【混沌の電子音楽】ドリルンベースの名曲まとめ
1990年代の電子音楽シーンに詳しい方なら、いわゆる「ドルリンベース」という音楽ジャンルをご存じでしょう。
英語では「Drill ‘n’ bass」と記載する電子音楽で音楽的な定義は難しいのですが、ドラムンベース以上に複雑なリズム・パターンやプログラミングを用いながらも、熱を帯びたグルーヴとは違う混沌とした雰囲気が特徴的です。
ブレイクコアやグリッチといったジャンルへ影響を及ぼしながらも、純然たるドリルンベースの作品自体は多くはありません。
今回の記事では、まずは押さえてほしいドリルンベースの名曲をピックアップして紹介しています。
興味のある方はぜひご覧ください!
【混沌の電子音楽】ドリルンベースの名曲まとめ(1〜10)
Girl/Boy (NLS Mix)Aphex Twin

イギリスのミュージシャン、リチャード・D・ジェームスさんによるソロプロジェクト、エイフェックス・ツインが1995年にリリースした『Girl/Boy (NLS Mix)』。
弦楽器による優雅なメロディーに怒涛のビートがプラスされた、かなり不思議な世界観の楽曲です。
PlugやWagon Christなどの名義の作品で知られるイギリスのミュージシャン、ルーク・ヴァイバートさんの影響を色濃く受けて作られました。
また、この楽曲のEPのジャケットには、出生時に亡くなったリチャード・D・ジェームスさんの兄のお墓の写真が使用されているとも言われています。
なんとも言えないダークな雰囲気をまとう、神秘的ともいえる曲ですね!
Squarepusher ThemeSquarepusher

イギリスのミュージシャン、トーマス・ジェンキンソンさんがスクエアプッシャー名義で1996年にリリースした『Squarepusher Theme』。
レトロ感と生音感のあるフュージョンジャズ・サウンドと、電子的で無機質なドラムサウンドがミックスした、独特な音楽世界が楽しめる楽曲です。
彼のデビューアルバム『Feed Me Weird Things』に収録されています。
スクエアプッシャーは、このアルバムの評判をきっかけに、エイフェックス・ツインなども所属するエレクトロニカの名門レーベル、ワープ・レコーズと契約。
その後、現在に至るまで長く活躍しています。
HajnalVenetian Snares

ドルリンベースというジャンル自体は90年代後半には失速してしまい、その音楽的な要素はブレイクコアやグリッチといったサブジャンルへと発展していくということは今回の記事の冒頭でも触れました。
ドリルンベースの発展形としてぜひチェックしていただきたい、複雑で緻密なプログラミングによるビートやルール無用のサンプリング、すさまじいスピードで展開してく音楽性が特徴的なブレイクコアの代表的なアーティストの1人、カナダ出身のヴェネチアン・スネアズさんによる楽曲『Hajnal』を紹介しましょう。
2005年にリリースされた代表作『Rossz Csillag Alatt Született』に収録されている楽曲で、クラシック音楽の要素と高速ブレイクビーツを見事に融合させた画期的な作品なのですね。
アルバムはµ-Ziqことマイク・パラディナスさんが主宰する名門レーベル「Planet Mu」よりリリースされていることも踏まえて、本作をドリルンベースの文脈として聴いてみるのもおもしろいですよ。
Come On My SelectorSquarepusher

スクエアプッシャーは、イギリスのミュージシャン、トーマス・ジェンキンソンさんの活動名義。
彼が1997年にリリースした『Come On My Selector』について特筆すべきなのは、映像作家のクリス・カニンガムさんが手掛けたミュージックビデオです!
日本が舞台になっており、ホラー映画のような演出で物語が進みながらも、ビートやリズムと映像がぴったり合っているところが見ていてクセになりますよ。
また、最後に出てくる「ちょっとゴールディみたいだねぇ」という日本語のセリフも笑えます(ゴールディはドラムンベースのミュージシャン)。
ぜひミュージックビデオと一緒に楽曲を楽しんでくださいね!
Chomp SambaAmon Tobin

ブラジル出身のミュージシャン、アモン・トビンさんは1990年代より名門レーベル「Ninja Tune」の看板アーティストの1人として活躍、エレクトロニック・ミュージックのみならず映画音楽や現代音楽など、多くの分野で素晴らしい音楽を世に送り続けている孤高のアーティストです。
彼の初期作品にはドリルンベース的な要素が見受けられ、多くの音楽メディアから称賛された名盤の誉れ高い1997年リリースの『Bricolage』は、ドラムンベースやジャングル、トリップホップにジャズの要素も加わった独創的な作品であり、ドリルンベース的な解釈もできそうな作風なのですね。
今回取り上げている楽曲『Chomp Samba』はシングルとしてもリリースされた名曲で、ジャズとブレイクビーツが織り成す混沌の世界観は、特に初めて体験される方であれば驚かれるかもしれませんね。
Brace Yourself Jasonμ-Ziq

エイフェックス・ツインやスクエアプッシャー、プラグと並んでドルリンベースを語る上で欠かせない存在が、イギリス出身のテクノ・ミュージシャン、マイク・パラディナスさんです。
マイクさんの最も有名なアーティスト名義「μ-Ziq」としてリリースした諸作品の中でも、1997年に発表された『Lunatic Harness』はドリルンベースにおいても重要な意味を持つ作品なのですね。
2022年には25周年記念盤がリリースされた名盤の誉れ高いアルバムであり、ドリルンベースはあくまで一要素でしかないことは作品を通して聴けばすぐに分かるでしょう。
後にEPとしてもリリースされた、変則的なブレイクビーツと素朴な美しさを持つメロディにハッとさせられる1曲目の『Brace Yourself Jason』は王道のドリルンベースのスタイルを持った名曲ですから、まずはこの曲を聴いていただいて、気に入った方はぜひアルバムにも手を伸ばしてみてください!
Hangable Auto BulbAFX

エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェームスさんは多くの名義で作品をリリースしていることは周知の事実ですが、AFX名義で1995年に発表されたEP『Hangable Auto Bulb』は初期ドリルンベースの名作としても著名な作品です。
アンビエント・テクノやIDMと呼ばれるジャンルを作り上げ、独創的なテクノ・ミュージックを展開していたリチャードさんが高速のブレイクビーツを自身の音楽に導入した初めての作品であり、本作で提示された音楽スタイルによってドリルンベースが定義付けられたといっても過言ではないでしょう。
表題曲で聴くことのできる浮遊感と全く踊れない不規則なブレイクビーツは、初めて聴くリスナーをどこか違う世界へと連れて行ってしまうような作用を持ち合わせています。
なお、本作のタイトルはリチャードさんの最初期の作品『Analogue Bubblebath』のアナグラムとなっています。