ノイズミュージックの名盤。~インダストリアルからジャパノイズまで
通常の音楽的な楽曲構成や音作りを無視したような手法で、時には純粋な楽器ではなく金属物や自然界に流れる音のサンプリング、その他ありとあらゆる方法を駆使したアーティストたちの自由な発想で生まれる「ノイズ・ミュージック」は、言葉通り聴く人を不快にするほど非音楽的なものです。
本稿では、ノイズ・ミュージックを語る上では欠かせない「インダストリアル・ミュージック」と呼ばれるジャンルの代表的なバンドの名盤を中心として、世界的に「ジャパノイズ」として高い評価を受ける日本のアーティストたちの作品も紹介していきます。
雑音の中にしか得られない特別な感覚を、ぜひこの機会に味わってみてください。
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ノイズミュージックの名盤。~インダストリアルからジャパノイズまで(11〜20)
Total SexWhitehouse

「かつて存在したもっとも激しく冷淡な音楽」と自称、その言葉にふさわしい先鋭的なシンセを使った暴力的なノイズが吹き荒れるデビュー・アルバム『Birthdeath Experience』でノイズ史にその名を刻んだホワイトハウス。
1980年にボーカルとシンセサイザーを担当するウィリアム・ベネットさんを中心としてイギリスで結成された彼らは元祖パワー・エレクトロニクスとも呼ばれ、インダストリアル・ミュージック~ノイズ・ミュージックの歴史において欠かせない存在として知られています。
そんな彼らがデビュー・アルバムのリリースからたったの2ヵ月後にリリースしたセカンド・アルバム『Total Sex』は、マルキ・ド・サド著作『ソドムの120日』を引用した英文が書かれたジャケットもさることながら、一般的な音楽のフォーマットからは著しく逸脱したシンセによるノイズが延々と繰り出され、加工されたボーカルがアジテイトするサウンドは間違いなく一般のリスナーはお断りといった逸品です。
ノイズ・ミュージックに興味がある方であれば必読の名著『INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!』を執筆された持田保さんの言葉を借りるなら、まさに「ノイズ・ミュージック=反社会的」というイメージを作り上げたグループ」による禍々しく忌まわしい傑作として、一度は体験すべき音であると言えましょう。
HeadhunterFront 242

エレクトロニック・ボディ・ミュージック、略してEBMという表記でも知られている音楽ジャンルは1980年代後半に生まれたもので、ジャンル名として提唱・定義したのがベルギー出身のグループ、Front 242です。
音楽的なルーツは80年代初頭にまでさかのぼり、初期のインダストリアル・ミュージックやポスト・パンク、いわゆるジャーマン・ニューウェーブなど多岐に渡るもので、肉感的なダンス・ミュージックというざっくりとしたイメージで語れることが多いように感じますね。
ミニストリーやナイン・インチ・ネイルズなどのビッグネームも、特に初期はEBMの要素を押し出したサウンドを鳴らしておりました。
そういった意味でも多くのアーティストたちに影響を及ぼしたEBMの提唱者、Front 242の1988年リリース作『Front by Front』は、EBMの名盤でありインダストリアル・ミュージックの傑作としても知られる代表作の1つ。
クラブヒットを飛ばした名曲『Headhunter』も収録された本作は、アングラ譲りの攻撃的かつ革新的なシンセの応酬とエレクトロ・ビート、同時代のデペッシュ・モードなどのエレポップとの近似性も入り乱れ、この時期の電子音楽を語る上でも絶対に欠かせない金字塔的作品となっております。
ノイズ~インダストリアル・ミュージックから派生したダンス・ミュージックの発展形という意味でも重要な1枚だと言えましょう。
SoqlueitMASONNA

非常階段やメルツバウと並び称される「ジャパノイズ」の代表的な存在の1人であり、破滅的なライブ・パフォーマンスでも知られる京都の音楽家、山崎マゾさんのソロ・ユニットであるマゾンナ。
すべてにおいて極限までエクストリームな表現を提示し続ける様は世界で高く評価されますが、あまりにも激しいパフォーマンスゆえに山崎さんが体調を崩してしまい、マゾンナとしての活動は一時期停止状態でした。
2012年には活動25周年を記念した作品『EVIL BLACK DISC』がリリースされるはずでしたが、凶暴極まりないサウンドへのこだわりのために作業が難航、4年を過ぎた2016年にリリースされたというエピソードも強烈ですよね。
本稿で紹介している『MASONNA VS.BANANAMARA』は、1989年にリリースされたマゾンナのデビュー・アルバムで、日本が世界に誇るジャパノイズの金字塔的な作品です。
多重録音なし、全編モノラル録音という本作は筆舌に尽くしがたいノイズと絶叫が矢継ぎ早に襲い掛かるプリミティブな音の塊であり、こういう世界を知らない方が聴いたら雑音にしか聴こえないでしょう。
同時にアングラなノイズ・ミュージック愛好家のみならず、ソニック・ユースやベックといったオルタナティブロックの代表的なミュージシャンたちにも影響を与えていることを踏まえた上で、オルタナ好きな方も一度はこのノイズを体感してみてはいかがでしょうか。
The Boys Are Leaving TownJapandroids

ジャパンドロイズはブライアン・キングとデヴィッド・プラウズによるカナダのバンドで、2006年に結成されました。
「The Boys Are Leaving Town」は2009年のアルバム「Post-Nothing」に収録されています。
Endless SummerFennesz

あの坂本龍一さんとのコラボレーション作品なども手掛け、2000年代以降の電子音楽~音響~エレクトロニカといったジャンルにおける異才、クリスチャン・フェネスさん。
Fennesz名義での活動が特に有名なフェネスさんといえば、やはり2000年に発表された大傑作アルバム『Endless Summer』の存在は欠かせませんね。
タイトルから想起されるようなノスタルジックな景色が目に浮かぶような、あまりにも美しいフォーキーなエレクトロニカは多くのアーティストたちに影響を与え、2000年代に盛り上がりを見せた美メロ重視のエレクトロニカ、フォークトロニカの先陣を切ったエポックメイキング的な作品としてまさに永遠となった1枚です。
同時に、単にメロディが美しいエレクトロニカというだけではなく、本作は実験的かつ先鋭的な電子音楽の名盤を多くリリースしているオーストリアの名門レーベル、Megoからリリースされた代物であり、ちりばめられたグリッチ・ノイズなどの要素も多く含まれることから、レコード・ショップなどでノイズ~アバンギャルドのコーナーに置かれている場合もあるのです。
広義の意味でのノイズ・ミュージックの発展形として、本作のようなアルバムが存在していることも、ぜひ知っていただきたいところです。
Clothes HoistFoetus

1980年代の地下音楽シーンが生んだ鬼才、JG.サールウェルさんは複数の名義を用いてジャンルの枠内を軽く飛びこえた強烈な作品をリリースし続けるオーストラリア生まれのアーティストです。
その音楽性は一口で語れるようなものではありませんが、ミニストリーやナイン・インチ・ネイルズといったインダストリアル・ミュージックの要素を持つサウンドで商業的にも成功を果たしたミュージシャンたちに影響を与え、他のアーティストによる作品のリミックスも多く手掛けており、まさにミュージシャンズミュージシャンとでも呼びたい存在なのですね。
こちらの『Hole』は1984年に Scraping Foetus Off the Wheel名義で発表された作品で、本人にとっても出世作となった1枚。
暴力的なインダストリアル・メタルからキャバレー風の毒々しいサウンド、ジャズにヒップホップ、カオティックなサンプリングの嵐、とサールウェルさんがやりたいことを全てぶちこんだかのようなジャンクでノイジーな狂乱の一大絵巻!
ロシア構成主義を思わせるジャケットも含めて、先鋭的な音楽センスと圧倒的なテンションは1984年という時代を考えても衝撃的の一言ですね。
説明不能の闇雲なパワーを体全体で感じてください!
ノイズミュージックの名盤。~インダストリアルからジャパノイズまで(21〜30)
Spotted Pinto BeanThe Residents

レジデンツは1970年代前半に活動を開始したアメリカの音楽グループで、素顔や本名を秘密にしていることで知られています。
「Spotted Pinto Bean」は1974年にリリースされたアルバム「Meet The Residents」の収録曲です。