【モーリス・ラヴェル】名曲、代表曲をご紹介
印象派音楽の重要な人物の一人、モーリス・ラヴェル。
彼の作品は細部まで緻密に作られており、土台に古典的な形式をしっかり取り入れていますが、印象派らしい表現も混じり合っていることから、彼にしかない唯一無二の音楽を感じられます。
他の作曲家のオーケストラ編曲も行っており、その卓越されたオーケストレーションから「オーケストレーションの天才」「管弦楽の魔術師」とも呼ばれていました。
本記事では、そんなラヴェルの名曲、代表曲をご紹介します。
クラシックに馴染みのない方でも、どこかで一度は聞いたことがあるであろう曲も存在するので、ラヴェルの素晴らしい名曲の数々をお楽しみください!
【モーリス・ラヴェル】名曲、代表曲をご紹介(1〜10)
ソナチネMaurice Ravel

1903年から1905年にかけて作曲されたピアノ独奏曲。
全3楽章から成る本作は、作曲コンクールのために書かれた小品ながら、魅力的な旋律と繊細な響きが凝縮されています。
第1楽章は叙情的なメロディが印象的。
第2楽章は優美で可憐な旋律が特徴的で、ラヴェル自身が「踊りのあとのお辞儀」と表現した部分もあります。
第3楽章は快活なパッセージが活躍。
古典的形式にのっとりながらも、ラヴェル特有の繊細な表現が光る名曲です。
ピアノ協奏曲ト長調Maurice Ravel

1931年に完成されたこちらの作品は、彼の晩年の傑作として知られています。
アメリカ演奏旅行でジャズに触れた経験や、母の出身地であるバスク地方の民謡の影響が色濃く反映された本作。
3楽章構成で、第1楽章は明るく楽しげな雰囲気、第2楽章は叙情的なサラバンド風、第3楽章はサーカスやパレードを思わせる活力に満ちた展開と、変化に富んだ魅力的な曲調が特徴です。
ラヴェルの音楽的ルーツへの回帰を感じさせつつ、彼独自の世界観が広がっています。
ラヴェルが手掛けたピアノ協奏曲は二つだけ。
そのなかの一つであるこの作品を、ぜひ聴いてみてください。
ラ・ヴァルスMaurice Ravel

1919〜1920年に作曲されたバレエ曲。
曲名はフランス語で「ワルツ」のこと。
ウィンナ・ワルツを思い起こさせるフレーズが登場します。
ラヴェルがパリで成功を博していたディアギレフに作品を聴いてもらったところ、ディアギレフは「傑作ではあるがバレエには不向き。
バレエの絵に過ぎない」として、作品を受け取らなかったそう。
どこか不吉な雰囲気があり、最後は爆発的に幕を閉じます。
マ・メール・ロワMaurice Ravel

ラヴェルが1908年に作曲した組曲。
童話をモチーフにした5つの楽章から成り、子どもたちのための音楽として生み出されました。
優美で幻想的な響きが特徴的で、ラヴェルの繊細な音楽性が存分に発揮されています。
ピアノ四手連弾で発表された後、1911年に管弦楽版に編曲され、より色彩豊かな表現が加わりました。
各楽章では、眠れる森の美女やパゴダの女王など、さまざまな物語の情景が音楽で巧みに描かれています。
おとぎ話の世界に誘われるような魅力的な作品を親しみたい方にオススメです。
ボレロMaurice Ravel

ラヴェルの作品の中で最もよく知られた曲。
1928年に、バレエ曲として作曲された管弦楽曲です。
15分程度の長さの曲で、終始同じリズムが刻まれメロディも二種類だけ、音量は最初から最後まで続く一つのクレッシェンドだけという、他に類をもたない作品。
単調になりそうな曲ながら、楽器編成のバリエーションにより音色の変化が際立つ名曲です。
クープランの墓Maurice Ravel

ラヴェルが1914年から1917年にかけて作曲した6曲から成る組曲。
第一次世界大戦で亡くなった友人たちへの追悼の意が込められています。
バロック時代の組曲形式を採用しつつ、ラヴェル独自の近代的な感覚と技術で再解釈されています。
各楽章は特定の人物に捧げられており、喪失と追悼の感情を表現しているのですが、その音楽は軽やかで時にはユーモラスなニュアンスも。
そこから悲しみを乗り越える力と生命の復活への信頼を感じさせます。
1919年には4曲を抜粋した管弦楽版が発表されました。
ピアノソロ版と管弦楽版、ぜひどちらも聴いてみてくださいね。
亡き王女のためのパヴァーヌMaurice Ravel

フランスの作曲家モーリス・ラヴェルによる優美な名曲。
1899年にピアノ曲として誕生し、後に管弦楽版も作られた本作は、静かな美しさで聴く人の心を捉えます。
テレビCMや映画の挿入歌としても使用され、現在でも幅広い層に愛されていますね。
約7分の演奏時間に込められた繊細な旋律は、古い宮廷舞踏を思わせる優雅さを醸し出しています。
ラヴェルならではの洗練された音色と抑制の効いた表現が魅力的で、初めて聴く人でも心地よく世界観に浸れる1曲。
クラシック音楽に親しみたい方や、優美な音楽を求める方にオススメです。
水の戯れMaurice Ravel

水の動きを音楽で表現した、フランスの作曲家モーリス・ラヴェルのピアノ曲。
1901年、パリ音楽院在学中に作曲されたこの作品は、水滴が水面に落ちる様子や、水が流れる姿をピアノの音色で見事に描き出しています。
軽やかなアルペジオの連続で、水の様々な表情が浮かび上がる幻想的な世界観が魅力です。
当初は不協和音の多さを批判されましたが、現在では多くのピアノファンを魅了する名曲として親しまれています。
スペイン狂詩曲Maurice Ravel

1907年の管弦楽曲。
母親がスペイン出身で、スペイン民謡を幼い頃に聴かされていたラヴェルは、多くの作品にスペイン音楽の要素を取り入れていました。
この曲は、『夜への前奏曲』『マラゲーニャ』『ハバネラ』『祭』から成ります。
このうち『ハバネラ』だけは1895年に2台のピアノのために作曲されていたものからの管弦楽用編曲です。
夜のガスパールMaurice Ravel

ピアノ独奏用組曲。
1908年に作曲されました。
『オンディーヌ』『絞首台』『スカルボ』から成ります。
いずれもルイ・ベルトランの遺作詩集の詩からイメージしたそう。
そのなかでも『スカルボ』は難曲として知られます。
演奏は、1962年生まれのフランスのピアニスト、ジャン=エフラン・バヴゼ。
ラヴェルのピアノ曲全曲をレコーディングしています。
【モーリス・ラヴェル】名曲、代表曲をご紹介(11〜20)
シェヘラザード序曲Maurice Ravel

ラヴェルの最初期のオーケストラ作品である本作は、アラビアン・ナイトの主人公シェヘラザードに魅了されて生まれました。
独特の和声とオーケストレーションで、ラヴェルの印象主義的音楽スタイルを感じさせる1曲です。
繊細な色彩感覚や、楽器の組み合わせによって幻想的な情景を描き出す手法は、後の作品にも通じるものがありますね。
ラヴェルの音楽的才能と革新性の初期の証として、今なお重要な位置を占めています。
東洋の神秘的な世界に興味がある方にもオススメの1曲です。
弦楽四重奏曲ヘ長調Maurice Ravel

1903年完成。
師であり友であったガブリエル・フォーレに献呈されました。
1904年に初演されましたが、その10年前に同じ印象派の作曲家、ドビュッシーの弦楽四重奏曲が発表されており、それを強く意識した作品となっています。
作曲家にとって弦楽四重奏曲というのは難しい楽種と考えられ、若いうちは手掛けないのが通例である中、28歳でこのジャンルに挑んだラヴェルは異例。
さらにドビュッシーからも賛辞が送られるほどの成功作となりました。
高雅で感傷的なワルツMaurice Ravel

1911年作曲の、8曲から成るワルツ集です。
ピアノ独奏用に作られましたが、翌年管弦楽版も発表されました。
8曲のテンポはさまざまで、ゆっくりのlentから活発なvifまで多様です。
演奏は、1959年生まれのフランス系カナダ人ピアニスト、ルイ・ロルティ。
ショパン、ベートーベンと並び、ラヴェルを主なレパートリーとしています。
左手のためのピアノ協奏曲Maurice Ravel

オーストリアのピアニスト、パウル・ヴィットゲンシュタインの依頼で作曲。
彼は第一次世界大戦で右手を失っていました。
後世でも右手が不自由なピアニストの重要なレパートリーとなっていますが、右手に不自由のないピアニストにも頻繁に取り上げられる作品。
三部構成の第二部ではジャズを思わせる曲想が登場します。
ソリストに超絶技巧が要求される作品です。
メヌエット嬰ハ短調Maurice Ravel

親しい作曲仲間への練習課題として1904年頃に書かれたとされる、わずか1分ほどの短い作品です。
古典的なメヌエットの形式の中に、ラヴェルらしい洗練された響きと、どこか内省的な雰囲気が漂います。
華やかさよりも、抑制された気品を感じさせるこの楽曲は、胸の内に秘めた繊細な感情をそのまま音にしたかのような、物憂げで美しい1曲。
本作は、ラヴェルの持つ独特の美意識に気軽に触れてみたいという方にぴったりです。
無駄な装飾を排した簡潔な構成だからこそ、一つ一つの音を丁寧に、そして優雅な舞踏のステップをイメージしながら演奏するのがポイント。
淡い雰囲気のなかで、心の機微を表現してみましょう。
ハバネラ形式のヴォカリーズMaurice Ravel

ラヴェルが手掛けた声楽曲。
スペインの影響を色濃く受けたハバネラのリズムが特徴的で、官能的な雰囲気を醸し出しています。
母音のみで歌われる「ヴォカリーズ」形式で、歌詞はありませんが、その分旋律の美しさが際立ちます。
ラヴェルの繊細な和音と滑らかな音の進行が聴く人の心をつかんで離しません。
声楽のために書かれましたが、さまざまな楽器用に編曲され、現在でも幅広く演奏されています。
エキゾチックな魅力と技巧的な面白さを兼ね備えたこちらの歌曲、ぜひ聴いてみてください。
古風なメヌエットMaurice Ravel

ラヴェルがまだ20歳の1895年のピアノ独奏曲。
まだ習作的なもので、後に発揮されるような印象主義的な響きは感じられません。
自ら「未熟」と評価していたこの曲を、ラヴェルは1929年に管弦楽用に編曲しているところから、この作品に自身でも愛着を感じていたことがうかがえます。
クープランの墓 第2曲 フーガMaurice Ravel

第一次世界大戦で犠牲となった友人への追悼の思いが込められた、モーリス・ラヴェルの組曲『Le Tombeau de Couperin』。
その第2曲にあたる本作は、1919年4月に初演され、ジョアン・クルッピ少尉にささげられました。
この楽曲はラヴェルが手掛けた唯一のフーガで、3つの声部が対話するように静かに重なり合います。
悲しみだけでなく、今は亡き友人との穏やかな思い出を語っているかのようですよね。
古典的な形式美の中に、ラヴェル特有の揺らめくような響きが溶け込み、不思議な浮遊感に包まれる作品です。
組曲全体はバレエとしても上演されました。
各声部の旋律を大切に歌わせながら、全体の透明感を保つのがポイント!
バロック様式と印象派の繊細な表現を一度に学べる、魅力的な1曲です。
フォーレの名による子守歌Maurice Ravel

ラヴェルが敬愛する先輩作曲家、ガブリエル・フォーレへのオマージュとして作曲されたのが、この優美な室内楽曲です。
1922年10月にミラノで初演されたこの作品は、ヴァイオリンとピアノのための小品。
フォーレのフルネームをもとに音名を巧みに構成し、子守歌のような穏やかな旋律に仕上げています。
ラヴェルならではの繊細な技巧と、フォーレへの深い敬意が融合した美しい音楽世界が広がっています。
フォーレの作品をいくつか聴いた後にこちらの作品を聴くと、より深く魅力を感じられるかもしれませんね。
ぜひ、聴いてみてください。
歌曲集「シェヘラザード」Maurice Ravel

ラヴェルが1903年に発表した歌曲集は、東洋的な要素と西洋音楽が見事に融合した作品です。
詩人トリスタン・クランソールの詩による3つの歌曲から成り、オリエンタリズムと印象主義の要素が色濃く表れています。
神秘的なアジアの風景や、恋人のフルートに耳を傾ける少女の心情、そして無関心な青年を見つめる女性の視点など、異国情緒あふれる世界が繊細に描かれているのが印象的。
ラヴェルの緻密なオーケストレーションと色彩豊かな音楽は、聴く人を幻想的な東洋の世界へと誘います。
異国の文化に興味がある方や、繊細な感情表現を楽しみたい方にオススメの1曲です。
【モーリス・ラヴェル】名曲、代表曲をご紹介(21〜30)
グロテスクなセレナードMaurice Ravel

モーリス・ラヴェルが18歳前後だった1893年頃に作曲した、非常に個性的で情熱的な作品です。
のちにラヴェル本人が「グロテスク」という言葉を付け加えたという逸話が残る本作は、題名が示す通り、荒々しく挑発的な響きの中に、ハッとするほど甘美な旋律が織り込まれています。
この楽曲の魅力は、中央に現れる情緒的な部分との鮮やかな対比にあり、まるで不器用で一途な愛の告白を聴いているような気持ちにさせられる1曲です。
ラヴェルの優美なイメージとは一味違う、若さあふれる大胆な一面に触れてみたい方にぴったり。
激しさと甘さをドラマティックに描き分けるのが、演奏する上での大きなポイントになるでしょう。
パレードMaurice Ravel

壮大な物語の始まりを告げるような、力強くドラマティックなサウンドが聴く人の心を揺さぶる一曲。
広島県で教壇に立ちながら、吹奏楽作品を数多く手掛ける堀内俊男さんの作品です。
静かなパートでの繊細な音の対話から、全合奏が一体となって突き進むクライマックスへの展開は圧巻で、まるで伝説の序章を音楽で体験しているかのような没入感が味わえます。
この楽曲は2006年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲として書かれ、参考演奏がアルバム『全日本吹奏楽コンクール課題曲参考演奏集2005‑2008』に収められています。
個々の技術だけでなくバンド全体の表現力が問われる本作は、仲間と一つの壮大な物語を紡ぎたい時にこそ演奏してほしい名曲です。
組曲『鏡』 第2曲-悲しげな鳥たちMaurice Ravel

芸術家仲間であったピアニストのリカルド・ヴィニェにささげられた、全5曲からなる組曲『Miroirs』。
その第2曲にあたる本作は、1906年1月にヴィニェの演奏で初めて披露されました。
モーリス・ラヴェルが描いた「夏の暑い日、暗い森で迷子になった鳥たち」という情景を題材としており、もの悲しいさえずりが静寂のなかで響き渡る、幻想的な世界に引き込まれるような一曲です。
本作は、繊細なタッチで多彩な音色を表現したい方にぴったり。
ペダルで響きを巧みにコントロールし、情景を豊かに描く練習にもなるので、ラヴェルの絵画的な音楽にじっくりと向き合ってみてくださいね。
組曲『鏡』 第4曲-道化師の朝の歌Maurice Ravel

芸術家グループ「アパッシュ」の仲間たちに捧げられた組曲『Miroirs』。
その第4曲は、スペインの朝を舞台に、道化師の姿が目に浮かぶような変化に富んだ作品です。
ギターの響きを思わせる乾いたリズムと情熱的な旋律が交差し、道化師の陽気さと、その裏に隠された哀愁を見事に描き出しています。
この楽曲は後に管弦楽にも編曲され、1919年にロンドンで上演されたバレエで使われたそうです。
難易度としては決して易しくはありませんが、技巧的なパッセージの中に歌心があふれる瞬間がちりばめられています。
表情が豊かなスペイン音楽の世界に浸りたい方や、技巧を通して表現の幅を広げたい方にぴったりです。
激しい部分と物悲しい中間部の対比を際立たせ、物語を語るように演奏してみましょう。
組曲『鏡』 第5曲-鐘の谷Maurice Ravel

1905年に作曲された組曲『Miroirs』の最後を飾る作品は、モーリス・ラヴェルがパリの街に鳴り響く教会の鐘の音から着想を得たとされる、幻想的な1曲です。
1906年1月に行われた初演でも、その独創的な世界観が高く評価されました。
この楽曲は、重厚な低音で表現される鐘の響きと、きらめくような高音の繊細な音色が溶け合い、聴く人を夢のなかのような瞑想的な空間へと誘います。
ペダルを巧みに使った色彩が豊かな表現や、情景を思い浮かべながら音色をコントロールする感覚を磨きたい方にぴったりの作品です。
空間に音が溶けていくようなイメージを大切に演奏してみましょう。
高雅で感傷的なワルツ 第1ワルツ,Modéré(モデラート) ト長調Maurice Ravel

伝統的なワルツに、モーリス・ラヴェルらしい近代的な響きを融合させた組曲『Valses nobles et sentimentales』。
その幕開けを飾る第1曲は、優雅でありながらどこか物憂げな、不思議な気持ちにさせられる1曲です。
この楽曲は、1911年5月の初演で作曲者名を伏せて演奏され、その斬新さで聴衆を驚かせました。
華やかな舞踏会で踊りながらも、ふと心によぎる秘めた想い…そんな情景が目に浮かぶようです。
バレエ『Adélaïde, ou le langage des fleurs』としても知られています。
本作は、これまでのワルツのイメージを覆すような、リズムやハーモニーの面白さを感じたい方にぴったり!
華やかさの奥に潜む憂いを表現できるよう、角のないやわらかい音で演奏しましょう。
高雅で感傷的なワルツ 第2ワルツ,Assez lent(十分に遅く)ト短調Maurice Ravel

心の奥深くを覗き込むような、内省的な雰囲気が魅力の作品で、モーリス・ラヴェルが手掛けた組曲『Valses nobles et sentimentales』に含まれています。
本作は1911年に、作曲者を伏せたままプライベートな演奏会で披露されたという逸話があります。
ゆったりと流れる時間の中に、感傷的でありながらも高貴な旋律が浮かび上がり、聴く人の心に静かに寄り添うかのようです。
伝統的なワルツのリズムに隠された、少々意外な響きが、言葉にならない複雑な感情を表現しているみたいですね。
繊細な音色の変化や、息の長いフレージングを学びたい方にぴったりな一曲。
神秘的な雰囲気を壊さないよう、一つ一つの音に想いを込めて、呼吸するように演奏するのがポイントです!
高雅で感傷的なワルツ 第3ワルツ.Modéré ト長調Maurice Ravel

シューベルトのワルツに倣って作られた、モーリス・ラヴェルの組曲『Valses nobles et sentimentales』。
1911年にピアノ作品として世に出て、翌年にはバレエ音楽としても上演されました。
全八曲からなるこの組曲の三番目のワルツは、穏やかで整然とした中に、ふと物憂げな表情がのぞく美しい1曲です。
この楽曲は「高雅さ」と「感傷」という二つの心が、絶妙なバランスで表現されています。
流れるような三拍子に乗せた、少々複雑で透明感のある和音は、まるで淡い光と影が織りなす心の機微のよう。
本作は、技巧を誇示するのではなく、楽譜に込められた細かなニュアンスを丁寧に紡ぎ出すのがポイントです。
上品な雰囲気を出せるよう、角のないやわらかい音で演奏しましょう。
高雅で感傷的なワルツ 第4ワルツ,Assez animé(十分に活発に)Maurice Ravel

モーリス・ラヴェルがシューベルトへの敬意を込めた組曲『Valses nobles et sentimentales』の中には、伝統的なワルツにモダンな感性を融合させた魅力的な作品が多々あり、この一曲も躍動感と洒落っ気が際立つ楽曲です。
1911年5月の初演では作曲者名を伏せて演奏され、聴衆が作者を推理したという逸話もユニークですね。
オーケストラ版は、1820年代のパリの恋愛模様を描いたバレエ『Adélaïde, ou le langage des fleurs』として上演されました。
花の言葉に託された恋の駆け引きを思い浮かべると、「この響きはただ優雅なだけじゃない」というポイントを感じ取れるはず!
右手の技巧的な動きで密な和音を軽やかに奏でるのがポイント。
古典の枠を超えた新しい表現を探している方にぜひ触れていただきたい作品です。
高雅で感傷的なワルツ 第5ワルツ,Presque lent ホ長調Maurice Ravel

組曲『Valses nobles et sentimentales』に含まれる、ひときわ内省的な一曲です。
1911年5月に匿名の新作発表会で初演された際、多くの批評家が作者をモーリス・ラヴェルだと見抜いたという逸話も残っています。
この楽曲には「親密な感情にて」と記されており、心の内側でささやかれる対話のような、とてもプライベートな雰囲気に満ちています。
寄せては返す波のようなメロディは、ため息のようでもあり、秘めた想いのようでもあり、聴く人の心に静かに寄り添います。
繊細なタッチや表現力を深めたい方にぴったりです。
感傷的で美しい世界観を大切に、角のないやわらかい音で丁寧に奏でましょう。
【モーリス・ラヴェル】名曲、代表曲をご紹介(31〜40)
高雅で感傷的なワルツ 第6ワルツ,Vif(活発に)Maurice Ravel

シューベルトのワルツに倣ってモーリス・ラヴェルが作曲した、組曲の中の一曲です。
くるくると表情を変える万華鏡のように、活発で少しいたずらっぽい雰囲気に満ちています。
1911年5月の初演では作曲者名を伏せて演奏され、その斬新さから多くの聴衆が作者を当てられなかったそうです。
この楽曲は後に、バレエ『Adélaïde ou le langage des fleurs』の音楽としても使われました。
本作は、少々スリリングでユーモラスな舞踏会を描いたかのよう。
軽やかなスタッカートと滑らかなレガートの対比を意識しながら、リズムの面白さを表現するのがポイント!
短いながらも弾きごたえがあり、表現の幅を広げたい方にぴったりの一曲です。
夜のガスパール, M. 55: II. 絞首台Maurice Ravel

モーリス・ラヴェルが1908年に作曲したピアノ組曲『Gaspard de la nuit』の一曲で、ルイ・ベルトランの詩が描く荒涼とした情景を音で表現しています。
この楽曲の大きな特徴は、遠くで鳴り響く鐘の音を表す同じ音が、冒頭から最後まで150回以上も執拗に反復される点です。
この単調な響きに不気味な和音が重なり、聴く人を死の静寂が支配する瞑想的な世界へと誘います。
演奏する側は、この厳格なテンポと響きのバランスを保たないと、作品の持つ壮絶な陰鬱さを損ないかねない曲です。
本作はコンクールでも頻繁に取り上げられます。
悲しみの底にある静かな美しさに触れたい時に弾いてみてはいかがでしょうか。
ソナチネ 嬰ヘ短調 M. 40 2楽章 メヌエットMaurice Ravel

静かに心と向き合いたい時におすすめなのが、モーリス・ラヴェルのピアノ作品『Sonatine』に含まれる一曲です。
本作は、古典的なメヌエットの優雅な形式をとりながら、内に秘めた憂いと洗練された響きが溶け合う、とても美しい楽章です。
メロディを聴いていると、悲しみの中にも凛とした気品を保つ情景が目に浮かぶようですよ。
1975年にはこの曲を含む作品全体がバレエとして振り付けられたことでも知られ、その物語性は聴く人の想像力をかき立てます。
激しい感情ではなく、ピアノの繊細な音色に静かに身を委ねたい時に、きっと心に寄り添ってくれることでしょう。
ダフニスとクロエMaurice Ravel

1909〜1912年にかけて作曲されたバレエ曲。
全曲版は合唱まで付いているが、抜粋した第1組曲、第2組曲が管弦楽曲としてよく演奏されています。
作曲を依頼したのはパリで成功を博していたバレエ・リュスを率いるディアギレフだったが、出来上がった作品がリズムよりメロディ重視であるなど、バレエ的でないと考えていたと言われています。
実際、後にはバレエ音楽としてではなく、管弦楽曲として取り上げられることが多いです。
鏡Maurice Ravel

ラヴェルが20歳代後半の1904〜1905年に作られた楽曲。
ピアノ独奏のための組曲で『蛾』『悲しい鳥』『海原の小舟』『道化師の朝の歌』『鐘の谷』から成ります。
とくに『道化師の朝の歌』はよく演奏され、ラヴェル自身が管弦楽用にも編曲しています。
演奏は、1962年生まれのフランスのピアニスト、ジャン=エフラン・バヴゼ。
ラヴェルのピアノ曲全曲をレコーディングしています。
組曲「鏡」より「洋上の小舟」Maurice Ravel

暑い日に聴きたくなる、モーリス・ラヴェルの涼やかな一曲はいかがでしょうか。
1906年にパリで出版されたピアノ組曲『Miroirs』の第3曲で、画家ポール・ソルドへ献呈された作品です。
広い海原を小舟がゆったり漂う情景が目に浮かび、聴くだけで心が洗われる気分になりますね。
本作の魅力は、きらめくアルペジオによる水の表現。
光を受けて揺れる水面や深い海の静けさを感じさせ、ピアノ一台とは思えないほど表情が豊かです。
140小節で36回も拍子が変わるのも、絶え間ない波の動きを巧みに捉えているからでしょう。
美しい音色で涼みたい方、印象派音楽がお好きな方に、きっと気に入っていただけるはず。
組曲『Miroirs』の他の曲とあわせて楽しむのも良いかもしれませんね。
ソナチネ 嬰ヘ短調 M. 40 1楽章 中庸にMaurice Ravel

モーリス・ラヴェルの作品で、嬰ヘ短調の持つ物悲しい響きの中に、ガラス細工のような繊細な美しさが光る曲です。
古典的な形式の中に豊かな和声が織り込まれている本作は、静かな旋律と細やかな装飾音のバランスが絶妙で、ラヴェルの完璧主義者としての一面がうかがえます。
1905年11月に公式に出版され、後にはバレエ作品としても振付けられるなど、音楽の持つ儚い世界観が多方面で表現されました。
悲しみに沈む心に寄り添うような曲想なので、内に秘めた感情を静かに見つめたい時に聴くのがおすすめです。
その構築美に心を委ねてみるのもよいかもしれません。
夜のガスパール 第1曲「オンディーヌ」Maurice Ravel

モーリス・ラヴェルは、スイスバスク系の血を引くフランスの作曲家。
19世紀後半のパリで起きた芸術運動「印象派」の時代に、自由な表現を求めて活躍しました。
ラヴェルの代表作『夜のガスパール』は、アロイジウス・ベルトランの同名の詩集を題材にしたピアノ独奏のための組曲。
第1曲『オンディーヌ』では、水の精オンディーヌが人間の男性に恋をするも拒絶され、悲しみと怒りの中に姿を消す様子が描かれています。
幻想的で妖しい雰囲気の中に、水のきらめきや精霊の笑い声まで聴こえてくるようなラヴェルならではの繊細な音の表現が魅力です。
組曲「鏡」第4曲「道化師の朝の歌」Maurice Ravel

印象主義音楽の代表的存在であるモーリス・ラヴェルの音楽は、工芸的な緻密さと形式の完璧さで知られています。
『組曲「鏡」第4曲「道化師の朝の歌」』は、1905年に完成したピアノ組曲の一部で、後にラヴェル自身によってオーケストラ版も発表されています。
この曲は、スペイン音楽の影響を受けたリズムや楽器の使い方が特徴的。
演奏会やコンクールでもたびたび取り上げられる人気作品で、ラヴェルの革新的な音楽性に触れたい方にオススメです。
亡き王女のためのパヴァーヌ ト長調Maurice Ravel

独創性にあふれた作風で多くのアーティストに影響を与えた作曲家、モーリス・ラヴェル。
日本でも多くのファンがいる作曲家ですね。
そんなラヴェルの作品のなかでも、特にオススメしたいのが、こちらの『亡き王女のためのパヴァーヌ ト長調』。
ト長調4拍子でロンド形式を取る本作は、ゆったりとしたリズムとエキゾチックな雰囲気を持った主題が特徴の作品です。
美しい旋律といえばこの作品の名前を挙げる方も多いのではないでしょうか?
【モーリス・ラヴェル】名曲、代表曲をご紹介(41〜50)
「ダフニスとクロエ」第2組曲Maurice Ravel

コンクールの自由曲として演奏されることが多い曲目です。
オペラならではのクラシカルな雰囲気が特徴で、ゆったりとした幻想的な曲調の「夜明け」、恋人同士であるダフニスとクロエを神々が祝福する華々しい「全員の踊り」が特によく演奏されます。
組曲『マ・メール・ロワ』より第3曲「パゴダの女王レドロネット」Maurice Ravel

東洋の風情をたたえた童話の世界が広がる名曲です。
美しい姫が呪われて姿を変えられてしまう物語を、ピアノ連弾ならではの4手の響きで情感が豊かに描き出しています。
1908年から1910年にかけて、モーリス・ラヴェルが友人の子供たちのために作曲した5つの小品からなるピアノ連弾組曲の一曲です。
本作では、中国の楽器をイメージした木琴や打楽器の響きを、2台のピアノで見事に表現しています。
軽やかで明るい曲調の中に、銅鑼の音が遠くで鳴り響くような異国情緒があふれる音色が印象的です。
ピアノの高音域と低音域を駆使した豊かな表現力と、共演者との息の合った演奏が求められる作品で、コンサートや発表会での演奏に最適です。
組曲『マ・メール・ロワ』より第4曲「美女と野獣の対話」Maurice Ravel

童話『美女と野獣』をモチーフにしたピアノ連弾作品で、繊細な美しさと壮大なドラマが織りなす傑作です。
美女を表現するクラリネットと、野獣を演じるコントラファゴットの掛け合いが印象的で、まるで2人の会話を目の当たりにしているかのような臨場感があります。
本作は1910年4月にパリで初演され、優美な旋律と物語性の豊かさから、バレエや映像作品でも使用されています。
高度な技巧と表現力を求められる連弾曲ながら、童話をベースにした親しみやすさも持ち合わせており、コンサートや発表会でも存在感を放つ珠玉の名曲です。
2台のピアノで奏でられる豊かな響きと、共演者との呼吸を合わせる緊張感を味わいたい方におすすめの1曲です。
組曲『マ・メール・ロワ』より第5曲「妖精の園」Maurice Ravel

4本の手が織り成す音色の世界は、モーリス・ラヴェルのピアノ連弾作品でより一層美しく輝きます。
1910年4月のパリで初演されたこの童話がテーマの組曲は、子供のために書かれながらも深い音楽性を秘めています。
優雅な3拍子のワルツが奏でられ、幻想的な雰囲気が広がる本作は、ピアノ連弾ならではの豊かな響きと表現力で聴く人を魅了します。
荘厳で美しい旋律の中に、ハープやチェレスタのような繊細な音色を思わせるパッセージがちりばめられ、まるで夢の世界へ誘われるような感覚を味わえます。
連弾パートナーとの呼吸を合わせる難しさはありますが、息の合った演奏ができたときの喜びは格別です。
ピアノ連弾の醍醐味を存分に味わいたい方にお勧めの一曲です。
ソナチネ M.40 第2楽章 メヌエットMaurice Ravel

とある雑誌主催の作曲コンクールのために書き上げられた『ソナチネ M.40』。
のちにこの作品は、モーリス・ラヴェルが気に入っていたポーランド人の兄弟にささげられています。
ソナチネ形式に従って作曲された第1楽章に続く第2楽章は、淡い雰囲気のメロディによって切なさ、寂しさ、嬉しさなどさまざまな感情を抱かせられる、美しい1曲。
さらりと、しかし素っ気なくならず、楽譜の細かな表現に気を配りながら演奏するのがポイントです。
クープランの墓 第3曲 フォルラーヌMaurice Ravel

モーリス・ラヴェルが第一次世界大戦で戦死した知人を追悼する曲として作曲した『クープランの墓』の第3曲。
全6曲それぞれ異なる人を思って作られており、この第3曲はバスク画家だった中尉にささげられています。
「フォルラーヌ」とは、北イタリアを起源とする古典的舞曲のことで、「やや快活なテンポで」と指定されていますが、優雅な雰囲気ただよう楽曲となっています。
舞曲らしい動きを感じる付点リズムや装飾音符をクリアに演奏し、快活な演奏に仕上げましょう。
クープランの墓『トッカータ』Maurice Ravel

第一次世界大戦で亡くなった友人たちへの追悼の意を込めて作られた6曲の組曲のフィナーレとなっているこの楽曲。
速いテンポと技巧的なパッセージが特徴で、バロック時代から発展した形式に近代的な解釈を加えた珠玉の作品です。
1919年4月にパリのサル・ガヴォーで初演され、当時から演奏家や聴衆を魅了し続けています。
本作は華麗で力強い響きに加え、モーリス・ラヴェルによる独自の和声やリズム感が絶妙に融合しており、聴衆を圧倒する迫力があります。
高度な演奏技術が必要ですが、会場の観客を魅了できる素晴らしい作品となっているため、ピアノ発表会で演奏したい方にぴったりの1曲です。
ハイドンの名によるメヌエットMaurice Ravel

1909年作のピアノ独奏曲。
同年はハイドン没後100年にあたったため、パリのある音楽雑誌がラヴェルやドビュッシーなどに、ハイドンにちなんだピアノ曲の作曲を依頼、HAYDNを音名に置き換えた「シラレレソ」をモチーフにすることが条件でした。
本来、音名にはYもNも存在しないのですが、読み替え表(一種の暗号表)によってYはDと同じくレ、NはGと同じくソとされており、モチーフの音列が決まりました。
シャブリエ風にMaurice Ravel

モーリス・ラヴェルが「~風に」と名付けた作品は、『ボロディン風に』そしてこの『シャブリエ風に』の2曲。
いずれも友人のアルフレード・カゼッラの依頼を受けて作曲されています。
エマニュエル・シャブリエは『スペイン狂詩曲』の作曲者として知られるフランスの作曲家。
『シャブリエ風に』からは『スペイン狂詩曲』のような快活さは感じられませんが、シャブリエらしい明るい雰囲気を味わえます。
ペダルを効果的に使いながらも、音の粒がキラキラと際立つように演奏してみてくださいね!
ボロディン風にMaurice Ravel

リヒャルト・ワーグナーやクロード・ドビュッシーのパロディ作品を手掛けた作曲家そしてモーリス・ラヴェルの友人でもあったアルフレード・カゼッラの依頼を受けて作曲された、爽やかなワルツ形式の楽曲。
『ボロディン風に』とあるように、ロシア5人組の一人であるアレクサンドル・ボロディンの作品を模倣した曲です。
明快なメロディで耳なじみのよい作品ですが、快活なテンポを保ったまま跳躍を含む左手を弾くためには、正確に音をつかむ練習が必要です。
ゆっくりのテンポで焦らず練習を積み重ねましょう。