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【90年代ヴィジュアル系】名古屋系の代表的なバンドたち

ヴィジュアル系の中でも、とりわけアンダーグラウンドな世界観で熱狂的なファンも多い「名古屋系」と呼ばれるサブジャンル、およびシーンの総称をご存じでしょうか。

起源は諸説あるのですが、1990年代初頭に活動を開始した黒夢とSilver-Roseが2大巨頭とされ、まだヴィジュアル系という言葉もなかった時代において、名古屋のインディーズ・シーンで活躍したバンドたちがいつしか「名古屋系」と呼ばれるようになったのです。

本稿では、そんな名古屋系と呼ばれた90年代のバンドたちを紹介しています。

ヴィジュアル系を掘り下げたい方はもちろん、日本のインディーズ音楽の歴史を語る上でも欠かせない名古屋系の存在をこの機会にぜひ知ってください。

【90年代ヴィジュアル系】名古屋系の代表的なバンドたち(11〜20)

カリスマLamiel

黒夢やLAPUTAにROUAGEといったバンドが作り上げた王道の名古屋系サウンドを継承し、1990年代後半にデビューしてカリスマ的な人気を誇ったのがLamielです。

Lustairの紹介時にも説明したように、Lustairのボーカリスト維那さんとベーシストのRukaさん、そしてギタリストの昌さんを中心として結成され、初期のメンバーには後のkein、そしてDEADMANのaieさんが参加していたことでも知られているバンドです。

「碧」「朱」「黒」という一貫した美学を感じさせる3本のデモテープを即日完売させ、1998年にはLustair時代では実現できなかったCDリリースを、名盤アルバム『開眼』で実現させています。

90年代後半といえば商業的な意味で空前のヴィジュアル系ブームが訪れて多くのバンドが次々とメジャーへ進出、良くも悪くもソフィスティケイトされたサウンドでオリコン・チャートに作品をランクインさせる中、地下シーンでは名古屋系の持つ漆黒の闇や絶望といった世界を表現するバンドが人気を博していたという歴史的な事実が実に興味深いですよね。

先人たちへの憧れがあまりにも強すぎるという面はやはり感じ取れるものの、名古屋系の伝統を次世代のバンドが受け継いで自分たちなりの解釈で世に放った彼らはやはり偉大でしょう。

クリーン・トーンとひずんだギターの絡みを軸としたアンサンブルがいかにもヴィジュアル系らしく、ダークでアグレッシブかつメロディアスといった王道の楽曲から、洋楽オルタナティブロックからの影響を感じさせるアンサンブル、どことなく初期のラルク・アン・シエルを思わせるオリエンタルなフレーズも好んで使われていたというのは彼らの特徴の1つとなっていますね。

音源はすべて廃盤となっていますが、できればすべての音源を手に入れておきたいところです。

Night’s雫…

雫…Shizuku – Night’s (Second Image) (1997.11.05)
Night's雫…

雫…は名古屋系らしいサウンドを継承しながらも後に「反戦」というテーマを押し出したヴィジュアル系という枠内では非常に珍しいタイプのバンドです。

KIZ-ETUというバンドで活動していたメンバーと、ROUAGEのRAYZIさんが参加していたSILU:ET!のメンバーを中心として1994年に結成、1999年の解散までの約5年程度の活動期間ではありましたが、メジャー流通も含めていくつかの作品を残した彼らの音楽性は、90年代ヴィジュアル系および名古屋系の奥深い魅力を表していると言えそうですね。

DIE-ZW3E辺りもそうですが、必ずしも耽美的であったりデカダンスな闇の要素だけが名古屋系というわけではない、ということです。

そんな雫…に興味を持たれた方であれば、まず手にしていただきたいのが1997年にリリースされたメジャー流通のフル・アルバム『夢を忘れた遺伝子』です。

あのLADIES ROOMのNAOさんがプロデュースを務め、線の細いヴィジュアル系とはまた違った男らしく骨太でアグレッシブなバンド・アンサンブルは水準以上のレベルで、社会的なメッセージを含んだ歌詞が作り出す世界観は今聴いても独特なものがありますね。

難を言えばボーカルの音域の狭さや、ある意味ヴィジュアル系らしい良くも悪くも微妙に盛り上がりきらないメロディ展開などに厳しさを感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

全体的にはメロディアスな作風ですし、名古屋系を掘り下げて間もないという若い方は早い段階で彼らの音楽に触れてみるのも悪くない選択と言えそうですね。

インディーズ時代の名盤『月が闇に翳るとき・・・』などもオススメです!

DarlingCROW-SIS

今も現役で活動している90年代名古屋系のプレイヤーたちは多く存在していますが、YouTubeの公式チャンネルを持ちバラエティ番組のような企画をこなしているCROW-SISはかなり珍しいバンドかもしれません。

1993年に名古屋で結成されたCROW-SISは、ROUAGEのローディーも経験しており当時のシーンにおいて重要な位置を占めていた事務所「Noir」に所属していたのですから、まさに純度120%の名古屋系バンドなのですね。

当時の彼らが残した音源としては配布デモテープが数本、オムニバスCDへの参加、2000枚限定で1996年に発売された唯一のCD作品『CLOSE』のみ。

興味を持たれた方であれば、比較的入手しやすい『CLOSE』を探していただくのが一番でしょう。

残念ながら演奏能力や歌唱力に難があるのは事実ではありますが、今回紹介している『Darling』などいかにもヴィジュアル系の王道をいくマイナー調のメロディアスな楽曲など、名古屋系およびヴィジュアル系マニアであれば心をくすぐられる楽曲の存在はぜひチェックしてもらいたいですね。

Fin(夜を越えて…)TI+DEE

かなりマニアックなバンドではありますが、TI+DEEは90年代の名古屋系バンドとしてかなり早い段階から活動していたバンドです。

Of-JやCLAUDIAなどの活動で知られる京野さん、Merry Go RoundのMAXXXさんがベーシストとしてそれぞれ在籍、後のDIE-ZW3EやSilver-Roseのメンバーがいたことで知られるMANICUREのボーカリストのAMOURさんがドラマーという、まさに名古屋系の歴史が詰まった存在なのですね。

彼らもまた、多くの音源を残すこともなく解散してしまったバンドではありますが、1994年にリリースされた唯一の7曲入りアルバム『Fin.』を聴けば、王道の名古屋系とはまた違ったサウンドを模索していたことが理解できるはず。

ヘビーメタルを基調としながらもクラシック音楽への傾倒が感じ取れるギター・フレーズや音階、荘厳なシンセやピアノを導入してほんのりシアトリカルな雰囲気もあり、メロディはJ-POPというか歌謡曲的、病的かつ猟奇的な名古屋系とは一線を画す耽美さを目指していたであろう音世界で実に興味深いですね。

同年にMALICE MIZERがデビュー・ミニアルバム『memoire』をリリースしていることを踏まえると、偶然ながら同時代的な音のつながりを発見できるのもおもしろいですよ。

残念ながら毎回のことですがCDは廃盤で入手困難、名古屋系をとにかく知り尽くしたいという方はオークションや中古ショップなどを定期的にチェックしてみることをオススメします!

MICHAELBrand new kiss XXXX

Romance for~の和泉悠宇さんがボーカルを務め、LaputaのベーシストのJUNJIさんがギタリストとして参加していたバンドのBrand new kiss XXXX。

ほとんど情報もなく音源を残されていたのかどうかも定かではないのですが、1991年に結成されて1993年に解散ということを踏まえると、90年代名古屋系としては最初期のバンドということです。

JUNJIさんは1974年生まれですから、おそらくメンバーの大半が高校生くらいの年齢だったというのも凄いですよね。

15歳でFANATIC◇CRISISを結成した石月努さんもそうですが、早熟な才能を持った若すぎるミュージシャンたちもまた、名古屋系の歴史を形作ったと思うと感慨深いです。

当時のフライヤーには「UNDER GROUND PSYCHEDELIC METAL」といったキャッチコピーが書かれており、ネット上で確認できる当時のライヴ映像を見ていただくことで、当時の彼らがどのような音楽を指向していたのかがある程度見えてくるのではないでしょうか。

Laputa時代のJUNJIさんは縦横無尽に動き回るベース・ラインが特徴的でしたから、もともとはギタリストだったと思うと納得できるものがありますよね!

孤独の中で愛した君WITH SEXY

WITH SEXY – 孤独の中で愛した君 (Kodoku no naka de aishita kimi) PV
孤独の中で愛した君WITH SEXY

名古屋系のバンドではないのですが、九州出身の実力派ヴィジュアル系バンドとして知られていたVasallaに参加したメンバーが多く関わっていたのがWITH SEXYです。

SilverーRoseのメンバーであり、ROUAGEを脱退した後のベーシストのKAIKIさん、SyndromeやDのSINさんといった面々も参加しており、在籍していたメンバーを知るだけでもヴィジュアル系のファミリーツリーを眺めているような気にさえなってしまいそうですね。

立ち位置的にはLAPUTAやROUAGEよりやや下の世代であり、1996年には5カ月連続のシングル発売など精力的な活動をしていた彼らが唯一残したアルバム『Couleurs』は1997年に発表されています。

前述したVasallaでもコンビを組むRINNEさんと戒依さんがツイン・ギターとして活躍、KAIKIさんが作曲した楽曲も含まれた作品であり、彼らの集大成のような作品と言えましょう。

空間系のエフェクターを駆使したメロディアスなギター、性急なビート、メロディアスなボーカルは名古屋系のダークネスよりもどちらかと言えば白系に寄ったもので、ポップで聴きやすいですね。

強烈な個性や世界観という意味では弱いものの、黒夢やLAPUTA的な名古屋系とはまた違ったサウンドとして楽しんでみてはいかがでしょうか。

おわりに

名古屋系、と一括りにされているバンドにはそれぞれの魅力があり、鳴らしているサウンド自体必ずしも同一の方向性ではないことが今回の記事をご覧頂いた方は理解できたのではないでしょうか。

とはいえ、多くの名古屋系とされるバンドに共通している点は、やはり独自の「闇」やアンダーグラウンドな雰囲気です。

メジャーの音楽シーンに対する反抗精神は、後続のバンドたちに大いなる影響を及ぼしたのです。