【高齢者向け】4月の俳句。盛り上がる
4月は、桜の花が満開を迎え、新たな始まりを感じさせる季節ですよね。
外に出たくなるこの時期、俳句を通じてその美しさを表現してみませんか?
俳句は、五七五で季節の変化を感じながら、自分の思いを言葉にする日本の伝統的な文化です。
特に高齢者の方にとっては、昔懐かしい春の思い出を振り返りながら、新たな発見や会話が生まれる楽しい活動になります。
4月の風物詩を感じながら、みんなで盛り上がる俳句の時間を過ごしてみましょう。
【高齢者向け】4月の俳句。盛り上がる(1〜10)
半ばきて 雨に濡れゐる 花見哉

あなたのお花見は桜の下をゆっくりと歩き涼む移動派ですか、それとも桜の木の下にビニールシートを敷いて宴会を楽しむパーティー派ですか。
どちらにしても楽しいものですが、このお花見の文化はどうやら日本だけのものとか。
俳句の内容は花見を歩み楽しんでいるうちに途中から雨が降ってきたというもの。
春の雨ですから細かな霧のような雨。
ぬれて歩いてもさほど気にならないかのような雨は、お花見をより風雅なものと押し上げてくれたことでしょう。
この句も炭太衹さんの作品です。
夕暮れの 水のとろりと 春の風

大正時代から昭和にかけて活躍した臼田亞波さんの有名な俳句。
臼田さんは短歌を与謝野鉄幹さんに、俳句を高浜虚子さんに学んだという、野球でいうところの大谷翔平さんのような文学二刀流をふるった巨匠の1人です。
水はさらさらとした液体であるのにそれをあえて「とろり」と形容したところにこの俳句の見せどころはあります。
生温かな春の風がゆらりと水を揺らすその瞬間を切り取った、まこと余白の多い句の立ち姿。
いつまでも口に繰り返したい名句です。
振り向きし 後ろに月や 春の宵

高橋淡路女は大正から昭和にかけて活躍した俳人です。
高橋淡路女の俳句をご紹介します。
「振り向きし 後ろに月や 春の宵」は、春の日にきれいに見えた月の様子を詠んだ俳句です。
春の宵とは春の日に、日が暮れて間もないことをさします。
冬の夜とは違い、暖かさを感じる春の夜は、咲き誇る花からいい香りがしてきそうですよね。
さらに、ぼんやりとした雲がかかった空にある、月の美しさが伝わってきます。
このときの月は、おぼろ月だったのかもしれませんね。
【高齢者向け】4月の俳句。盛り上がる(11〜20)
桜狩り 奇特や日々に 五里六里

「桜狩り 奇特や日々に 五里六里」は、自分の好きなことに夢中になっている様子を詠んだ俳句です。
好きなことに夢中になることはいいことです。
ですが、周りが見えなくなるほど、夢中になりすぎるのも困りますよね。
そんな自制の風刺が、松尾芭蕉の詠んだ「桜狩り 奇特や日々に 五里六里」に込められています。
桜に魅せられて、五里六里も歩き回っている自分を省みて、苦笑する気持ちが伺えます。
ちなみに、五里六里とはこの俳句に出てくる言葉で、せっせと歩き回るという意味だそうです。
偉大なる松尾芭蕉からも俳句から、人間らしいところも感じられますね。
空をゆく ひとかたまりの 花吹雪

高野素十は茨城県出身の俳人であり、高浜虚子に師事して俳句雑誌「ホトトギス」で活躍しました。
また医師としても研究をおこなっています。
この句は現代語に訳すると、風に舞い上がった花吹雪が、ひとかたまりになって空へと舞って行ったよ。
という内容です。
桜の時期、まるで桜が意志を持っているかのように空へ向かって行く。
そんな桜の散り際や、風の吹いている様子が思い浮かびますね。
また、散ってもそれで終わりではなく、空へ消えるその時さえも美しいと感じる気持ちが込められているのかもしれませんね。
桜の季節には、風に舞う花びらの行方も気にしてみてはいかがでしょうか?
花の雲 鐘は上野か 浅草か

松尾芭蕉が詠んだ俳句「花の雲 鐘は上野か 浅草か」をご紹介します。
初句の花の雲を、ご存じでしょうか?
雲と付きますが、雲ではなく花の様子を表していますよ。
ここでの花は桜の花のことです。
桜の花が一面に満開に咲いている様子を雲に見立てていますよ。
かつての日本人は、ものごとを何かに見立てて表現していたようですね。
桜の咲く頃に、上野の東叡山寛永寺か、浅草の浅草寺から聞こえる鐘の音かを考える様子も詠まれています。
現在は、離れた場所で、鐘の音が聞こえてくることがないかもしれませんね。
俳句から春の日の穏やかな日常が感じられます。
花御堂 花重なりて 匂ひけり

及川貞は昭和に活躍した俳人で、馬酔木婦人句会を起こすなど、女性の俳人の輩出に貢献した人物です。
この俳句は、4月の花祭りで花御堂がたくさんの花に飾られていて、重なった花からいい香りが匂っているという意味で、においも含めた華やかな風景が描かれていますね。
花という文字が何度も使われているのもポイントで、ここからも花が重なって咲いている様子を強調しています。
言葉の意味だけでなく、文字の見た目でも風景を演出しているのが、テクニックを感じるポイントですね。