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【洋楽】90年代エモコアの名盤。まずは聴いてほしい1枚

語源などを知らずとも、もはや「エモい」という表現は一般層にまですっかり浸透していますよね。

2022年現在で30代くらいの洋楽好きであれば、2000年代のエモ・ブームから「エモ」なる言葉を知ったという人も多いでしょう。

エモの起源は80年代にまでさかのぼりますが、もともとはパンク~ハードコア・シーンから生まれたジャンルであり「エモーショナル・コア」や「エモコア」と呼ばれていました。

今回の記事では、そんなエモコアというジャンルが広まった90年代にリリースされた名盤を集めてみました!

90年代のエモコアにリアルタイムで接した筆者が初心者向けに選ぶ、まずは聴いてみてほしい1枚をぜひチェックしてみてくださいね!

【洋楽】90年代エモコアの名盤。まずは聴いてほしい1枚(1〜10)

American Football

Never MeantAmerican Football

American Football – Never Meant [OFFICIAL MUSIC VIDEO]
Never MeantAmerican Football

エモのみならずポストロックやマスロックといったジャンルにおいても後続のバンドに多大なる影響を及ぼし、USインディーズが生んだ傑作として今も評価され続ける『American Football』も、1999年にリリースされた作品なのですね。

伝説的なエモ・バンドのキャップン・ジャズに在籍、ソロ・プロジェクトのオーウェンとしても著名なマイク・キンセラさんを中心として1997年に結成されたアメリカン・フットボールは、前述したセルフタイトルのデビュー・アルバムと1枚のEPを残して解散、伝説のバンドとして長い間語り継がれてきたのですが、2014年の再結成後はマイペースながら素晴らしい新作を発表しており、2020年代を過ぎた今も新たなファンを獲得し続けています。

そんな彼らのデビュー・アルバムはクリーン・トーンを軸としたギターのアルペジオが美しく絡み合い、ジャズやマスロック的な要素を感じさせるアンサンブルは荒削りながらも圧倒的なオリジナリティを誇り、マイクさんの朴訥でナイーブな歌声によるメロディは優しく、それでいて若さゆえの焦燥感のようなものを感じ取れる歌詞が特徴です。

全体的に穏やかな雰囲気でありながらも、パンク~ハードコア出身のメンバーならではの緊張感が随所にみなぎっている、という点も素晴らしい!

Something To Write Home About

HolidayThe Get Up kids

ジミー・イート・ワールドと並んで、ここ日本における90年代エモの最も人気のあるバンドではないでしょうか。

アメリカはミズーリ州、カンザスシティが生んだザ・ゲット・アップ・キッズは、1995年に当時高校生だったメンバーで結成され、2005年まで活動するも一度解散、2008年には再結成して来日公演や新作のリリースなど精力的な活動を続けています。

おそらくニルヴァーナよりもウィーザーよりも彼らに影響を受けた、という日本のバンドも多くいるはずです。

そんな彼らの最高傑作であり、日本でも多くのファンを獲得したのが1999年にリリースされた超名盤セカンド作『Something to Write Home About』です。

チャーミングなロボットのイラストが印象深い、あの有名なアルバム・ジャケットを一度は見たことがあるという音楽ファンも多くいるはず。

オープニングの『Holiday』からラスト曲『I’ll Catch You』まで捨て曲一切なし、青春という言葉がそのまま音となって具現化したようなメロディとエモーショナルなギター・サウンドがまさに「エモ」としか言いようがありません。

マット・プリオールさんの深みのある素晴らしい歌唱や名曲『Valentine』のようなバラードもこなす地力のあるバンド・アンサンブルはもちろん、キーボーディストのジェイムス・ドゥウィーズさんによるプレイが、ゲット・アップ・キッズのサウンドをより多彩なものとしていることにも注目してみてほしいです。

The Power Of Failing

Gloriamineral

サニーデイ・リアル・エステイトやジミー・イート・ワールドらと並び称されるテキサスが誇るエモ・レジェンド、ミネラル。

1994年の結成から1998年の解散まで4年程度の短い活動期間に残したアルバムは2枚、一時期は廃盤で高騰していた時期もあってまさに伝説的な存在として長く語り継がれておりましたが、2014年に突如再結成を果たして作品のリイシューされ、奇跡的な来日公演も果たしています。

前述したように、彼らがリリースしたアルバムは2枚しかありませんし、どちらも甲乙つけがたい大傑作ではありますが、今回は記念すべきデビュー・アルバムとなった1997年リリースの『The Power of Failing』を紹介しましょう。

ポスト・ハードコアにUKロック、スロウコアからシューゲイザーまでさまざまなジャンルから影響を受けた彼らのサウンドもまた「90年代エモコア」の象徴的な音であり、00年代初頭のスクリーモ勢など後続のバンドに多大なる影響を及ぼしたのです。

ひずんでいるのに中心にクリーンな音が聴こえてくるような独特のギター・サウンド、激情と哀愁の不安定なコントラストを行き来するクリス・シンプソンさんのボーカル、静と動のダイナミズムで魅せるバンド・アンサンブル……ドラマチックな楽曲展開も揺れ動く感情そのもの、といった趣。

この音に興味を持てない、という方はおそらく90年代エモコアに縁のない方でしょう。

逆に気に入ったという方は、ぜひミネラルのメンバーが後に始めたUKロックからの影響を強めたザ・グロリア・レコードもチェックしてくださいね!

【洋楽】90年代エモコアの名盤。まずは聴いてほしい1枚(11〜20)

Look Now Look Again

RiseRainer Maria

90年代エモコアはナイーブな男性中心の音楽と思われがちですが、大傑作アルバム『This Afternoon’s Malady』を残したJEJUNEなどの女性と男性による混成ボーカルであったり、女性がフロントに立つバンドも一定数存在しています。

その中で最も知名度が高く、来日経験もある最高の3ピース・バンドがレイナ―・マリアです。

著名な詩人であるライナー・マリア・リルケからそのバンド名を取ったというインテリジェンス、3ピースならではの各楽器の絡み合いが際立つバンド・アンサンブル、美しいメロディ・ラインを武器として、ここ日本のエモコア好きの中でも人気の高いバンドなのですね。

USインディーズやエモコアの重要作を多くリリースしている名門ポリヴァイナル・レコーズから発表した作品はどれも高い評価を得ておりますが、今回は彼女たちが1999年に発表した名盤セカンド作『Look Now Look Again』を取り上げましょう。

デビュー作の荒削りなサウンドが一気に洗練され、ケイスリン・ド・マライスさんの上品なボーカルによる美しいメロディが全面に押し出され、繊細かつアグレッシブなギター・ワークと歌うようなベース・ライン、しなやかなドラムスが織り成す楽曲群はどれも最高に素晴らしい。

女性ボーカルのエモコアの先駆けとして、まずはこの1枚を自信を持ってオススメします!

24 Hour Revenge Therapy

Do You Still Hate Me?Jawbreaker

エモはさまざまなジャンルを取り込むことのできる自由度の高い音楽ジャンルであることは確かですが、聴く人によっては曖昧でどっちつかずと感じることもあるでしょう。

本稿の主役であるジョーブレイカーは1980年代に活動をスタートさせたトリオであり、由緒正しきパンクの血筋を持ったバンドながら、独自のメロディックさを兼ね備えたサウンドでインディーズで人気を博すも、メジャー・デビュー以降は熱心なファンからセルアウトだと批判を受け、残念ながら解散してしまった存在なのですね。

とはいえ、マイ・ケミカル・ロマンスやフォール・アウト・ボーイといった00年代を席巻した人気バンドがジョーブレイカーからの影響を公言、2017年にはバンドの歴史をテーマとしたドキュメンタリー映画が公開されるなど、その影響力の大きさは若い音楽ファンにもよく知られることとなりました。

今回は、メジャー移籍前の最高傑作と評される1994年リリースのサード・アルバム『24 Hour Revenge Therapy』を紹介します。

メロディックパンクの性急さとインディーロックを思わせる素朴なギター・サウンドが同居しており、同時にエンジニアを務めた名匠スティーヴ・アルビニさんらしいざらついた音像はいかにも90年代的であって、哀愁を帯びた歌心や私小説のような歌詞を含めてまさに「エモーショナルコア」と呼ぶにふさわしい音楽と言えるかもしれません。

90年代エモコアの歴史を深掘りする上でも、ぜひチェックしてもらいたい作品およびバンドです!

Nothing Feels Good

Why Did Ever We MeetThe Promise Ring

The Promise Ring – “Why Did Ever We Meet” Jade Tree Records
Why Did Ever We MeetThe Promise Ring

「エモい」という表現の語源を知らずに使用している若い方々であっても、思わず「エモいな~」と口にするであろう青春のきらめきや輝き、そしてやるせなさをそのまま吐き出したようなギター・サウンドが最高過ぎますね!

ザ・プロミス・リングはアメリカはミルウォーキー出身、90年代エモ・レジェンドの1つとして知られているバンドです。

在籍していたメンバーが後のエモやポスト・ハードコア、USインディーズの名バンドに多く携わることとなる伝説のバンド、キャップン・ジャズのギター兼ボーカルを務めていたデイヴィー・フォン・ボーレンさんを中心として1995年に結成され、2002年の解散までに4枚のアルバムをリリースしました。

こちらの『Nothing Feels Good』は1997年に名門レーベルのジェイド・トゥリーよりリリースされたセカンド・アルバムで、90年代エモコアの名盤を多く手掛けている名匠J・ロビンスさんがプロデュース、若さあふれるみずみずしいギター・サウンドと直球の泣きメロで高い評価を受けた名盤です。

アルバム・タイトルから伝わってくるやりきれなさ、これぞ90年代エモコアといった趣で思わずニッコリしてしまいます。

アルバム前半の疾走系の楽曲ばかり注目されがちですが、後半以降のミドル・テンポで聴かせる楽曲にこそ、彼らの持つソングライティング・センスの高さが感じ取れるというものでしょう。

Sunday’s Worst Enemy

You Can’t ComeStarmarket

今回の記事ではエモコア発祥の地であるアメリカのバンドを多く取り上げていますが、同時代のヨーロッパにも素晴らしいエモコア・バンドは存在しています。

今回紹介するスターマーケットは、スウェーデンが生んだエモ・バンドの代表的な存在にして最高峰の1つ。

1995年にギタリスト兼ボーカリストのフレドリック・ブランドストロームさんを中心として結成され、同年には早くもセルフタイトルのデビュー作をリリース。

2004年に解散するまでに5枚のアルバムを発表しており、本国よりもここ日本において高い評価を受けていたバンドなのですね。

そんな彼らの作品の中でも最高傑作と名高い1997年リリースのセカンド作『Sunday’s Worst Enemy』には、エモコアはパンク~ハードコアから派生した音楽なのだということを改めて再確認させられるようなアグレッシブなギター・サウンド、日本人好みの哀愁のメロディが最高の形で表現された楽曲群がずらりと並んでおります。

後にメロディ重視の洗練されたインディーロック的な作風へとシフトする前の、荒々しい疾走感と北欧特有のひんやりした質感とが矛盾せずに同居したスターマーケットならではの音楽は、スウェディッシュ・エモを確立した金字塔的な1枚だといっても過言ではないでしょう。

2018年に再結成を果たした際に、リマスターされた紙ジャケット仕様の再発盤が日本でリリースされていますから、興味を持った方はぜひ探してみてください。