【邪悪なる美旋律】シンフォニックブラックメタルのおすすめバンドまとめ
ヘビーメタルのサブジャンルの中でもアンダーグラウンドな音楽であり、聴く人を選ぶジャンルがブラックメタルです。
その起源や血塗られた歴史などはここでは省きますが、近年は2018年に公開された映画『ロード・オブ・カオス』などで知ったという方も多いかもしれませんね。
そんなブラックメタルにもさらにサブジャンルがあり、クラシックの影響を感じさせるオーケストレーションやストリングスなどを導入したジャンルが「シンフォニックブラックメタル」なのです。
今回の記事は、シンフォニックブラックメタルのバンドを有名どころからマイナーなバンドまで紹介しています。
最近このジャンルに興味があるという方、ぜひご覧ください!
【邪悪なる美旋律】シンフォニックブラックメタルのおすすめバンドまとめ(1〜10)
Mother AnorexiaAnorexia Nervosa

アノレクシア・ネルヴォサはシンフォニックブラックメタルとしては珍しい、フランス出身のバンドです。
1991年に結成ということでシンフォニックブラックメタルの中ではかなり古い部類のグループと言えるのですが、アルバムを4枚リリースして2007年に解散しており、マニアックな存在と言えるかもしれません。
2000年代以降はフランスにもデススペル・オメガのような独創的なブラックメタルバンドが熱心なファンの間で高い知名度を誇っておりますが、こちらのアノレクシア・ネルヴォサも強烈な個性を持ち合わせており、フランスというあまりメタルが盛んとは言えない国だからこそ特異な存在感を持つバンドが登場するのかと邪推してしまいますね。
そんな彼らの本領が発揮されるのは2000年にリリースされたセカンド作『Drudenhaus』からで、狂おしいほどの絶叫を見せるデスボイスと荘厳極まりないシンセの音色、音の壁の如きブラストビート、やりすぎなほどに大仰でドラマチックな楽曲展開、ゴシックかつデカダンスが支配する世界観、好きな人だけ聴いてくれと言わんばかりのアグレッシブなサウンドは熱狂的なファンを生み出すほどのインパクトを残したのです。
続く2001年のサードアルバム『New Obscurantis Order』ではさらなる深化を遂げており、最高傑作とするファンも多くいます。
ラストアルバムとなった『Redemption Process』では緩急を覚えたと思しき洗練されたサウンドを展開、さらには日本盤のボーナストラックにX JAPANの初期名曲『I’ll Kill You』をカバーも収録されており、こちらも必聴の内容となっています。
皇軍 (Takao)Chthonic

ヨーロッパのバンドが中心のシンフォニックブラックメタルというジャンルですが、もちろん他の国でも重要なバンドやグループは存在しています。
本稿で取り上げているソニックは台湾のグループであり、世界的にも最も知られているアジア発のブラックメタルバンドです。
政治家という顔も持つボーカリスト兼二胡奏者のフレディ・リムさんを中心として1995年に結成、アジアのバンドならではの世界観やメッセージ性のあるコンセプチュアルな作品をリリース、日本にも度々来日して高い知名度を誇る存在なのですね。
ブラックメタル譲りのブルータリティにシンフォニックな要素を盛り込んだシンフォニックブラックメタルの基本は押さえつつ、伝統楽器である二胡の哀愁を帯びた音色が彼らのサウンドの独自性を高めています。
初めて聴くシンフォニックブラックメタルとして選ぶという意味ではやや変化球かもしれませんが、正統派のヘビーメタル的なクサメロも存分に聴かせてくれますし、前述したようにアジアの伝統楽器や民族楽器を使用することでオリエンタルな要素が随所に感じ取れることもあって、日本人には不思議となじみやすいサウンドというのも特筆すべき点ですね。
余談ですが、女性ベーシストとしてシーンのアイコンのような存在感を放つ実力派、ドリス・イエさんはバンドのリーダーであり、フレディさんの奥さまでもあるのですよ。
Beneath the Burial SurfaceLimbonic Art

流麗かつどこか悲愴なメロディを生み出すキーボード、鋭利なリフを刻むギター、無機質なドラムマシンのリズム……といったように、シンフォニックなブラックメタルの王道をいくサウンドで著名なノルウェー出身のバンド、リンボニック・アート。
デュオという編成はサテリコンを彷彿させますが、リンボニック・アートはストレートなシンフォニックブラックメタルの魅力を存分に楽しめる音楽性を持つバンドです。
デビュー作となった1996年のアルバム『Moon in the Scorpio』は全7曲で短いインスト以外は全て長尺曲で占められており、オープニングナンバーの『Beneath the Burial Surface』からして13分を超える内容で明確に大作志向のバンドということが理解できるでしょう。
メロディアスではあるのですが、ブラックメタルの邪悪さを前面に押し出したサウンドであり、良好とは言えないサウンドプロダクションも含めて、おそらく初心者の方には厳しい音楽性かもしれません。
とはいえ、シンフォニックブラックメタルを深掘りしようとしている方であれば、いずれは必ず聴いていただきたいバンドですね。
なお、中心人物のディーモンさんはエンペラーのメンバーであるサモスさんとタリムさんが結成したバンド、ザイクロンのデビューアルバムにボーカリストとして参加していますよ。
【邪悪なる美旋律】シンフォニックブラックメタルのおすすめバンドまとめ(11〜20)
I Am LegendStormlord

シンフォニックブラックメタルは、大仰なキーボードの音色という点ではエピックなパワーメタルとのサウンド面での相性が良いとも言えますよね。
シンフォニックブラックメタルの持つオカルティックな暴虐性と、仰々しいシンフォニーが炸裂するパワーメタル的な要素を兼ね備えたバンド、それがイタリア出身のストームロードです。
北欧のバンドにある寂寥感や哀愁よりも、やりすぎ感すら漂うドラマチックな楽曲展開やクサメロ愛好家にもおすすめしたいフックたっぷりのフレーズ、ギリシャ神話を題材とした歌詞や世界観、時折導入されるオペラ風のクリーンパートが迫りくるサウンドはやはりイタリアならではのものと言うべきでしょう。
2008年の通算4枚目となるアルバム『Mare Nostrum』辺りからプロダクションが著しく向上してサウンドも洗練され、シンフォニックブラックメタル初心者にとっても聴きやすくなった反面、ブラックメタルらしい暴虐性やカルトな雰囲気は減退してしまいますが、成長過程を楽しむという意味でもデビュー作から順番に聴いていくのがおもしろいかもしれません。
シンフォニックブラックメタルも真正に近いシンフォニックブラックメタルを好まれる方は、迷うことはなく初期の3枚のアルバムをチェックしましょう!
To Thou Who Dwellest In The NightArcturus

1990年にノルウェーはオスロにて結成されたアークチュラスもまた、シンフォニックブラックメタルの歴史において重要な位置を占めるグループです。
ノルウェーのブラックメタルやエクストリームなメタル界におけるミュージシャンたちが多く関わっていることも特徴的で、いわばオールスターが集まったプロジェクトとも言える存在なのですね。
そんな彼らが1996年に発表したデビューアルバム『Aspera Hiems Symfonia』は、これぞシンフォニックブラックメタルの金字塔として知られる大名盤!
シンフォニックブラックメタルの基本形とも呼べるサウンドであり、確実に押さえておくべき作品として知られているアルバムです。
アルバムジャケットからして危険な雰囲気が漂う1997年のセカンドアルバム『La Masquerade Infernale』ではエクストリームかつ前衛的なオペラのようなサウンドを展開、デビュー作の内容を気に入った方を大いに惑わせる音楽性の変化でこのバンドの特異性を大いに発揮させます。
2007年をもって解散、その後2011年に再結成を果たして新作も発表した彼らの全貌はリリースしたアルバムの全てを聴いて初めて理解できるのですね。
むしろ、全てのアルバムを聴いたらますます理解できなくなってしまう可能性もなきにしもあらずですが、シンフォニックブラックメタルのオリジネイターという意味では、まずは前述したデビューアルバムをチェックした上で、他の作品にも手を伸ばしていくという聴き方がベターかもしれません。
Rider on the BonezDiabolical Masquerade

ディアボリカル・マスカレードという、ブラックメタル的な邪悪さよりもどこか耽美的で叙情的なダークさを感じさせるバンド名に興味を引かれた方、間違いなく音も気に入るはずです!
ディアボリカル・マスカレードはバンドではなく、スウェーデンが生んだデスドゥームの伝説的なバンド、カタトニアのオリジナルメンバーにしてギタリストのアンデシュ・ニーストロムさんによるソロプロジェクトです。
カタトニアと並行して作品をリリース、2001年に4枚目のアルバム『Death’s Design』を発表したのを最後に惜しくも活動を停止していますが、カタトニアの持つ幻想的かつ陰鬱な闇をブラックメタルやスラッシュメタルといったアグレッシブなサウンドへと昇華した音はこのユニットならではのものでしょう。
ブラックメタル譲りのノイジーなギターの中にも勇壮なメロディラインが随所に盛り込まれ、ニーストロムさんの非凡な才能がうかがえますね。
特筆すべきは、ニーストロムさんと同じスウェーデン出身で、エッジ・オブ・サニティなどの活動やプロデューサやサウンドエンジニアとしても引っ張りだこのミュージシャン、ダン・スワノさんがどの作品にも参加しているという点です。
ディアボリカル・マスカレードにおいてはプロデュースやミキシングに加えてドラマーとしてもレコ―ディング参加しており、ディアボリカル・マスカレードの作品群はスウェーデンが生んだ異能による共同作業が生んだ素晴らしい結果だとも言えましょう。
WitchcraftObtained Enslavement

アルバムのジャケットやタイトルだけで、邪悪な香りが濃厚なまでに漂う聖地ノルウェー産ブラックメタル!
マニアにしか知られていないバンドではあるのですが、実は同じくノルウェーのブラックメタルの大御所ゴルゴロスのメンバーが参加しているなど、まさにマニア垂涎のカルトなグループなのですね。
バンドの結成は1989年とかなり古く、1992年と93年にはそれぞれデモテープを制作、翌年の94年にデビューアルバム『Centuries of Sorrow』をリリースしています。
これが実にプリミティブなブラックメタルといった趣のサウンドで、地獄の底から響き渡るようなボーカルとひたすらブラストビートを打ち出すドラムス、悲哀を帯びたギターといった王道のブラックメタルを鳴らしておりました。
そんな彼らも次作以降は音楽的な成長を遂げて、1997年に名盤の誉れ高いセカンドアルバム『Witchcraft』をリリース。
シンフォニックブラックメタルの要素を大胆に取り入れた作風へとシフトしており、映画のサウンドトラックの如きオープニングの仰々しいオーケストラサウンドが飛び込んできた瞬間、好きな人であれば思わずニヤリとしてしまうことでしょう。
ブラックメタル流儀の寒々しいリフと邪悪すぎるボーカル、恐ろしいほどのブラストビートはそのままに、北欧神話のようなファンタジックなシンフォニーが炸裂するエピックなサウンドに昇天必至!
同年にエンペラーの傑作『Anthems To The Welkin At Dusk』がリリースされたことも踏まえて、90年代シンフォニックブラックメタルを語る上で必ずチェックすべきバンドであることは間違いありません。