【名曲ラプソディ】クラシック音楽史を彩る華やかな狂詩曲を厳選
「ラプソディ」は、日本語で「狂詩曲」と訳される、民族的または叙情的な内容を自由な形式で表した音楽ジャンルのひとつ。
ヨハネス・ブラームスやフランツ・リスト、ジョージ・ガーシュウィンといった歴史に名を刻む作曲家らが、それぞれ独自の世界観をもつラプソディを遺しています。
本記事では、そんなラプソディのなかから、今日においても特に人気が高く、コンサートでもたびたび取り上げられている名曲を厳選してご紹介します!
【名曲ラプソディ】クラシック音楽史を彩る華やかな狂詩曲を厳選(1〜10)
2つのラプソディ Op.79 第2番 ト短調Johannes Brahms

ヨハネス・ブラームスは、ドイツロマン派を代表する作曲家の1人。
古典主義の形式美を尊重しつつ、ロマン派特有の叙情性も兼ね備えた作品を多数残しています。
『2つのラプソディ Op.79』の第2番は、雄大な主題と3連符の暗くうごめく旋律が印象的。
情熱的な曲調の中に古典的なソナタ形式の枠組みが残され、演奏には高度な技術と深い音楽理解が求められます。
テクニック面、表現面ともに高い難易度をほこりますが、内に秘めた情熱をダイナミックに表現できる方にぜひ挑戦していただきたい作品です。
メキシコ狂詩曲 第1番Manuel Ponce

中南米のクラシック音楽を語るうえで外すことのできない作曲家、マヌエル・ポンセ。
メキシコ音楽のナショナリズムをいち早く打ち出した第一人者であり、故郷の民俗音楽をヨーロッパの音楽様式と融合させることで、独自の作風を確立しました。
その代表的なレパートリーのひとつが、愛国的な情熱がほとばしる『メキシコ狂詩曲 第1番』。
サロン風の洗練されたタッチに、民族的な旋律とリズムが溶け込んだ名曲です。
ポンセ作品の真髄に触れたい方はもちろん、情熱的なラテン音楽の魅力を存分に味わいたいすべてのクラシック音楽ファンにオススメしたい、聴きごたえ抜群の1曲です。
アルト・サクソフォンのためのラプソディAndré Waignein

ベルギーの作曲家アンドレ・ウェニャンは、真の音楽の魔術師。
その音楽は自由奔放で生き生きとしており、彼が生み出した600以上もの作品は、国内外で高く評価されています。
なかでも特に人気が高いのが、コンクールやコンサートなどで頻繁に演奏されている『アルト・サクソフォンのためのラプソディ』。
サクソフォンの魅力を存分に引き出す圧巻の作品で、ソリストとオーケストラの見事な掛け合いが印象的です。
テクニックと感性を兼ね備えたサクソフォン奏者はもちろん、多彩な音色の魅力にひかれるすべての音楽ファンにぜひ聴いていただきたい、現代吹奏楽の名曲の一つです。
3つのスラヴ狂詩曲 Op.45 B.86Antonín Dvořák

チェコ出身の作曲家アントニン・ドヴォルザークの『3つのスラヴ狂詩曲 Op.45 B.86』。
ドヴォルザークは、幼少期から音楽的才能を発揮し、チェコ民族の音楽を世界に広めた立役者ともいえる作曲家です。
1878年に作曲されたこの曲は、3つの楽章からなり、それぞれ異なる民族的なテンペラメントの情景を描きながらも、互いに対照的なバランスを成し遂げています。
第1の狂詩曲は田園的な雰囲気、第2の狂詩曲はドラマチックな調子、第3の狂詩曲は生命の喜びを表現しており、ドヴォルザークならではの独自の音楽言語が感じられます。
彼の作品を初めて聴く方にもオススメですが、クラシック音楽をより深く理解したい方にとっても魅力的な1曲といえるでしょう。
管弦楽のための狂詩曲「スペイン」Emmanuel Chabrier

フランスの作曲家エマニュエル・シャブリエの代表作の1つ『管弦楽のための狂詩曲』。
1883年に作曲されたこの曲は、シャブリエがスペイン旅行で感じたアンダルシア地方の情熱的なリズムや旋律からインスピレーションを得て生まれました。
華やかなオーケストレーションと色彩豊かな響きが魅力的で、木管楽器と金管楽器が巧みに使われています。
スペイン民謡をモチーフにしながらも、シャブリエ独自の自由な感性が存分に発揮された本作は、クラシック音楽ファンにはもちろん、情熱的な音楽が好きな方にもぜひ聴いていただきたい名曲です。
スペイン狂詩曲 S.254Franz Liszt

ピアノの超絶技巧者として知られるフランツ・リストの作品の中でも、特に難易度の高い曲とされるのが『スペイン狂詩曲』です。
リストが1845年にスペイン訪問の際に受けた印象をもとに作曲されたこの曲は、スペインの民俗舞曲の旋律を随所に取り入れ、華麗なピアニズムで彩られた聴きごたえのある1曲となっています。
全編にちりばめられた超絶技巧的なパッセージは国際コンクールなどでもたびたび取り上げられる一方で、演奏できるピアニストはごくわずか。
高度なテクニックと表現力、充実した体力を兼ね備えたプロフェッショナルのためのレパートリーといえるでしょう。
ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ長調 S.244-2Franz Liszt

超絶技巧を要する難曲を数多く作曲したピアノの魔術師フランツ・リスト。
『ハンガリー狂詩曲 第2番』は彼の代表作の一つであり、非常に難易度が高く、プロのピアニストでも演奏に苦戦する作品です。
ゆったりとした憂いのある旋律から始まり、徐々に速度を上げ華やかさを増していく様子は圧巻の一言!
ハンガリー民謡に影響を受けつつ、リストならではの華麗なピアノ書法で彩られた明るく美しいメロディと力強いリズムは、聴く者を魅了してやみません。
本作の演奏には相当な練習量が必要になりますが、情熱的でドラマチックな世界観を存分に味わいながら、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
ラプソディ・イン・ブルーGeorge Gershwin

ジョージ・ガーシュウィンの代表作『ラプソディ・イン・ブルー』は、クラシックとジャズが見事に融合した革新的なピアノ協奏曲。
1924年2月12日にニューヨークのエオリアン・ホールで初演され、聴衆を圧倒しました。
ガーシュウィンは、この曲の創作にわずか5週間しか費やしておらず、アメリカの活気や都市の喧騒を表現するため、ジャズのリズムやブルーノートを駆使しています。
特に印象的なのは冒頭の滑らかなクラリネットのグリッサンド。
クラシック音楽ファンのみならず、ジャズ好きな方にもオススメの名曲です。
サマーセット狂詩曲 Op.21-2Gustav Holst

20世紀初頭を代表する作曲家グスターヴ・ホルストの管弦楽曲『サマーセット狂詩曲 Op.21-2』。
イギリス民謡の影響を色濃く反映した、ホルストの初期の代表作です。
イングランドのサマセット地方の美しい風景と、そこに息づく人々の豊かな感情が見事に描写されており、古き良きイギリスの情景が目に浮かぶようです。
オーボエの柔らかな音色から始まり、さまざまな楽器が絡み合いながら曲が盛り上がっていく様子は圧巻の一言!
ホルストの作品の中でも特に英国的な雰囲気漂う、ノスタルジックで温かみのある佳曲をぜひじっくりとお楽しみください。
パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43Sergei Rachmaninov

ロシアロマン派の巨匠、セルゲイ・ラフマニノフが、19世紀の伝説的なバイオリニスト、ニコロ・パガニーニの『24のカプリース』の最終曲をもとに、ピアノとオーケストラのために作曲した『パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43』。
情熱的であったり、技巧的であったり、時にはユーモラスな表情も見せる24の多彩な変奏の連続は、聴く者を飽きさせません。
中でも特に有名なのが、美しい旋律が印象的な第18変奏。
穏やかでありながら、どこかロマンティックな雰囲気を醸し出しています。
本作は、ラフマニノフの創造力と超絶技巧が凝縮された、まさに彼の代表曲ともいえる1曲です。
【名曲ラプソディ】クラシック音楽史を彩る華やかな狂詩曲を厳選(11〜20)
ノルウェー狂詩曲Édouard Lalo

フランスを代表する作曲家の1人であるエドゥアール・ラロは、生涯を通してさまざまなジャンルの作品を残しました。
なかでも室内楽やオーケストラ作品には、彼ならではのドラマティックな表現力が発揮されています。
1879年に作曲された『ノルウェー狂詩曲』は、ノルウェーの民謡に着想を得たという点で興味深い作品。
前年に書かれたバイオリンとオーケストラのための組曲をもとに、さらに練り上げられた管弦楽曲となっています。
ノルウェーの大自然を思わせるような雄大な表現が魅力の本作は、クラシック音楽に興味のある方はもちろん、管弦楽曲の多彩な表情を味わいたい方にもオススメの作品です。
オーヴェルニュ狂詩曲 ハ長調 Op.73Camille Saint-Saëns

19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの作曲家カミーユ・サン=サーンス。
彼は幼少期から音楽の才能を発揮し、ピアノとオルガンの名演奏家として名をはせました。
『オーヴェルニュ狂詩曲 ハ長調 Op.73』は、彼が1884年に作曲したピアノとオーケストラのための作品です。
オーヴェルニュ地方の山岳地帯で耳にした洗濯女の歌うメロディと牧歌的な呼び声をもとに、リストのハンガリー狂詩曲に影響を受けた自由な形式で書かれた本作は、鮮やかな色彩感とともに、風光明媚な情景を映し出します。
華麗なピアノの響きとオーケストラの豪華なサウンドが融合した、まさに「狂詩曲」の名にふさわしい作品といえるでしょう。
セカンド・ラプソディGeorge Gershwin

アメリカ音楽史上に残る偉大な作曲家ジョージ・ガーシュウィンは、ジャズ、クラシック、ポピュラー音楽を融合させた革新的な作風で知られています。
彼の『セカンド・ラプソディ』は、1931年に作曲された管弦楽曲で、映画『Delicious』のために書かれた音楽をもとに作曲されました。
本作は、ニューヨークの街並みの活気と喧騒を表現しようとした意欲作であり、勢いのある開始部、ラテンのリズムを感じさせる部分、『ラプソディ・イン・ブルー』をほうふつとさせる終結部の3つのセクションから成ります。
クラシック音楽の枠組みに囚われない斬新な音楽を求める方にオススメの1曲です。
バイオリンとピアノのためのラプソディ 第1番 Sz.86Bartók Béla

ハンガリー出身のクラシック音楽の作曲家、ピアニスト、そして民俗音楽研究家として知られるバルトーク・ベーラの『バイオリンとピアノのためのラプソディ第1番 Sz.86』。
1928年に作曲された本作は、ハンガリーのバイオリニストに献呈された技巧的な作品で、バイオリンとピアノ、チェロとピアノ、バイオリンとオーケストラなどの編成で演奏されています。
全体を通してハンガリーの伝統的なチャールダーシュのリズムが用いられた本作は、民族色豊かな音楽に興味がある方や、いつもとは一味違う雰囲気の曲を探している方にオススメの1曲です。
管弦楽のためのラプソディ外山雄三

クラシック音楽史に輝く『管弦楽のためのラプソディ』。
1960年に作曲家の外山雄三さんが手掛けたこの作品には、日本人なら誰もが知る民謡の数々がちりばめられており、独特の世界観を創り上げています。
和太鼓やチャンチキなどの打楽器を効果的に織り交ぜ、わずか7分という短い演奏時間の中で「急-緩-急」の三部形式による鮮やかな展開を見せてくれます。
日本古来の旋律を現代によみがえらせたこの曲は、クラシック音楽ファンのみならず、吹奏楽愛好家にもぜひ聴いていただきたい名曲です。
おわりに
民族的で叙情的、さらに情熱的なラプソディの名曲、ご堪能いただけましたか?
「ラプソディ」と名の付く作品は、今回ご紹介した以外にも数多く存在します。
ご興味をお持ちの方は、ぜひいろいろな作曲家によるラプソディを聴き比べてみてくださいね。