日本の作曲家によるクラシック音楽。おすすめのクラシック音楽
クラシック音楽、と言われるとやはり誰でも知っている海外の作曲家による作品を思い浮かべますよね。
日常の場面でアレンジを変えて使われることも多いですし、ごく自然に多くの人が一度は耳にしていてすぐに名前を挙げられる作品は多く存在します。
それでは、日本人作曲家によるクラシック音楽の作品で知っているものを挙げてください、と言われてさっと答えられる方は少ないかもしれません。
ここでは日本人の作曲家が手掛けたクラシック音楽に注目、代表的な作品をピックアップしています。
日ごろからクラシック音楽を愛聴されている方々の中でも、あまり日本人の作品は聴いたことがないな、という方にもおすすめです。
日本の作曲家によるクラシック音楽。おすすめのクラシック音楽(1〜10)
ノヴェンバー・ステップス武満徹

日本が世界に誇る現代音楽家の巨匠、武満徹さんの代表作にして国際的に知られている歴史的な名曲が『ノヴェンバー・ステップス』です。
通常のオーケストラ編成に琵琶奏者と尺八奏者が加わり、西洋音楽と日本の伝統音楽が時間軸も文化もこえて向かい合うエポックメイキング的な作品であり、初演はあのニューヨーク・フィルハーモニックによって実現しました。
もともとはニューヨーク・フィルハーモニック125周年記念の委嘱作品として制作され、タイトルの『ノヴェンバー・ステップス』は初演が1967年11月9日という11月であったこと、作品の音楽的な構造として11の段を持つということに由来しています。
初演の大成功から世界中で演奏され続けている本作ですが、琵琶と尺八のソロ・パートのほとんどを薩摩琵琶演奏家の鶴田錦史さん、尺八奏者の横山勝也さんが演奏し続けたことでも有名ですね。
作曲者の武満さん、そして鶴田さんと横田さんが亡くなられた現代においても、彼らの精神は若い演奏家たちによって受け継がれています。
SF交響ファンタジー第1番伊福部昭

北海道出身の伊福部昭さんは、クラシック音楽と映画音楽の分野で活躍した日本を代表する作曲家です。
伊福部さんの作品は、日本の民族音楽と西洋オーケストラを融合させた独特のスタイルが特徴的です。
本作は、伊福部さんがてがけた東宝特撮映画の音楽を再構成したコンサート用の管弦楽作品で、「ゴジラ」などの映画音楽が凝縮されています。
力強いリズムと印象的な旋律、独特の奏法が織り交ぜられ、怪獣映画の世界観を見事に表現しています。
特撮映画ファンはもちろん、クラシック音楽愛好家にもおすすめの一曲です。
日本狂詩曲伊福部昭

クラシック音楽にあまり詳しくないという方であれば、伊福部昭さんの名前は主に映画音楽で目にしているのではないでしょうか。
誰もが一度は耳にしたことのある『ゴジラ』の超有名なテーマ曲を始めとして、数え切れないほどの邦画の劇伴を手掛けた伊福部さんは、映画史においても欠かすことのできない存在ですよね。
とはいえ本稿の趣旨は「クラシック音楽の名曲」ですから、今回はほとんど独学で作曲を勉強したという伊福部さんによる管弦楽曲の名曲『日本狂詩曲』を紹介します。
1935年に書かれたこちらの作品は、伊福部さんによっても初めての管弦楽曲であり、ロシア出身の作曲家であるアレキサンドル・チェレプニンさんが主宰する賞で見事1位に輝き、世界デビューを果たすきっかけとなった記念すべき楽曲でもあるのですね。
当時21歳だった伊福部さんは、北海道庁の森林官として勤務しながら作曲したというのですから驚きです。
打楽器を全面に押し出したアンサンブルが放つ国や文化をこえた祝祭のような力強さと、日本的哀愁を帯びた旋律を聴いていると、何とも言えない郷愁にかられてしまいますね。
管弦楽のためのラプソディ外山雄三

指揮者としても活躍する外山雄三さんが1960年に作曲した管弦楽曲、NHK交響楽団の海外演奏旅行にあたり制作されました。
日本の民謡のフレーズを取り入れた旋律、和太鼓などの日本の伝統楽器が編成に加わっている点など、和の空気を強調した管弦楽曲ですね。
日本の伝統と管弦楽の王道を融合させたようなおもしろい試みの楽曲で、交響曲の楽しさを伝えてくれているようにも思えます。
アクセントとしてポイントで奏でられる和楽器からも曲の世界観をしっかりと伝えてくれます。
ピアノ協奏曲矢代秋雄

1929年に東京で生まれ、幼いころから西洋音楽に親しみピアノの演奏や作曲などを早熟な才能を発揮していた矢代秋雄さん。
ヨーロッパの偉大な作曲家たちの影響を受けながらも、独自の美学に彩られた作品を生み出した矢代さんは、残念ながら46歳という若さでこの世を去っています。
そんな矢代さんの最高傑作とも言われ、日本人の手によるピアノ協奏曲の傑作と名高い作品が1967年に誕生した『ピアノ協奏曲』です。
初演は1967年の7月、若杉弘さんが指揮を務めたNHK交響楽団とピアニストの中村紘子さんの演奏によって披露されています。
それぞれが違った世界観を持つ全3楽章で構成され、20世紀以降の音楽史にその名を刻む傑作として世界中で演奏されている作品なのですね。
ピアニストに高度なテクニックが求められる作品としても知られており、初演を務めた中村紘子さんの名演はもちろん、他のピアニストやオーケストラによる録音を聴くことで、作品の本質的な魅力が理解できるのではないでしょうか。
序曲 ニ長調山田耕筰

日本の近代音楽を代表する作曲家の山田耕筰が手掛けた日本初の本格的なオーケストラ作品です。
1912年、ベルリン留学中に完成させたこの曲は、メンデルスゾーンやシューマンの影響を受けた古典的なソナタ形式で構成されています。
冒頭から弦楽器による明るく力強い主題が奏でられ、豊かな流れと変化をもたらす展開が特徴的です。
わずか3分半ほどの短い作品ですが、日本のクラシック音楽の発展において歴史的な意義を持ちます。
1915年5月に帝国劇場で初演されて以来、日本の音楽界に大きな影響を与え続けています。
クラシック音楽ファンはもちろん、日本の音楽史に興味がある方にもおすすめの一曲です。
イーハトーブ交響曲冨田勲

日本を代表する作曲家、冨田勲さんによる壮大な交響曲です。
宮沢賢治の幻想的な文学世界を音楽で表現した本作は、2012年11月に東京オペラシティで初演されました。
オーケストラや合唱団とともに、バーチャルシンガーの初音ミクをソリストに迎えた斬新なアプローチが話題を呼びました。
2011年3月11日に発生した東日本大震災からの復興を願う象徴としても制作され、賢治が生涯をささげた東北の自然があふれる原風景と、人々への愛が込められています。
シンセサイザーと伝統的なオーケストラサウンドが融合した幻想的で壮大な音世界は、クラシック音楽と現代テクノロジーの融合に興味がある方におすすめです。
管弦楽のための木挽歌小山清茂

日本の美しい自然風景を思わせる温和な作風を得意とする作曲家・小山清茂さん。
小・中学校、高等学校の校歌を数多く作曲しました。
彼が1957年に制作した『管弦楽のための木挽歌』は、民謡をモチーフに制作された管弦楽曲です。
音楽劇『破れわらじ』を素材として描かれており、変奏曲の形をとりながら展開するメロディーが印象的。
西洋を起源とする木管楽器・金管楽器を使用していますが、どこか和を感じさせるサウンドに仕上がっています。
壮大で美しいオーケストラの演奏に耳を傾けてみてはいかがでしょうか?
シンフォニア・タプカーラ伊福部昭

伊福部昭さんは、日本の東宝が1954年に公開した特撮怪獣映画『ゴジラ』のテーマをてがけた作曲家であり、クラシックに詳しくない人でも知っているまさに日本を代表する作曲家です。
少年期に交流したアイヌへの共感とノスタルジーが動機となって作曲されました。
3楽章構成で重厚な響きから始まり、「タプカーラ」とはアイヌ語において「立って踊る」ということもあり、全体的に民俗的なメロディとともに厚い響きで踊るような躍動感がある楽曲となっています。
伊福部昭ファンにとっても人気の楽曲の一つです。
三つのジャポニズム(オーケストラ版)真島俊夫

原曲は吹奏楽作曲家の一人である真島俊夫さんがてがけた吹奏楽作品です。
東京佼成ウインドオーケストラからの委嘱を受けて2001年に制作された本作は、「鶴が舞う」「雪の川」「祭り」の3つの楽章で構成されています。
日本の伝統的な美意識を西洋の音楽技法で表現した本作は、東洋と西洋の融合を試みた意欲作となっています。
各楽章では、優雅な鶴の舞い、静寂な冬の風景、活気があふれる祭りの様子が繊細かつ力強く描かれており、日本の四季や文化を音楽で体感できる素晴らしい作品です。
クラシック音楽や吹奏楽に興味がある方はもちろん、日本の伝統文化に関心のある方にもおすすめの一曲です。
日本の作曲家によるクラシック音楽。おすすめのクラシック音楽(11〜20)
童声合唱とオーケストラのための《響紋》三善晃

反戦をテーマにした楽曲です。
児童合唱とオーケストラが一体となり、わらべ歌「かごめかごめ」を題材に、戦争の記憶を呼び起こす意図が込められています。
1984年に初演され、尾高賞を受賞するなど高い評価を得ました。
豊かなオーケストラ編成と多彩な打楽器を駆使し、音響の立体感や独自の音楽語法を表現しています。
子どもたちの無垢な声と複雑なオーケストレーションが対照的に使われ、聴く人に「生と死」「純粋さと恐怖」というテーマを感覚的に体験させる作品です。
クラシック音楽に興味のある方はもちろん、日本の現代音楽に触れてみたい方にもおすすめですね。
憾瀧廉太郎

『荒城の月』や『お正月』など、日本人であれば誰もが知っている童謡や歌曲を手掛け、日本の音楽史にその名を刻んだ瀧廉太郎さん。
23歳というあまりにも若い年齢でこの世を去ってしまった瀧さんの代表的な作品と言えば、冒頭で触れた歌曲が中心ですが、明治時代という日本における西洋音楽の黎明期の中でドイツ音楽に傾倒し、日本人音楽家として3人目となるヨーロッパ留学生としてドイツに留学した経験を持つ瀧さんは、日本人で初めてピアノ独奏曲『メヌエット』も作曲しています。
今回紹介する『憾』はそんな瀧さんによる貴重なピアノ曲であり、実質的な遺作となった作品。
美しくもどこか哀愁を帯びた旋律が特徴的なこちらの『憾』は、タイトルからも察せられるように自身の死期を悟った瀧さんのやるせない思いが込められていると言われています。
瀧さんが長生きしていたら、日本や世界の音楽の歴史はどうなっていたのか……そんなことを想像しながらこの作品を聴いてみるのもよいかもしれません。
「朱鷺に寄せる哀歌」吉松隆

交響曲だけでなく映画音楽やポップスなど幅広いジャンルで活躍する作曲家、吉松隆さんが1977年から1980年にかけて作曲した管弦楽曲です。
1971年に捕獲された本州最後のトキである「能里」の死に触発されて作曲されたものと語られています。
トキの数が減って終わりが目前に迫っている様子を表現したような物悲しい雰囲気が全体をとおして伝わってきます。
トキに対しての追悼のように感じられるとともに、トキによる悲しみや叫びのようにも思える曲です。
風紋保科洋

保科洋さんは吹奏楽の分野で高く評価される作品を手がける作曲家です。
この「風紋」という曲は吹奏楽コンクールの課題曲にも選ばれ、「吹奏楽の甲子園」と称されるコンクールで演奏されるなど、多くの演奏者や聴衆に感動を与えています。
楽曲は、風が水面に作る紋様を音楽で表現したような繊細で美しい作品で、自然現象や日本の風土からインスピレーションを受けています。
保科さんは2015年には瑞宝中綬章を受章するなど、長年の教育・指導活動も高く評価されています。
吹奏楽や管弦楽を愛する人はもちろん、日本の伝統的な美意識を感じたい方にもおすすめの一曲です。
大阪俗謡による幻想曲大栗裕

日本のクラシック音楽界を代表する作曲家の一人、大栗裕さんが手掛けたオーケストラ曲です。
大阪生まれの大栗さんは、地元の民謡や俗謡を題材に、西洋音楽の形式を融合させた独特の作風で知られています。
本作は1970年に吹奏楽による改訂版が作られ、1974年5月30日に大阪市音楽団によって初演されました。
大阪の風土や文化、人々の生活が感じられる旋律が用いられており、聴く人に大阪の歴史や情緒を感じさせる魅力的な曲となっています。
日本の伝統音楽に興味がある人や、地域の文化を音楽で表現することに関心のある人におすすめの一曲です。
交響管弦楽のための音楽芥川也寸志

交響曲や声楽曲だけでなく映画音楽や童謡など、あまりにも広い分野で活躍した作曲家・芥川也寸志さんの出世作といわれる管弦楽曲です。
NHK放送25周年記念事業の応募作として1950年に作曲され、團伊玖磨さんの『交響曲第1番』とともに入賞した作品です。
芥川也寸志さんの作品の特徴とされる、勇ましく快活な雰囲気が伝わってくるような力強く奏でられる音が魅力的ですね。
2楽章で構成されており、晴れやかで壮大な空気感と、心を奮い立たせるようなパワフルな展開が美しい楽曲です。
かちどきと平和山田耕筰

日本で最初に書かれた交響曲、と言われているのがこちらの『かちどきと平和』です。
日本における西洋音楽の開拓者であり、偉大な作品を多く世に送り出した近代日本音楽史における偉大なる作曲家、山田耕筰さんが1912年に作曲、同じく山田さんの手による日本人初の管弦楽曲『序曲』に続いて書かれた管弦楽曲としても知られています。
10代で西洋音楽に触れて作曲もしていた山田さんが、1910年にドイツのベルリン王立芸術アカデミー作曲科に留学した際に作曲した作品であり、本場ドイツで西洋音楽のエッセンスを大いに学んだ若き日の山田さんの最初の成果と言えそうです。
いわゆる後期ロマン派の流れをくんだ作風であるのですが、第1楽章の冒頭で聴くことのできる旋律は『君が代』の旋律を引用したものと言われており、西洋音楽への憧れと日本人としてのアイデンティティが見事に結実した作品というのも興味深いですね。
サイバーバード協奏曲吉松隆

日本のクラシック音楽界の新境地を切り開く作曲家として知られる吉松隆さんの代表作です。
サックスをメインにしながらも、ピアノとパーカッションが独奏的に使われ、ジャズのリズムや即興的な要素も取り入れられたスタイルが特徴です。
3つの楽章から成り、各楽章には「彩の鳥」「悲の鳥」「風の鳥」という標題が付けられています。
1994年3月に初演された本作は、作曲中に亡くなった妹への思いが込められており、電脳空間の鳥という近未来的なイメージと、自然や生命の象徴としての鳥が重ねられた独特の世界観が広がります。
クラシックとポップス、ジャズの融合を楽しみたい方におすすめの一曲です。
舞楽黛敏郎

この作品は日本の伝統文化と現代音楽が融合した作品として注目を集めています。
1962年に発表されたこの楽曲は、日本の伝統舞踊「舞楽」にインスパイアされており、革新的な音楽表現で当時の音楽界に大きな影響を与えました。
弦楽器、打楽器、木管楽器などが駆使され、緊張感のあるテンポの変化と微妙なダイナミクスが特徴的です。
二部構成で、第一部と第二部を通して全体的にミニマルな音響とリズムが展開されます。
日本の伝統音楽と現代的なオーケストレーションの融合を目指した黛さんの試みは、古典と現代音楽を融合させた実験的な試みとして高く評価されています。
日本のクラシック音楽に興味のある方にぜひ聴いていただきたい一曲です。
内触覚的宇宙湯浅譲二

1929年に福島県で生まれた湯浅譲二さんは日本における現代音楽・実験音楽のパイオニアです。
「音楽とは音響エネルギー体の空間的・時間的推移」という湯浅さん独自の音楽観を持っており、この曲もスクリャービンを思わせる無調の音楽を作り上げています。
星が瞬くようなピアノの旋律が、聴く人を包み込んでいきます。
日本の作曲家によるクラシック音楽。おすすめのクラシック音楽(21〜30)
軍艦行進曲瀬戸口藤吉

思わず背筋が伸びてしまう勇壮なメロディが特徴的な『軍艦行進曲』または行進曲『軍艦』は、一般的には『軍艦マーチ』として親しまれている名曲です!
日本国内においては、アメリカの『星条旗よ永遠なれ』やドイツの『旧友』と並んで「世界三大行進曲」と呼ばれることもあるのだとか。
海上自衛隊の儀礼曲でもあり、昭和世代にとってはパチンコ店のBGMとして記憶している方々も多いのではないでしょうか。
一般的な軍歌という枠内をこえて国民的な楽曲と言えそうな『軍艦行進曲』の作曲を手掛けたのは、明治時代に海軍軍楽師を務めた瀬戸口藤吉さん。
戦前の愛唱歌として知られる『愛国行進曲』なども手掛けた瀬戸口さんは、「日本行進曲の父」と言われるほどの存在なのですね。
もともとは1893年に鳥山啓さんによる詞が先に作られており、その後瀬戸口さんが新たに作曲して1900年に生まれたのが『軍艦行進曲』です。
実は楽曲の中間部では『海行かば』という戦前の国民歌謡が盛り込まれているのですが、皆さんはご存じでしたか?
ピアノ協奏曲第3番『神風』大澤壽人

主に1930年代から1950年代にかけて活躍した名作曲家、大澤壽人さんが1938年に作曲したピアノ協奏曲『ピアノ協奏曲第3番変イ長調』は『神風協奏曲』という副題を持つ作品ですが、1937年に東京からロンドンまでの100時間を切る記録飛行に成功したという朝日新聞社の航空機「神風号」が由来とされています。
現在では日本人作曲家による独創的な作品として評価されていますが、当時は先鋭的な作風だったせいか評価は芳しいものではなく、再演が実現したのは初演からなんと65年ぶりとなる2003年のことなのですね。
1930年代という時代を考えても非常にモダンな作風であり、ジャズの影響やルーツと言える日本音階の導入の試みなど、このような作曲家が歴史に埋もれていたという事実にクラシック音楽ファンでならずとも複雑な心境を抱いてしまいますよね。
大澤さんはボストン交響楽団で日本人として初めて指揮を担った存在でもあり、もしも彼が正当に評価されて長生きもしていたら……と残念に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ホルン協奏曲「開花の時」細川俊夫

クラシック音楽と言われると、ずっと古い時代に作られたものというイメージしか浮かばないという方も多いでしょう。
今回紹介する『ホルン協奏曲』は、2010年に日本の現代音楽家である細川俊夫さんが作曲した、2010年代に生まれたクラシック音楽作品です。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、バービカン・センターとコンセルトヘボウ管弦楽団の共同依属による作品であり、2011年の2月の初演では、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏が行われました。
余談ですが、細川さんは1982年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団創立百周年を記念する作曲コンクールにて優勝しており、その際に優勝者に与えられるはずだった完全新作の委嘱作品作曲の仕事が諸事情によって流れてしまったというエピソードがあり、そういった経緯を踏まえて生まれた作品と考えると細川さんの本作に対する思い入れはとても強そうですよね。
富士山多田武彦

「タダタケ」という愛称で親しまれ、男声合唱曲を中心として多くの合唱曲を手掛けたことで知られる多田武彦さん。
京都大学法学部を卒業してみずほ銀行の前身である富士銀行で活躍したという超エリートな多田さんですが、大学在学中から男声合唱団の指揮者を務めていたそうです。
今回、取り上げている『富士山』は1956年に作曲された楽曲で、多田さんにとっては2作目となる合唱曲なのですね。
楽曲構成としては5つの楽章から成る作品で、全編が無伴奏、つまりア・カペラで歌われます。
作詞は福島県出身の詩人であり、蛙をテーマとした詩を多く書いたことでも著名な草野心平さんの手によるもの。
ちなみにこちらの『富士山』は決して簡単に歌いこなせるようなものではなく、所属している合唱団でこの作品を取り上げる機会があれば、楽曲の持つダイナミックな展開についていく技術はもちろん、詩に書かれた情緒が豊かな日本古来の景色などをしっかりとイメージした上で表現することを心がけましょう!
左方の舞と右方の舞早坂文雄

早坂文雄の代表作と言われています。
雅楽に基づいた作品で、左方・右方というのは雅楽の様式です。
序盤のピッコロによる龍笛を思わせる雅な旋律が印象的です。
左方のテーマと右方のテーマが交互に現れ展開されて、最後は静寂の中に消えていきます。
新・祝典行進曲團伊玖磨

1993年の6月9日に行われた皇太子徳仁親王(今上天皇)と小和田雅子さま(現皇后)の結婚の儀のパレードにて演奏された、と言えばピンとくる方もいらっしゃるのでは?
こちらの行進曲『新・祝典行進曲』は、クラシック音楽の分野のみならず童謡や映画音楽など幅広い作曲活動で知られている團伊玖磨さんが、冒頭で述べた結婚の儀のパレードのために吹奏楽編成で書かれた作品です。
勇壮さと軽やかさを兼ね備え、ご本人いわく「男性的な華麗さと女性的な優美さ」対比させたというのも納得の作風となっています。
團さんは1959年に当時は皇太子というお立場であった明仁親王と正田美智子様のご成婚の際に『祝典行進曲』という作品を作曲しており、時代背景の変化も含めてそれぞれの違いを感じながら聴き比べてみるのもおもしろいですよ。
バレエ音楽「生命の律動」須賀田礒太郎

西洋近代の管弦楽法と日本の伝統音楽・雅楽を組み合わせた独自の作品を制作した作曲家・須賀田礒太郎さん。
吹奏楽曲から歌曲まで幅広い音楽性を持ちあわせています。
日本のクラシック音楽をあまり聴いたことがない方にもオススメしたい作品は『バレエ音楽「生命の律動」』です。
東洋と西洋の音楽の魅力を同時に味わえるオーケストラサウンドが印象的。
オリエンタルな雰囲気を持つ「城」や「神社」などの建造物をイメージさせる壮大な作品です。
パロディ的な4楽章深井史郎

この曲を初めて聴いて、戦前の日本で作られたと分かる人がどれ程いるでしょうか。
こんなしゃれた響きの旋律が戦前の日本にあったのです。
深井は日本のラヴェルとも言われています。
西洋の作曲家の手法を積極的に模倣しながら作曲したらすんなり完成してしまったらしいのですが、異文化をすんなりと受け入れる深井の柔軟さとその中でオリジナリティを出すセンスの高さが表れています。
交響詩「曼荼羅の華」山田耕筰

山田耕筰は日本における西洋音楽の草分け的な存在です。
一般的には「赤とんぼ」などの童謡のイメージが強いと思いますが、本格的な交響曲もしっかり残しています。
この曲は山田の親友が父親の死を予感した際に書いた詩にインスピレーションを受けて書かれた曲です。
幻想曲さくらさくら平井康三郎

日本の伝統音楽を現代に蘇らせたピアノ独奏曲をご紹介します。
本作は、古くから親しまれている旋律を基に、日本の作曲家平井康三郎さんがピアノソロでも楽しめる幻想曲として生まれ変わりました。
冒頭の穏やかな序奏から始まり、中盤では太鼓のようなリズムが加わり、祭りの賑わいを感じさせます。
そして最後は、静かに幕を閉じます。
日本の春の情景が音楽で描かれているかのようですね。
日本の伝統音楽に興味がある方や、日本発のクラシック音楽を楽しみたい方におすすめです。
ぜひ一度耳を傾けてみてください。
日本の作曲家によるクラシック音楽。おすすめのクラシック音楽(31〜40)
EARTH村松崇継

フルートとピアノのデュオで奏でられるこの曲は、地球環境や自然の美しさをテーマにした壮大な作品です。
フルートの柔らかな旋律とピアノの豊かな響きが絶妙に絡み合い、まるで大自然の中を巡る旅をしているような感覚を与えてくれます。
曲の構成は静かな導入から始まり、次第にドラマティックな展開を迎え、最後は穏やかな終息へと向かいます。
この抑揚のある展開が、楽曲に深い感情表現をもたらし、聴く人の心を惹きつけます。
自然や地球への想いを音楽で感じたい方、フルートの魅力を堪能したい方におすすめの一曲です。
チェロ協奏曲尾高尚忠

義弟の倉田高さんのために作曲されましたが戦時中の厳しい状況下にあったため全曲初演は叶いませんでした。
初演が叶ったのは尾高没後20年が経った年で、日本フィルハーモニー交響楽団が行いました。
その時のチェリストは若林洸です。
古典的な3楽章制の保守的な曲でクラシカルな美しさを持つ曲です。
ゲッセマネの夜に松村禎三

数多くの映画音楽や合唱曲を手がけた作曲家・松村禎三さん。
アジアの伝統音楽から影響を受けた楽曲制作をおこなっており、1990年には紫綬褒章を受賞しました。
彼が晩年に製作した管弦楽曲『ゲッセマネの夜に』は、イエス・キリストを題材にした絵画の複製をモチーフに製作されました。
深い悲しみを描いたダイナミックなサウンドが印象的ですね。
スリリングかつ大胆なオーケストラの演奏にまとまっており、生命の力強さやはかなさが感じられるでしょう。
フルートやクラリネットをはじめとした管楽器の音色がドラマチックに展開する名曲です。
交響曲第1番安部幸明

スピード感溢れる痛快な傑作です。
西洋的な和声が巧みに使われていますがところどことに日本的な感覚もみられます。
第3楽章ではクラリネットの第1主題につづけてホルンが豪快に第2主題を奏でますが、ここのインパクトはかなりのものです。
一度聴いたら忘れられないでしょう。
おほむたから 作品20山田一雄

日本のクラシック音楽界を支えたことで知られる作曲家・山田一雄さん。
戦前からオーケストラの指揮を担当しており、国内外を含め数多くの舞台で活躍しました。
彼の作品のなかでも壮大な物語を感じさせるのは『おほむたから作品20』です。
日本の美しい自然風景にマッチしたオーケストラサウンドが響きます。
静と動をみごとに表現したドラマチックな作品に仕上がっています。
晴れやかで力強い意志が感じられる日本のクラシック音楽です。
国内の時代劇や歴史ドラマを好む方はぜひ聴いてみてください。
交響曲第1番橋本國彦

1940年に作曲された『交響曲第1番』は『交響曲第1番 ニ長調』と表記されることもあり、皇紀2600年奉祝曲として橋本國彦さんが作曲しました。
プロパガンダの要素が強いとされ、戦後には長らく封印されていた歴史を持つ交響曲です。
親しみやすい管弦楽の雰囲気に、紀元節を意識した要素が取り入れられた作品と語られており、日本太鼓など古来の楽器を使用して演奏される場合もあります。
作曲された当時の情勢を考えるきっかけにもなりそうな交響曲ですね。
交響曲第5番「シンプレックス」池辺晋一郎

第1楽章冒頭でいきなり主要テーマが登場してオスティナート風に展開していきます。
第2楽章はがらりと雰囲気が変わってメロディックになりますが第3楽章でまた執拗なオスティナートが登場します。
「シンプレックス」と題しながらも複雑に展開されていく池辺ワールド全開の曲です。
「饗宴」黛敏郎

戦後における日本の映画音楽界を支えた作曲家の黛敏郎さん。
現代音楽やクラシック音楽など幅広い音楽性を持つ音楽家です。
黛さんの作品のなかでもドラマチックな展開をみせるのは『饗宴』。
オーケストラサウンドに加わるサックスのスリリングな演奏が印象的な楽曲です。
ラテンやジャズの要素を取りいれたユーモラスなサウンドを深く体験できるでしょう。
ダイナミックかつせんさいな魅力が詰まった日本のクラシックの名曲です。
力強さを感じられるクラシックをお探しの方はぜひ聴いてみてください。
ピアノ協奏曲三善晃
息つく暇もない疾走感と躍動感がジャズ的な雰囲気も感じさせる曲です。
多様な打楽器が使われていて音色が豊かな曲でもあります。
ピアノもかなり打楽器的に扱われています。
終盤の金管楽器による強烈なファンファーレも非常に印象的です。
交響曲第1番別宮貞雄

別宮貞雄さんはミヨーやメシアンさんに師事していました。
日本作曲家で交響曲といえば別宮さんと言っても過言ではないでしょう。
第1楽章から終楽章まで全曲を通して聴きどころ満載の名曲です。
特に第2楽章の色彩の豊かさ、第3楽章の凝集力には目を見張るものがあります。
日本の作曲家によるクラシック音楽。おすすめのクラシック音楽(41〜50)
混声合唱のための「レクイエム」千原英喜

千原英喜さんは日本人のアイデンティティや東西の祈りの普遍性を軸とした作品を数多く書いています。
この作品も日本の古代歌謡からテキストを採用し、そこにラテン語のレクイエム詞文を織り込んだかたちになっています。
日本の歌心を大切にした非常にメロディックな作品です。
交響曲第5番「ヒロシマ」より「悲歌」大木正夫

交響曲第5番『ヒロシマ』は丸木位里さんと丸木俊さんが共作した『原爆の図』に触発されて大木正夫さんが作曲した管弦楽曲です。
原爆投下後の町と被爆者の様子が表現されたような、猛烈な恐怖の感情が曲全体をとおして強く伝わってきます。
最終盤である『悲歌』も含めて交響曲すべてに救いがなく、原爆がどれほど悲惨なものであるかが、音で語られているように思えます。
聴いていると苦しくなるような交響曲ですが、忘れてはいけない大切な歴史が込められています。
ピアノとオーケストラのための主題と変奏松平頼則

松平さんは作曲活動をする中で日本らしさを追求する際に雅楽に出会いました。
この曲は雅楽「盤渉調越天楽」のテーマがジャズの手法までもを取り入れて華麗で雅に旋律を紡ぎながら意匠を凝らして変奏されていく名曲です。
どこか懐かしいようでいて斬新な響きも魅力的です。
交響曲第3番諸井三郎

1944年太平洋戦争の末期、軍隊に招集される直前に諸井さんが遺書として書き上げられたとされる30分を超える大作です。
第3楽章には「死についての諸観念」という副題がつけられています。
絶望の中にいる作曲者の悲痛な思いがサウンドに表れています。
ヴァイオリン協奏曲大栗裕

1963年に毎日放送の委嘱を受けて作曲され大阪フィルハーモニーで辻久子をソリストに迎え初演されました。
第2楽章は大阪のわらべ歌「遠国」をテーマにした変奏曲になっています。
最後は徳島の「阿波踊り」の騒々しいリズムに乗って進み突然終わります。
民族性の強い曲です。
おわりに
クラシック音楽はドイツやイタリア、ロシアなどヨーロッパを中心に多くの作曲家と演奏家により発展してきました。
日本人の作曲家による純粋なクラシック音楽は、山田耕筰さんが1912年に作曲した「序曲 ニ長調」が日本で初めての交響曲が誕生し、まだまだ歴史が浅い世界です。
しかし、ヨーロッパには負けない聴きごたえがある作品ばかりで、映画やテレビドラマにCMなどのBGMを多く手掛けた作曲家も多く、名前だけはなじみのある方を見つけることはできたのではないでしょうか。
この機会に、日本人によるクラシック音楽をぜひ深掘りしてみてくださいね!