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行政書士が解説。今さら聞けない!JASRAC(ジャスラック)の仕事とは?

行政書士が解説。今さら聞けない!JASRAC(ジャスラック)の仕事とは?
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行政書士が解説。今さら聞けない!JASRAC(ジャスラック)の仕事とは?

音楽を作ったときも、音楽を利用するときも、音楽の著作権を考えるときには避けて通れないのが日本音楽著作権協会(※)、通称JASRAC(ジャスラック)です。

何かと批判されることも多い団体ですが、その批判は誤解から生じている場合も少なくありません。

知っているようで知らないJASRACについて、その役割や基本的な業務内容を軽く紹介したいと思います。

※お詫び:記事公開時「日本音楽出版社協会」と記載しておりましたが、正しくは「日本音楽著作権協会」です。

そもそもJASRACとは?

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JASRACは、正確には「一般社団法人日本音楽著作権協会」という名前の団体で、日本国内における音楽著作権の集中管理を行う団体です。

(集中管理については後述します)

1939年(昭和14年)に仲介業務法(※現在は廃止されています)に基づき設立された「大日本音楽著作権協会」が前身となります。

英語での表記が「Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers」であり、これを略してJASRAC(ジャスラック)と呼ばれています。

ちなみに、略称には英語表記の最後のPublishersが含まれておりませんが、これは含めた場合にJASRACP(ジャスラックプ?

)という少し間の抜けたような発音となるのを避けるため……ではなく、JASRACが設立された当初はPublishers、つまり音楽出版社が存在していなかったため、英語表記中にもPublishersという単語がない状態でした。

その後、音楽出版社の参加により、1965年から英語表記にはPublishersが追加されましたが、略称はそのままとなっています。

何をやっているの?

JASRACの役割

JASRACは、作詞者や作曲者から著作権のすべてまたは一部を譲り受け、著作権者として、利用に関する許諾とそれに伴う使用料の徴収や権利者への分配、著作権侵害に対する監視などを行っています。

なお、この「譲り受ける」とは単なる譲渡ではなく信託譲渡という形になっており、著作者から預かった著作権を、著作者のために管理運用を行う、ということです。

ではなぜ作詞者や作曲者などは、自身が保有する著作権という権利をJASRACに譲渡するのでしょうか?

音楽は、利用されるシーンがとても多いです。

CDに録音して流通させる、ネット配信する、カラオケ店で歌う、楽譜を出版する、イベントで演奏するなど、さまざまな利用形態がありますが、通常、そういった利用に対しては著作権者が独占的な権利を持っているため、利用希望者は著作権者に連絡して利用許諾をもらわなければなりません。

しかし、例えば美容室のBGMとして市販CDを流す場合、その流す曲すべてについて作曲者などに連絡して許諾をもらって、そして曲ごとに使用料を支払うというのでは、その一連の手続きにかかる手間は膨大なものになってしまいます。

その手続きの煩雑さにより音楽の利用が阻害されるようでは、音楽文化は発展しません。

そのためにあるのが、著作権の集中管理です。

権利が集中管理されていれば、利用者は迷うこと無くその管理者との間で手続きを行えばよいため、たとえ複数の曲の手続きであっても簡易迅速に進めることができます。

また、著作者にとっても、著作活動とは異なる権利処理や使用料の徴収といった作業に追われる必要がなくなりますので、権利に関する面倒な対応を回避できます。

このように、JASRACがやっている仕事は、音楽の利用者と創作者の双方に十分なメリットがあることなのです。

※音楽著作権の集中管理を行うのは日本だけではなく世界中に存在し、また日本国内でも、JASRAC以外にNexTone(ネクストーン。

旧社名イーライセンス)など数社あります。

JASRACが「権利者」です

よく誤解されるのですが、JASRACは作詞者や作曲者といった著作者の著作権を「代理」行使しているのではなく、著作者から著作権が信託譲渡されているわけですから「著作権者」として自らの権利を行使し、使用者に対する使用許諾や使用料徴収、違法行為の監視、訴訟などを行っています(著作権信託契約約款第14条)。

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つまり、ミュージシャン自らが作曲した曲を公衆の前で演奏する場合であっても、JASRACに権利譲渡した楽曲である場合は、一部の例外(プロモーション目的での使用など)を除き、原則としてJASRACに対して使用料を支払う必要があります。

なお、JASRACは著作者から権利の移転を受けますが、その代わりに徴収した使用料から管理手数料を引いた残りを著作者に支払います。

これがいわゆる印税と呼ばれます。

JASRACが管理する権利

JASRACに譲渡するのは原則的にはすべての著作権ということにですが、支分権や利用形態単位で、譲渡しないという選択ができるようになっています。

これにより、例えば演奏権などは自身で管理して、それ以外の権利は譲渡する、といったこともできます。

具体的には、次のように範囲ごとに譲渡する・しないを選択できます。

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なお、この選択は、著作権信託契約を交わす時に決定され、それ以降契約期間中は変更できませんし、また曲ごとに選択するということもできませんのでご注意ください。

また、著作権法第27条で規定される翻案権・編曲権などは譲渡されません。

よって、JASRACに使用料を支払うことで歌詞とメロディーの利用許可は得られますが、編曲したり替歌にしたり、あるいは日本語の歌詞を英語にするといった行為は許諾されませんので、元の権利者(音楽出版社や作詞者、作曲者)に対して直接交渉する必要があります。

嫌われ者……?

さて、JASRACと言えば、ネット社会を中心に目の敵にされることが少なくありません。

「自分で購入したCDを流すだけなのに、なんでお金を取られるの?」「自分の曲を自分で演奏しているのにお金を払うのはおかしい!」といった批判が巻き起こるのは、もはや日常茶飯事です。

しかし、これまで説明してきた通り、JASRACは著作権法という法律に従い、著作権者として正当な権利行使しているだけです。

音楽という他人が創作したものを利用するのですから、その利用行為に対して相応の対価を支払うのはおかしなことではありません。

JASRACがしっかりと使用料を徴収してくれるからこそ、権利者が利益を得られるようになっています。

分配率や方法についてはもめているケースもありますが、だからと言って使用料を払わなくて良い理由にはなりません。

JASRAC管理曲を利用する際は、正しく使用料を支払うようにしましょう。

信託者と会員

「個人での権利行使が大変だから、自分の曲もJASRACで管理してもらおう!」と思っても、実は誰もが自由に権利を譲渡できるわけではありません。

JASRACで著作権を管理してもらうには、著作権信託契約を交わす必要がありますが、これには条件があり、作家個人の場合は、過去1年以内に1000枚以上製造され全国流通しているCD(※自主制作を除く)に楽曲が収録されていることや、商用配信サイトから配信されている、など日本国内で第三者が利用している実績が必要となります。

(詳細はこちらです)

この著作権信託契約を交わすと「信託者」となり、契約時に除外した支分権などを除き、保有しているすべての著作権と将来取得するすべての著作権をJASRACに譲渡することになります。

この信託者のうち、所定の会費を支払い入会手続きを行った者が「準会員」となり、さらに所定の要件を満たすと「正会員」になります。

行政書士が解説。今さら聞けない!JASRAC(ジャスラック)の仕事とは?

(人数は2016年4月1日現在。

http://www.jasrac.or.jp/contract/trust/person.htmlより引用)

なお、信託者や会員にならなくても、既にJASRACと信託契約を交わしている音楽出版社に著作権を譲渡し、その音楽出版社からJASRACへ信託譲渡する、というケースも多いです。

信託者や会員であれば、原則的には有無を言わさず著作権は直接JASRACに譲渡され、他者への譲渡はできないのですが、楽曲管理の都合などにより、直接譲渡せずに音楽出版社(JASRACと信託契約を交わしているものに限ります)に譲渡後JASRACに譲渡するという、非信託者と同じ流れで権利譲渡される場合もあります。

この場合、二重譲渡のような問題は発生しません。

(著作権信託契約約款第10条)。

信託者や会員であってもなくても、使用料の徴収や分配の取り扱いについての違いはないのですが、信託者や会員であれば、演奏権使用料についてはJASRACから直接分配を受けることができます。

音楽出版社が間に入っている場合は、その音楽出版社の取り分が差し引かれてから著作者に支払われますので、JASRACから直接受け取ることができるメリットは大きいと言えます。

最後に

このように、著作者から大切な著作権を預かり、権利者に代わってその権利処理を行ってくれているのがJASRACです。

音楽の発展のためには、円滑な権利処理は必要不可欠ですので、著作者も利用者も、正しく、仲良く、付き合っていきたいですね。

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