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【Qactus開発者が語る】「指一本で弾くこと」からビギナーは何を得るのか

「挫折者をゼロにする補助ツール」、Qactusに対して、「ギターを簡単にするオモチャ」という誤解を持っている方を見かけることも多いです。

今回は、Qactusに隠された挫折を防ぐ秘密を少しご紹介したいと思います。

Qactusが「指一本程度」にこだわる理由

この程度の説明では納得しないビギナーもいるかもしれません。

Qactusがなぜ「指一本程度でコードを押さえられる」という方法で「初期段階の困難を乗り越えるための機能」を達成しようという判断をしたのかについて言及します。

実はQactusには「指一本程度」にこだわる理由があります。

今回のブログの冒頭で触れた件を思い出してください。

その段階のビギナーは、これらのポジションにすべての指を「1アクション」で置くことができず、ひとつひとつのポジションをひとつひとつ順番にぎこちなく押さえにかかり、そしてすべて整った時点でようやくジャラーンとはつ弦する、という非音楽的な「作業」をします。

これはひとつの上達のステップなのでしょうがない。

いきなりすべてのカ所に指がポンと乗せられるスキルがまだない訳ですから。

この件です。

もちろん覚えていますよね。

Qactus開発者である私が2003年から月イチ以上のペースで開催し、既に延べ数千人が参加している「楽器挫折者救済合宿」の現場にも、まさにこの初期段階を越えようとしてなかなか越えられないビギナーが大勢やってきます。

しかしながら、ある助言でほとんどのビギナーがその壁を越えていくことができています。

そのキーワードは「軸指」。

コードフォームを形作るには「1アクション」が鉄則ですが、もちろんほとんどのビギナーがその1アクションの壁をなかなか越えられません。

しかしながらそんな1アクションの中に「軸指」という感覚があることを、ほぼすべてのビギナーは知りません。

なぜなら「見えない」から。

私がコードチェンジで悩むビギナーに、この「軸指」に関する助言をすると、今まで難航していた運指がうそのようにスムーズになり、やがて1アクションへと無事に移行していきます。

ここが越えられるかどうかは、初期段階の壁……つまり5人に4人が砕け散るあの鉄壁をぶち破れるかどうかに関わる重要なポイントです。

この「軸指」をとる感覚が、Qactus使用時の「指一本」でギターと遊ぶことによって無意識のうちに指先に宿り始めます。

勝手に宿るものなので、ビギナー自身がそんなことわざわざ意識する必要もなく、だからこそ開発者サイドの心情として極力ビギナーが意識しなくていいものには言及しなくてもよいのかなと、これまでとくにこの点に触れることを積極的にはしておりません。

仮にこの軸指の感覚をまだ自分のものにできていないビギナーが先ほどの二つのコード、コードコード

これらを上級者たちのようにパッと1アクションで押さえにいこうとすると、的確な場所にそれぞれの指が配置されず、その状態のままピックで弦をかき鳴らす訳なので……当然、ビギナーがよくやるあの不協和音が鳴り響きます。

一方、軸指の感覚を養ったビギナーは、コードコード

Qactusで無意識のうちにつかんだ感覚で、赤い点(=軸指)を押さえにかかりますが、すでに指一本の演奏には慣れているので、他の運指に集中でき、しかも軸をとることで今までふわふわっと指板上空数センチの辺りで漠然と形作っていたあいまいなフォームに明確な秩序ができ、必要な運指をスムーズかつ正確におこなえるようになるんです。

また、これまでは私が現場で指示してきた助言は、私の目の届く現場では非常に有効でしたが、目の届かない世のビギナーに対しては声も届かない訳で、まったくの無力でした。

それが「Qactusで遊ぶ」というアクションを通じ、軸指の感覚をビギナーの指先に無意識のうちに宿すことができるようになり、実際に確かな成果として確認されています。

Qactusが「ギターを簡単にするオモチャ」ではなく「挫折者をゼロにする補助ツール」であるという理由が、この点からも分かるはず。

実際に挫折者を救っている有効なツールに対し、なぜネガティブな発想を持つ人がいるのか

こんなふうにきちんと説明しても情報はすべてには行き届かず、また安易な先入観がネットに時々上がってくるのでしょうが、それは何度も言うように、Qactusがこれまで存在しなかったものだから、という理由でしかありません。

ちなみに「ギターははつ弦こそ難しく、奥深く、そして楽しい」ということをきちんと知っている人たちはQactusの狙いにピンとくる傾向にあるようで、講師の類いではなくプロのギタリスト(プレーヤー)として第一線で活躍している諸先輩方からはほとんどネガティブな意見は出ません。

「コードフォームを作る」というアクションは単なる「各音程を準備する仕込み作業」だととらえているからこそ、だと思います。

逆に、コードフォームを作る作業がすべてだと思っている人々は、ひょっとしたらネガティブにとらえやすいのかもしれません。

とくに自力で頑張って乗り越えてきたギター経験者が「ギターを簡単にするオモチャ」のようなものを見たら、それはやっぱり面白くないのでしょうね。

Qactusが「ギターを簡単にするオモチャ」ではなく、これまで業界が何をやっても動かすことのできなかった統計上5人に4人の挫折者たちを確かに動かしている「挫折者をゼロにする補助ツール」であるということを知らない人はまだまだ多いです。

なぜなら、これまで世になかったものだから。

この現状唯一の可能性を安易な先入観でつぶし、これまでと同じように80%のビギナーと彼らのピカピカのギターを見捨ててしまえという人たちがいるのだとしたら、それは調和を目指す「音楽」というものを扱う者の一人として、非常に悲しいことだと感じています。

「軸指」に限らず、私が現場でビギナーに直接出してきた多くの指示や助言がQactusには機能として凝縮されていて、人々が思うよりもずっと高い次元にある珠玉のアシストツールとして完成されているんです。

悲観する人たち、まず安易に声を発し、後に「しまった」となる前に、世の中のビギナーの挫折率がこれからどう変化してゆくのか、向こう10年は黙って見ておいたほうがよいと思いますよ。

数千人の現場で徹底的に練られて開発されたQactusのすべてを説明するのもなかなか大変なことではありますが、根気強く少しずつ発信していきますので、皆さんも根気強くついてきてくださいね。

ライタープロフィール

きりばやしひろき

ギタリスト

きりばやしひろき

1971年生まれ、山梨県出身。

高校卒業直後『Laughin’Nose』全国ツアーのドラムサポートをきっかけにプロとしての活動をスタート。

1994年、ポエトリーリーディングバンド『叫ぶ詩人の会』でメジャーデビュー。

ドラマー、ギタリスト、キーボーディスト、作曲家、編曲家など音楽業の他、ラジオパーソナリティをはじめMCや文筆など多方面で活躍している。

2011年、Eテレ(NHK教育テレビ)「あなたもアーティスト 挫折者救済!

きりばやしひろきのギター塾」では講師として出演・監修。

主宰を務める“楽器挫折者救済合宿”は現在記録的な回数を誇り、2003年から継続的に開催している合宿の様子はテレビや新聞・雑誌など多くのメディアで紹介され続けている。

著書は「楽器挫折者救済合宿ギター・ジャカジャカ(K&Bパブリッシャーズ)」「大人のための3日間楽器演奏入門~誰でもバンド演奏できるプロの裏ワザ(講談社)」など多数。

また趣味の落書きが高じ、モバイルメディアなどへの楽器関連イラストの寄稿や連載他、Q-sai公式サイトから発信されているユーモラスなオフィシャルLINEスタンプ「挫折わらし」なども手掛ける。

その他、社会の楽器演奏者人口を増やすことを目的として様々な活動に日々取り組んでおり、2011年「Quiree株式会社」を設立。

代表取締役。

ウェブサイト:http://dashman.org

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