プロが語る!BABYMETALピアノ編曲のウラ話
前回の「BABYMETALをピアノ編曲したときの耳コピ術」の続きです。
BABYMETAL(ベビーメタル)のピアノ編曲のウラ側をそのままご紹介したいと思います。
[ダウンロード版]
音が多すぎることがある

https://pixabay.com/
聴き取り作業が終わり、アレンジ作業をしている時に、どうしても諦めなくてはいけないことがあります。
全楽器が派手に動いている曲、または部分、曲のクライマックス部分です。
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の中にすでにありました。
BABYMETALの曲には、全部クライマックスのようなスゴイ曲もありますから、全体を通して音が多いことも多々あります。
「紅月」「Road of Resistance」「Tales of the Destinies」「THE ONE」などですね。
しかし、両手で演奏できる音と音域は限られています。
その範囲内でいかに原曲に近づけるかが勝負です。
実は歌の部分と分けて伴奏として作ってみたこともあります。
まだ公式には出していませんが、「No Rain, No Rainbow」です。
でも、弾き歌いでやってみたら、やっぱり全部1人でピアノで弾いた時が私は気持ちが良いのです。
ですので、10本の指で全部をすることに決めました。
そもそも演奏が難しすぎて弾き歌いもできないかもしれません。
でも、そこがBABYMETALのいいところで、好きなところでもあります。
何の楽器を犠牲にするのか

https://pixabay.com/
いつも犠牲になってしまう楽器があります。
何とギターなのです。
演奏はしていませんがキーボードパートというのでしょうか、ストリングスなどの陰の盛り上げ役のパートも犠牲になることがありますが、心痛むのはギターのメロディーです。
ギターという楽器はできることの範囲がとても広いですよね。
ベースと同じ動きもできるし、コードも弾ける、コード内で激しく音を動かすこともできるし、歌のメロディー以外にメロディーを演奏することまでできますよね。
メロディーが歌に沿っていれば歌と一緒にピアノで弾けます。
でも、音域も違う、全く違うメロディーを弾いてたりします。
これです、この、ギターのメロディーのことです!
思いのほかいいメロディーが多いんです。
明らかに主張するべきメロディーを、歌の後ろにかぶせてきます。
本当に悔しいですねぇ、演奏してあげられないことが。
泣く泣くカットするこの悲しさ、わかりますか?
ギターを弾かれる方なら、その悲しさをわかってくださると思います。
曲全体の主要なメロディーの優位性とその責任を全うしなければいけないんです。
聴音していて、初めは何もわからず聴きとっていたのですが「今はここは弾けないかもしれない」と思いながら聴き取ることが出てきました。
ストリングスなどは、やたら難しくて、弾けないかもしれないのに1番聴き取るのに時間がかかったりします。
一息ついて、コーヒーとチョコの時間にするしかありません……。
犠牲にする楽器の中にも編曲のヒントが隠れていることもある
でも、犠牲になると分かっていても必ず聴き取ります。
まれに部分的に入れられることもあるので、諦めないで聴き取り続けます。
また、ハーモニーのヒントになることもあります。
一音違えば別のコードに変わり、違う雰囲気になってしまうのですから。
ピアノの音のみで勝負している私にとって、何の音を使うのかは、超重要問題です。
音色が一つなので、何の音を使うかによってカラーが少しずつ違ってきます。
わざと原曲と違う音を使う場合もあります。
ここまで来ると、すべて感覚での勝負です。
理屈では完成しません。
CDをお持ちの方は「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の最後のほうの「イジメダメ!
イジメダメ!
かっこわるいよ~」のところをよーく聴いてみてください。
ギターの隠れメロディーがとてもかっこいいです。
手が3本あればいいのに。