、最後の砦である出荷前の検品でさえ十分に行われていない可能性が大きいです。
さらに「最安値サックス」はリペア対応してくれないと思って間違いないでしょう。
なぜなら、格好だけで、根本的に修理対応できるような構造ではないからです。
というわけで、「最安値サックス」には絶対に手を出してはいけません。
絶対に後悔します(断言)。
と、ネガティブなことばかり並べましたが、そんな中あえて選ぶとしたら、こちらです。
Jマイケル:AL780
定価は8.6万円ですが、実勢価格は6万円程度でしょうか。
以前試奏したのですが印象も悪くなく、クオリティと鳴りに驚いた記憶があります。
しかし、自社工場を持っているわけではなく、中国のサックス工場に発注するOEMスタイルですので、輸入商社という色合いが強いのも事実。
その辺りをご理解の上ご購入を。
OEM(オーイーエム、英: original equipment manufacturer)とは他社ブランドの製品を製造すること、またはその企業である。
日本語では「相手先(委託者)ブランド名製造」、「納入先(委託者)商標による受託製造」などと訳される。
後悔しないためのポイント3|台湾サックスの台頭
そんな御三家と最安値サックスの隙を突いて、近年台湾メーカーが頭角を現してきました。
もともと廉価版の楽器を多く製造する台湾でしたが、その舞台が中国や東南アジアにシフトして行く中で、蓄積されたサックス作りのノウハウと「新品ビンテージ」という、御三家とは異なる切り口で生き残りを図った台湾製サックスの存在が強まっています。
ジャズ・ポップス系を志向するならば、ビンテージの様な抜けた鳴りを味わえ、新品の御三家上位機種よりも安価な台湾のサックスたちもオススメできます。
もちろん「最安値サックス」とは比べ物にならないクオリティです。
Cadeson(カドソン)
新品ビンテージブームの火付け役。
台湾製サックスも、基本的に既存台湾の楽器工場から楽器を買い付けるOEMが基本。
いくら指示を出しても、素材やパーツの調達、各工程の管理など、バイヤー側には伝わらない不透明な部分が少なからず出てきてしまい、クオリティを一定以上に保つのは難しいのが現状です。
そこで、カドソンを扱う中島楽器では、輸入した楽器を再度、組み直すことによってクオリティ確保をしているとのこと。
カドソンの「900シリーズ」は20万円台後半から30万円台。
音抜けが良く気持ち良い吹奏感です。
また、素材や仕上げ、仕様によりさまざまな設定が用意されています。
それらも御三家に比べると割安感アリ。
ちなみに筆者はカドソンの「S-108AS」というソプラノを使用しています。
その他、日本で買える主な台湾サックスブランドは以下のような感じです。
IO(イオ)
台湾製楽器の礎を築いたジュピターの上位機種
参考:IO(イオ)サックス一覧
「AS1065GL」は25万円の価格設定。
C.G.CONN(C.G.コーン)
セルマー輸入元、野中貿易が扱う台湾サックス。
参考:アルト・サクソフォン CAS280 | C.G. Conn
「CAS280」は定価30万円。
いずれも価格的には28.5万円ヤマハの「YAS-62」27万円のヤナギサワ「A-WO1」と競合していますが、ジャズ志向なら台湾勢を推します。
吹奏楽などに使いたいならヤマハやヤナギサワを選びましょう。
また、台湾製サックスは、リペアなどのメンテナンスが御三家に比べ不安です。
その辺りは購入先などに入念に確認してから購入しましょう。
後悔しないためのポイント4|アフターサービスも価格のうち
前述した通りサックスは多くの部品からなる楽器です。
また、レザー部品なども多く経年劣化するものも多いのです。
そのため、定期的なメンテナンスは欠かせません。
購入時に軽視されがちですが、これらについてもあらかじめ考えておく必要があります。
特に、中古サックスの場合はメンテナンスがしっかりされていないと、後から思わぬ費用がかかります。
また「メンテナンス済」とあっても、実際は大掛かりな修理が必要なケースにもかかわらず、応急処置的なメンテナンスしかしていないこともありますので要注意です。
管楽器を扱うある程度の規模のお店では、楽器を購入するとアフターサービスとしてメンテナンスが一定期間無料だったり、割引を受けられたりします。
また、楽器店主催の試奏会などのイベントがあるときには、無料点検を行っていたりもします。
通常だと、お店にもよりますが1回数千円からというのが相場ではないでしょうか。
これらのサービスを活用しない手はありません。
それに、そんな楽器店のスタッフさんの中にはバリバリのサックス吹きもちらほらいるはず。
そんなスタッフさんならあなたの思いをしっかり受け止めてくれ、あなたが納得するまで丁寧に対応してくれるはず。
サックスのメーカーや年代はもちろん、マウスピース、リードなどのセッティング、息の使い方やマウスピースのくわえ方などで、音はまったく異なります。
楽器購入のアドバイスだけでなく、そんな小物購入や奏法のアドバイスもしてくれるはず。
信頼できるスタッフがいたり、あなたの行きつけ、かかりつけの楽器店が見つかると長い目で見て安上がりにつながり、充実したサックスライフが送れるでしょう。
後悔しないためのポイントのまとめ
さて、長々と書いてきましたが、最後にまとめたいと思います。
ブランド志向なら迷わずセルマー
セルマーよりブランド力が高いサックスは存在しません。
今後あなたは、サックスを通じていろんな人たちに出会うでしょう。
そこで出会う人たちの中にはセルマーを使っている人もきっといます。
そんなセルマー使いを前にすると引け目を感じてしまうようならば、セルマーを買ってください。
そうそう、セルマーはよそ見をしているとすぐに値上がりするのでご注意を。
ジャズ志向ならヤマハYAS-82Z
サックスを始めたばかりの段階では音を出すのに精一杯で、ジャズだのクラシックだのと言っている場合ではありません。
ジャンルについてどうこう言えるのは、おそらく楽器を始めて数年たつ頃だと思いますが、最初からこのジャンルを志向し、予算が許すのなら「YAS-82Z」を強く推します。
本文で散々台湾サックスを持ち上げましたが、品質、メンテ等やはり、YAS-82Zが上手。
また、新品のセルマーでも「YAS-82Z」のような抜けのある吹奏感は得られませんし、程度の悪いビンテージを選ぶよりもあきらかに賢い選択と言えるでしょう。
定価は39万円ですが、運が良ければ決算期や展示品などのおトクなものと出会えるかも。
低予算志向なら13.2万円のご用意を
何と言ってもエントリーモデルの世界的指標、ヤマハ「YAS-280」。
これほどコストパフォーマンスに優れたサックスはありません。
吹奏楽でもジャズでも最低限の仕事はしてくれる楽器です。
少しくらいは値引きしてくれると思いますので、リードやお手入れセットをオマケしてもらって、この予算で諸々全て収められるよう交渉するも良いでしょう。
海外製でこれより安い物もありますが、あくまで自己責任で。
価格は税抜きなので消費税分のご用意も忘れずに。
最後に、吹奏楽、音大受験の人は、ヤマハ「YAS-875シリーズ」かセルマー「シリーズⅡ」か「シリーズⅢ」でしょうか。
顧問や師匠など、導いてくれる人の意見に従ってください。
最後に
「絶対後悔しないサックス購入ガイド」いかがでしたでしょうか。
あれこれ書いてきましたが、最も後悔するのは「サックスを買ったのにやめてしまうこと」です。
サックスに限らず、楽器演奏は一生楽しめます。
思うように上達せず辛く苦しいことも多いですが、どうか末長く演奏してください。