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【闇の美学】ゴシックロックのすすめ~代表的なバンド紹介

「ゴシック」とは12世紀ごろに誕生した建築様式の1つなのですが、皆さまは音楽ジャンルとしての「ゴシックロック」はご存じでしょうか。

基本的にダークなテーマを掲げて、文学や映画に哲学などからもインスピレーションを得た音楽を鳴らす70年代後半から80年代に登場した主にイギリスのバンドたちによるもので、独創的なサウンドを鳴らすバンドも多く、後のオルタナティブロック勢や日本ではヴィジュアル系のバンドにも多大なる影響を及ぼしています。

「ゴシックメタル」というジャンルも存在しますが、今回の記事はいわゆるポストパンクのサブジャンルとしての「ゴシックロック」のバンドたちを中心として、代表的なグループを紹介します!

【闇の美学】ゴシックロックのすすめ~代表的なバンド紹介(1〜20)

Walking On Your HandsRed Lorry Yellow Lorry

Red Lorry Yellow Lorry – Walking On Your Hands (Official Video)
Walking On Your HandsRed Lorry Yellow Lorry

ゴシックロック的に英国のリーズと言えばシスターズ・オブ・マーシーを生んだ土地ですが、同じくリーズ出身のレッド・ローリー・イエロー・ローリーも、ゴシックロックやポジティブパンクのジャンルで注目されたグループです。

あまりゴシックな雰囲気を感じ取れないバンド名ですが、英語の早口言葉がその由来となっているそうですよ。

そんな彼らは1981年に結成、ジョイ・ディヴィジョンや初期のキュアー、キリング・ジョークといったポストパンク直系のサウンドを鳴らして注目を集めます。

1985年にリリースされたデビューアルバム『Talk About the Weather』はバンドの最高傑作とも言われており、うなりを上げるベースラインと無機質なリズムマシーンが生み出す独特のグルーヴ、ネオサイケ的な要素も感じさせるギターワーク、妖しく艶のある低い声質のボーカル、といった要素は好きな人であればたまらないものがあるでしょう。

後期の彼らは生のドラムスも取り入れてロック的なダイナミズムを手にしますが、ストレートなロックサウンドとならないところが彼らのようなバンドの宿命と言えるかもしれません。

ベスト盤もリリースされていますから、まずはそこから彼らの音世界に触れてみるのもいいでしょう。

DecadanceUK Decay

ザ・キュアーやバウハウス、スージー・アンド・ザ・バンシーズといった著名なバンドと比べて知名度は劣るものの、ゴシックロックのファンの間では先駆的な存在の一つとして評価されているのが1978年にロンドンにて結成されたUK Decayです。

1980年代の初頭、バンドのフロントマンにして現在は音楽業界においてプロデューサーやマネジャーなどで活躍している「アボ」ことスティーブ・アボットさんが、雑誌のインタビューで自らの音楽性を冗談めかして「ゴス」と呼んだという逸話もあり、ポストパンクの流れで「ゴシックロック」が定義付けられた最初の出来事とする評価もあるのですね。

パンクシーンから登場した彼らはポリティカルな姿勢を前面に押し出した彼らですが、その音楽性はゴシックロックやポジティブパンクといったジャンルに留まらない個性を持っており、荒々しくも耽美性のある歌声、ポストパンクらしい冷徹かつソリッドなギターリフはハードコア由来の激しさをも兼ね備え、しなやかな爆発力のあるリズム隊が作り出す音楽は、他のバンドとは違う魅力を感じさせます。

実質的な活動期間は5年程度、2005年に再結成して新作もリリースしていますが、やはりゴシックロックとしての彼らの魅力を味わいたい方は1981年にリリースされたデビューアルバム『For Madmen Only』を聴くといいでしょう。

長い間CDとしてリリースされずに幻の作品と化していたのですが、2009年に大量のボーナストラックを追加してCDとしてリイシューされています。

A DayClan of Xymox

Clan Of Xymox – A Day (HD music video 1985)
A DayClan of Xymox

日本ではあまり知られてない存在ですが、1981年の結成以来解散することもなく2022年の現在までバリバリの現役として活動を続けているのがオランダ出身のクラン・オブ・ザイモックスです。

初期の4ADレーベルのカタログに詳しい方であれば、その名前を目にしたことがあるかもしれませんね。

初期の彼らの作品はその4ADからリリースされており、1985年のデビューアルバム『Clan of Xymox』はザ・キュアーやジョイ・ディヴィジョンといったバンドと比較されています。

80年代半ばらしいストレートなゴシックロックの中にも冷たい叙情性を持つキーボードの音色が特徴的で、彼らの音楽性は「ダークウェーブ」のパイオニアとも呼ばれています。

エンジニアとしてディス・モータル・コイルのメンバーとしても知られるジョン・フライヤーさんが参加していることにも注目してほしいですね。

バンドのキャリアとしては1989年のサードアルバム『Twist of Shadows』と『Phoenix』がメジャーからリリースされ、アメリカも含めて商業的に成功を収めています。

サウンドとしてはシンセポップの色が濃い作風となっており、ゴシックロック的な音を楽しみたい方は4AD時代の彼らの作品をチェックするといいでしょう。

ちなみに余談ですが、フロントマンのロニー・ムアリングスさんはあのBUCK-TICKの櫻井敦司さんのソロ曲『予感』にて、作曲を務めていますよ。

Promised LandSkeletal Family

Skeletal Family – Promised Land – (Official Video 1984)
Promised LandSkeletal Family

Skeletal Familyというバンド名で、英国ロックに詳しい方であればピンとくるかもしれませんね。

英国が生んだ世界的なアーティスト、デヴィッド・ボウイさんの名盤『Diamond Dogs』に収録されている楽曲『Chant of the Ever Circling Skeletal Family』からその名前を拝借して1982年に結成されたSkeletal Familyは、女性ボーカリストのアン・マリーさんを擁しており、スージー・アンド・ザ・バンシーズの次に来るバンドとして注目を集めていました。

いかにもポストパンクらしいよく動くベースライン、疾走感のあるドラムス、ソリッドなギターリフ、そしてマリーさんのヴォーカルといった要素で構成されるサウンドは、間違いなくゴシックロックやポストパンクが好きならグッとくるものがありますね。

強烈な個性や妖しさには欠けますが、曲によってはサックスを取り入れるなどの工夫がなかなかおもしろいです。

1984年にはデビューアルバム『Burning Oil』をリリース、翌年の1985年にはセカンドアルバム『Futile Combat』をリリースと順調に活動を続けますが、残念ながらフロントウーマンのマリーさんが脱退してしまいます。

その後は新たなボーカルを引き入れるも解散、2000年代に入ってからは再結成を果たしており、新作もリリースしています。

興味を持たれた方は、バンドの代表曲でもある名曲『Promised Land』をぜひ聴いてみてください!

Wax and WaneCocteau Twins

Cocteau Twins – Wax and Wane 1982 Good quality video
Wax and WaneCocteau Twins

コクトー・ツインズをゴシックロックの文脈で紹介すると、このバンドのドリームポップやシューゲイザーといった要素で聴いている方であれば違和感を覚えるかもしれません。

1979年にデビューを果たし、独創的なギタリストでありプロデューサーとしても活躍しているロビン・ガスリーさんと、唯一無二の幻惑的な歌声を持つシンガーのエリザベス・フレイザーさんといった特異な個性を持つミュージシャンが集まったコクトー・ツインズは、冒頭で述べたように後のドリームポップ、シューゲイザーなどのジャンルに多大なる影響を及ぼした名作を発表した名グループです。

名門レーベル4ADのカラーを決定付けた存在でもあり、彼らが作り上げた音世界は現在のアーティストたちも憧れてやまないほどなのです。

そんなコクトー・ツインズですが、もともとはポストパンク直系のサウンドを鳴らしており、1982年のデビュー作『Garlands』のリズムマシーンによる単調なリズム、楽曲を先導するベースライン、フランジャーを多用したネオサイケ的なギター、当時18歳だったというエリザベスさんの妖しくも瑞々しいボーカル……といった要素から生まれる楽曲は、音楽性の変化という意味でも転機となったサードアルバム『Garlands』以降の彼女たちしか知らない方が聴いたら驚かれるかもしれません。

エリザベスさんはスージー・アンド・ザ・バンシーズのスージーさんの大ファンだったそうでバンド自体も影響を受けていたようですし、ゴシックロックとしてのコクトー・ツインズを知りたい方はデビューアルバムや初期のEP作品を聴いてみてください。

DesireGene Loves Jezebel

1980年代のポジティブパンク~ニューウェーブ、ゴシックロック勢の中でもその麗しいルックスで日本でも注目されたウェールズ出身のジーン・ラヴズ・ジザベル。

美形の双子、マイケルさんとジェイさんというアシュトン兄弟を中心として1980年に結成されたバンドで、2017年には新作をリリースするなど息の長い活動を続けているバンドなのですが、残念ながら兄弟同士の権利関係などの争いで現在は兄弟が揃ってのバンド活動は事実上不可能となってしまっているようです。

2人がフロントで活躍していた初期の作品群はどれもゴシックロックやポストパンクの歴史の中では高い評価を得ており、ポストパンク直系の硬質なギターと浮遊する音像、妖艶なメロディを美形が歌い上げるデカダンな世界観という完ぺきなスタイルは、今もって多くの耽美的なゴスファンを魅了することでしょう。

日本のヴィジュアル系へ与えた影響も大いにありそうですし、ヴィジュアル系の流れでゴシックロックに興味を持ったという方は、アシュトン兄弟が在籍していた初期の4枚をぜひ手に取ってみてください!