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【洋楽】90年代エモコアの名盤。まずは聴いてほしい1枚

語源などを知らずとも、もはや「エモい」という表現は一般層にまですっかり浸透していますよね。

2022年現在で30代くらいの洋楽好きであれば、2000年代のエモ・ブームから「エモ」なる言葉を知ったという人も多いでしょう。

エモの起源は80年代にまでさかのぼりますが、もともとはパンク~ハードコア・シーンから生まれたジャンルであり「エモーショナル・コア」や「エモコア」と呼ばれていました。

今回の記事では、そんなエモコアというジャンルが広まった90年代にリリースされた名盤を集めてみました!

90年代のエモコアにリアルタイムで接した筆者が初心者向けに選ぶ、まずは聴いてみてほしい1枚をぜひチェックしてみてくださいね!

【洋楽】90年代エモコアの名盤。まずは聴いてほしい1枚(11〜20)

Analphabetapolothology

Take On Mecap’n jazz

このバンドからジョーン・オブ・アークやザ・プロミス・リング、アメリカン・フットボールといった名だたる90年代エモコアの名バンドたちが生まれたというのは、まさにUSインディーズの歴史における奇跡といっても過言ではありません。

1989年にティムさんとマイクさんのキンセラ兄弟を中心として、後にザ・プロミス・リングのフロントマンとして活躍するデイヴィー・フォン・ボーレンさんらが在籍していたキャップン・ジャズは、メンバーのその後のキャリアをたどるだけで、USインディーズの素晴らしいバンドたちに多く出会えるというくらいに奇跡的なバンドなのです。

キャップン・ジャズとしての作品は数枚のEPと1995年にリリースされた唯一のアルバムだけなのですが、今回は初心者向けに彼らの楽曲をほぼ網羅したディスコグラフィ盤『Analphabetapolothology』を推薦します!

1998年にUSインディーズの名門ジェイド・トゥリー・レコーディングスよりリリースされた2枚組の作品で、後にリイシューもされています。

当時10代のメンバーたちによる、パンクでもハードコアでもオルタナティブロックでもない荒削りなギター・サウンドは、ヘロヘロなティム・キンセラさんの個性的すぎるボーカルも含めてまさに「エモコア」の原型と言える音!

あまりにもやるせなく切ないアーハの名曲『Take On Me』のカバーも含めて、90年代エモコアやUSインディーズに興味のある方であれば全曲必聴です。

Pinkerton

Tired Of SexWeezer

ウィーザーをエモのカテゴリーに入れてしまうことに賛否両論あるのは承知の上ですが、やはり「泣き」の代表格にしてエモコア勢にも多大なる影響を与え、当時はエモコアと同列で語れることも多かった彼らのアルバムは紹介したいところです。

1990年代のアメリカが生んだ世界的なロック・バンドであり、天才シンガーソングライターのリヴァース・クオモさん率いるウィーザーは大の親日家でもあり、日本のファンとの強固な絆はとても有名です。

特に1996年にリリースされたセカンド・アルバム『Pinkerton』は、和の香り漂う浮世絵を取り入れたアルバム・ジャケットや日本人が登場する歌詞など、日本的な要素が盛りだくさんのアルバムであり、本国アメリカより日本でヒットした作品なのですね。

歴史的名盤のデビュー作と比べても、さらにアグレッシブなギターがうなりを上げ、最高にキャッチーなメロディで歌われる歌詞は、夢に見たロックスターとなった自分と現実とのギャップに苦しんでいるかのような、赤裸々過ぎる感情の発露……まさに「エモーショナル」としか言いようがありません。

うまくいかない日々やイケてない自分といった、アメリカ的マッチョイムズとは相反するイメージを前面に打ち出したウィーザーの音楽性が、日本で大いに受け入れられるというのは必然だったと言えますし、ナイーブなエモコア勢からも大人気というのは納得の一言です。

For Your Own Special Sweetheart

SavoryJawbox

90年代エモコアの歴史を探っていくと、バンド・メンバーだけではなくプロデューサーやエンジニアの存在も重要だということに気付かれるはず。

エモコア以前から活動を続けていたジョーボックスの中心人物であるJ・ロビンスさんは、エモコアの名盤を多数手掛けた敏腕プロデューサーとしても知られる存在です。

1989年にワシントンD.C.にてジョーボックスを結成したロビンスさんは、80年代のいわゆるDCハードコアの伝説的なバンドであるガヴァメント・イシューのベーシストとして活躍しており、ジョーボックス結成後は1997年の解散までに4枚のアルバムをリリース、メジャーデビューも果たしています。

今回はその4枚のアルバムの中から、メジャーデビュー作にして傑作と名高いサード・アルバム『For Your Own Special Sweetheart』を紹介しましょう。

商業的に大きな成功を収めたわけではありませんが、硬質でスリリングなギター、独特のグルーブを生み出すリズム隊、甘さに流されすぎることのない絶妙な歌心を持ったメロディ、ハードコア出身らしい緊張感に満ちたバンド・アンサンブルが、後のポスト・ハードコアやエモコア勢、はてはマスロックなどのバンドたちに与えた影響は計り知れないものがありますね。

90年代オルタナティブロックの名盤でもあり、ポスト・ハードコアの傑作でもある本作を聴いたことがないという方は、ぜひチェックしてみましょう!

Through Being Cool

Shoulder To The WheelSaves the Day

Saves The Day “Shoulder To The Wheel” (Official Music Video)
Shoulder To The WheelSaves the Day

メロディック・パンクに影響を受けた疾走感あふれるサウンドながらも、メロコア的なスポーティさはゼロで蒼くナイーブな歌声とメロディが際立つニュージャージー出身のセイヴス・ザ・デイ。

現在は唯一のオリジナル・メンバーとして今も活動を続けるクリス・コンリーさんを中心として10代で1997年に結成された彼らは、最初期は同郷の伝説であるライフタイム直系のメロディック・ハードコアを鳴らしていましたが、徐々にクリスさんの卓越したソングライティング・センスを全面に押し出したポップな作風へと移行、2001年の大傑作サード・アルバム『Stay What You Are』はインディーズながら本国アメリカで10万枚以上売れた作品となりました。

今回は90年代リリース作品に的を絞った記事ということで、パンキッシュな疾走感と切ないメロディが交差する1999年リリースの名盤セカンド作『Through Being Cool』を紹介します。

後の彼らのポップな音楽性が芽生えつつあったアルバムであり、大学生だったメンバーたちによる若々しくアグレッシブなギター・サウンドと、甘酸っぱくエモーショナルなメロディはまさに青春ど真ん中!

ハードコアの名門であり、00年代以降は多くのポスト・ハードコアやメタルコアの名作をリリースしたイコール・ヴィジョン・レコードから発表された作品、ということもぜひ覚えておいてくださいね。

Building

Different TimesSense Field

アメリカはカリフォルニア州にて1991年に結成されたセンス・フィールドは、2000年代以降ではファーザー・シームス・フォーエバーの三代目ボーカリストとして活躍、カリスマティックな人気を誇るも2016年に惜しくもこの世を去ったジョン・バンチさんが率いた90年代エモコアの先駆者的なバンドの1つです。

ハードコアの出自を持ったメンバーたちによる骨太なサウンドと、同時代のオルタナティブロックと共振するサウンドは後のポスト・ハードコア勢やエモコアに多大なる影響を及ぼしました。

そんな彼らがバンド独自のサウンドを確立し、ハードコアやパンク系の名門レーベルであるレヴェレーション・レコードからリリースした通算2枚目のアルバム『Building』は、まさにオルタナ~グランジとポスト・ハードコアとを結ぶ重要な名盤です。

90年代エモコア勢の中でもバンチさんの歌声はロック色が強く確かな存在感を持ち、表現力豊かに歌い上げる姿にボーカリストとしての稀有な才能を感じさせますね。

サウンド全体的にもエモ的な哀愁やミドル・テンポを中心とした静と動といったサウンドとはまた違う、どちらかと言えば前述したように同時代のオルタナティブロックに近い構造を持った楽曲が多く、ロック的なダイナミズムと素晴らしい歌心、ダイナミックなギター・リフなどがストレートにカッコいいと言える1枚です!

A Portable Model Of

The HandsJanne Da Arc

シカゴの伝説、キャップン・ジャズが解散した後に中心人物のティム・キンセラさんが1995年に新たに始めたバンドがジョーン・オブ・アークです。

基本的にティムさん以外のメンバーは流動的であり、キンセラ・ファミリーの中ではティムさんの弟でアメリカン・フットボールやオウェーンなどで知られるマイク・キンセラさんなども参加していますね。

この辺りの参加メンバーの動向を深掘りしていくと、エモの歴史におけるファミリーツリーのような趣ですから、興味のある方はぜひチェックを。

そんなジョーン・オブ・アークはいわゆる「エモ」とはまた違った独自の音楽性を持ったバンドであり、ポストロックや音響系と同列に語られるものですね。

難解な面もあり、正直分かりやすいとは言えない彼らの作風は作品をリリースするごとにその傾向が顕著となっていくのですが、本稿で紹介している1997年リリースのデビュー・アルバム『A Portable Model Of …』は、実験性と独特のポップさが奇跡的なバランスを保った作品であり、初めて彼らの音楽を聴く方にもオススメの逸品です。

ティムさんのフリーキーなメロディ、浮遊する電子音、ロック的なフォーマットから逸脱したアンサンブルが織り成す音世界は、むしろ2020年代を過ぎた今聴くとオシャレにすら感じますね。

最初は取っ付きづらいと感じるかもしれませんが、この音の味わい深さが理解できればさらに世界が広がることは間違いありません!

おわりに

2000年代のエモ・ブーム以降、わざわざ「エモコア」という言葉を使う人は当時を知っている方以外に限られてはおりますが、今回紹介したエモすぎる名盤たちを聴くことで、何となく90年代の「エモコア」がどのような音楽であったのかが伝わったのではないでしょうか。

そもそもが曖昧なジャンルの「エモコア」は廃盤タイトルも多いですし、さらなるエモさを求めて深掘りしてみることをオススメします!