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80年代テクノ歌謡の魅力~テクノポップの名曲・人気曲

80年代の邦楽シーンを掘り下げていく中で、ディスクガイド本などで「テクノ歌謡」という言葉を目にされた方は多いでしょう。

70年代後半から80年代前半にかけて、YMOを中心とした先鋭的なアーティストたちがテクノの要素を取り入れたサウンドを展開、それらの要素を歌謡曲へと落とし込んで生まれたのが「テクノ歌謡」です。

大ヒットした曲もあれば、ほとんど知られることもなく後に再評価された曲などもあり、知れば知るほど楽しめるジャンルなのですね。

今回の記事では、そんなテクノ歌謡の名曲たちを厳選してお届けします。

「この曲ってテクノ歌謡だったの?」といった発見もあるかもしれませんよ!

80年代テクノ歌謡の魅力~テクノポップの名曲・人気曲(6〜10)

ねらわれた少女真鍋ちえみ

Chiemi Manabi – Targeted Girl / ねらわれた少女 (1982)
ねらわれた少女真鍋ちえみ

「テクノ歌謡」というジャンルは80年代のヒット曲とリンクしている面もありますが、リリースから数十年後にDJなどから重宝されたカルトな人気を誇る楽曲こそが、ある意味真骨頂と言えるかもしれません。

1981年に結成されたアイドル・ユニットのパンジーのメンバーで、後にモデルなどで活動した真鍋ちえみさんが1982年にリリースしたデビュー・シングル『ねらわれた少女』は、まさにそういったタイプのテクノ歌謡の珍品にして名曲なのですね。

作詞に阿久悠さん、作曲と編曲に細野晴臣さんという豪華すぎる面々が顔をそろえ、80年代初頭という時代において最も先鋭的だったシンセ・サウンドと、やや未熟なアイドル然とした真鍋さんの歌声が不思議な相乗効果を生み出した強烈なアイドル・テクノ歌謡となっております。

この楽曲の持つ言い知れない魅力に気付いてしまった方は、ぜひ真鍋さんにとって唯一のアルバムであり、YMO人脈によるサウンドが楽しめる『不思議・少女』もチェックしてみてください!

春咲小紅矢野顕子

こちらの『春咲小紅』から2年後にリリースされる『君に、胸キュン』もそうですが、当時のカネボウ化粧品のCM曲として起用された楽曲はテクノ歌謡の名曲が多いのかもしれません。

天才シンガーソングライターにして先鋭的な感性を持ったミュージシャン、矢野顕子さんの通算5枚目となるシングル曲で、1981年の2月にリリースされました。

漢字が4つ並んだタイトルやどこかアジアン・テイストな旋律・サウンドが印象的ですが、カネボウ化粧品が北京空港の免税店に初出店したばかり、という裏事情から漢字を使った曲名となったそうですよ。

作曲はもちろん矢野さん自身が手掛けておりますが、作詞については日本で最も有名なコピーライターの1人である糸井重里さんがを担当しており、カラフルで楽し気なサウンドにふさわしい言葉選びのセンスはさすがの一言ですね。

ちなみに、編曲のクレジットにある「ymoymo」は当時のイエロー・マジック・オーケストラのツアー時のメンバー6人を意味する名義です。

ハートブレイク太陽族スターボー

【HD】ハートブレイク太陽族 – スターボー
ハートブレイク太陽族スターボー

最強の作詞・作曲コンビ、松本隆さんと細野晴臣さんが組んでリリースした数多くのテクノ歌謡の中で、商業的には完全に失敗という結果に終わってしまった楽曲も存在しています。

1982年にリリースした『ハートブレイク太陽族』は、まさにそういった曲の代表的な存在と言えそうです。

不名誉な説明となってしまっておりますが、売れずに姿を消した珍品であればこそ、後年に再評価されるパターンが多いのもテクノ歌謡のおもしろい一面なのですよ。

そんな『ハートブレイク太陽族』を歌ったのは、大手芸能事務所の研音に所属していた3人組の女性アイドル「スターボー」です。

80年代だからこそ許されたのであろう珍妙なコンセプトに基づいた歌詞、細野さん一流のテクノポップ~ニューウェーブなサウンドは、現代の音楽ファンの耳には新鮮で興味深いものとして聴けるのではないでしょうか。

次回作品以降はあっさり路線を変えてしまうことも踏まえて、ある意味貴重なデビュー曲と言えそうです。

コンピューターおばあちゃんコスミック・インベンション

コンピューターおばあちゃん by コスミック・インベンション
コンピューターおばあちゃんコスミック・インベンション

『コンピューターおばあちゃん』というタイトルの強烈なキャッチーさの時点で、勝利したようなものですね!

NHKで放映されている5分間の音楽番組『みんなのうた』で放送され、国民的な認知度を得た楽曲です。

実は、多くの方に知られている『コンピューターおばあちゃん』はオリジナル版ではなく、東京放送児童合唱団の酒井司優子さんが歌唱を担当、坂本龍一さんが楽器演奏と編曲、プロデュースまでを手掛けたバージョンなのですね。

今回は、70年代の終わりから80年代の初頭にかけて活動していた伝説の10代テクノポップ・バンドのコスミック・インベンションが歌ったオリジナル版を紹介します。

伊藤良一さんが作詞と作曲を手掛け、NHKの作曲投稿番組『あなたのメロディー』に投稿されたものがオリジナルであり、前述の通りコスミック・インベンションが歌唱を担当しました。

ドラムを叩きながらボーカルをこなす森岡みまさんは、後にMIMA名義で魔法少女アニメの名作『魔法の妖精ペルシャ』のエンディングテーマである『おしゃれめさるな』を歌っておりますね。

また、井上ヨシマサの名義で知られる名作曲家の井上能征さんを輩出したことにも注目していただきたいです。

『みんなのうた』バージョンしか知らないという方は、ぜひオリジナル版も聴いてみてくださいね。

ラムのラブソング松谷祐子

1980年代のアニメソングは、近年シティポップやテクノポップの文脈で人気を集めている楽曲が多く、こちらの『ラムのラブソング』はまさにそういった楽曲の1つですね。

大人気アニメ『うる星やつら』の主題歌として書き下ろされた『ラムのラブソング』は、歌唱を担当した松谷祐子さんのデビュー曲であり、2021年の5月に惜しくも亡くなった名作詞家の伊藤アキラさんが作詞を、テクニカルなキーボード・プレイヤーとしても知られる小林泉美さんが作曲と編曲を手掛けています。

キラキラしたカラフルなシンセの音色を軸として、ややラテン風味なビートも導入された実に先鋭的なサウンドとなっている、単なるアニメソングの枠内をこえた名曲中の名曲です。

小林さんによると、当時はアニメソングとしてあまりに先鋭的過ぎたせいなのか、スタッフや関係者の間では不評で理解されなかったのだとか。

とはいえ、現代においては誰もが一度は耳にしたことがあるほどの名曲として認知されただけでなく、アニメソングの可能性を広げた金字塔的な楽曲としての評価は永遠に色あせることはないでしょう。