ビリーシーンの原点!伝説のバンド「TALAS」とは
ビリーシーンの音楽キャリアを語る上で、欠かすことのできない伝説のバンド「TALAS」について、ご紹介します。
ビリーシーンの原点!
伝説のバンド「TALAS」とは
とりあえず、こちらの曲をお聴きください。
Talas-High Speed on Ice
これが、僕が最初にオススメしたいTALASの代表曲「High Speed On Ice」です。
イントロはベースで弾いているのですが、おわかりでしょうか(笑)。
ライブでは、ビリーの超絶ベース・ソロのコーナーから、この曲のイントロに入るという流れが定番だったようです。
MR.BIGでいうところの「Addicted To That Rush」と同じ立場の曲ですね。
「え!?
これベース?
マジで?」と思わせるイントロから始まるところも、共通点と言えるでしょう(笑)。
「High Speed On Ice」の思い出
「High Speed On Ice」は曲のカッコよさもさることながら、僕にとっては、ビリーのことを研究するキッカケになった、とても思い入れのある一曲です。
僕が生まれて初めてビリーを知ったのは、16歳のとき。
クラスの友達がくれた「BILLY SHEEHAN IN JAPAN」というビデオでした。
この冒頭で流れてきたのが、この曲だったんです。
すさまじい衝撃でした。
とてもベースとは思えない強烈かつ重厚なディストーション・サウンド、ボーカルの隙間で次々と繰り出されるスピード感あふれるフレーズ、マシンガンのような音粒のそろったバッキング、高速トリル、コード弾き、ピッキング・ハーモニクス、などなど。
もう文字通り、ぶっ飛んでしまいました。
僕のVHSテープは、今再生したら確実に切れてしまうと思いますが(笑)、YouTubeにあがっているので紹介します。
Billy Sheehan JAPAN 9-12-1988 PART 1
2:27のジャンボジェット機が着陸するところからです。
この動画では、ちょっと音飛びしているのが残念ですが、「BILLY SHEEHAN IN JAPAN」のタイトルバックにピッタリですね。
オリジナルTALASとは
TALASは、1972年、ビリーが故郷バッファローで結成したバンドです。
ビリーが解説したところによれば、TALASはメンバーチェンジを繰り返し、第10期まであったようです。
ちなみに、ビリーは第9期TALASで脱退し、デヴィッド・リー・ロス・バンドに参加しています。
ULTIMATE BILLY SHEEHAN(リットーミュージックムック)
1979年頃にオリジナル・バンドとして本格活動を始めたときのメンバーは、ギターボーカルのデイヴ・コンスタンティノ、ドラムボーカルのポール・ヴァルガ、そしてベースボーカルのビリーというトリオ編成でした。
これは第7期にあたるようですが、僕は「オリジナルTALAS」と呼んでいます。
このオリジナルTALASは、インディーズながら1979年に「TALAS」という自主制作アルバムを発表。
ビリーいわく、1万枚プレスして、ソールドアウトしたそうです。
そして、1982年に「スタジオ盤」とも呼ばれる2ndアルバム「Sink Your Teeth Into That」をリリース。
これが、実質的なメジャーデビューになったようです。
このアルバムでのスーパープレイで、ビリーシーンの名前は世界に知られることになりました。
その後、メンバーチェンジして、1984年に「Live Speed On Ice」というライブ盤をリリースします。
冒頭の「High Speed On Ice」が収録されたアルバムです。
このときのメンバーは、ボーカルのフィル・ナーロ、ギターのミッチ・ペリー、ベースのビリー・シーン、ドラムのマーク・ミラーという4人構成です。
第8期にあたるようですが、僕は「後期TALAS」と呼んでいます。
後期TALASについては、またご紹介することにしますね。
コスパ最高の復刻2枚組アルバム
これらのアルバムはLPレコードでのリリースで、現在はどちらも廃盤となっていますが、のちに「Billy Sheehan Talas Years」という2枚組CDアルバムとして復刻リリースされました。
僕もこれを持っているのですが、これだけでオリジナルTALASと後期TALASの両方を堪能できるので、ぜひお聴きいただきたい超オススメの1枚(2枚?
)です。
アグレッシブなビリーのジャケット写真もカッコイイですね。
今でこそ、マイナーなアルバムもネットで簡単に購入できますが、1990年当時は、ネット検索なんてありませんでしたから、少ない情報を元にレコードショップを探しまくりました。
やっと見つけたときのうれしさは今でも覚えています。
コーラス・ワークも魅力
オリジナルTALASは、メンバー全員がリードボーカルをとれるので、ハードなサウンドだけではなく、分厚く美しいコーラスのハーモニーも大きな魅力です。
ちなみに、スタジオ盤の「High Speed On Ice」のリードボーカルは、ドラマーのポールです。
このTALAS時代の経験からか、ビリーは「ベースを弾きながら歌えること」をとても重視しているように思います。
MR.BIGが良い例ですね。
僕もきっちりハモれるようになりたくて、コーラスを特訓中なのですが、本当に難しいですね……。
あの「Shy Boy」も
「Shy Boy」と言えば、スティーヴ・ヴァイとの超絶ユニゾンが炸裂(さつれつ)するデヴィッド・リー・ロス・バンドの1stアルバム「Eat’em And Smile」に収録されたバージョンが有名です。
また、MR.BIG、The Winery Dogs、PSMSなど、ビリーが参加したバンドやプロジェクトでは、必ずといっていいほどカバーされる定番曲になっていますが、元はと言えば、オリジナルTALASのスタジオ盤「Sink Your Teeth Into That」に収録されているんですね。
Billy Sheehan – The Talas Years – Shy Boy
このスタジオ盤「Shy Boy」では、後半のブレイク部分が、ベースだけの高速タッピング・ソロになっています。
アドリブと思われるのですが、圧倒的なスピード感と音の密度を保ったまま、上下に壮大に展開するフレージングは、初めて聴いた時におおいに感動しました。
整然とした感じのスティーヴ・ヴァイとのタイトなユニゾン・フレーズとは、一味違った面白さがありますね。
ご参考までに、僕がその部分を解説した動画をご紹介します。
【ビリーシーンスタイル】ShyBoy タラス・スタジオ版の2分12秒からのライトハンド・ソロの解説
ビリーを一躍有名にしたベース・ソロ曲
そして、このアルバムで特筆すべきは、「NV4 3345」という曲です。
これは、完全にベースだけで演奏されたソロ曲で、当時は、まだ珍しかったライトハンド・タッピング、両手タッピングを駆使して演奏されており、ハッキリ言って聴いただけでは、何をどうやって弾いているのか全くわかりませんでした。
この曲で、ビリー・シーンの名前が一躍世界に知れ渡るようになったと言っても過言ではないと思います。
映像も残っていないので、⻑年コツコツと研究していたのですが、ここ数年でやっと通して弾けるようになってきました。
自己解釈なので、明らかにビリーと違う弾き方をしているところもあるのですが。
こちらの動画のBGMとして使われています。
Billy Sheehan Wife Bass Replica Movie
僭越(せんえつ)ながら、僕がライブでカバーした動画もご紹介します。
最後に「NV4 3345」に込められた意味についても説明しています。
Billy Sheehan’s Bass Solo “NV4 3345” LIVE Cover
この動画をビリーも参加しているFacebookグループ「YAMAHA Attitude Ltd.」で投稿してみたら、こんなコメントをいただきました。
「Holy cow!」は直訳すると「聖なる牛」ですが、アメリカやカナダでは「うひゃー!」「なんてこった!」という驚きを表す意味のスラングなんだとか。
ビリーのソロ・アルバムのタイトルにもなっています。
とりあえず、褒め言葉をいただいたと思って素直に喜んでいます(笑)。
ステレオ・ディストーション・サウンド
アルバム「Sink Your Teeth Into That」の面白いところは、ビリーの特徴である「ステレオ・ディストーション・サウンド」がとても分かりやすいということです。
ビリーの使用ベースには、ジャックが2個ついていることは良く知られています。
フロント・ピックアップとリア・ピックアップの信号を独立に出力できるステレオ仕様になっているのですね。
「ステレオ・ディストーション・サウンド」というのは、僕が勝手に呼んでいるだけなのですが、クリーンなままのフロント・ピックアップからの低域と、激しく歪ませたリア・ピックアップからの高域という2系統の音を別々のアンプで出力してミックスする、というビリー独自のサウンド・システムです。
デヴィッド・リー・ロス・バンド以降、MR.BIGなどのアルバムでは、クリーンとディストーションがうまくブレンド(アルバムによって違いがありますが)されて、左右からバランス良く聞こえるように作られていると思うのですが、このアルバムでは、
- 左チャンネル:リア・ピックアップからのディストーションの音
- 右チャンネル:フロント・ピックアップからのクリーンの音
と、完全に分けて収録されていると思われます。
ですので、ヘッドホンで片側だけを聴けば、クリーンとディストーションの違いがはっきりと分かって面白いです。
ちなみに、この頃のビリーのサウンドは「もう一人プレイヤーがいるようだ」「別々の音が鳴っているように聴こえる」と評されていたそうですが、この思い切った録音方式によるものかなと思います。
言い換えれば、この時点で、唯一無二(ゆいいつむに)ともいえるステレオ・ディストーションサウンドが既に確立されていたということになりますので、その発想力には脱帽です。
デビューアルバムも復刻
自主制作だったデビューアルバム「TALAS」も、1992年にCD化されていて、聴けます。
他の2作に比べると、ヘビーさはなく、どちらかというとポップな曲調の明るいハードロックなアルバムです。
それでも随所にみられるビリーのプレイとサウンドはさすがのカッコよさ。
個人的には、お気に入りのアルバムです。
再結成ライブ盤もスゴイです
オリジナルTALASは、時々、再結成しているのですが、1998年にライブ盤がリリースされています。
YouTubeで探すと、2001年のライブ映像なども見つかります。
このアルバムでは、キング・クリムゾンのカバー「21st Century Schizoid Man」をやっているのですが、これがまたスゴイです!
特に間奏では、ギターとの怒涛のユニゾンと、ギターソロと全く独立して縦横無尽に弾きまくるダブル・ソロ(?
)という、ビリーならではのベースが両方楽しめます。
かなり、おなかいっぱいになります(笑)。
MR.BIG以降の活動では、超絶プレイを織り込みながらも、基本的にはバンド・アンサンブルとグルーヴを重視したプレイが高く評価されているビリーですが、やはり原点である古巣TALASでのプレイは、さらにアグレッシブというか、何段階かギア・アップしている感じがします。
曲中でも、とにかくもっと自由奔放に弾きまくるビリーが見たい!
聴いてみたい!
という方には、TALASがピッタリです。
期待を裏切りません(笑)。
今回は、ビリーの音楽キャリアを語る上で欠かすことのできない伝説的なバンド「TALAS」のうち、初期のオリジナルTALAS時代を中心に書いてみました。