【邪悪なる美旋律】シンフォニックブラックメタルのおすすめバンドまとめ
ヘビーメタルのサブジャンルの中でもアンダーグラウンドな音楽であり、聴く人を選ぶジャンルがブラックメタルです。
その起源や血塗られた歴史などはここでは省きますが、近年は2018年に公開された映画『ロード・オブ・カオス』などで知ったという方も多いかもしれませんね。
そんなブラックメタルにもさらにサブジャンルがあり、クラシックの影響を感じさせるオーケストレーションやストリングスなどを導入したジャンルが「シンフォニックブラックメタル」なのです。
今回の記事は、シンフォニックブラックメタルのバンドを有名どころからマイナーなバンドまで紹介しています。
最近このジャンルに興味があるという方、ぜひご覧ください!
【邪悪なる美旋律】シンフォニックブラックメタルのおすすめバンドまとめ(1〜10)
The Twisted Nails of FaithCradle Of Filth

シアトリカルな世界観と欧州的美学で磨き上げた独自のエクストリームな音楽性を武器として、世界的に成功を収めたのがイギリス出身のクレイドル・オブ・フィルスです。
強烈な高音デスボイスが特徴のフロントマン、ダニ・フィルスさんを中心として1991年に結成された彼らは、いわゆるノルウェーのブラックメタルバンドのような過激な思想を持つバンドではなく、ブラックメタルはあくまで音楽的な要素の1つと考えたほうがいいでしょう。
デスメタルやブラックメタルなどさまざまな要素を内包したエクストリームな内容ながら、ヨーロッパを中心としてヒットした1998年の名盤サード作『Cruelty and the Beast』は「血の伯爵夫人」と呼ばれたバートリ・エルジェーベトをテーマとしたコンセプチュアルなアルバムで、彼らの本領が発揮された名盤として誉れ高い逸品。
シンフォニックブラックメタルの文脈においても欠かすことのできない傑作と評価されており、まるで1本の映画や舞台を鑑賞しているかのような、過剰なまでのドラマチックなサウンドは圧巻の一言ですね。
以降もバンドはメンバーチェンジを繰り返しながらも次々と作品をリリース、日本にも度々来日して高い人気を保ち続けています。
繰り返しますが、彼らは純然たるブラックメタルバンドというわけではなく、エクストリームな音楽性を追求する中でブラックメタルの要素も取り入れていると解釈した上で聴くことをおすすめします。
I Am The Black WizardsEmperor

ノルウェーが世界に誇るブラックメタルバンドの代表的な存在の1つであり、クラシック音楽の要素を取り入れたシンフォニックブラックメタルのオリジネイターとして知られるのがエンペラーです。
マルチ・インストゥルメンタリストにしてカリスマティックなヴォーカリスト、イーサーンことヴェガルド・スヴェレ・ツヴェイタンさんが13歳の頃にギタリストのサモスことトーマス・ハウゲンさんと出会い、いくつかのバンドを経て1991年に結成されました。
90年代初頭のブラックメタルシーンはいわゆる「インナーサークル」を中心とした血なまぐさい事件の渦中にあり、エンペラーのメンバーは何とイーサーンさんを残して3人も逮捕されてしまうのですね。
その後リリースされた1994年のデビューアルバム『In the Nightside Eclipse』はメンバーのスキルの高さを示す作品として評価されますが、前述したような事情もあってバンドはしばらく活動休止を余儀なくされます。
過激な思想や事件とは無縁だったイーサーンさんはひたすら音楽制作に集中し、出所した盟友サモスさんと新たなメンバーとともに作り上げた1997年リリースのセカンド作『Anthems to the Welkin at Dusk』は、まさにシンフォニックブラックメタルの金字塔とも呼べる大傑作となったのです。
ブラックメタルの狂気的な暗黒具合と美麗かつ壮大なシンフォニーが高次元で融合したサウンドを聴けば、こういった音楽に初めて触れる方のほとんどが驚かれるのではないでしょうか。
初心者の方はベスト盤『Scattered Ashes: A Decade of Emperial Wrath』を聴くのもいいですが、闇の皇帝が作り出す音楽に興味を持たれた方はぜひ4枚のオリジナルアルバムをすべてチェックしてみてください!
Sorgens Kammer Del IIDIMMU BORGIR

ノルウェーのブラックメタルと言われて、多少なりとも知識のある人であればアンダーグラウンドな音楽性を想像しますよね。
こちらのディム・ボルギルはシンフォニックブラックメタルの代表的なバンドでありながら、商業ベースでも成功を収めた世界的な知名度を誇る存在です。
1993年に現存するオリジナルメンバーの2人であるフロントマンのシャグラットさん、ギタリストのシレノスさんが10代の若さでバンドを結成、初期の彼らは悲壮感漂うシンセの音色を取り入れつつ、アンダーグラウンド全開なブラックメタルを鳴らしていました。
そんな彼らの音楽的なキャリアのおける転機となったのが、名門レーベル「ニュークリア・ブラスト」と契約して発表した1997年のサードアルバム『Enthrone Darkness Triumphant』です。
日本では『暗黒の帝王』という邦題でも知られる本作、初期の禍々しいブラックメタルを軸としながらも流麗なクラシック音楽の要素が大胆に取り入れられ、その後の彼らの躍進のきっかけとなった名盤として知られています。
作品をリリースするごとにその音楽性は洗練され、2003年に発表した6枚目のアルバム『Death Cult Armageddon』はシンフォニックブラックメタルという非商業的なジャンルでありながらもアメリカで10万枚上の売上を記録。
クリーンボーカルを取り入れながらもブラックメタル譲りのブルータリティが減退したわけではなく、強烈な音楽性でありつつ聴きやすいというバランス感覚が素晴らしいのですね。
初めて触れるシンフォニックブラックメタルとして、間違いなく推薦できるバンドだと言えましょう!
When Crows Tick On WindowsCarach Angren

シンフォニックブラックメタルの代表的なバンドは90年代から活躍するグループが多いのですが、本稿で取り上げているオランダ出身のバンド、カラック・アングレンは2003年に結成されたシンフォニックブラックメタル~メロディックブラックメタル界において注目を集めているバンドです。
2008年に発表したデビュー作『Lammendam』で見せた流麗なクラシック音楽や映画のサウンドトラックのような壮大さ、強烈なブラックメタルが織り成す完成度の高いサウンドが熱心なファンの間で話題となった彼らは作品をリリースごとに知名度を上げてここ日本にも2013年に来日を果たして大きなインパクトを残しました。
2022年の現在までリリースされたアルバムは6枚ですが、そのどれもがシアトリカルでファンタジックかつホラーな世界観が強調された作風となっており、クレイドル・オブ・フィルスなどのバンドが好きな方であれば間違いなく気に入るサウンドを鳴らしているのですね。
ストーリー性の高い歌詞も合わせて注目してみてください。
デスボイスに抵抗がなければ、欧州的大仰さが際立つシンフォニックなヘビーメタルに目がないという全てのメタラーにおすすめしたいバンドです!
To Dethrone the Witch-Queen of Mytos K’unn (The Legend of the Battle of Blackhelm Vale)Bal-Sagoth

シンフォニックブラックメタルの枠内でも語られるバンドではあるのですが、同じイギリスのクレイドル・オブ・フィルスと同じようにさまざまなジャンルを内包しており、独創的なサウンドで人気のバンドがバルサゴスです。
「バイロン卿」という通称でも知られているフロントマン、バイロン・ロバーツさんは優れたストーリーテラーであり詩人として高い評価を受ける存在で、彼が生み出す作詞の世界観を軸とした音楽性がバンドの肝なのですね。
サウンド面ではドラム兼キーボーディストのクリス・モードリングさん、ギタリストのクリス・モードリングさんというモードリング兄弟がイニシアチブを握っており、シンフォニックブラックメタル的なエクストリーム性とエピックな要素が融合、その中でデスボイスとナレーションとでも呼びたいボーカルスタイルが乗るというバルサゴスの音楽は、随所にクサめのフレーズも飛び出しますしドラマチックで叙情性もありますが、ボーカル自体はサウンドの中での一要素として機能している印象です。
古代神話からSF小説に映画などさまざまな影響を受けて作られるバイロンさんの物語を読むことで、初めてバンドの本質的な魅力が理解できるでしょう。
まずは国内盤が出ているアルバムを選んで、対訳や解説を片手に彼らの音楽に触れてみてください。
皇軍 (Takao)Chthonic

ヨーロッパのバンドが中心のシンフォニックブラックメタルというジャンルですが、もちろん他の国でも重要なバンドやグループは存在しています。
本稿で取り上げているソニックは台湾のグループであり、世界的にも最も知られているアジア発のブラックメタルバンドです。
政治家という顔も持つボーカリスト兼二胡奏者のフレディ・リムさんを中心として1995年に結成、アジアのバンドならではの世界観やメッセージ性のあるコンセプチュアルな作品をリリース、日本にも度々来日して高い知名度を誇る存在なのですね。
ブラックメタル譲りのブルータリティにシンフォニックな要素を盛り込んだシンフォニックブラックメタルの基本は押さえつつ、伝統楽器である二胡の哀愁を帯びた音色が彼らのサウンドの独自性を高めています。
初めて聴くシンフォニックブラックメタルとして選ぶという意味ではやや変化球かもしれませんが、正統派のヘビーメタル的なクサメロも存分に聴かせてくれますし、前述したようにアジアの伝統楽器や民族楽器を使用することでオリエンタルな要素が随所に感じ取れることもあって、日本人には不思議となじみやすいサウンドというのも特筆すべき点ですね。
余談ですが、女性ベーシストとしてシーンのアイコンのような存在感を放つ実力派、ドリス・イエさんはバンドのリーダーであり、フレディさんの奥さまでもあるのですよ。
A Dreaming BeautyGraveworm

イタリアのメタルといえばパワーメタルにせよメロデスにせよゴシックメタルにせよ、大仰でドラマチックなクサメロを武器とするバンドが多く存在している印象です。
そんなイタリアが生んだシンフォニックブラックメタル、メロディックブラックメタルとも称されるグループがグレイヴワームです。
1992年に創設メンバーにしてボーカリストを担うステファノ・フィオリさんを中心として結成、1997年にデビューアルバム『When Daylight’s Gone』をリリースしました。
この作品、オープニングから映画のサウンドトラックの如きシンフォニーとアグレッシブなヘビーメタルが融合したスタイルで、過剰なシンフォニックさを期待している方には即引き込まれる魅力を持ち合わせており、デビュー作の時点で彼らがどのような方向性を模索していたのかがすぐに理解できる内容となっています。
彼らの場合はどちらかといえば「メロブラ」の枠内で語られることも多く、ブラックメタル的なヒステリックな疾走感よりも哀愁のメロディやドラマ性に重きを置いた作風だと言えそうです。
シンフォニックブラックメタル、ゴシックメタル、エピックなヘビーメタルの要素をすべて過剰に押し出したといった雰囲気が素晴らしい。
そんな彼らはカバー好きとしても知られており、アイアン・メイデンのような正統派のヘビーメタルからR.E.Mやペット・ショップ・ボーイズといった畑違いのジャンルの名曲までも独自の解釈で料理しておりますから、そちらも合わせて注目してみてください!