【洋楽】ポストハードコアとは~代表的なバンドまとめ
洋楽や邦楽を問わず、エモやラウドといった形で紹介されるバンドをお好きな方であれば、一度は「ポストハードコア」なるジャンルを目にしたことがありますよね。
1970年代後半から始まったハードコアパンクを出自とするバンドたちの中で、既存のハードコアに収まりきらない独自の音を鳴らす面々が「ポストハードコア」と呼ばれるようになったのですが、さらにエモコアやスクリーモなどの派生ジャンルが生まれ、2000年代以降はより広い意味で使われており、定義付けが非常に難しいジャンルです。
今回の記事では、そんなポストハードコアの形成という意味で重要な役割を果たした、1980年代から1990年代にかけてデビューしたバンドを一挙紹介します!
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【洋楽】ポストハードコアとは~代表的なバンドまとめ(1〜10)
NubTHE JESUS LIZARD

恐ろしいほどの緊張感、ひりついた空気が支配する強烈極まりない独自のヘヴィネスを追求し続けたザ・ジーザス・リザード。
テキサス出身のメンバーによって1987年に結成され、活動初期の段階でシカゴへと移住、あのニルヴァーナの『In Utero』を手掛けたことでも知られる名エンジニアのスティーヴ・アルビニさんと組んでインディーズシーンにおいて強烈な存在感を放ちます。
アメリカの著名なインディーズレーベル「Touch and Go」にてアルビニさんとともに発表した4枚のアルバムはどれもバンド独自の世界観が生み出した異形のヘビーサウンドが素晴らしく、同時に多くの人が楽しめるような内容とは言えない、まさに90年代アンダーグラウンドな音楽性です。
フロントマンのデヴィッド・ヨウさんによる狂気的なヴォーカル、ロック的なアプローチとは一線を画すポストパンクからの影響も感じさせる変則的なギタープレイ、グルーヴの中心としてサウンドを引っ張るベース、無機質なドラムスによるバンドアンサンブルは今聴いても衝撃的ですね。
メンバーのプレイヤーとしてのスキルも高く、スプリット盤をリリースしたニルヴァーナを始めとして多くのアーティストたちが影響を受けています。
メジャー進出後の2枚のアルバムは比較的聴きやすい作風へとシフトしていますが、それでもバンドの持つ狂気は変わらず、ミリオンセラーを出せるようなバンドではないというメンバー自身の言葉通りの音楽性を貫いたのです。
PorcelainThursday

今回の記事では2000年代以降のいわゆるスクリーモと呼ばれたバンドは取り上げていないのですが、その走りとも言えるサーズデイはポストハードコアという流れにおいても重要なバンドですから、00年代初頭のスクリーモを代表するという意味でも今回紹介させていただきます。
1997年にニュージャージーにて結成されたサーズデイは、初期のスクリーモの中ではザ・ユーズドやフィンチといったバンドよりも少し先輩格にあたる存在であり、記念すべきデビューアルバム『Waiting』が1999年に発表されていることも踏まえて、サーズデイの存在が90年代のアンダーグラウンドなポストハードコアと00年代以降の商業的にも大きな成功を収めるスクリーモシーンを繋いだといっても過言ではありません。
彼らの名をシーンに知らしめるのは名門エピタフレコーズにて発表した大傑作セカンド『Full Collapse』ですが、後にあのマイ・ケミカル・ロマンスを輩出したことでも知られている「Eyeball Records」よりリリースされた前述の『Waiting』を聴けば、ニューメタルが支配していた1990年代末期のアメリカのロックシーンの裏側で新たな可能性が芽生えていたことが理解できるはずです。
サウンドプロダクションや演奏能力はインディーズらしくまで稚拙ながら、フロントマンのジェフ・リックリーによる内省的な歌詞とナイーブなボーカルとスクリームが交差するコントラストはまさにスクリーモの走りですし、収録曲に『Ian Curtis』という楽曲があることからも分かるように、ニューウェーブなどのUKロックから影響を受けていることも注目すべき点でしょう。
ラウドでメタリックなスクリーモとは違う繊細なエモーションが渦巻くサーズデイの音世界もまた、ポストハードコアが生んだ素晴らしい可能性の一つであったと言えそうです。
FazerQuicksand

2022年の11月に再来日公演が決定している伝説のポストハードコアバンド、クイックサンド。
1980年代後半のニューヨークハードコアシーンにおいて象徴的なバンドの一つ、ゴリラ・ビスケッツのギタリストとして著名なウォルター・シュライフェルズさんを中心として1990年に結成され、1990年代に2枚のアルバムを、2012年にまさかの再結成を果たして5年後には復活作となるサード作、2021年には4枚目のアルバム『Distant Populations』を発表しています。
彼らのディスコグラフィを眺めていて興味深いのは、デビューEPこそハードコアの名門レーベルである「Revelation Records」よりリリースしていますが、1993年のデビューアルバム『Slip』の時点で早速メジャーデビューを果たしているのですよね。
期待されていたということの証左とも言えそうですが、残念ながら商業的な成功は収められませんでした。
とはいえ彼らの生み出したポストハードコアサウンドからの影響を口にする後続のバンドは多く、やはりクイックサンドもポストハードコア史における重要なバンドであることには変わりません。
そんな彼らの音楽性は、フガジやジョーボックスなどの影響を感じさせつつも、メタリックで硬質なギターのリフが随所に盛り込まれているというのが特徴的。
ヘルメットなどのバンドによるオルタナティブメタルと呼ばれるジャンルに近しい質感であり、そのような感性から生まれる独自のソリッドなグルーヴは彼らならではのものですね。
さらに言えば初期の頃にザ・スミスの名曲『How Soon Is Now?』をカバーするなど、UKロックへの憧れも感じさせる音作りにも注目してみてほしいですね。
【洋楽】ポストハードコアとは~代表的なバンドまとめ(11〜20)
Celebrated SummerHüsker Dü

パンクといえば細身のスタイルで派手なヘアースタイル……といったイメージがあるでしょうし、ハードコアパンクはいかつい印象を持たれている方も多いでしょう。
そのどちらにも当てはまらない普段着のような地味とも言えるスタイルで、ハードコアパンクシーンに登場した伝説のバンドがハスカー・ドゥです。
彼らは実際に活動していた時期も熱狂的な人気を得てはいたのですが、むしろ後続のオルタナティブロック系のバンドたちがこぞって影響を公言、解散後に本格的に評価されたタイプのバンドなのですね。
ハードコアシーンにおいて当初から異彩を放っていた彼らは1979年にアメリカはミネソタ州にて結成、特徴的なバンド名は1970年代のボードゲームの名称だそうです。
1983年のデビューアルバム『Everything Falls Apart』は荒々しいハードコアパンクスタイルですが、この時点で哀愁のメロディやフレーズが盛り込まれていることは注目に値しますね。
作品をリリースするごとに音楽性を変化させていった彼ら、セカンドアルバム『Zen Arcade』は2枚組で70分をこえるコンセプトアルバムという大作で早くも独自のアーティスト性を発揮させます。
1985年のサードアルバム『New Day Rising』はよりメロディを重視して幅広い音楽性を提示、ポストハードコアの原型のような音を作り上げました。
その後はメジャーへ進出するも商業的な成功は果たせず解散してしまいますが、ハードコアやパンクに留まらないサウンドを作り上げ、ポストハードコアやエモコア勢のオリジネイター的な存在である彼らの作品は、前述したように90年代以降のオルタナティブロックを愛聴している方も確実にチェックすべきものであると断言しましょう!
This Ain’t No PicnicMinutemen

アメリカはカリフォルニア州出身のミニットメンは、1980年の結成から5年程度の短い活動期間ながら後のポストハードコアやオルタナティブロックに影響を与え、まさにパンクやハードコアの次なる展開をいち早く提示していたバンドです。
2005年にはバンドのドキュメンタリー映画『WeJam Econo – The Story Of The Minutemen』が公開されていることからも分かるように、彼らがシーンに与えたインパクトは非常に大きなものだったのですね。
そんな彼らは80年代ハードコアシーンのカリスマ、ブラックフラッグのグレッグ・ギンさんが運営するレーベル「SSTレコーズ」にて1981年にデビューアルバム『The Punch Line』をリリースします。
一曲目からファンキーなギターのカッティングとうねるようなベースライン、しなやかなドラムスが織り成すトリオならではの隙間の多いアンサンブルから生まれる独自の楽曲にハードコアというイメージで作品を手にした方は思わず驚かれるのではないでしょうか。
独自のセンスと高い演奏技術を武器としてシーンにおいて知名度を上げていく彼らの集大成的なアルバムは、やはり1984年にリリースされた怒涛の4枚組という大作『Double Nickels on the Dime』でしょう!
ジャズやファンク、スポークンワードなどハードコアの枠内から大きく足を踏み外したような音楽性、社会問題に言語学など幅広いテーマを掲げた歌詞といった要素を内包した楽曲群はまさにミニットメン独自の音世界であり、1980年代のアメリカにインディーズシーンにおける素晴らしい偉業を成し遂げたのですね。
残念ながら1985年にフロントマンのD・ブーンさんが事故でこの世を去ってしまい、バンドは解散を余儀なくされてしまいます。
For Want OfRites of Spring

ポストハードコア黎明期の1980年代前半から中盤にかけて活動、アルバムとEP作品を1枚ずつ発表して解散したバンドながら、後続のエモやポストハードコア系のバンドの先駆的な存在としてリスペクトされているのが、ライツ・オブ・スプリングです。
ワシントンD.C.のハードコアパンクシーンにおいても欠かせない存在であり、メンバーのギィ・ピチョットさんとブレンダン・キャンティさんは後にフガジとして活躍することでも知られています。
年代的にもまだまだゴリゴリのハードコアパンクが中心のシーンの中で、ほとばしるエモーションに満ちたメロディと、単純なパワーコードとは一線を画す繊細なギターワーク、性急なリズムを駆使した楽曲を展開していたというのは本当にすごいですよね。
間違いなく1990年代以降のエモコアやポストハードコアの原型であり、歴史を探っていく上でも確実におさえるべきバンドだと言えましょう。
ディスコードレコードよりディスコグラフィ盤『End on End』がリリースされていますから、オリジナル盤がほしいといったこだわりがなく、とりあえず聴いてみたいという方はこちらを入手することをおすすめします!
Mistakes And Regrets…And You Will Know Us by the Trail of Dead

長いバンド名が印象的なアンド・ユー・ウィル・ノウ・アス・バイ・ザ・トレイル・オブ・デッドは、1994年にテキサス州オースティンにて結成されたポストハードコア~オルタナティブロックバンドです。
2022年には最新アルバム『XI: Bleed Here Now』をリリース、現在もバリバリの現役として長きに渡って活動を続ける彼らは、マルチプレイヤーであるオリジナルメンバーの2人が核となっており、それ以外のメンバーは流動的というのも特徴的ですね。
そんな彼らの名前を一躍世間に知らしめたのは、1999年にリリースされたセカンド作『Madonna』です。
アメリカの著名なインディーズレーベルのマージレコードからリリースされ、ヒンズー教の女神の肖像画をジャケットに用いたアートワークのインパクトもさることながら、ソニック・ユースばりのノイズや時に叙情的なギター、手数の多いダイナミックなドラムス、美しいメロディとポストロックからの影響も感じさせるドラマチックな楽曲展開で魅せるサウンドは高く評価され、2019年にはリリース20周年を記念してここ日本でも単独の来日公演が実現したほどなのですね。
2002年には傑作と名高いメジャー第一弾『Source Tags & Codes』を発表、オルタナティブロックやポストハードコアといった枠内をこえる芸術的な音世界で世間をあっと言わせました。
その後も彼らの創造性は衰えることもなく、自らの美学に基づいた作品をリリースし続けています。
早々に解散してしまうバンドも多い中、彼らのように高い水準を保ちながら活動を続けている存在は、実に貴重だと言えるでしょう。





