【印象派の音楽】日本の心を感じるクラシック作品をピックアップ
19世紀後半、クロード・ドビュッシーやモーリス・ラヴェルを中心とするフランスの作曲家らによって発展した新たなクラシック音楽の流派「印象派」。
印象主義時代に生まれた音楽のなかには、日本や日本の絵画などからインスピレーションを受けて作曲された作品がいくつか存在します。
また、日本人作曲家のなかにも、印象派の面影を感じさせる作品を遺した人物がいます。
そこで今回は、日本と何かしらの関連性がある印象派の作品や、印象派に影響を受けた日本人作曲家の作品をピックアップ!
曲の背景や作曲家と日本のつながりといったエピソードとともにご紹介します。
【印象派の音楽】日本の心を感じるクラシック作品をピックアップ(1〜10)
天人の音楽NEW!久石譲

『かぐや姫の物語』から「天人の音楽」です。
作曲者はスタジオジブリ作品の音楽でおなじみ久石譲さんです。
久石譲さんはスタジオジブリの中でも代表とする作曲家ですが、意外にも宮崎駿さんが監督作品のみで、それ以外の監督の時は別の作曲家が担当されています。
『かぐや姫の物語』の監督は高畑勲さんで、久石さんが宮崎駿さん以外の時に担当されるレアな作品となっています。
「もののけ姫」以降劇中ではフルオーケストラで演奏されることも多くなりましたが、ジブリや久石さんの知名度が上がるごとにコンサートも多くなり、久石さんはコンサートごとに毎回アレンジされているそうです。
サウンドトラックとコンサート版で聞き比べてみるのも面白いかもしれませんね。
交響詩「海」Claude Debussy

子どものころをフランスのカンヌで過ごしたクロード・ドビュッシーは、「音楽家になっていなかったら船乗りになっていた」と語るほど、生涯にわたって海へのあこがれを抱き続けました。
そのようなドビュッシーが、海の印象を音楽で表現したのが3曲からなる交響詩「海」です。
葛飾北斎の浮世絵が楽譜の表紙になっていることも特徴です。
混声合唱とオーケストラのための「レクイエム」三善晃

日本を代表する作曲家のひとりである三善晃。
パリ音楽院留学時代の体験が彼の音楽性に大きな影響を与え、独自の作風を確立しました。
彼の代表作の一つである『混声合唱とオーケストラのための「レクイエム」』は、作曲者自身の戦争体験と理不尽な死への問いかけが込められた、反戦をテーマとする力強い作品です。
壮大なスケールと緻密な構成、そして深いメッセージ性を持つ本作は、クラシック音楽ファンのみならず、平和を願うすべての人に聴いていただきたい1曲です。
組曲「鏡」第3曲「洋上の小舟」Maurice Ravel

フランスの作曲家モーリス・ラヴェルは、19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍した印象派音楽の代表的な人物です。
彼の音楽は、その緻密さと完璧なスタイルで知られており、『ボレロ』などの作品で広く親しまれています。
1904年から1905年にかけて作曲された『組曲「鏡」』の第3曲『洋上の小舟』は、海の波の流れや舟の揺れを想起させる美しい音楽です。
ピアノの演奏技術に高い要求がありますが、その美しい響きに魅了されずにはいられません。
海の美しさと神秘を感じたい方、印象派音楽の世界に浸りたい方にオススメの1曲です。
古き日本のパステル画 Op.24 第2曲「聴く者なき琴うた」Marcel Tournier

フランスのハープ奏者、作曲家、そして教育者であったマルセル・トゥルニエ。
彼は、ハープ音楽の可能性を拡大し、レパートリーに多くの貢献をもたらしました。
トゥルニエの作品は、繊細な和声や詩的な表現、そして特定の文化や風景を音楽的に描写する独特の感性が特徴です。
『古き日本のパステル画 Op.24』は、その題名からもわかるように、日本の情景や文化への深い共感が感じられる作品。
印象派の影響を受けたその音楽性は、まるで絵画のように美しい情景を描かせてくれます
日本組曲 Op.33Gustav Holst

20世紀初頭に活躍したイギリスの作曲家グスターヴ・ホルストは『組曲「惑星」』で知られていますが、1915年に作曲された『日本組曲 Op.33』も見逃せない作品です。
この組曲は、日本人ダンサーの伊藤道郎からの依頼で作曲され、日本の伝統的な旋律をもとに、ホルスト独自の解釈で音楽が紡ぎ出されています。
プレリュードから4つのダンス、そしてインタールードと続く構成の中で、日本の風景や情景が巧みに描かれています。
特に「狼の踊り」のフィナーレは圧巻で、クラシック音楽ファンのみならず、異文化に興味を持つ方にもオススメの1曲です。
春の海宮城道雄

日本の伝統音楽に新たな息吹を吹き込んだ作曲家、宮城道雄。
彼が1929年に発表した箏と尺八のための二重奏曲『春の海』は、春の訪れとともに静かに波打つ海を描写しています。
西洋音楽の影響を取り入れつつも、日本の四季の美しさと自然への敬愛にあふれたこの曲は、聴く者に穏やかな気持ちを与えてくれるでしょう。
本作は、日本の音楽教育でも取り上げられる名曲であり、日本人のみならず、世界中の人々に親しまれています。
日本の伝統音楽の魅力を味わいたい方や、心安らぐひとときを過ごしたい方にオススメの1曲です。
パロディ的な4楽章深井史郎

日本のクラシック音楽界に一石を投じた作曲家、深井史郎。
印象派へのオマージュを感じさせる管弦楽曲『パロディ的な4楽章』は、西洋音楽に影響を受けつつも独自の表現を追求した彼の代表作です。
各楽章に登場する作曲家たちの風刺的な「肖像画」は、深井のユーモアあふれる音楽観を反映しています。
一方で、日本人作曲家が西洋音楽を研究することの重要性を説く深いメッセージ性も感じられる本作は、クラシック音楽ファンのみならず、音楽を学ぶ全ての人にオススメできる名曲です。
ピアノ組曲「白鳳の歌」第3曲「水煙」菅原明朗

菅原明朗さんは、画学校に通いながら作曲法も学んだ作曲家。
ドイツ系が主流であった日本のクラシック音楽界に、フランス流の新風を吹き込んだことでも知られています。
彼が手掛けた『ピアノ組曲「白鳳の歌」』は、知名度はそれほど高くないものの、水彩画のような淡い色合いを思わせる美しい曲調で親しまれています。
特に、洗練された曲想とピアニスティックな要素が融合した第3曲『水煙』は、演奏会やコンクール曲としてたびたび取り上げられています。
「映像」第2集 第3曲「金色の魚」Claude Debussy

フランスの作曲家クロード・ドビュッシーの革新的な作曲技法は、伝統的な和声法や旋法を超え、後世の作曲家たちに大きな影響を与えました。
『映像 第2集』に収められた『金色の魚』は、ドビュッシーが自身の書斎に飾っていた日本の漆器盆に描かれた錦鯉に触発されて作曲されました。
ドビュッシーの音楽は、日本的な感性と共鳴し、演奏者の技術だけでなく感性や想像力をも要求されるため、クラシック音楽愛好家だけでなく、印象派美術や日本文化に興味がある方にもオススメです。
【印象派の音楽】日本の心を感じるクラシック作品をピックアップ(11〜20)
歌劇「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」Giacomo Puccini

イタリアオペラの巨匠ジャコモ・プッチーニの代表作『蝶々夫人』のなかでも特に印象的な、ヒロイン蝶々夫人が歌うソプラノアリア。
プッチーニは日本の音楽を研究し、現地の歌を取り入れるなど細部にまでこだわり抜いてこのオペラをっ作曲しました。
ヒロインが遠くにいる夫の帰りを待ち望む気持ちを歌い上げる楽曲は、彼女の純真な愛と夢への確固たる信念を表現しています。
オペラファンのみならず、日本文化に興味がある方にもぜひ聴いていただきたい名曲です。
交響詩「海」 3つの交響的スケッチ 第3楽章「風と海との対話」Claude Debussy

海の雄大さと神秘性を音で見事に描き出した、クロード・ドビュッシーの管弦楽作品、名盤『La Mer』のクライマックスを飾る一曲です。
この楽曲では、風と海が対話するかのように、激しくも美しい自然のドラマが展開されます。
弦楽器のうねり、木管楽器の鋭い響き、そして金管楽器と打楽器が一体となって迫力がある音の情景を創り上げています。
1905年10月に初演された本作は、夏の暑さを忘れさせてくれるような爽快感と涼やかさを持っています。
オーケストラの色彩が豊かな音響に浸りたい方や、吹奏楽編曲版などを通じてクラシック音楽の壮大さに触れたい方にもおすすめの作品となっています。
交響詩「海」 3つの交響的スケッチより 第2楽章「波の戯れ」Claude Debussy

クロード・ドビュッシーが作曲した管弦楽曲、海の一場面を切り取ったような作品です。
弦楽器と木管楽器が織りなす、軽やかに跳ねるようなメロディは、太陽の光を浴びてキラキラと輝く水面や、楽しげに戯れる波の様子を鮮やかに思い起こさせます。
聴いているだけで、まるで涼やかな潮風が頬をなでるような心地よさを感じさせてくれるでしょう。
初版楽譜の表紙には葛飾北斎の浮世絵が用いられ、1905年の初演では賛否両論でしたが、1908年の作曲者自らによる再演で高い評価を得ました。
本作の響きは映画『ジョーズ』など後世の作品にも影響を与えたとされています。
暑い季節に清涼感を求める方や、色彩が豊かな音の世界に浸りたい方におすすめです。
交響詩「海」 3つの交響的スケッチより第1楽章「海上の夜明けから真昼まで」Claude Debussy

きらめく海の情景が目に浮かぶような、クロード・ドビュッシーの管弦楽作品より、一日の始まりを告げる楽章です。
本作は、夜明けの微かな光から真昼の眩い太陽へと移り変わる海の姿を、オーケストラの多彩な音色でまるで絵画のように描き出しています。
繊細な音の重なりは、聴く人を涼やかで穏やかな気持ちにさせてくれますね。
1905年10月に初めて演奏された際にはさまざまな意見が出ましたが、今日ではドビュッシーの代表作の一つとして多くの人に親しまれています。
夏の日に爽やかな音楽で心をリフレッシュしたい方や、イマジネーションを広げてくれる美しいメロディに浸りたい方には、ぜひ触れてほしい名曲です。
ノクターン第2番Frederic Chopin

穏やかに流れる美しい旋律と繊細な装飾音が、夜の静寂とともに心に染み入るピアノ曲です。
ショパンが1831年に作曲した本作は、夢のような幻想的な情景や内面の感情を見事に表現しています。
右手の優雅なメロディと左手の調和のとれた伴奏が織りなす世界観は、まるでイタリアのオペラように美しい歌声を思わせます。
1956年のアメリカ映画『愛情物語』では、主題曲『To Love Again』としてアレンジされ、アニメ『クラシカロイド』でも使用されるなど、メディアでの活用も豊富です。
静かに集中したい時や心を落ち着かせたい時にピッタリの一曲で、勉強や読書のお供としても最適な癒やしの名曲といえるでしょう。
オルゴールCharles-Henry

オルゴールの繊細な音色をピアノで表現した心温まる一曲です。
まるで宝石箱を開けたかのような優雅な旋律は、聴く人の心に穏やかな安らぎを与えてくれます。
アルバム『Histoires Presque Vraies』に収録された本作は、機械的でありながらも人間味が溢れる音色が見事に表現されており、懐かしい思い出が詰まったオルゴールの世界へと誘ってくれます。
優しい音色とシンプルな構成は、日々の喧騒から離れて心を癒やしたい方や、穏やかなひとときを過ごしたい方におすすめです。
また、ピアノ演奏に挑戦してみたい方にとっても、取り組みがしやすい曲になっています。
おわりに
本記事では「印象派」「日本」の2つのキーワードに関連するクラシック作品をご紹介しました。
いずれの曲からも「和」の雰囲気を感じられたのではないでしょうか?
今回は印象派の作品からピックアップしましたが、時代を限定しなければ、和の雰囲気を感じられるクラシック作品はまだまだたくさんあります。
ご興味のある方はぜひ、リサーチしてみてくださいね!