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牧歌の名作。パストラールの魅力に迫る代表作まとめ

日本語で牧歌的という言葉がありますが、穏やかな田園風景を描いた音楽がパストラーレ、牧歌です。

羊飼いたちの素朴な暮らしや自然との調和などを表現するこのジャンルは、古代ギリシャ・ローマ時代から愛され続けてきました。

のどかな情景を思い起こさせる優美な旋律と、素朴な中にも深い叙情性を秘めた歌詞が特徴です。

バロック時代には声楽曲や器楽曲としても発展を遂げ、現代に至るまで多くの作曲家たちの心を魅了してきました。

このジャンルを代表する名作の数々を、その魅力や背景とともにご紹介していきます。

牧歌の名作。パストラールの魅力に迫る代表作まとめ(1〜10)

ジークフリート牧歌Richard Wagner

Wagner: Siegfried-Idyll ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Alain Altinoglu
ジークフリート牧歌Richard Wagner

19世紀ドイツの楽劇王として知られるリヒャルト・ワーグナー。

壮大なオペラ作品で名高い彼が、妻への誕生日プレゼントとして1870年に書き上げたのが、室内オーケストラのための抒情作品です。

初演は同年12月、スイスの自宅階段で小編成楽団による朝のサプライズ演奏として実現しました。

本作は楽劇『Siegfried』の穏やかな場面から主題を借り、ホルンの信号や鳥のさえずりを思わせる旋律、温かな和声で家庭の幸福を描き出しています。

当初13人編成で書かれ、出版時に拡大版も用意されましたが、原典の親密な響きを大切にする演奏も根強い人気を保っています。

クリスマスや新年のプログラムで頻繁に取り上げられるため、季節の訪れを感じたい方や室内楽的な落ち着きを求める方にぴったりです。

ペール・ギュント 第1組曲 作品46 第1曲「朝」Edvard Hagerup Grieg

朝のやわらかな光を思わせるフルートとオーボエの対話が美しいこちらの作品は、エドヴァルド・グリーグによる組曲『ペール・ギュント 第1組曲』の冒頭を飾る一曲です。

ヘンリク・イプセンの戯曲のために書かれた劇付随音楽から抜粋され、1888年に組曲として出版されました。

穏やかな6/8拍子とホ長調の透明な響きが、まさに牧歌的な情景を描き出します。

テレビ番組や広告でも夜明けのBGMとして親しまれており、英国のインスタントコーヒーCMでも採用されました。

休日の朝、ゆったりとした時間を過ごしたいときにぴったりの楽曲です。

余談ですが、劇中では主人公が砂漠で困窮する場面に流れるという意外な背景も興味深いですね。

メサイア 田園交響曲「ピファ」Georg Friedrich Händel

バロック音楽の大家ヘンデルが1741年に作曲し、翌1742年4月にダブリンで初演されたオラトリオ『Messiah』。

その第1部に置かれた器楽間奏曲は、羊飼いたちへの聖夜の告知を静かに予告する短い牧歌です。

持続低音の上で弦楽器が三度並行の優しい旋律を奏で、12/8拍子のゆったりとしたうねりがシチリアーノ風の素朴さを醸し出します。

金管や打楽器を一切使わず、レガート主体の弦だけで夜の静けさと遠景からの祈りを無言のまま描き出す手法は、まさにヘンデルの劇的構成力の結晶といえるでしょう。

クリスマス期の演奏会で定番となっている『Messiah』全曲の中でも、ひときわ穏やかな情景を思い起こさせる名場面です。

『アルルの女』第2組曲 第1曲「パストラール」Georges Bizet

19世紀フランスの劇音楽の至宝から生まれた組曲『L’Arlésienne Suite No.2』の冒頭を飾る本作。

ビゼーが1872年に書いた劇伴を、親友ギローが編み直した組曲の導入楽章として、1880年3月にパリで初演されました。

アルト・サクソフォンやイングリッシュホルンの柔らかな呼び交わしが朝もやに包まれた田園を描き、ハープの透明な響きが牧人の素朴な情景を浮かび上がらせます。

三部形式の中間部では軽やかなアンダンティーノが小踊りするような明るさを添え、再び静謐な冒頭へ回帰する構成が見事です。

カラヤン指揮ベルリン・フィルやデュトワ指揮モントリオール響の名盤で、その色彩豊かな管弦楽法をじっくりと味わってみてください。

パストラーレ ヘ長調 BWN590 第3楽章J.S.Bach

バロック時代の巨匠、ヨハン・セバスティアン・バッハによるオルガン曲。

全4部構成の小規模組曲から、静謐な緩徐楽章として配置された第3楽章です。

息の長い旋律がオーボエのようにやさしく歌い、素朴な和音がそっと寄り添う構図は、イタリアの田園音楽の伝統を受け継いだもの。

羊飼いの素朴な情景を思わせるゆったりとした揺れと、カンタータのアリアを思わせる歌心が、時間を忘れさせる瞑想的な世界を紡ぎます。

1720年頃に作曲され、1845年にライプツィヒで初出版されたこの作品は、クリスマスや追悼の場でも演奏される名曲。

心を静めたいとき、日常の喧騒から離れて深い呼吸を取り戻したいときに、オルガンの連続する響きが優しく包んでくれます。