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【作詞入門】アイドル曲の歌詞の作り方。モチーフの足し算編

【作詞入門】アイドル曲の歌詞の作り方。モチーフの足し算編
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【作詞入門】アイドル曲の歌詞の作り方。モチーフの足し算編

【作詞入門】アイドル曲の歌詞の作り方。モチーフの足し算編

歌詞で愛や恋を書くときに、ただそれだけで書き切ろうとしても多くの場合言葉が途中で止まります。

私もよく止まりました。

「好きなんです 僕はここに居るよ」だけではネタがあまりにも少なくイメージが展開できないのです。

しかし一つのプラス「恋愛+何か」の付け足しだけで世界はグッと変わります。

今回は「海+恋愛」「クリスマス+恋」などのありきたりな足し算を越えた2曲をお手本として取り挙げたい思います。

お手本神曲:Animadoll-あにまどーる-|しりとりんゴリラ

作詞はGA-HA-さんです。

画期的「しりとり+恋」

歌詞の足し算を分かりやすく言いますと「銀河」だけで書き切る→「銀河鉄道999」ゴダイゴ「恋+銀河」→猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」ももいろクローバーZが例となるでしょうか。

Animadoll-あにまどーる-(以下あにまどーる)の「しりとりんゴリラ」は言葉遊びの「しりとり」がモチーフで、それを恋愛とリンクさせた何ともいえない世界を展開しています。

曲のヒットうんぬんは置いておいて、歌詞としましては成功した足し算の格好例ではないでしょうか。

「あなたと繋ぐしりとり~終わらせたくはないの ゴリラッパセリンゴリラ」

存分なおかしみとなぜか一抹の悲哀(ひあい)を感じます。

しりとりが恒久的(こうきゅうてき)に「終わらないものの例え」として成り立つからでしょう。

普通「しりとり」がアイドルの曲の歌詞に出てきたら「?」ってなりそうなものですが、この曲にはそう思わせない歌詞の展開と作詞家の筆圧を感じます。

可能性を探る

「クリスマス+恋」の歌は履いて捨てる程あります。

クリスマスに恋愛を絡めないアイドルの曲もないでしょう。

ただ、そのような飽和状態な取り合わせを狙って書いても、よほど良い歌詞にならないとその他大勢の中に埋もれてしまいます。

いえ、よほど良い曲にさえならないかもしれません。

狙うとしたら、どうでしょうか?

無難なところで

攻めた所で、あまり攻めすぎると収拾がつかないのですが

などはどうでしょう。

同じあにまどーるの楽曲に「トラバター」があります。

トラが木の周りをぐるぐる回ってバターになる話があるでしょう、ズバリそれなのです。

「バターになるトラの童話+恋愛」も良い曲に仕上がっているのですから、何の足し算が歌詞の対象になるのかは誰にも予測が付きません。

意外な組み合わせ程、成功した時の衝撃も大きい事でしょう。

不思議なしりとり

「ぐるぐる廻る世界 想いも巡り巡って」

作り手独特の言葉のセンス、芳香を放っています。

この恋のフレーズとモチーフである「しりとり」がピタッとうまくマッチした瞬間もしれません。

サビは「ゴリラッパセリンゴリラ ゴリラッパセリンゴリラ ゴリラッパ ゴリラッパ……」です。

「ゴリラ ラッパ パセリ リンゴ」の単語は感涙をするような特別な単語でもありません。

恋愛の歌ならばもっとグットくるシチュエーションを用意できるだろうし、色気のある言葉も選べるはずです。

しかしサビまでの流れを胸の内に入れて鑑賞するならば「好き」や「恋しい」の言葉より、この「しりとり」がどんな言葉よりも印象に残ります。

ここが歌詞の不思議な所なのですね。

限りある恋心という時間の流れと無限に続くしりとりとの融和、歌詞を越えた何かさえ感じられる神曲だと思います。

お手本神曲:ももいろクローバー|Chai Maxx

作詞は只野菜摘さんです。

豊富な言葉遊び

「Chai Maxx」はチャイマックスと読みます。

ここでの足し算は「リング+アイドル」と読みましたがこの設定は、定かではありません。

「試されChai Maxx 突き破っちゃMAX」の歌詞の部分から逆算してアプローチすると「試されちゃいます」「突き破っちゃいます」となりそうですので、惜しみない言葉遊びを交差させた歌詞といえるでしょう。

1つ1つの細かな分析は曲を楽しむのには不必要な場合も多々ありますので。

「MilkyでクセものChai Maxx」の歌詞の部分では飲み物のチャイに寄せています。

「あれ?

やっぱりChai Maxxって飲み物のチャイのことかな?」と聴く者の耳を引き留めます。

言葉の意味を壊すことなく語感で合わすのはラップのライム(韻)そのものです。

「Gong、Chime、MAX!」の歌詞の部分ではチャイの語感をチャイムと掛けています。

その他この曲には小さな小さなくすぐりが随所にちりばめられています。

シンプルで多義的なライム(韻)や掛詞(かけことば)は作詞をする上で大切な要素の1つとなるでしょう。

モノマネでない冒険心

ももいろクローバーZもこの「Chai Maxx」を発表した時にはまだZの付かないももいろクローバーでした。

今ほど確固としたアイドルとしての地位がないままに出した冒険心あふれる曲です。

歌詞で見るとサビ後半の「びゅんびゅんびゅんびゅんびゅんびゅん びゅんびゅんびゅんびゅんびゅんびゅん」は画期的です。

現実のどこを引っかけば「これで良しとしよう」という発想が出てきたのか不思議です。

ももクロの別の曲「ココ☆ナツ」、これは前山田健一さんの作詞ですが、サビは「コココ コーコ コッコー コココ コーコ コッコー コココ コーコ コッコ コッコッコッコッコー コーコ コーコ☆ナーツ」です。

すべての外界を喪失して書いた歌詞。

作詞家が何とかいいフレーズを、心に残る言葉をと日夜胃壁を削って悩んでいるのがおかしくなる歌詞です。

モノマネでない冒険心、当時のももクロにも彼女たちを取り巻くスタッフにも、言い換えればどこか「狂気じみた冒険心にあふれていた」と思えるのです。

画期的な歌詞はなかなか受け入れられてもらえるものではありませんが、それは書く側の、売る側の真剣さと熱意なのでしょう。

真のアイドル神曲として

リング(決闘場)をモチーフとしていますので曲中に戦いの見せ場があります。

それはサビの部分で6人のメンバーが3対3に分かれ、まるで「はないちもんめ」を見るかのような掛け合いが始まります。

ここの部分がなかったらもしかしてこの曲は普通のアイドルの曲で終わっていたかもしれません。

ももクロも売れるまで少し時間がかかったグループの1つです。

しかし、雌伏時(しふくじ)に一時も手離すことのなかった、現代ではもはや死語でもある「ハングリー精神」をこの曲に感じます。

最後に一番好きな歌詞一節を引かせていただきます。

情熱や純愛、pureなsympathyものほほんと歌ってたら ささんないな

ライタープロフィール

アイドル作詞家・俳人

瀧乃涙pin句

何のツテもないまま作詞を開始。

数年後、文化放送ラジオドラマ主題歌『全身全霊Open Now!』song byガールズジョッキーまでたどりつく。

SPATIO『泣きそう』『レジスタンスガール』、SPATIO kids『温泉サンバ』、ナナエ『シューティングスター』『恋の話しよ!』他、ご当地アイドル、地下アイドルに歌詞を提供中。

週末はもっぱらアイドルを追い掛けている。

Twitter:t_pink_t

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