【ピアノ×暗い曲】悲しみにどっぷり浸れるクラシックの名曲
気分がすぐれずないとき、無理にポジティブになろうとするより、しばらくは悲しみに暮れていたいと思うことはありませんか?
感傷に浸りながら過ごすことで、悲しかった出来事を自分のなかで自然に消化でき、前向きになれることもありますよね。
今回は、そんな「悲しみにどっぷり浸りたい瞬間」に聴きたい、オススメのクラシック作品のなかから、暗い雰囲気のピアノ曲をご紹介します!
ただ暗いだけでなく、ピアノの繊細さや美しさも味わえる名曲ばかりですので、聴き終わる頃にはきっと心がいくぶん軽く感じられるはずです。
【ピアノ×暗い曲】悲しみにどっぷり浸れるクラシックの名曲(1〜10)
ノクターン 第19番Op.72-1 ホ短調「遺作」Frederic Chopin
1827年頃、わずか17歳で作曲されたとは思えないほど深い哀愁を湛えた夜想曲です。
左手の絶え間なく続く三連符のアルペジオが心の揺らぎを表現し、その上に乗る右手の素朴で物悲しい旋律が、胸の内に秘めた想いを静かに語りかけます。
本作はホ短調で始まりながら、最後は温かい長調で静かに終わる構成が特徴的で、涙のあとの穏やかな安らぎを感じさせます。
ドラマ『Fringe』でも使用されました。
感傷的な夜に一人でじっくり向き合いたい、そんな気分に寄り添ってくれる一曲です。
ピアノソナタ第2番 第3楽章 『葬送行進曲』Frederic Chopin

重々しい鐘の音を思わせる和音で始まる、フレデリック・ショパンのピアノソナタからの楽章です。
聴く者の心を掴んで離さない、深く沈み込むような旋律が続きます。
やがて中間部では、これまでの闇を優しく包み込むかのように、天上的で甘美なメロディが奏でられていきます。
この対比こそが、本作の持つ抗いがたい魅力でしょう。
この楽章はショパンの葬儀が執り行われた1849年10月にも演奏されており、その荘厳な響きは多くの著名人の式典でも用いられています。
深い悲しみに寄り添い、その中にある静かな美しさや祈りを感じたい時に聴いてほしい名楽章です。
メロディOp.4-2Fanny Mendelssohn

まるで歌曲のように歌う旋律が印象的な、嬰ハ短調の小品です。
この楽曲は、兄フェリックスとは異なる独自のピアノ様式を模索していたファニー・メンデルスゾーンのピアノ曲集『6 Melodies Op.4』に収録されています。
繊細な旋律に重なる濃密な和声は、ファニー・メンデルスゾーンならではの表現力。
感情の機微をただように描き出しており、少しでも表現を誤ると曲の持つ内省的な魅力が損なわれかねません。
1846年に自らの名で作品を出版したファニー・メンデルスゾーンの、静かながらも確固たる意志を感じさせます。
悲しみに深く沈みたい夜、一人でじっくりと味わいたい方にこそ聴いてほしいものです。
本作を弾く際は、旋律をどう歌わせるかが最大のカギとなるでしょう。
グノシエンヌ第3番Erik Satie

この楽曲は、1893年に音楽誌で初めて紹介された作品で、楽譜に小節線がないのが大きな特徴です。
左手は古代の儀式を思わせるような静かなリズムを繰り返し、その上で右手がどこか掴みどころのない旋律を奏でます。
「Avec étonnement」(驚きとともに)といったユニークな指示が奏者の解釈に委ねられ、聴くたびに異なる表情を見せてくれますよ。
映画『ユマ・フォア』でも効果的に使われました。
本作が持つ瞑想的な響きは、心の奥に沈んだ感情と静かに向き合いたい夜にぴったりです。
ソナチネ 嬰ヘ短調 M. 40 2楽章 メヌエットMaurice Ravel

静かに心と向き合いたい時におすすめなのが、モーリス・ラヴェルのピアノ作品『Sonatine』に含まれる一曲です。
本作は、古典的なメヌエットの優雅な形式をとりながら、内に秘めた憂いと洗練された響きが溶け合う、とても美しい楽章です。
メロディを聴いていると、悲しみの中にも凛とした気品を保つ情景が目に浮かぶようですよ。
1975年にはこの曲を含む作品全体がバレエとして振り付けられたことでも知られ、その物語性は聴く人の想像力をかき立てます。
激しい感情ではなく、ピアノの繊細な音色に静かに身を委ねたい時に、きっと心に寄り添ってくれることでしょう。
「四季」-12の性格的描写 Op.37bis 6月「舟歌」Pyotr Tchaikovsky

ロシアの作曲家によるピアノ独奏曲集『The Seasons』の中でも、叙情美をたたえて人気の高い一曲です。
本作は1876年6月に雑誌で公開されたもので、寄せては返す波のような物悲しい旋律で始まります。
水辺の情景を描いた詩が添えられているとされ、その切ない調べは聴く人の心に深く染み渡ります。
中間部で一転して長調になると、星のきらめきを思わせる華やかなアルペジオが展開されます。
あまりにも人気が高いため、1981年に振付されたバレエ『Piano Pieces』にも用いられました。
悲しみに沈む心に優しく寄り添う、言葉にならない感情が込み上げてくる名曲です。
ドゥムカ ハ短調 作品59Pyotr Tchaikovsky

ロシアの広大な田園風景が目に浮かぶような、ピョートル・チャイコフスキーによるピアノのための作品です。
1886年2月に作曲された本作は、ウクライナの「思いの中の小説」を意味する形式が用いられています。
深い哀愁を帯びた旋律で静かに始まりますが、中間部では民族舞曲のように一気に情熱的になり、感情がほとばしるようです。
しかし最後は再び静寂に包まれ、冒頭よりも諦念に満ちた響きで締めくくられます。
悲しみと祝祭的な喜びが交錯する本作は、感傷的な気分に浸りつつ、ドラマティックな展開も味わいたい方に聴いてほしい一曲です。