【90年代ヴィジュアル系】名古屋系の代表的なバンドたち
ヴィジュアル系の中でも、とりわけアンダーグラウンドな世界観で熱狂的なファンも多い「名古屋系」と呼ばれるサブジャンル、およびシーンの総称をご存じでしょうか。
起源は諸説あるのですが、1990年代初頭に活動を開始した黒夢とSilver-Roseが2大巨頭とされ、まだヴィジュアル系という言葉もなかった時代において、名古屋のインディーズ・シーンで活躍したバンドたちがいつしか「名古屋系」と呼ばれるようになったのです。
本稿では、そんな名古屋系と呼ばれた90年代のバンドたちを紹介しています。
ヴィジュアル系を掘り下げたい方はもちろん、日本のインディーズ音楽の歴史を語る上でも欠かせない名古屋系の存在をこの機会にぜひ知ってください。
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【90年代ヴィジュアル系】名古屋系の代表的なバンドたち(1〜10)
Ask for EyesSleep My Dear

名古屋系の第一人者にして、90年代のヴィジュアル系の歴史において非常に重要な事務所である「ティアーズ音楽事務所」に所属したPENICILLINやmedia youthと並んで「3大バンド」とも呼ばれたSleep My Dear。
結成が1991年ですから黒夢と同期であり、Silver-Roseのローディーだったメンバーを中心として結成されたというまさに純度120%の名古屋系バンドなのですね。
1992年には初代ボーカリストのToshiyaさんが脱退、バンドのローディーを務めていたKöHeyさんが二代目ボーカリストとして1998年の解散まで活動を続けます。
名古屋系バンドの聖地と言える名古屋MUSIC FARMにて活動を続け人気を博し、初期のデモテープには黒夢の清春さんがコーラスで参加するなど、そういった点も当時のシーンのつながりを知る上で非常に重要なトピックですからぜひ知っておいていただきたいですね。
そんな彼らの音楽性は名古屋系特有の激しさやダークさも兼ね備えつつ、キャッチーでメロディアスな楽曲も臆することなく挑戦していたことがポイントと言えそうです。
Zi:KILLのEBYさんがプロデュース、1995年にリリースされたメジャー・デビュー作『SHAPE』の楽曲を聴けば、バリエーションに富んだ彼らの音楽性が伝わることでしょう。
残念なことに、その『SHAPE』はディスクの不具合で生産中止、楽曲の差し替えや曲順の変更なども加えた『CODE』が仕切り直しのような形でリリースされるなど、不遇なバンドでもありました。
余談ですが、KöHeyさんが焼き肉チェーン店のマネジャー兼店長として2018年にテレビ出演を果たし、当時をよく知るヴィジュアル系のファンたちをざわつかせましたことも記憶に新しいですね。
HEART ACHE…LONELINESSof-J

またどう読んでいいか分からないバンドが……と名古屋系初心者の方は思われたかもしれませんが、of-Jと書いて「オブジェ」と読ませます。
of-Jは90年代名古屋系の中でも最初期のバンドとして知られており、黒夢の清春さんとともにSUS4やGAENETといったバンドで活動したギタリストの真宮香さん、同じく黒夢の臣さんとGERACEEで活躍したボーカリストの安田政利さんが在籍しており、他のメンバーとしては、後にMerry Go Roundのベーシストとなる准那さんや、FANATIC◇CRISISに加入するドラマーの徹さんといった名古屋系のオールスターが関わっていたのですから、名古屋系の歴史を紐解いていく上では確実に押さえておくべきバンドなのですね。
そんな豊富なキャリアを持つメンバーが揃ったバンドということで、確かな実力と優れたソングライティングを武器としてクオリティの高い楽曲を多く残しています。
名古屋系はデモテープだけで解散してしまうようなバンドも多い中で、黒夢のレーベル「La†miss」よりリリースされた1993年のデビュー・フルアルバム『anamorphosis』、1996年には2枚目のアルバム『FLAT』もリリースしていますから、他のバンドと比べると知名度はいまいちながら、名古屋系を知る上でも90年代のヴィジュアル系を知る上でもぜひ押さえてほしいバンドの1つだと言えましょう。
病んだ世界観や過激なパフォーマンスなどでショック性を重視していた面もある名古屋系とはまた違った魅力を持つ彼らは、どこか切ないメロディ・ラインが耳に残る楽曲自体の良さで勝負できるバンドで、80年代のビートロック的な影響を感じさせながらも同時にヴィジュアル系だなと思わせるどこかストレートではない曲展開などが興味深くおもしろいですね。
勇気をあげよう君に・・・Romance for~

バンド名を黒夢の清春さんに名付けてもらったという時点で、名古屋系の伝統を受け継ぐバンドと呼びたいRomance for~。
バンド名の読み方は「ロマンス・フォア」で、黒夢のローディーを務めていたボーカリストの和泉悠宇さん、後にWITH SEXYに加入するギタリストの八神戒依さんといった面々を中心として1994年に結成されたバンドです。
1997年にメジャー・デビューを果たすも1999年に解散していますから、まさに90年代を駆け抜けた名古屋系バンドと言えましょう。
そんなロマンス・フォアの経歴を知った上でコテコテの名古屋系サウンドを期待して彼らの、特にメジャー・デビュー以降の音を聴いたら恐らく拍子抜けしてしまうかもしれませんね。
メジャー・デビュー曲『I wish ~ずっと二人で~』は爽やかなギターのバッキングとキラキラしたキーボードを駆使したサウンドで、和泉さんのストレートに響く荒々しくも哀愁を帯びた歌唱を軸とした切ないメロディ、相当のヴィジュアル系好きであれば隠し切れないヴィジュアル系の血筋を感じ取ることはできますが、ロック色の強いJ-POPなサウンドなのですね。
メンバーのルックスもいかにも90年代中盤から後半のファッションというのが、彼らの出自を知っていれば実に興味深いです。
残念ながら商業的な成果は遺せなかったのですが、名古屋系と枠内でもこういった形でメジャー・デビューしたバンドがいたということを知ってほしいですし、彼らがメジャーで唯一残したミニアルバム『~a place in the sun』はぜひ一度聴いてもらいたいですね。
ちなみに、彼らの名古屋系らしいダークな時代の音源を探すのはかなり困難なのですが、興味のある方は名古屋系のバンドが多く参加したオムニバス・アルバム『COSMIC FIELDS』を探してみてください。
【90年代ヴィジュアル系】名古屋系の代表的なバンドたち(11〜20)
Heart to Heartsus4

黒夢の清春さん、Of-Jの間宮馨さんが在籍していたことで知られているSUS4。
音楽史的に見れば、ある意味90年代名古屋系の始まりの始まりなバンド、と言えるかもしれません。
TWITTERでSilverーRoseのボーカリストであるYOWMAYさんが「名古屋系の本当の元祖はSus4の間宮氏」といった意味の発言をしていることを思うと、当事者としてはそのような認識を持っているのだなと興味深いですよね。
1989年から1990年辺りまでの短い活動期間の中で残された音源としては配布を含むデモテープを残すのみ、当時の音を聴く限りでは初期のBUCK-TICKのようなビートロック的な音を鳴らしていたようで、間宮さんのギタリストとしての才能や一聴してそれと分かる清春さんのボーカルはこの時点で個性を確立しているのは驚きですね。
もちろん音源入手は困難を極めるというのが実情ですが、名古屋系を深掘りしていくのであれば知識としてだけでも存在は知っておくべきバンドでしょう。
MARIAs DESPAIRGARNET

実質的な名古屋系の始まりを黒夢やSilver Roseとするのであれば、黒夢の前身バンドであるGARNETの名前は挙げておかざるをえないでしょう。
たった2つのデモ・テープを残して解散したバンドであり、音源を入手するのは非常に困難ではあるのですが、名古屋系の歴史を追う以上は知っておくべきバンドです。
清春さんとはSUS-4時代からのバンド仲間で、解散後はOf-Jを結成することとなる真宮香さんがギターを担当しており、ベーシストに人時さん、ドラマーに鋭葵さんということで、真宮さんを除く3人が黒夢へと発展してくという歴史はとてもドラマチックというか興味深いですよね。
1年程度の活動しかなかった彼らですが、音楽性としてはポスト・パンク的な無機質さとデカダンな世界観といった趣で、よりハードな音楽性へと移行したいと清春さんと人時さんが考えていたという事実を踏まえると、初期の黒夢からアグレッシブな側面を抜いたような音楽性であり、清春さん自身も「機械的」と評しているそうです。
とはいえ、清春さんの歌声はこの時点で聴いてすぐそれと分かる個性を放っているのはやはりすごいですよね。
余談ですが、GARNET時代に作られた楽曲のいくつかは黒夢時代にも演奏されており、特に『MARIAS DESPAIR』は後に歌詞などを変えた形で『Lilia』という曲名で山口紗弥加さんへ楽曲提供されております。
MICHAELBrand new kiss XXXX

Romance for~の和泉悠宇さんがボーカルを務め、LaputaのベーシストのJUNJIさんがギタリストとして参加していたバンドのBrand new kiss XXXX。
ほとんど情報もなく音源を残されていたのかどうかも定かではないのですが、1991年に結成されて1993年に解散ということを踏まえると、90年代名古屋系としては最初期のバンドということです。
JUNJIさんは1974年生まれですから、おそらくメンバーの大半が高校生くらいの年齢だったというのも凄いですよね。
15歳でFANATIC◇CRISISを結成した石月努さんもそうですが、早熟な才能を持った若すぎるミュージシャンたちもまた、名古屋系の歴史を形作ったと思うと感慨深いです。
当時のフライヤーには「UNDER GROUND PSYCHEDELIC METAL」といったキャッチコピーが書かれており、ネット上で確認できる当時のライヴ映像を見ていただくことで、当時の彼らがどのような音楽を指向していたのかがある程度見えてくるのではないでしょうか。
Laputa時代のJUNJIさんは縦横無尽に動き回るベース・ラインが特徴的でしたから、もともとはギタリストだったと思うと納得できるものがありますよね!
カリスマLamiel

黒夢やLAPUTAにROUAGEといったバンドが作り上げた王道の名古屋系サウンドを継承し、1990年代後半にデビューしてカリスマ的な人気を誇ったのがLamielです。
Lustairの紹介時にも説明したように、Lustairのボーカリスト維那さんとベーシストのRukaさん、そしてギタリストの昌さんを中心として結成され、初期のメンバーには後のkein、そしてDEADMANのaieさんが参加していたことでも知られているバンドです。
「碧」「朱」「黒」という一貫した美学を感じさせる3本のデモテープを即日完売させ、1998年にはLustair時代では実現できなかったCDリリースを、名盤アルバム『開眼』で実現させています。
90年代後半といえば商業的な意味で空前のヴィジュアル系ブームが訪れて多くのバンドが次々とメジャーへ進出、良くも悪くもソフィスティケイトされたサウンドでオリコン・チャートに作品をランクインさせる中、地下シーンでは名古屋系の持つ漆黒の闇や絶望といった世界を表現するバンドが人気を博していたという歴史的な事実が実に興味深いですよね。
先人たちへの憧れがあまりにも強すぎるという面はやはり感じ取れるものの、名古屋系の伝統を次世代のバンドが受け継いで自分たちなりの解釈で世に放った彼らはやはり偉大でしょう。
クリーン・トーンとひずんだギターの絡みを軸としたアンサンブルがいかにもヴィジュアル系らしく、ダークでアグレッシブかつメロディアスといった王道の楽曲から、洋楽オルタナティブロックからの影響を感じさせるアンサンブル、どことなく初期のラルク・アン・シエルを思わせるオリエンタルなフレーズも好んで使われていたというのは彼らの特徴の1つとなっていますね。
音源はすべて廃盤となっていますが、できればすべての音源を手に入れておきたいところです。





