【洋楽】ポストハードコアとは~代表的なバンドまとめ
洋楽や邦楽を問わず、エモやラウドといった形で紹介されるバンドをお好きな方であれば、一度は「ポストハードコア」なるジャンルを目にしたことがありますよね。
1970年代後半から始まったハードコアパンクを出自とするバンドたちの中で、既存のハードコアに収まりきらない独自の音を鳴らす面々が「ポストハードコア」と呼ばれるようになったのですが、さらにエモコアやスクリーモなどの派生ジャンルが生まれ、2000年代以降はより広い意味で使われており、定義付けが非常に難しいジャンルです。
今回の記事では、そんなポストハードコアの形成という意味で重要な役割を果たした、1980年代から1990年代にかけてデビューしたバンドを一挙紹介します!
もくじ
- 【洋楽】ポストハードコアとは~代表的なバンドまとめ
- Waiting RoomFugazi
- SavoryJawbox
- If It Kills YouDrive Like Jehu
- Bad PennyBig Black
- Corpse poseUnwound
- ScrapeUnsane
- NubTHE JESUS LIZARD
- PorcelainThursday
- This Ain’t No PicnicMinutemen
- Rather Be DeadRefused
- Celebrated SummerHüsker Dü
- FazerQuicksand
- Iron Clad LouHum
- PickpocketAt The Drive-In
- Mistakes And Regrets…And You Will Know Us by the Trail of Dead
- Head ColdHeroin
- Side Car FreddieHoover
- MirrorMoss Icon
- For Want OfRites of Spring
- Altoids, Anyone?Tar
【洋楽】ポストハードコアとは~代表的なバンドまとめ
Waiting RoomFugazi

アメリカのハードコアパンクの歴史において最重要バンドの一つ、ワシントン出身のマイナー・スレットのフロントマンであったイアン・マッケイさんを中心として1986年に結成されたフガジは、まさに今回の記事のテーマである「ポストハードコア」を象徴するような存在です。
暴力的な面もあったハードコアシーンとは距離を置き、真の意味で「ハードコア精神」を持つイアンさんがハードコアを進化させるべくフガジを始めたことからも、その重要性が理解できるというものでしょう。
そんな彼らの音楽性はまさに1990年代におけるハードコアの進化形と呼べるもので、スピード重視のパンクスタイルとは全く違うさまざまなリズムパターンの冒険から生まれるグルーヴや独創的かつソリッドなギター&ベースサウンド、甘さもキャッチーさもないのに胸を締め付けられるようなメロディはまさにエモーショナルとしか言いようがないのですね。
そういったサウンドがエモコアの元祖とも呼ばれる理由ではあるのですが、90年代のオルタナティブロックやグランジ、そして後続のポストロックといったジャンルをも飲み込んだ独自のサウンドは多くのバンドに影響を与えたのです。
2003年の活動休止までにリリースしたアルバムは6枚、イアンさんが運営するディスコードレコードも含めてジャンルをこえた大きな影響力を持ち続けながらも、徹底的な反商業主義を貫く彼らの姿勢はアメリカンハードコアおよびポストハードコアの歴史そのものと言えましょう。
アルバムごとに進化し続けたフガジですから、可能であれば全ての作品をチェックすることをオススメします!
SavoryJawbox

フガジのイアン・マッケイさんが徹底的なインディーズ主義を貫くワシントンD.C.ハードコアシーンの象徴なら、同じくシーンの発展に大いに貢献したJ.ロビンズさんは、インディーズに留まらずメジャーシーンにおいても活躍、プロデューサーとしても素晴らしい作品を世に送り出した偉大なアーティストです。
90年代のエモコアやポストハードコアと呼ばれるバンドのアルバムを聴かれている方は、かなりの確率でロビンズさんの名前がプロデューサーとしてクレジットされていることに気付くはず。
そんなロビンズさんもイアンさんと同じくバリバリのハードコア出身でありながら、ハードコアの発展形であるポストハードコアの形成に尽力した最重要人物の一人と言えるのですね。
さまざまなバンドで活躍しているロビンズさんですが、今回紹介するのは1989年に結成されて後にメジャーへも進出を果たした名バンド、ジョーボックスです。
初期の2枚のアルバムはイアンさん率いるディスコードレコードからリリース、不協和音やノイズを自在に操る独特のギターアンサンブルとしなやかなリズム隊によるアンサンブル、ねじれたポップセンスから生み出されたサウンドは間違いなく90年代のエモやポストハードコアに多大なる影響を与えました。
その後は前述したようにメジャーへ進出、90年代ポストハードコアの聖典とも言える傑作『For Your Own Special Sweetheart』を発表します。
メジャーならではの力の入ったプロダクションに初期のファンからは賛否両論あったことは事実ですが、ポストハードコアの歴史を知る上で必ず聴いておくべき作品であることは間違いないでしょう。
とはいえ、彼らがリリースした4枚のアルバムは全て聴いてほしいところです!
If It Kills YouDrive Like Jehu

アメリカはカリフォルニア州、サンディエゴには独自のパンク~ハードコアシーンが存在しており、個性的なバンドが多く誕生しています。
ポストハードコアの歴史を眺めてみると、フガジを中心とするワシントンハードコアシーンとはまた違った魅力を持つバンドたちが活動していたのですね。
そんな独自のシーンを象徴する最も著名なバンドの一つが、1990年から1995年まで活動したドライヴ・ライク・ジーヒューです。
ポストハードコア黎明期の1980年代後半に活躍していたピッチフォークというバンドのメンバーが結成、リリースしたアルバムはたったの2枚ですが、フガジやジョーボックスといったレジェンドたちと同じく後続のエモコアやポストハードコアのバンドたちに強烈な影響を及ぼしたのです。
ツインギターから生まれる既存のロックやパンクのパターンからは逸脱した変則的なフレーズの絡み合い、複雑に展開するアンサンブルを支えるベースとドラム、メロディと絶叫の間のような歌唱といったスタイルはまさにポストハードコアの原型と呼べるものでしょう。
彼らからの影響を口にするミュージシャンは多く存在していますが、ここで強調しておきたいのは短命に終わったカルト的人気のバンドというだけではなく、メンバーの何人かはその後も音楽シーンの中で大いに活躍したことは強調しておきたいですね。
リズムギタリスト兼ボーカリストのリック・フローバーグさんは、メジャーシーンでも活躍したロケット・フロム・ザ・クリプト、インディーズに戻った後もホット・スネイクスといったバンドで活躍。
ドラマーのマーク・トロンビーノさんはプロデューサーとして大成し、ジミーイートワールドやミネラルといった90年代エモコアの超名盤を世に送り出し、2000年代以降もエモやポップパンク系のバンドたちのアルバムを多く手掛けていますよ。
Bad PennyBig Black

アメリカのインディーズシーンにおける首領、泣く子も黙る名エンジニアにしてギタリスト兼ボーカリストでもあるオルタナティブロックのゴッドファーザー、スティーヴ・アルビニさん。
インディー原理主義、頑固一徹といったイメージも強いアルビニさんのミュージシャンやエンジニアとしての偉大なキャリアは短い文章で語れるようなものではないですが、今回取り上げているのはアルビニさん自身が率いるバンド、ビッグ・ブラックについてです。
ビッグ・ブラックは1981年にまだ大学生だったアルビニさんが結成したバンドで、1987年に解散するまで通算2枚のオリジナルアルバムと2枚のライブアルバム、数枚のEP作品を残しています。
ドラマーが不在の代わりにローランド製のドラムマシーンを使用していたというのが特徴的で、エフェクトをかけてがなりまくるボーカル、ソリッドかつノイジーなギターリフの応酬と空間を埋めるような役割を果たすヘビーなベースライン、ドラムマシーン特有の無機質なビートが生み出すサウンドはポストハードコアやノイズロックの先駆け的な音として高く評価されています。
社会におけるタブーに触れまくった歌詞は特に現代社会において問題視され、アルビニさん本人も若気の至りと反省しているようですが……そういった点も含めてとにかく危険かつ強烈なバンドであった、ということなのですね。
アルビニさんの手掛けた作品は聴いたことがあっても、アルビニさん自身のバンドによる作品はまだ未聴という音楽ファンもいるでしょうから、興味を持たれた方は要チェックです!
Corpse poseUnwound

2022年の7月、まさかの再結成ツアーを行うことを発表して一部の熱狂的なファンを狂喜させたUSインディーズ界の伝説的なトリオ、アンワインド。
ワシントン州オリンピアを拠点として、1991年の結成から2002年までの約10年間、インディーズでのDIYな活動を続けて日本も含む精力的なツアーを繰り返した彼らは、メジャーシーンで商業的なインパクトを与えたようなバンドではないですが、時代のはやりなどには一切媚びないポストハードコアサウンドで独自の影響力を持つバンドです。
1991年に創設され、ビキニ・キルやスリーター・キニーなどのいわゆるライオットガールのブームを巻き起こしたバンドたちが所属していたレーベル、キル・ロック・スターズ・レコードにて作品をリリースし続けたということも特筆すべき点でしょう。
そんな彼らの音楽性はまさにポストハードコアと言えるサウンドで、トリオ編成ならではのアンサンブルを軸として凶暴なノイズが暴発、メロディとは言えないヴォーカルやヒリヒリするような独自の緊張感で満ち満ちた音像は、ソニック・ユースとフガジの融合といった表現もされていました。
とはいえ作品のリリースを重ねるごとにメロディへの興味も示しつつ、安易なセルアウトなどはしない硬派な音楽性はよりディープに、さらに研ぎ澄まされていくのです。
聴きやすいという意味では1996年にリリースされた通算4枚目のアルバム『Repetition』は比較的ポップな要素もあり、彼らの音楽への入り口としては比較的ライトと言えるかもしれません。
ScrapeUnsane

今まで紹介してきたポストハードコアと呼ばれるバンドたちとはまた違った、むしろ異質な存在と言えるかもしれません。
ニューヨークの地下シーンが誇る「ノイズロックの帝王」ことアンセインは、唯一のオリジナルメンバーであるクリス・スペンサーさんを中心とするトリオ編成として1988年に結成されました。
1991年にアメリカンインディーズシーンにおける重要なレーベル、マタドール・レコードより発表されたセルフタイトルのデビュー作は、アルバムジャケットの強烈なアートワークを見るだけでもその危険度が匂い立ってくるような代物。
狂気的なボーカル、メタリックかつノイジーなギターリフ、重々しいベース、攻撃的なドラムスが三位一体となって迫りくる轟音は、ハードコアでもありメタルでもあり、そのどちらでもないような個性がこの時点で際立っています。
近しい存在として引き合いに出されることの多いヘルメットなどのオルタナティブメタル系のバンドと比べると、アンセインの作り出すどろどろとした音世界はとにかく生々しく、悪趣味とも言えるアートワークも含めて触れたら怪我をしそうな緊張感が本当にすさまじい。
その凶悪ぶりと殺伐としたカオティックなサウンドは「ジャンク」とも呼ばれ、ハードコアという音楽ジャンルのまた違った可能性を感じさせるものでした。
長きに渡る活動の中でリリースされた作品群の基本路線は不変ながら、ロックンロール的なギターソロやブルージーなパートも盛り込まれるなど、混沌一辺倒だけではない懐の広さも感じさせるのが肝と言えますね。
聴き手を選ぶ音ですが、興味のある方は恐れず手に取ってみてください!