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80年代テクノ歌謡の魅力~テクノポップの名曲・人気曲

80年代の邦楽シーンを掘り下げていく中で、ディスクガイド本などで「テクノ歌謡」という言葉を目にされた方は多いでしょう。

70年代後半から80年代前半にかけて、YMOを中心とした先鋭的なアーティストたちがテクノの要素を取り入れたサウンドを展開、それらの要素を歌謡曲へと落とし込んで生まれたのが「テクノ歌謡」です。

大ヒットした曲もあれば、ほとんど知られることもなく後に再評価された曲などもあり、知れば知るほど楽しめるジャンルなのですね。

今回の記事では、そんなテクノ歌謡の名曲たちを厳選してお届けします。

「この曲ってテクノ歌謡だったの?」といった発見もあるかもしれませんよ!

80年代テクノ歌謡の魅力~テクノポップの名曲・人気曲(1〜10)

春咲小紅矢野顕子

こちらの『春咲小紅』から2年後にリリースされる『君に、胸キュン』もそうですが、当時のカネボウ化粧品のCM曲として起用された楽曲はテクノ歌謡の名曲が多いのかもしれません。

天才シンガーソングライターにして先鋭的な感性を持ったミュージシャン、矢野顕子さんの通算5枚目となるシングル曲で、1981年の2月にリリースされました。

漢字が4つ並んだタイトルやどこかアジアン・テイストな旋律・サウンドが印象的ですが、カネボウ化粧品が北京空港の免税店に初出店したばかり、という裏事情から漢字を使った曲名となったそうですよ。

作曲はもちろん矢野さん自身が手掛けておりますが、作詞については日本で最も有名なコピーライターの1人である糸井重里さんがを担当しており、カラフルで楽し気なサウンドにふさわしい言葉選びのセンスはさすがの一言ですね。

ちなみに、編曲のクレジットにある「ymoymo」は当時のイエロー・マジック・オーケストラのツアー時のメンバー6人を意味する名義です。

コンピューターおばあちゃんコスミック・インベンション

『コンピューターおばあちゃん』というタイトルの強烈なキャッチーさの時点で、勝利したようなものですね!

NHKで放映されている5分間の音楽番組『みんなのうた』で放送され、国民的な認知度を得た楽曲です。

実は、多くの方に知られている『コンピューターおばあちゃん』はオリジナル版ではなく、東京放送児童合唱団の酒井司優子さんが歌唱を担当、坂本龍一さんが楽器演奏と編曲、プロデュースまでを手掛けたバージョンなのですね。

今回は、70年代の終わりから80年代の初頭にかけて活動していた伝説の10代テクノポップ・バンドのコスミック・インベンションが歌ったオリジナル版を紹介します。

伊藤良一さんが作詞と作曲を手掛け、NHKの作曲投稿番組『あなたのメロディー』に投稿されたものがオリジナルであり、前述の通りコスミック・インベンションが歌唱を担当しました。

ドラムを叩きながらボーカルをこなす森岡みまさんは、後にMIMA名義で魔法少女アニメの名作『魔法の妖精ペルシャ』のエンディングテーマである『おしゃれめさるな』を歌っておりますね。

また、井上ヨシマサの名義で知られる名作曲家の井上能征さんを輩出したことにも注目していただきたいです。

『みんなのうた』バージョンしか知らないという方は、ぜひオリジナル版も聴いてみてくださいね。

ハートブレイク太陽族スターボー

【HD】ハートブレイク太陽族 – スターボー
ハートブレイク太陽族スターボー

最強の作詞・作曲コンビ、松本隆さんと細野晴臣さんが組んでリリースした数多くのテクノ歌謡の中で、商業的には完全に失敗という結果に終わってしまった楽曲も存在しています。

1982年にリリースした『ハートブレイク太陽族』は、まさにそういった曲の代表的な存在と言えそうです。

不名誉な説明となってしまっておりますが、売れずに姿を消した珍品であればこそ、後年に再評価されるパターンが多いのもテクノ歌謡のおもしろい一面なのですよ。

そんな『ハートブレイク太陽族』を歌ったのは、大手芸能事務所の研音に所属していた3人組の女性アイドル「スターボー」です。

80年代だからこそ許されたのであろう珍妙なコンセプトに基づいた歌詞、細野さん一流のテクノポップ~ニューウェーブなサウンドは、現代の音楽ファンの耳には新鮮で興味深いものとして聴けるのではないでしょうか。

次回作品以降はあっさり路線を変えてしまうことも踏まえて、ある意味貴重なデビュー曲と言えそうです。

80年代テクノ歌謡の魅力~テクノポップの名曲・人気曲(11〜20)

ねらわれた少女真鍋ちえみ

Chiemi Manabi – Targeted Girl / ねらわれた少女 (1982)
ねらわれた少女真鍋ちえみ

「テクノ歌謡」というジャンルは80年代のヒット曲とリンクしている面もありますが、リリースから数十年後にDJなどから重宝されたカルトな人気を誇る楽曲こそが、ある意味真骨頂と言えるかもしれません。

1981年に結成されたアイドル・ユニットのパンジーのメンバーで、後にモデルなどで活動した真鍋ちえみさんが1982年にリリースしたデビュー・シングル『ねらわれた少女』は、まさにそういったタイプのテクノ歌謡の珍品にして名曲なのですね。

作詞に阿久悠さん、作曲と編曲に細野晴臣さんという豪華すぎる面々が顔をそろえ、80年代初頭という時代において最も先鋭的だったシンセ・サウンドと、やや未熟なアイドル然とした真鍋さんの歌声が不思議な相乗効果を生み出した強烈なアイドル・テクノ歌謡となっております。

この楽曲の持つ言い知れない魅力に気付いてしまった方は、ぜひ真鍋さんにとって唯一のアルバムであり、YMO人脈によるサウンドが楽しめる『不思議・少女』もチェックしてみてください!

すみれSeptember Love一風堂

すみれ September Love – 一風堂 [IPPU-DO]
すみれSeptember Love一風堂

1997年にSHAZNAがカバーしてリバイバル・ヒットさせたことで、この楽曲の存在を知ったという方も多くいらっしゃるのでは?

日本だけではなく海外でも精力的に活動を続けるギタリストにして音楽プロデューサー、土屋昌巳さん率いる一風堂が1982年にリリースした『すみれ September Love』は、バンドにとって最大のヒット曲であり代表曲として知られる楽曲です。

当時の土屋さんは、イギリスの先鋭的なロック・バンドJAPANのツアー・ギタリストとして活躍していたということもあって、シンセサイザーを駆使した最先端のニューウェーブ・サウンドが導入されながら、アジアン・テイストかつ最高にロマンチックなメロディがお見事としか言いようがありません。

上品で艶っぽい土屋さんの歌声もナイスです。

冒頭で触れたようにこの楽曲のカバーとしてはSHAZNAのバージョンが一番有名ではありますが、1990年の時点でカブキロックスがカバーしている、という事実もぜひ知っておいてください。

禁区中森明菜

⑥【公式】中森明菜/禁区 (イースト・ライヴ インデックス23 Live atよみうりランドEAST, 1989.4.29 & 30) AKINA NAKAMORI/KINKU
禁区中森明菜

日本が生んだ伝説のアイドルにして歌姫、中森明菜さんとテクノ歌謡はあまり結びつかないようにも思えますが、実はテクノ歌謡の文脈に位置する楽曲は存在しているのです。

1983年にリリースされたングル曲『禁区』は、当時の人気歌番組『ザ・ベストテン』において7週に渡り1位を獲得したヒット曲ですが、実はYMOの細野晴臣さんが作曲を手掛けており、多くの昭和歌謡の名作を手掛けた萩田光雄さんと共同で編曲を担当したテクノ歌謡なのですよ。

スタジオ音源をじっくりと聴けば分かりますが、いかにもテクノらしい無機質なドラム・ビートと繰り返されるシンセのフレーズがまさにといった雰囲気で、情熱的な中森さんの歌唱といかにも歌謡曲といった感じのギターやストリングスの音色と相反するように、どこか平熱のクールネスを演出するトラックが最高にカッコいいですね。

今回の『禁区』のように、意外なところでテクノ歌謡の世界は広がっておりますから、80年代のヒット曲は本当にあなどれないです!

恋はルンルン伊藤つかさ

“恋はルンルン” by 伊藤つかさ
恋はルンルン伊藤つかさ

YMOの3人が楽曲制作に関わった80年代のテクノポップを集め、2005年にリリースされたオムニバス・アルバム『イエローマジック歌謡曲』にも収録されている名曲です!

80年代の人気アイドルであり、女優としても活躍している伊藤つかささんが1982年にリリースしたセカンド・アルバム『さよなら こんにちは』に収録され、作曲と編曲は坂本龍一さんが担当した楽曲なのですね。

タイトルからしてストレートにアイドル全開ですし、伊藤さんの可愛らしい語りも盛り込まれたアイドルソングでありながら、トラック自体はほとんどYMOサウンドであるというのがこの時代ならではのおもしろみと言えましょう。

アルバム自体が大貫妙子さんや原由子さん、矢野顕子さんに竹内まりやさんといった豪華な作家陣が曲を提供、坂本さんはもちろん清水信之さんに大村憲司さんなどがプロデュースとして参加したテクノ歌謡として評価の高い作品となっていますから、そちらも要チェックですよ!