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「これが今の松尾優です」赤い靴を履いたピアノレディ、松尾優インタビュー

「これが今の松尾優です」赤い靴を履いたピアノレディ、松尾優インタビュー
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「これが今の松尾優です」赤い靴を履いたピアノレディ、松尾優インタビュー

赤い靴を履いたピアノレディ、松尾優。

シンガーソングライター、ピアニストであることはもちろん、時には音楽教室講師として音楽の素晴らしさを教えとく。

さらに、校歌や企業への楽曲提供、商品プロデュースなど幅広く挑戦をされています。

「これが今の松尾優です」と自信を持ってたくましく語られる姿に、シンガーソングライター・音楽家・表現者であることはもちろん、ひとりの女性としてこれからもどんどんスケールアップされていくのだろうという未来像さえ感じました。

留まることを知らず、音楽を軸にさまざまな世界で活躍を遂げる彼女が今、何を感じ、これから何を表現していきたいのか。

活動5周年を越えて、6年目のキャリアに突入しリリースする3rd full album『風とボヤージュ』(2017年11月3日リリース)への想いを含めてたっぷりとお話しを伺いました。

ホールリサイタルへの挑戦が、新たな自分の可能性へと導いてくれた

松尾優

―――今回11月3日に発表となった3rd full album『風とボヤージュ』は、5周年記念アルバム『MY LIFE IS』以来の約1年半ぶりですよね?

2016年は5周年記念アルバム『MY LIFE IS』のリリースと、京都文化博物館別館ホールで初めてホールリサイタルを開催して、ある意味ひとつの峠を越えたないう感覚があって。

ライブとはまた趣向が異なる「リサイタル」という形式の演奏会に挑戦したということは、自分の中でもやっぱり大きかったです。

その日は、ストリングスも入れてクラシック色が強い編成にこだわったのですが、有り難いことにお客様が求めてくださっているものと私の表現したかったことが合致したみたいで。

とてもご好評をいただいたので「再びホールリサイタルを開催しよう」とまた今年も11月に開催することになりました。

(2017年11月3開催済み)

昨年のアニバーサリーイヤーを境に、より制作意欲というか活動意欲も湧いていて、気付いたら曲が結構溜まっていこともあり、今年のリサイタル開催日に併せての『風とボヤージュ』のリリースにもつながりましたね。

―――昨年のホールリサイタルにゲスト出演されたバリトン歌手の田中純さんとの楽曲『風花』も、今回ボーナストラックに収録ということで、またこれまでとひと味違った作品の形態を予感させますよね。

この曲では私の歌い方もあえて変えていて、オペラ風というかクラシックを意識してファルセットを使っているんです。

なので、いつもと違った世界観を楽しんでもらおうと、ボーナストラックという形で収録したかったという想いがありますね。

田中純さんと一緒に演奏するということになって書き下ろした曲ということもあって、私の普段表現している音楽ジャンルとは違うものになりましたし、この曲が新たな表現の幅や挑戦へと導いてくれたと思っています。

さらに、今回のアルバムのためにレコーディングした音源になっているので、昨年のリサイタルを観て下さった方もそうでない方も、より新鮮な楽しみ方をして頂けるんじゃないかなと。

音楽というひとつのツールを通して、私が力になれること

松尾優

―――またこのリリースまでの1年の変化としてはタイアップや楽曲提供等、よりさまざまなことに挑戦されていますよね。

有り難いことに『leaves』(M-1)は下着メーカーのシャルレさんにタイアップとして使っていただいて。

お母さんと娘さんが、お互いに対してどんな想いを抱いているかを手紙にして読み伝えるドラマ仕立てのムービーに曲を乗せていただきました。

愛や絆を感じられる感動的なムービーに、私の楽曲がコラボレーションできたということが、すごくうれしかったですね。

―――タイアップのお話をいただいたのには、何かきっかけがあったんですか?

MV撮影を担当していただいている方とのつながりで、株式会社yuccaいう20代の若手社員さんを中心として運営されている企業の社長さんからご連絡をいただいたのがきっかけでしたね。

一度会社にご訪問とご挨拶をさせていただいたんですけど、その際に「実はこういう案件あるんですけどどうですか」ってお声をいただいて、そういったご縁が重なって実現したんですよね。

―――そういった音楽に限らないジャンルだったり、業種が違う方から依頼が他にもありますか?

実は、とある企業さんの社歌も作ったりしてるんですよ。

社長さんから「社員にはこういう想いを抱いていてほしい」「こういうことをテーマにしてほしい」というようなお話を聞いて私が歌詞をつけました。

いわば学校の校歌のようなものなので、皆さんに歌っていただけることに緊張感も持ちつつ、うれしさももちろんあったり。

音楽というひとつのツールを通して企業様や人とつながって、私が力になれることが増えていっているのが、すごく刺激にもなりますし。

やはりアーティストとしてもですが作曲家、作詞家、編曲家として「松尾優」の名前が世に残るのも感慨深いなって思います。

―――依頼をいただいて曲を作る際は、ご自身のオリジナルの制作とはまた違った意識がありますか?

依頼をいただくことで「こういうことを伝えたい、歌いたい」といった像が、自分の中で決まってくるので割と曲ができ上がるまでの時間も早いというか。

自分のオリジナル曲のほうが、漠然としたところからのスタートではあるので、時間がかかっているかもしれないですね。

―――音楽のジャンルを越えての活動というところでいうと、以前タイムステーションNEOさんとの企画でコラボレーションウォッチも誕生したんですよね。

タイムステーションNEOの社長さんとの出逢いも偶然で、ラジオ共演させていただいた際に生演奏を聴いていただいたのがきっかけでした。

私の音楽性を気に入って下さって、そこからなんと、女性向けの商品ライン『MIA』で松尾優モデルを作らせていただくことになったんです。

コラボウォッチはどうしても女性ものの商品にはなりますが、この記念すべきコラボレーションを性別年齢問わず楽しんでいただきたかったので、時計を買って下さった方にノベルティとして書き下ろしのイメージソング『トキメクトキ』のCDを形にしたんです。

MVも守殿愛生さんという若い女優さんに出演いただいたり、ロケ地も学校の教室を使わせていただいたり。

やっぱり時計の商品としても中高生の女性向けということで、ターゲット層を明確に意識することもこの案件があったからこそできたことだと実感しました。

―――題材があって曲を作るというお話にも通じるかと思うのですが『1番綺麗』(M-4)も、あるエピソードがきっかけだったんですよね。

同い年で家も隣同士の従姉妹に向けて作った曲で、題材に大きく引っ張っていただきました。

結婚式で歌を歌わせてもらう前に読む手紙を書いているうちに、この曲のメロディがどんどん浮かんできて。

気付いたらピアノの前に座って曲を作り始めていまして、歌詞は手紙の書き始めからの私の気持ちを全部詰め込んだんです。

「手紙を読むのは止めて曲ができたんで歌います」って言って急遽プレゼントしましたね。

この曲も「従姉妹が結婚する」ってきっかけがないとできなかったですし私、なんでもきっかけにして曲を作ってるなって改めて気付きましたね。

音楽制作も、やっぱりどれだけ日常が充実しているかにつながってくるんだなと。

―――アーティストさんによっては「私はこういう曲作りしかできません」「こういう作り方が私のポリシーなんです」というスタンスの方もおられる中で、日常からインスパイアされたことに対して柔軟に対応されているのがすごいなと感じます。

昔はライブハウスのご出演も多かったと思いますが、活動されているフィールドも少しずつ幅広く変化されていますよね?

最近では、私の通っていた音楽教室サロンでのライブも実施しましたね。

私も高校生の頃までずっと通っていた場所なので、母校みたいな感覚なんですよね。

私が通っている頃は、ピアノならピアノを弾くというイメージしかなくて、歌も一緒にっていう選択肢がなかったんですよね。

なので、弾き語りっていうものがあるんだって気付いたのも後付けで。

今、教室に通っておられる方に向けて「シンガーソングライターっていう音楽への道もあるよ。

こういうことをしているお姉さんがいるよ」って知ってもらえるきっかけづくりが、できたらなという想いを込めていましたね。

日常も旅と同じ。

あなた自身の日々を重ねてこの1枚を聴いて欲しい

松尾優

―――活動を重ねるにつれてそういった後世に向けての想いが、だんだん強くなっておられるんですね。

『君が大人になって』(1st single)や今回収録されるリード曲『Dear me.』(M-8)も次世代に向けてのメッセージ性が強い楽曲だと感じましたが、ご自身がそういったモードに変化しているということですか?

実は自分の中にあまり意識はなかったんですけど、周りの方に言っていただいて、私もだんだん曲の方向性が変わってきたんだなって初めて気付くというか。

「子供たちに聴かせたいです」って言ってもらえることも増えたので、やっぱり音楽の先生をしていた経験も大きいなと思いますね。

初期の曲は若さ故なのか恋愛を題材にした曲が多かったんです。

なので、昔の曲のほうが好きというお声をいただくこともあるんですけど「今の私はこれなんです」って自信をもって言えることも事実なので。

例えば『Dear me.』(M-8)の「きっと思うより世界は広い。

きっと思うより自由で良い。

一度きりの旅を自由に始めようか。

新しい自分に出逢うため」というこの歌詞も、先程お話ししたようなタイアップやご依頼などいろんな事を経験しないと書けなかったなと思いますし。

やっぱり、私自身が変わると生まれてくる曲も自然と変わってくるので、変化した部分も含めて世界観を楽しんでいただけたらなと。

―――今回のアルバムタイトル『風とボヤージュ』もご自身が経験されてきた人・もの・出来事との出逢いが反映されていますよね。

タイトルの元になったのは、先程のお話にも挙げた『leaves』(M-1)をモチーフにしていて。

1枚の葉っぱが風に乗っていろんな場所を旅するように、人と人が出逢う情景を表現したくて。

あとはアルバム1枚を通しても楽曲に“風”というワードが多かったので組み合わせました。

やっぱり日常も旅と同じだと思うんですよね。

もちろん、旅行に出かけた方が刺激も多いし知らない場所や人にも出逢うと思うんですけど、それは日常でも同じですよね。

同じ道だけじゃなくて知らない道を通るだけで新鮮な気持ちにも出逢えると思うし、日常にも旅と同じような感覚は転がっているなという想いも自分の中に芽生えていて。

そんな部分にも感化されて、今回『風とボヤージュ』というタイトルに辿り着きました。

人はいろんな過去を振り返ることも、未来を想い描くこともできる。

それぞれの人生の中のこれまでの出来事と照らし合わせて、風に乗って旅をするようにこのアルバムを聴いていただけるとうれしいです。

流行り廃りに動じない音楽を。

これが今の松尾優です

松尾優

―――今の優さんならではの等身大の想いがたくさん詰まったアルバムの制作ですが、今回もレコーディングはお馴染みのメンバーで実施されたんですか?

いつもベースとドラムはスタジオラグ西院店でエンジニアの阪本さんに作っていだいていますね。

レコーディングメンバーは前回とほぼ一緒のメンバーなんですけど『Dear me.』(M-8)は、リード曲ならではの特別感を出したくて、新たにSaxプレイヤーの内藤大輔さんに参加していただきました。

この楽曲には絶対サックスのサウンドが合うっていう自分の中のイメージもあって、自分の音源で初めてサックスを入れたんですけど、カラーが一気に変わりましたね。

―――今回ミックスにすごく時間をかけられたとのことですが、これだけは譲れないこだわりなどありましたか?

私の音源は、もちろん歌もですけど、ピアノを売りにしたいというのがあって。

ピアノをあえて少し大きめのボリュームにして、しっかり聴こえるようにしていただいています。

あと『leaves』(M-1)では、ピアノ1本の弾き語りとバイオリンだけで録ってもらってるんですけど、歌がなくてもインストだけで成立する音を作りたい想いがあって。

普通に出回っている音源よりも私の音源の場合、弦楽器の音も大きめに聞こえるように作ってもらっていて、そいういった部分をあえて聴かせたいというこだわりはありましたね。

今回の制作では、今の時代に流行っているかとかは関係無しに、自分らしい音のバランス感を大事にしました。

そのバランスの配分はすごく悩んだんですけど、やっぱり自分が納得できるものでないと世に出せないなと思ったので。

『Kiss and Fly』(1st full album)以来の揺らぎと悩みを経験しましたが、今の自分が1番納得できるものを妥協せずに作れたと思っています。

―――エンジニアの小倉ユウゴさんとも信頼関係が熱いですよね。

ミックスで「これで大丈夫」って思ってもマスタリングをしてみると、またミックスの時とは印象が変わって今回のレコーディングでは何回も小倉さんにやり直してもらっていたんですけど、小倉さん自身も音楽活動をされている方なので、アーティストならではの理解があるというのはすごく心強いですね。

例えば、いつもメインの主旋律のボーカルレコーディングをしてからコーラスを重ねて録るんですけど、楽器陣のサウンドが実際にレコーディングを始めると、考えてたイメージと異なることがあって。

今回コーラスのハモりも、もともと私が考えてたものでは、うまくいかなくて。

でも、うまくいかなくなった状況からその場でコーラスを考え直すことが特に今回は多かったので、その適応能力とアレンジセンスが素晴らしいって、いつも小倉さんは褒めてくれるんですよね。

タッグを組んでから長いと思いきや、意外と約3年前からなんですよね。

気軽にサクっと何でも自分でやってしまうというところが、私と小倉さんは似ているかもしれないですね。

私も最近MVを自分で編集し始めるようになったんです。

そんな高度なレベルなことはできないですけど、こだわりは自分で形にしようってなっちゃって。

―――MVといえば『カフカ』(M-5)では、初めてのドローン技術を使った撮影に挑戦されたということですが、映像越しでも躍動感や緊張感がダイレクトに伝わってきますよね。

この曲は3分半くらいしかないんですけど、実はスポーツ並みの体力を使って弾いているんですよ。

MVも実は全部で32テイク撮ってようやくOKを出せて。

気付けば6時間くらいずっと弾き続けていましたね。

レコーディングが終わった後の音源に合わせて弾くのが難しくて、いかに忠実に弾いて曲を完成させられるのかという難しさもこの撮影を通して学ぶことができた気がしますね。

『カフカ』(M-5)って実はチェコ語なんですけど、日本語に訳すとカラスという意味なんですよ。

カラスって人によってはあまり良いイメージがないかもしれないんですけど、私は見方によっては光と影のような2面性があると思うんです。

カラスならではのイケイケどんどんなかんじとか、野心に溢れている感じは、表立ってアーティストとして活動をしていく上で必要だなと。

そういった漲る(みなぎる)チャレンジ精神を曲にしようという気持ちが強くて、今回インストの曲として表現をしましたね。

―――言葉はなくとも、言葉を越えたアグレッシブな演奏から今後も貪欲に未来に向かって突き進んでいかれる像が自然と浮かびました。

では、最後にアーティストとしての今後の目標をお聞かせ下さい

近い目標としてはCMソングを作りたいっていう想いがあって、それこそテーマをいただいて音楽と映像組み合わせることができたら、よりドラマチックな世界が生まれるんじゃないかと想い描いています。

音楽×映像でいえば、ドラマ音楽の制作をしてみたいですね。

他ジャンルとのコラボレーションでいうと、絵本の読み聞かせのバックで演奏をしたいと思っていて、読み聞かせの内容によって自然に曲も即興で変えて演奏してというようなこともやってみたいです。

音楽と何かを一緒に組み合わせて、さらにパワーアップした表現を届ける瞬間に立ち会いたいですね。

将来的には”誰が聴いても分かってもらえる曲”を作りたいです。

小さい子供からお年寄りの世代まで「あぁ、この曲はこういうことか」って分かってもらえるような曲を作りたいんですよね。

もっとスケールの大きいことをいうと音楽の教科書に載せていただけるような曲ですね。

皆が困ったときに「あの曲あるやん」って自然と思い浮かべてもらえるような曲を作って、流行り廃りなく歌ってもらえるような曲をいつか作っていけたらなと思います。

「これが今の松尾優です」赤い靴を履いたピアノレディ、松尾優インタビュー

2017.11.3 Release松尾優 3rd full album「風とボヤージュ」

  1. leaves
  2. 君と見たい世界がある
  3. ワンピース
  4. 一番綺麗
  5. カフカ
  6. あまのじゃく
  7. 泣きたくなった時に
  8. Dear me.
  9. Soul melodyBonus track. 風花 feat.田中純

Recording musician

松尾優:Vocal & Piano & Synthesizer大江和基:Guitar渡辺健二:Bass森田諒:Drums梶谷遼平:Percussion水野万裕里:Violin河野明敏:Cello内藤大輔:Sax田中純:Bariton

Recording staff

小倉ユウゴ:Recording engineer & Mixing & Mastering阪本大雅:Recording engineer (Drums & Bass) at スタジオラグ西院店

松尾優

松尾優

幼稚園で習ってきた歌を覚え、家に帰ってはおもちゃのピアノで弾いて家族に聴かせていた子供だった。

4歳からピアノ、9歳からエレクトーンに親しみ、小学2年生の時に果たしたピアニスト小原孝のリサイタルでのゲスト出演が、後にアーティストとなる道に影響を与える。

一度聞けば虜(とりこ)になってしまうそのピアノの音色に、天使のような透き通る歌声がふわりと乗せられた時、人の心を柔らかく包み、癒していく。

京都が生んだシンガーソングライター、ピアニスト。

【WORK】

松尾優オフィシャルサイト

松尾優オフィシャルTwitter

松尾優オフィシャルインスタグラム

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