【洋楽】90年代エモコアの名盤。まずは聴いてほしい1枚
語源などを知らずとも、もはや「エモい」という表現は一般層にまですっかり浸透していますよね。
2022年現在で30代くらいの洋楽好きであれば、2000年代のエモ・ブームから「エモ」なる言葉を知ったという人も多いでしょう。
エモの起源は80年代にまでさかのぼりますが、もともとはパンク~ハードコア・シーンから生まれたジャンルであり「エモーショナル・コア」や「エモコア」と呼ばれていました。
今回の記事では、そんなエモコアというジャンルが広まった90年代にリリースされた名盤を集めてみました!
90年代のエモコアにリアルタイムで接した筆者が初心者向けに選ぶ、まずは聴いてみてほしい1枚をぜひチェックしてみてくださいね!
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【洋楽】90年代エモコアの名盤。まずは聴いてほしい1枚(6〜10)
Mother MaryFar

「エモ」という言葉をそのまま体現しているかのような稀代のシンガーソングライター、ジョナ・マトランガさんが在籍していた伝説のバンドであるファーが1998年にリリースした『Water & Solutions』の衝撃は、特にリアルタイムで接したのであれば多くの方が今も記憶しているはず。
1991年にアメリカはカリフォルニアにて結成、インディーズ時代に3枚のアルバムをリリースしたファーが、満を持してのメジャー・デビュー作として発表した『Water & Solutions』には、国内盤の帯にも書かれていたように、デフトーンズなどのラウドなバンドやポスト・ハードコアとされるバンド、そのどちらのファンにもアピールできるサウンドが鳴らされていたのですね。
残念ながら商業的な成功は果たせずバンドは解散してしまいますが、それこそデフトーンズとレディオヘッドが同居しているかのような独自のギター・サウンド、スクリーモ勢に多大なる影響を及ぼしたジョナさんのエモーショナルなボーカル・スタイルは、00年代以降に再評価が進んだように感じます。
また、ギタリストのショーン・ロペスさんはプロデューサーやエンジニアとしても活躍しており、それこそデフトーンズのチノ・モレノさんと組んでCrossesというグループで作品をリリースしていますね。
ラウドな要素もオルタナティブロック的な要素も兼ね備えた彼らのサウンドが完成形に達した本作もまた、90年代エモコアという文脈でも金字塔と呼べる傑作なのです。
Why Did Ever We MeetThe Promise Ring

「エモい」という表現の語源を知らずに使用している若い方々であっても、思わず「エモいな~」と口にするであろう青春のきらめきや輝き、そしてやるせなさをそのまま吐き出したようなギター・サウンドが最高過ぎますね!
ザ・プロミス・リングはアメリカはミルウォーキー出身、90年代エモ・レジェンドの1つとして知られているバンドです。
在籍していたメンバーが後のエモやポスト・ハードコア、USインディーズの名バンドに多く携わることとなる伝説のバンド、キャップン・ジャズのギター兼ボーカルを務めていたデイヴィー・フォン・ボーレンさんを中心として1995年に結成され、2002年の解散までに4枚のアルバムをリリースしました。
こちらの『Nothing Feels Good』は1997年に名門レーベルのジェイド・トゥリーよりリリースされたセカンド・アルバムで、90年代エモコアの名盤を多く手掛けている名匠J・ロビンスさんがプロデュース、若さあふれるみずみずしいギター・サウンドと直球の泣きメロで高い評価を受けた名盤です。
アルバム・タイトルから伝わってくるやりきれなさ、これぞ90年代エモコアといった趣で思わずニッコリしてしまいます。
アルバム前半の疾走系の楽曲ばかり注目されがちですが、後半以降のミドル・テンポで聴かせる楽曲にこそ、彼らの持つソングライティング・センスの高さが感じ取れるというものでしょう。
SaturdayChristie Front Drive

掘り下げれば掘り下げるほど、メジャーなバンド以外の作品にこそ名盤が隠されていることも多い90年代エモコアですが、1993年から1996年という短い活動期間を駆け抜けた、コロラド州デンバー出身のクリスティ・フロント・ドライヴが唯一リリースしたフル・アルバム『Stereo』も、まさにその1つと言えそうです。
1996年に録音された本作はバンド解散後の1997年にリリースされた作品で、インストゥルメンタル曲も含む作風はエモコアが持つ叙情性を全面に押し出したものであり、繊細なアルペジオとピアノの音色、叙情性に特化した轟音ギター、ミドル・テンポを軸として静と動を行き来する楽曲展開、絶妙に盛り上がりきらない哀愁のメロディを聴いて「90年代のエモコアってこういう音だよな」と感じ入る方も多くいらっしゃることでしょう。
日本でもCDとDVDの2枚組としてリマスター再発されたものが国内盤仕様としてリリースされたことからも、熱心なファンが彼らの音を高く評価していることが分かるのではないでしょうか。
やや地味な面があるのも事実ではありますが、90年代が生んだ叙情系美エモの代表的な名盤であり、特にミネラルなどがお好きな方でまだこのバンドを知らないという方は、確実にチェックすべき作品です!
Never MeantAmerican Football

エモのみならずポストロックやマスロックといったジャンルにおいても後続のバンドに多大なる影響を及ぼし、USインディーズが生んだ傑作として今も評価され続ける『American Football』も、1999年にリリースされた作品なのですね。
伝説的なエモ・バンドのキャップン・ジャズに在籍、ソロ・プロジェクトのオーウェンとしても著名なマイク・キンセラさんを中心として1997年に結成されたアメリカン・フットボールは、前述したセルフタイトルのデビュー・アルバムと1枚のEPを残して解散、伝説のバンドとして長い間語り継がれてきたのですが、2014年の再結成後はマイペースながら素晴らしい新作を発表しており、2020年代を過ぎた今も新たなファンを獲得し続けています。
そんな彼らのデビュー・アルバムはクリーン・トーンを軸としたギターのアルペジオが美しく絡み合い、ジャズやマスロック的な要素を感じさせるアンサンブルは荒削りながらも圧倒的なオリジナリティを誇り、マイクさんの朴訥でナイーブな歌声によるメロディは優しく、それでいて若さゆえの焦燥感のようなものを感じ取れる歌詞が特徴です。
全体的に穏やかな雰囲気でありながらも、パンク~ハードコア出身のメンバーならではの緊張感が随所にみなぎっている、という点も素晴らしい!
RiseRainer Maria

90年代エモコアはナイーブな男性中心の音楽と思われがちですが、大傑作アルバム『This Afternoon’s Malady』を残したJEJUNEなどの女性と男性による混成ボーカルであったり、女性がフロントに立つバンドも一定数存在しています。
その中で最も知名度が高く、来日経験もある最高の3ピース・バンドがレイナ―・マリアです。
著名な詩人であるライナー・マリア・リルケからそのバンド名を取ったというインテリジェンス、3ピースならではの各楽器の絡み合いが際立つバンド・アンサンブル、美しいメロディ・ラインを武器として、ここ日本のエモコア好きの中でも人気の高いバンドなのですね。
USインディーズやエモコアの重要作を多くリリースしている名門ポリヴァイナル・レコーズから発表した作品はどれも高い評価を得ておりますが、今回は彼女たちが1999年に発表した名盤セカンド作『Look Now Look Again』を取り上げましょう。
デビュー作の荒削りなサウンドが一気に洗練され、ケイスリン・ド・マライスさんの上品なボーカルによる美しいメロディが全面に押し出され、繊細かつアグレッシブなギター・ワークと歌うようなベース・ライン、しなやかなドラムスが織り成す楽曲群はどれも最高に素晴らしい。
女性ボーカルのエモコアの先駆けとして、まずはこの1枚を自信を持ってオススメします!