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【闇の美学】ゴシックロックのすすめ~代表的なバンド紹介

「ゴシック」とは12世紀ごろに誕生した建築様式の1つなのですが、皆さまは音楽ジャンルとしての「ゴシックロック」はご存じでしょうか。

基本的にダークなテーマを掲げて、文学や映画に哲学などからもインスピレーションを得た音楽を鳴らす70年代後半から80年代に登場した主にイギリスのバンドたちによるもので、独創的なサウンドを鳴らすバンドも多く、後のオルタナティブロック勢や日本ではヴィジュアル系のバンドにも多大なる影響を及ぼしています。

「ゴシックメタル」というジャンルも存在しますが、今回の記事はいわゆるポストパンクのサブジャンルとしての「ゴシックロック」のバンドたちを中心として、代表的なグループを紹介します!

【闇の美学】ゴシックロックのすすめ~代表的なバンド紹介(1〜10)

Decline and FallVirgin Prunes

ヴァージン・プルーンズは通常のロックバンドとはまったく違うタイプの存在であり、はっきりと人を選ぶ音楽……アートを提示した特異なグループです。

実は、アイルランド出身の彼らはあの世界的なロックバンドであるU2のボノさんとは幼なじみという関係性であり、U2の名作デビューアルバム『BOY』で使用された少年は、ヴァージン・プルーンズのメンバーの弟さんなのですよ。

そんなヴァージン・プルーンズはU2とはまったく違うアンダーグラウンドなカルチャーに傾倒しており、音楽のみならず演劇に美術といった要素をパフォーマンスに取り入れた総合アングラ芸術的な表現を提示、地下シーンにおいて独自の活動を続けます。

リリースしたアルバムは1982年のデビュー作『…If I Die, I Die』と、1986年のセカンド作にしてラストアルバムとなった『The Moon Looked Down and Laughed』の2枚。

とくに前者はポストパンクやポジパン、ゴシックロックの名盤とされている作品ですが、強烈に妖しげな雰囲気が匂い立つアルバムジャケットを見るだけでもわかるように、ゴシックロックの中という枠内の中でも聴きやすい音楽とはいえません。

彼らの真骨頂はライブパフォーマンスにこそ発揮されますから、興味を持たれた方は必ずライブ映像を見ていただきたいですね。

Say It AgainThe Danse Society

ポジティブパンクという言葉に愛着を持っている方であれば、ポジパン御三家としてセックス・ギャング・チルドレン、サザン・デス・カルト、そして本稿で取り上げるザ・ダンス・ソサエティーの名前がすぐに思い浮かびますよね。

端正なルックスで日本でも注目を集めたフロントマン、スティーヴ・ロウリングスさんを中心として1980年に結成され、1982年のデビューミニアルバム『Seduction』は全英インディーズチャートで3位という好成績をマーク。

他のポジパンやゴシックロックのバンドと比べても明らかにダンサンブルなリズムを持ったサウンドを展開しており、ゴシックロック的なダークネスや退廃的な雰囲気は感じさせるものの、踊れるグルーヴを兼ね備えていたのは彼らならではの特徴と言えるかもしれません。

メジャー進出後の1984年作『Heaven Is Waiting』はUKチャートで39位というスマッシュヒットを記録しますが、周囲の期待と自分たちのアイデンティティとの折り合いがつけられなかったのか、残念ながらバンドとしては迷走気味となってしまい、次作『Looking Through』をリリース後にロウリングスさん以外のメンバー全員が脱退、最終的に解散してしまいます。

2011年にまさかの再結成を果たし、女性ボーカリストを新たに迎えて活動中です。

FrontierDead Can Dance

コクトー・ツインズらと並ぶ4ADレーベルの看板グループとして知られる、オーストラリア出身の男女2人組であるデッド・カン・ダンス。

1981年の結成から1998年の解散までに7枚のアルバムをリリース、2005年に再結成を果たして以降はマイペースながら活動を続けて作品も発表しています。

そんなデッド・カン・ダンスの音楽性を語ることは非常に困難であり、ワールドミュージックから宗教音楽など既存のロックとは全く違う音世界はどこか違った世界からやってきた音楽の如し。

それでいてゴシックロック系のアーティストたちによるトリビュート盤が作られるほどに、その界隈で高い人気を誇るのは主に初期の作品で見せた作風によるものなのですね。

『エデンの東』という邦題でも知られる1984年のセルフタイトルのデビュー作では、ニューギニアの儀式用仮面をモチーフとしたというアルバムジャケットからも伝わる呪術的な要素が強く、民族音楽やトライバルなビートも盛り込みつつ、初期のコクトー・ツインズにも通じるポストパンク直系の楽曲もあり、ゴシックロックの名盤としての評価も高い逸品。

聴いているだけで、異世界へとトリップできそうな不気味な空気に支配された音世界は他ではなかなか味わえないものがありますね。

グループの本質的な魅力を知りたいという人は、世界的なヒットを記録した1993年の通算6枚目のアルバム『Into the Labyrinth』辺りをチェックすることをおすすめします!

【闇の美学】ゴシックロックのすすめ~代表的なバンド紹介(11〜20)

MoonchildFields of the Nephilim

ゴシックロックはホラー映画や文学などにも大いにインスピレーションを受けているジャンルなのですが、そういった要素を全面に押し出して人気を博したのがフィールズ・オブ・ザ・ネフィリムです。

1984年に結成、オカルトや宗教など神秘的な分野に造詣の深いボーカリスト、カール・マッコイさんを中心として1984年に結成された彼らはシスターズ・オブ・マーシーのフォロワー的な存在として1980年代中盤から後半以降に注目を集め、3枚のアルバムをリリース後に一度解散。

その後再結成を果たして2000年代にも2枚のアルバムを発表しています。

彼らのディスコグラフィの中では1988年にリリースされたセカンドアルバム『The Nephilim』がとくにゴシックロックの名盤と評されており、特徴的なマッコイさんの低くしゃがれた歌声とダークながらもメロディアスさも兼ね備えたサウンド、アレイスター・クロウリーの著作やホラー映画のタイトルを引用した曲名、イギリスのサマセット州にある実際に刑を執行していた裁判所だった建物でのレコ―ディング、と本人たちの趣味や価値観がこれでもかと凝縮された作風で、ゴシックロックに興味がある方でならば間違いなく気に入るアルバムです。

当時にMVなどを見てもわかるように、メンバーのルックスはゴシックロック的な黒ずくめのファッションというものではなく、とくにマッコイさんはウエスタンハットがトレードマークのルックスで、冒頭で述べたようにホラー映画のテイストが強いことが個性でもあり、好き嫌いがわかれる点かもしれませんね。

Romeo´s DistressChristian Death

ゴシックロックの有名なバンドのほとんどはイギリス出身ですが、本稿で取り上げているクリスチャン・デスはアメリカ出身のバンドです。

実はゴシックなサブカルチャーがアンダーグラウンドで盛んなアメリカにおける最も有名かつ重要なグループでありながら、複雑なバイオグラフィを持つことが原因で初心者が手を出すには敷居の高い存在なのですね。

そんなクリスチャン・デスは1979年にボーカリストのロズ・ウィリアムスさんによって結成され、ゴシックロックの大名盤として知られるデビューアルバム『Only Theatre of Pain』を1982年にリリースしています。

演奏技術という意味では厳しいものはありますが、シンプルでソリッドなバンド・アンサンブルに込められた病的な闇や呪術的な世界観は恐ろしいほどで、アメリカの音楽シーンにおいても本作の影響力は非常に大きく、デスロックと呼ばれるスタイルの先駆的な作品としても高く評価されています。

問題は、その後加入したギタリストのバロール・カンドさんが脱退したロズさんに代わってフロントマンを務める形となるのですが、ロズさんは奥さまのエヴァ・Oさんとともにクリスチャン・デスとして活動を再開。

つまり2つのクリスチャン・デスが存在する形となってしまうのです。

残念ながら1998年にロズさんが自らの命を絶ってオリジナルのクリスチャン・デスは活動を終了、バロールさん率いるクリスチャン・デスは2020年代を過ぎた今も活動を続けています。

こういった経緯もあって彼らのディスコグラフィは膨大な数の作品があり、同じ名前の2つのバンドが存在するという特殊性も踏まえてどこから手を付けるべきかが難しいということです。

個人的には、ロズさんがフロントに立つ最初期の作品をチェックしてみることをオススメします!

Wax and WaneCocteau Twins

Cocteau Twins – Wax and Wane 1982 Good quality video
Wax and WaneCocteau Twins

コクトー・ツインズをゴシックロックの文脈で紹介すると、このバンドのドリームポップやシューゲイザーといった要素で聴いている方であれば違和感を覚えるかもしれません。

1979年にデビューを果たし、独創的なギタリストでありプロデューサーとしても活躍しているロビン・ガスリーさんと、唯一無二の幻惑的な歌声を持つシンガーのエリザベス・フレイザーさんといった特異な個性を持つミュージシャンが集まったコクトー・ツインズは、冒頭で述べたように後のドリームポップ、シューゲイザーなどのジャンルに多大なる影響を及ぼした名作を発表した名グループです。

名門レーベル4ADのカラーを決定付けた存在でもあり、彼らが作り上げた音世界は現在のアーティストたちも憧れてやまないほどなのです。

そんなコクトー・ツインズですが、もともとはポストパンク直系のサウンドを鳴らしており、1982年のデビュー作『Garlands』のリズムマシーンによる単調なリズム、楽曲を先導するベースライン、フランジャーを多用したネオサイケ的なギター、当時18歳だったというエリザベスさんの妖しくも瑞々しいボーカル……といった要素から生まれる楽曲は、音楽性の変化という意味でも転機となったサードアルバム『Garlands』以降の彼女たちしか知らない方が聴いたら驚かれるかもしれません。

エリザベスさんはスージー・アンド・ザ・バンシーズのスージーさんの大ファンだったそうでバンド自体も影響を受けていたようですし、ゴシックロックとしてのコクトー・ツインズを知りたい方はデビューアルバムや初期のEP作品を聴いてみてください。

A DayClan of Xymox

Clan Of Xymox – A Day (HD music video 1985)
A DayClan of Xymox

日本ではあまり知られてない存在ですが、1981年の結成以来解散することもなく2022年の現在までバリバリの現役として活動を続けているのがオランダ出身のクラン・オブ・ザイモックスです。

初期の4ADレーベルのカタログに詳しい方であれば、その名前を目にしたことがあるかもしれませんね。

初期の彼らの作品はその4ADからリリースされており、1985年のデビューアルバム『Clan of Xymox』はザ・キュアーやジョイ・ディヴィジョンといったバンドと比較されています。

80年代半ばらしいストレートなゴシックロックの中にも冷たい叙情性を持つキーボードの音色が特徴的で、彼らの音楽性は「ダークウェーブ」のパイオニアとも呼ばれています。

エンジニアとしてディス・モータル・コイルのメンバーとしても知られるジョン・フライヤーさんが参加していることにも注目してほしいですね。

バンドのキャリアとしては1989年のサードアルバム『Twist of Shadows』と『Phoenix』がメジャーからリリースされ、アメリカも含めて商業的に成功を収めています。

サウンドとしてはシンセポップの色が濃い作風となっており、ゴシックロック的な音を楽しみたい方は4AD時代の彼らの作品をチェックするといいでしょう。

ちなみに余談ですが、フロントマンのロニー・ムアリングスさんはあのBUCK-TICKの櫻井敦司さんのソロ曲『予感』にて、作曲を務めていますよ。