アイドルの曲名と歌詞から時代を読み解く
若い頃、楽曲そのものではなく、楽曲の題名に「おおっ」と思うことがありました。
もちろん今でも多々あります。
中森明菜の「飾りじゃないのよ涙は」を初めて耳にした時、「なんじゃそりゃ」と思ったし、B’zの「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」を見た時は「長っ!」と素直に驚きました。
今回は趣向を変え、そんな楽曲の「曲名」を中心に、新旧のビッグアイドルの歌詞を眺めてゆきたく思います。
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お手本アイドル:AKB48
1. 幅広い用語にアンテナを
楽曲そのものは取り立てて何とはないいたって普通なのに、題名がいい、キャッチーだけという理由だけで大ヒットした曲もあります。
それは……名前を挙げると角が立つので止めときます。
それだけ曲名は大切なのです。
時代を平成に移してAKB48の楽曲のトップ30(同レコチョク調べ)を眺めてみましょう。
英語での題名、英語をカタカナ表記している題名の多さが目立ちました。
- 英語(カタカナ表記)の題名・「ヘビーローテーション」・「シュートサイン」・「ギンガムチェック」・「ハロウィンナイト」・「LOVE TRIP」・「RIVER」・「ラブラドールレトリバー」・「Beginner」・「フライングゲット」
その時代の時々にときめいていた、また一時代反芻(はんすう)され続けた英語が多く使用されています。
時代を先取りする、嗅覚の鋭い秋元康さんの、またそれを取り囲むアイドル偏差値の高いスタッフの業でしょう。
造語もあるでしょうが、大体はその題名から実態を想像できる単語ばかりです。
それが単なる単語で終っていない(終わらせていない様に思わせる)ところが秋元さんの力技、これはアイドルを、時代を創るセンスと呼べます。
坂系として今を時めく乃木坂46の「インフルエンサー」の題名も、経済(商業)用語として広く使われ始めた所、秋元さんのお眼鏡にピタリ適った(?
)単語だと思えます。
言葉としてはずっと前から存在はしていたのですが、よくよく目にするようになったのはここ最近です。
今の作詞家には、この目敏く時間と時間の連結の小さなほころびを探す目が必要なのだと思います。
これを今の作詞家が活用するなら、経済用語のみならずネット用語、美術用語、はたまた大工用語や将棋用語でさえも、さらりと歌詞に取り入れられるように工夫するといったことでしょうか。
「何でここで経済用語?」と思わせない仕掛けを考え書く、それは苦しくも楽しい作業なのではないかと思います。
- ロックオン:ライフルやミサイルの照準が合う
- チェックメイト:詰んでチェスの組手が終わる
の言葉などは「君の心をロックオン」や「その恋チェックメイト」などの歌詞として100万回は使われいると思いますので。
2. 検索したくなる
ファーストラビット
そんな中で上の楽曲名はやや興味をそそる「つり曲名」となっています。
「ファーストラビット」の曲名の意味はネットで検索したくなります。
ファンの間ではいろんな説が飛び交っていますが、私が思うに、ファーストペンギンのもじりなのかと。
ファーストペンギンとは危険を顧みず一番最初に海に飛び込むペンギンのことで、勇気ある者(モノ・生き物)の象徴とされています。
所説ありますが、当時48グループの人気最上位の存在としてグループを支え、先導していた前田敦子さんに向けて書かれたいい物語としてファンの間では定着しています。
もしかして卒業することもだいぶ前から決まっていて、それに対して秋元さんが……とも邪推させる「つり力」です。
歌詞を見てみましょう。
「なぜだかドキドキトして来て 僕は一番目に走る傷つくこと恐れはしない 何があっても怯(ひる)まずに自分の夢を探しに行く 最初のうさぎになろう」
メッセージソングであり希望ソングであり、曲名の意味なんかどうでもいいじゃないか、と言いたくなるほどの爽やかさです。
ただペンギンをラビットに変えただけで、この曲が注目され、神曲とまで言われるようになりました。
楽曲の題名だけでファンがなんやかんやと議論する、盛り上がる、まさに秋元さんが仕掛けた策にファンたちが巻き込まれていく、これはすごいことだと思います。
たまに本当に誰にも理解できない曲名もありますが……。
売れていたら何でもできるとかのレベルではないと思います。
このエピソードでまたまた曲名の大切さを再認識しました。
同じく「つり曲名」もに近いものとして、わりと最近にヒットし「365日の紙飛行機」があると思います。
「365日、1年間の紙飛行機って何だろ?」と思いながらその曲を聴くと、どこかジーンとくる人生応援歌となっています。
個々人が「ああ、そう意味なのかと」自己解決できる曲名になっています。
このように、時には話題作りに、時には「つり」として、プロの方に硬軟を織り交ぜられて巧みに書かれてしまっては、われわれは……と少々モチベーションは下がりますが、これを良いお手本としてまた新しい試み香る歌詞を書いてもらいたいです。
ライタープロフィール
アイドル作詞家・俳人
瀧乃涙pin句
何のツテもないまま作詞を開始。
数年後、文化放送ラジオドラマ主題歌『全身全霊Open Now!』song byガールズジョッキーまでたどりつく。
SPATIO『泣きそう』『レジスタンスガール』、SPATIO kids『温泉サンバ』、ナナエ『シューティングスター』『恋の話しよ!』他、ご当地アイドル、地下アイドルに歌詞を提供中。
週末はもっぱらアイドルを追い掛けている。
Twitter:t_pink_t