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【印象派】色彩豊かなピアノの名曲を厳選~ドビュッシー・ラヴェル~

19世紀後半にフランス・パリで起きた芸術運動「印象派」。

見たものを忠実に再現する写実主義がよしとされていた時代から、より自由な表現方法を求める時代への変化は、クラシック音楽史にも多大な影響を与えました。

そして、この印象派を代表する作曲家として後世に名を残したのが、クロード・ドビュッシーとモーリス・ラヴェル。

今回は、この2人の偉大な作曲家と、印象派の影響を受けたとされている19世紀の作曲家をピックアップし、光や色彩感を重要視した印象派らしさを感じさせる名曲をご紹介していきます!

【印象派】色彩豊かなピアノの名曲を厳選~ドビュッシー・ラヴェル~(11〜20)

ピアノソナタ 変ホ短調Paul Dukas

パリで1865年に生まれたポール・デュカスは、パリ音楽院で学び、フランクの伝統とドビュッシーの革新的スタイルをつなぐ音楽を作り出した作曲家です。

彼の代表作である『ピアノソナタ 変ホ短調』は、1900年前後に作曲・出版され、1901年にエドゥアール・リスラーによって熱狂的に初演されました。

デュカスの厳しい自己評価から生まれたこのソナタは、4つの楽章がそれぞれ異なる性格を持ちながらも、全体としての統一感を保っています。

ベートーヴェン的な「暗から明へ」の原則がフランス的な解釈で取り入れられており、ピアノ音楽における表現の幅を大きく広げた作品です。

複雑で技術的に要求の高い大規模なソロピアノ作品でありながら、近年では優れたピアニストたちによって再評価されつつあります。

ロマン派後期の傑作として、まさに聴きごたえ、弾きごたえ抜群の1曲といえるでしょう。

組曲『鏡』 第5曲-鐘の谷Maurice Ravel

Ravel – Miroirs No. 5, “La Vallée des Cloches” Sheet Music + Audio
組曲『鏡』 第5曲-鐘の谷Maurice Ravel

1905年に作曲された組曲『Miroirs』の最後を飾る作品は、モーリス・ラヴェルがパリの街に鳴り響く教会の鐘の音から着想を得たとされる、幻想的な1曲です。

1906年1月に行われた初演でも、その独創的な世界観が高く評価されました。

この楽曲は、重厚な低音で表現される鐘の響きと、きらめくような高音の繊細な音色が溶け合い、聴く人を夢のなかのような瞑想的な空間へと誘います。

ペダルを巧みに使った色彩が豊かな表現や、情景を思い浮かべながら音色をコントロールする感覚を磨きたい方にぴったりの作品です。

空間に音が溶けていくようなイメージを大切に演奏してみましょう。

高雅で感傷的なワルツ 第1ワルツ,Modéré(モデラート) ト長調Maurice Ravel

伝統的なワルツに、モーリス・ラヴェルらしい近代的な響きを融合させた組曲『Valses nobles et sentimentales』。

その幕開けを飾る第1曲は、優雅でありながらどこか物憂げな、不思議な気持ちにさせられる1曲です。

この楽曲は、1911年5月の初演で作曲者名を伏せて演奏され、その斬新さで聴衆を驚かせました。

華やかな舞踏会で踊りながらも、ふと心によぎる秘めた想い…そんな情景が目に浮かぶようです。

バレエ『Adélaïde, ou le langage des fleurs』としても知られています。

本作は、これまでのワルツのイメージを覆すような、リズムやハーモニーの面白さを感じたい方にぴったり!

華やかさの奥に潜む憂いを表現できるよう、角のないやわらかい音で演奏しましょう。

高雅で感傷的なワルツ 第2ワルツ,Assez lent(十分に遅く)ト短調Maurice Ravel

心の奥深くを覗き込むような、内省的な雰囲気が魅力の作品で、モーリス・ラヴェルが手掛けた組曲『Valses nobles et sentimentales』に含まれています。

本作は1911年に、作曲者を伏せたままプライベートな演奏会で披露されたという逸話があります。

ゆったりと流れる時間の中に、感傷的でありながらも高貴な旋律が浮かび上がり、聴く人の心に静かに寄り添うかのようです。

伝統的なワルツのリズムに隠された、少々意外な響きが、言葉にならない複雑な感情を表現しているみたいですね。

繊細な音色の変化や、息の長いフレージングを学びたい方にぴったりな一曲。

神秘的な雰囲気を壊さないよう、一つ一つの音に想いを込めて、呼吸するように演奏するのがポイントです!

クープランの墓 第2曲 フーガMaurice Ravel

Collard plays Ravel ‘Le Tombeau de Couperin’ – 2. Fugue
クープランの墓 第2曲 フーガMaurice Ravel

第一次世界大戦で犠牲となった友人への追悼の思いが込められた、モーリス・ラヴェルの組曲『Le Tombeau de Couperin』。

その第2曲にあたる本作は、1919年4月に初演され、ジョアン・クルッピ少尉にささげられました。

この楽曲はラヴェルが手掛けた唯一のフーガで、3つの声部が対話するように静かに重なり合います。

悲しみだけでなく、今は亡き友人との穏やかな思い出を語っているかのようですよね。

古典的な形式美の中に、ラヴェル特有の揺らめくような響きが溶け込み、不思議な浮遊感に包まれる作品です。

組曲全体はバレエとしても上演されました。

各声部の旋律を大切に歌わせながら、全体の透明感を保つのがポイント!

バロック様式と印象派の繊細な表現を一度に学べる、魅力的な1曲です。

組曲『鏡』 第2曲-悲しげな鳥たちMaurice Ravel

Collard plays Ravel ‘Miroirs’ – 2. Oiseaux Tristes – Très lent
組曲『鏡』 第2曲-悲しげな鳥たちMaurice Ravel

芸術家仲間であったピアニストのリカルド・ヴィニェにささげられた、全5曲からなる組曲『Miroirs』。

その第2曲にあたる本作は、1906年1月にヴィニェの演奏で初めて披露されました。

モーリス・ラヴェルが描いた「夏の暑い日、暗い森で迷子になった鳥たち」という情景を題材としており、もの悲しいさえずりが静寂のなかで響き渡る、幻想的な世界に引き込まれるような一曲です。

本作は、繊細なタッチで多彩な音色を表現したい方にぴったり。

ペダルで響きを巧みにコントロールし、情景を豊かに描く練習にもなるので、ラヴェルの絵画的な音楽にじっくりと向き合ってみてくださいね。

【印象派】色彩豊かなピアノの名曲を厳選~ドビュッシー・ラヴェル~(21〜30)

グロテスクなセレナードMaurice Ravel

モーリス・ラヴェルが18歳前後だった1893年頃に作曲した、非常に個性的で情熱的な作品です。

のちにラヴェル本人が「グロテスク」という言葉を付け加えたという逸話が残る本作は、題名が示す通り、荒々しく挑発的な響きの中に、ハッとするほど甘美な旋律が織り込まれています。

この楽曲の魅力は、中央に現れる情緒的な部分との鮮やかな対比にあり、まるで不器用で一途な愛の告白を聴いているような気持ちにさせられる1曲です。

ラヴェルの優美なイメージとは一味違う、若さあふれる大胆な一面に触れてみたい方にぴったり。

激しさと甘さをドラマティックに描き分けるのが、演奏する上での大きなポイントになるでしょう。