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【闇の美学】ゴシックロックのすすめ~代表的なバンド紹介

「ゴシック」とは12世紀ごろに誕生した建築様式の1つなのですが、皆さまは音楽ジャンルとしての「ゴシックロック」はご存じでしょうか。

基本的にダークなテーマを掲げて、文学や映画に哲学などからもインスピレーションを得た音楽を鳴らす70年代後半から80年代に登場した主にイギリスのバンドたちによるもので、独創的なサウンドを鳴らすバンドも多く、後のオルタナティブロック勢や日本ではヴィジュアル系のバンドにも多大なる影響を及ぼしています。

「ゴシックメタル」というジャンルも存在しますが、今回の記事はいわゆるポストパンクのサブジャンルとしての「ゴシックロック」のバンドたちを中心として、代表的なグループを紹介します!

【闇の美学】ゴシックロックのすすめ~代表的なバンド紹介(1〜10)

MoyaSouthern Death Cult

耽美的な要素も兼ね備えたダイナミックなハードロックで世界的な成功を収め、日本でも多くのバンドたちに影響を与えたイギリスのザ・カルト。

その前身バンドとして知られているサザン・デス・カルトは、ポジティブパンクやゴシックロックの代表的な存在としてシーンをリードした存在です。

ザ・カルトでもフロントマンを務めるイアン・アストベリーさんを中心として1981年に結成された彼らはオリジナルアルバムの発表も待たずに2年にも満たない活動で解散してしまいますが、残された数少ない音源を愛するゴシックロック好きは多いのですね。

アストベリーさんの特徴的なボーカルとダークな音楽性、隙間を生かしたいかにもポストパンク的なバンド・アンサンブルは、ザ・カルトでは味わえないまさにサザン・デス・カルトならではのもの。

ザ・カルトは聴いていたけどその前身バンドまでは知らなかった、という方であれば驚かれるかもしれません。

彼らが残した数少ない音源は1983年にリリースされた『Southern Death Cult』というコンピレーション作品で聴けますから、ゴシックロックを深掘りしたい方であれば確実にチェックしていただきたいです!

Lucretia My ReflectionThe Sisters of Mercy

1980年に結成されたシスターズ・オブ・マーシーは、2022年代の今も活動を続けるゴシックロックの代表的なバンドとしては最古参の一つです。

とはいえリリースした作品は3枚のみ、1985年にリリースされた邦題『マーシーの合言葉』でも知られているデビューアルバム『First and Last and Always』の時点で一度解散しており、再始動後は結成メンバーのボーカリストであるアンドリュー・エルドリッチさんの実質的なソロプロジェクトとして活動を続けているのですね。

そんなシスターズ・オブ・マーシーの音楽性は、正式なメンバーとしてクレジットされているドラムマシーンが生み出す無機質なリズムを軸として、エルドリッチさんの艶っぽくしゃがれた低音ボーカル、ダークな叙情性を表現するギターがまさに「ゴシックロック」と呼ぶにふさわしく、彼らこそが「ゴスの帝王」と評する人も多いです。

初期の彼らはオリジナルメンバーとして後にゴースト・ダンスを始動させるゲイリー・マークスさんが在籍しており、後から加入したメンバーとしてウェイン・ハッセイさんとグレッグ・アダムスさんという、これまたゴシックロックの代表的なバンドとして知られるザ・ミッションを結成することとなるミュージシャンがいることも踏まえて、シスターズ・オブ・マーシーの存在自体が「ゴシックロックの歴史」そのものと言えるかもしれません。

ドラムマシーンも含めた「5人」によって生み出された前述したデビュー作は、ゴシックロックを通る上で必ず聴くべき名盤です。

より幅広い音楽性を手にして商業的に大きな成功を成し遂げた1987年のセカンドアルバム『Floodland』も合わせて、ぜひチェックしてみてください。

TransmissionJoy Division

Joy Division – Transmission [OFFICIAL MUSIC VIDEO]
TransmissionJoy Division

ゴシックロックというよりも、ポストパンク~ニューウェーブ時代のイギリスが生んだ最も重要なバンドの一つであり、音楽性はもちろんアートワークから悲劇的な最期に至るまで、バンドの歴史そのものがその後のカルチャーに強烈な影響を与え続けているマンチェスターの伝説、ジョイ・ディヴィジョン。

1979年にリリースされた彼らのデビュー作『Unknown Pleasures』のアルバムジャケットは多くのモチーフとなっていますし、おそらく元ネタを知らずにこのアルバムジャケットがプリントされたTシャツを着ている人もいるでしょう。

そんなジョイ・ディヴィジョンが結成されたきっかけは、ギタリストのバーナード・サムナーさんとベーシストのピーター・フックさんが1976年にセックス・ピストルズのライブを見て衝撃を受けたことが理由です。

初期はワルシャワと名乗っていましたが後にジョイ・ディヴィジョンと改名、カリスマティックなフロントマンのイアン・カーティスさんの内省的な歌詞と印象深いバリトンボイスによるボーカルを軸として、パンクの荒々しさや激しさを陰鬱で醒めた狂気のようなポストパンクへと昇華したサウンドで飛躍的に知名度を上げていきます。

彼らのそういった音楽性はプロデューサーのマーティン・ハネットさんをして「ゴシック的なニュアンスを持つダンスミュージックだ」と評されました。

前述したデビューアルバムのリリース後はさらにバンドに人気も上昇、勢いに乗る中でカーティスさんの精神状態は悪化、1980年の5月18日に自ら命を絶ってしまいます。

皮肉にも同年の7月にリリースされたラストアルバム『Closer』は、全英チャートで6位というヒットを記録しました。

そんな彼らの歴史を深く知りたいという方は、2007年に伝記映画『コントロール』などをチェックしてくださいね。

Say It AgainThe Danse Society

ポジティブパンクという言葉に愛着を持っている方であれば、ポジパン御三家としてセックス・ギャング・チルドレン、サザン・デス・カルト、そして本稿で取り上げるザ・ダンス・ソサエティーの名前がすぐに思い浮かびますよね。

端正なルックスで日本でも注目を集めたフロントマン、スティーヴ・ロウリングスさんを中心として1980年に結成され、1982年のデビューミニアルバム『Seduction』は全英インディーズチャートで3位という好成績をマーク。

他のポジパンやゴシックロックのバンドと比べても明らかにダンサンブルなリズムを持ったサウンドを展開しており、ゴシックロック的なダークネスや退廃的な雰囲気は感じさせるものの、踊れるグルーヴを兼ね備えていたのは彼らならではの特徴と言えるかもしれません。

メジャー進出後の1984年作『Heaven Is Waiting』はUKチャートで39位というスマッシュヒットを記録しますが、周囲の期待と自分たちのアイデンティティとの折り合いがつけられなかったのか、残念ながらバンドとしては迷走気味となってしまい、次作『Looking Through』をリリース後にロウリングスさん以外のメンバー全員が脱退、最終的に解散してしまいます。

2011年にまさかの再結成を果たし、女性ボーカリストを新たに迎えて活動中です。

MoonchildFields of the Nephilim

ゴシックロックはホラー映画や文学などにも大いにインスピレーションを受けているジャンルなのですが、そういった要素を全面に押し出して人気を博したのがフィールズ・オブ・ザ・ネフィリムです。

1984年に結成、オカルトや宗教など神秘的な分野に造詣の深いボーカリスト、カール・マッコイさんを中心として1984年に結成された彼らはシスターズ・オブ・マーシーのフォロワー的な存在として1980年代中盤から後半以降に注目を集め、3枚のアルバムをリリース後に一度解散。

その後再結成を果たして2000年代にも2枚のアルバムを発表しています。

彼らのディスコグラフィの中では1988年にリリースされたセカンドアルバム『The Nephilim』がとくにゴシックロックの名盤と評されており、特徴的なマッコイさんの低くしゃがれた歌声とダークながらもメロディアスさも兼ね備えたサウンド、アレイスター・クロウリーの著作やホラー映画のタイトルを引用した曲名、イギリスのサマセット州にある実際に刑を執行していた裁判所だった建物でのレコ―ディング、と本人たちの趣味や価値観がこれでもかと凝縮された作風で、ゴシックロックに興味がある方でならば間違いなく気に入るアルバムです。

当時にMVなどを見てもわかるように、メンバーのルックスはゴシックロック的な黒ずくめのファッションというものではなく、とくにマッコイさんはウエスタンハットがトレードマークのルックスで、冒頭で述べたようにホラー映画のテイストが強いことが個性でもあり、好き嫌いがわかれる点かもしれませんね。