【洋楽】ポストハードコアとは~代表的なバンドまとめ
洋楽や邦楽を問わず、エモやラウドといった形で紹介されるバンドをお好きな方であれば、一度は「ポストハードコア」なるジャンルを目にしたことがありますよね。
1970年代後半から始まったハードコアパンクを出自とするバンドたちの中で、既存のハードコアに収まりきらない独自の音を鳴らす面々が「ポストハードコア」と呼ばれるようになったのですが、さらにエモコアやスクリーモなどの派生ジャンルが生まれ、2000年代以降はより広い意味で使われており、定義付けが非常に難しいジャンルです。
今回の記事では、そんなポストハードコアの形成という意味で重要な役割を果たした、1980年代から1990年代にかけてデビューしたバンドを一挙紹介します!
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【洋楽】ポストハードコアとは~代表的なバンドまとめ(1〜10)
Rather Be DeadRefused

スウェーデンが世界に誇る伝説的なニュースクールハードコア~ポストハードコアバンド、リフューズド。
ザ・(インターナショナル)・ノイズ・コンスピラシィなど複数のバンドでも活躍するスウェーデンハードコアのカリスマ的な存在のフロントマン、デニス・リクセゼンさんを中心として1991年に結成されたリフューズドは、1998年に解散するまでに3枚のアルバムをリリース。
2010年代にはまさかの再結成を果たして奇跡的な来日が実現、2枚の新作アルバムも発表しています。
そんな彼ら、最初期はハードコアパンクの影響下にある荒々しい音を鳴らしていたのですが、1996年のセカンドアルバム『Songs to Fan the Flames of Discontent』からメタリックなギターが盛り込まれ、デニスさんのボーカルもより激しいシャウトへと変化、いわゆるニュースクールハードコアにおける傑作の誉れ高い名盤を生み出しました。
作品をリリースするごとにさまざまな音楽的実験を繰り返してきた彼らの集大成となったのが、1998年リリースの傑作サードアルバム『The Shape of Punk to Come』です。
インダストリアルやエレクトロニカにポストロック、ジャズなどの要素も大胆に導入された独創的なハードコアはまさに「ポストハードコア」であり、凡百のポストハードコアとは全く違う次元に達したフリーキーな音楽性は世界中の音楽ファンやミュージシャンたちに衝撃を与えたのです。
デニスさんは左派思想の持ち主でもあり、権力や資本主義に対する痛烈な批判といったテーマも掲げており、膨大な知識に裏打ちされたインテリジェンスな小説や映画からの引用なども彼ら独自の音楽性を特徴づけるものですね。
前述した再結成後の作品も素晴らしいものですから、合わせてチェック必須です!
Celebrated SummerHüsker Dü

パンクといえば細身のスタイルで派手なヘアースタイル……といったイメージがあるでしょうし、ハードコアパンクはいかつい印象を持たれている方も多いでしょう。
そのどちらにも当てはまらない普段着のような地味とも言えるスタイルで、ハードコアパンクシーンに登場した伝説のバンドがハスカー・ドゥです。
彼らは実際に活動していた時期も熱狂的な人気を得てはいたのですが、むしろ後続のオルタナティブロック系のバンドたちがこぞって影響を公言、解散後に本格的に評価されたタイプのバンドなのですね。
ハードコアシーンにおいて当初から異彩を放っていた彼らは1979年にアメリカはミネソタ州にて結成、特徴的なバンド名は1970年代のボードゲームの名称だそうです。
1983年のデビューアルバム『Everything Falls Apart』は荒々しいハードコアパンクスタイルですが、この時点で哀愁のメロディやフレーズが盛り込まれていることは注目に値しますね。
作品をリリースするごとに音楽性を変化させていった彼ら、セカンドアルバム『Zen Arcade』は2枚組で70分をこえるコンセプトアルバムという大作で早くも独自のアーティスト性を発揮させます。
1985年のサードアルバム『New Day Rising』はよりメロディを重視して幅広い音楽性を提示、ポストハードコアの原型のような音を作り上げました。
その後はメジャーへ進出するも商業的な成功は果たせず解散してしまいますが、ハードコアやパンクに留まらないサウンドを作り上げ、ポストハードコアやエモコア勢のオリジネイター的な存在である彼らの作品は、前述したように90年代以降のオルタナティブロックを愛聴している方も確実にチェックすべきものであると断言しましょう!
This Ain’t No PicnicMinutemen

アメリカはカリフォルニア州出身のミニットメンは、1980年の結成から5年程度の短い活動期間ながら後のポストハードコアやオルタナティブロックに影響を与え、まさにパンクやハードコアの次なる展開をいち早く提示していたバンドです。
2005年にはバンドのドキュメンタリー映画『WeJam Econo – The Story Of The Minutemen』が公開されていることからも分かるように、彼らがシーンに与えたインパクトは非常に大きなものだったのですね。
そんな彼らは80年代ハードコアシーンのカリスマ、ブラックフラッグのグレッグ・ギンさんが運営するレーベル「SSTレコーズ」にて1981年にデビューアルバム『The Punch Line』をリリースします。
一曲目からファンキーなギターのカッティングとうねるようなベースライン、しなやかなドラムスが織り成すトリオならではの隙間の多いアンサンブルから生まれる独自の楽曲にハードコアというイメージで作品を手にした方は思わず驚かれるのではないでしょうか。
独自のセンスと高い演奏技術を武器としてシーンにおいて知名度を上げていく彼らの集大成的なアルバムは、やはり1984年にリリースされた怒涛の4枚組という大作『Double Nickels on the Dime』でしょう!
ジャズやファンク、スポークンワードなどハードコアの枠内から大きく足を踏み外したような音楽性、社会問題に言語学など幅広いテーマを掲げた歌詞といった要素を内包した楽曲群はまさにミニットメン独自の音世界であり、1980年代のアメリカにインディーズシーンにおける素晴らしい偉業を成し遂げたのですね。
残念ながら1985年にフロントマンのD・ブーンさんが事故でこの世を去ってしまい、バンドは解散を余儀なくされてしまいます。
【洋楽】ポストハードコアとは~代表的なバンドまとめ(11〜20)
FazerQuicksand

2022年の11月に再来日公演が決定している伝説のポストハードコアバンド、クイックサンド。
1980年代後半のニューヨークハードコアシーンにおいて象徴的なバンドの一つ、ゴリラ・ビスケッツのギタリストとして著名なウォルター・シュライフェルズさんを中心として1990年に結成され、1990年代に2枚のアルバムを、2012年にまさかの再結成を果たして5年後には復活作となるサード作、2021年には4枚目のアルバム『Distant Populations』を発表しています。
彼らのディスコグラフィを眺めていて興味深いのは、デビューEPこそハードコアの名門レーベルである「Revelation Records」よりリリースしていますが、1993年のデビューアルバム『Slip』の時点で早速メジャーデビューを果たしているのですよね。
期待されていたということの証左とも言えそうですが、残念ながら商業的な成功は収められませんでした。
とはいえ彼らの生み出したポストハードコアサウンドからの影響を口にする後続のバンドは多く、やはりクイックサンドもポストハードコア史における重要なバンドであることには変わりません。
そんな彼らの音楽性は、フガジやジョーボックスなどの影響を感じさせつつも、メタリックで硬質なギターのリフが随所に盛り込まれているというのが特徴的。
ヘルメットなどのバンドによるオルタナティブメタルと呼ばれるジャンルに近しい質感であり、そのような感性から生まれる独自のソリッドなグルーヴは彼らならではのものですね。
さらに言えば初期の頃にザ・スミスの名曲『How Soon Is Now?』をカバーするなど、UKロックへの憧れも感じさせる音作りにも注目してみてほしいですね。
PorcelainThursday

今回の記事では2000年代以降のいわゆるスクリーモと呼ばれたバンドは取り上げていないのですが、その走りとも言えるサーズデイはポストハードコアという流れにおいても重要なバンドですから、00年代初頭のスクリーモを代表するという意味でも今回紹介させていただきます。
1997年にニュージャージーにて結成されたサーズデイは、初期のスクリーモの中ではザ・ユーズドやフィンチといったバンドよりも少し先輩格にあたる存在であり、記念すべきデビューアルバム『Waiting』が1999年に発表されていることも踏まえて、サーズデイの存在が90年代のアンダーグラウンドなポストハードコアと00年代以降の商業的にも大きな成功を収めるスクリーモシーンを繋いだといっても過言ではありません。
彼らの名をシーンに知らしめるのは名門エピタフレコーズにて発表した大傑作セカンド『Full Collapse』ですが、後にあのマイ・ケミカル・ロマンスを輩出したことでも知られている「Eyeball Records」よりリリースされた前述の『Waiting』を聴けば、ニューメタルが支配していた1990年代末期のアメリカのロックシーンの裏側で新たな可能性が芽生えていたことが理解できるはずです。
サウンドプロダクションや演奏能力はインディーズらしくまで稚拙ながら、フロントマンのジェフ・リックリーによる内省的な歌詞とナイーブなボーカルとスクリームが交差するコントラストはまさにスクリーモの走りですし、収録曲に『Ian Curtis』という楽曲があることからも分かるように、ニューウェーブなどのUKロックから影響を受けていることも注目すべき点でしょう。
ラウドでメタリックなスクリーモとは違う繊細なエモーションが渦巻くサーズデイの音世界もまた、ポストハードコアが生んだ素晴らしい可能性の一つであったと言えそうです。
Altoids, Anyone?Tar

シカゴのポストハードコアやノイズロックと言えば、スティーヴ・アルビニさん率いるシェラックやジーザス・リザードといったレジェンドたちが筆頭に挙げられますが、マイナーな存在ながらぜひ知っておいていただきたいバンドが1988年から1995年まで活動した4人組のタールです。
もともとはハードコアパンクを演奏していたという彼らの音楽性は非常に興味深く、フリーキーなポストハードコアを軸としながらも独特のユーモアを兼ね備えたサウンドが他のバンドとはまた違った魅力を放っているのですね。
ノイジーなリフと時に変拍子も織り交ぜたリズムが織り成すグルーヴは混沌やダークさよりも奇妙な雰囲気を作り上げ、誤解を恐れずに言えばポップな要素さえ感じ取れるというのがおもしろい。
1991年のデビュー作『Roundhouse』の時点でその片鱗はうかがえるのですが、シカゴが誇る名門レーベル、タッチ・アンド・ゴー・レコーズよりリリースされたサード作『Toast』辺りから彼ら独自の個性がより明確となった印象ですね。
通算4枚目にしてラストアルバムとなった『Over and Out』は、スティーヴ・アルビニさんとボブ・ウェストンさんという名匠がエンジニアとして参加、彼らの追求してきた音楽性の完成形として推薦したい名盤です。
余談ですが、彼らはアルミニウム製のギターを使っていることでも知られており、EP作品『Clincher』のジャケットはそのギターの写真が使われていますよ。
PickpocketAt The Drive-In

テキサスはエルパソにて1994年に結成されたアット・ザ・ドライヴインは、日本においても知名度の高い90年代ポストハードコア系の代表的なバンドです。
2000年代において先鋭的な音楽性を提示してシーンを席巻、2022年に久々に再結成を果たして新作をリリースしたマーズ・ヴォルタのメンバーセドリック・ビクスラーさんやオマー・ロドリゲスさんが在籍していることでも知られており、強烈極まりない破天荒なパフォーマンスはもはや伝説として語り継がれていますね。
2000年にリリースされたメジャーデビュー作『Relationship Of Command』は、当時コーンやリンプ・ビズキットにスリップ・ノットといった大物を手掛けたロス・ロビンソンさんがプロデュースしたこともあって大きな評判を呼びましたが、そのすぐ後に解散してしまいました。
2011年には再結成を果たして世界ツアーも実施、新作もリリースしていますがその後再度の活動休止を宣言しています。
そんな彼らが1990年代に残した作品、特に『In/Casino/Out』は間違いなく90年代におけるポストハードコアの傑作であり、荒削りだった初期のサウンドから演奏能力やプロダクションも格段に向上しつつ、変則的なギターのリフが絡み合い、セドリックさんのハイテンションなボーカルが自由奔放にわめきちらし、時にメロディアスに歌い上げるアット・ザ・ドライヴイン印のサウンドが明確に提示された重要な1枚なのですね。
『Relationship Of Command』しか聴いていないという方も、ぜひ90年代の彼らの作品を聴いてみてください!