【入門編】日本の伝統芸能~浪曲の名作を紹介【浪花節】
江戸時代から続く日本の伝統芸能である浪曲は浪花節とも呼ばれ、打楽器三味線の伴奏に乗せて、人情噺や歴史物語を情感豊かに語る独特な語り芸です。
一人の語り手、つまり浪曲師が複数の登場人物を演じ分け、歌と語りを巧みに使い分けながら物語を展開していきます。
庶民の喜怒哀楽を描いた義理人情物や、歴史上の英雄を題材にした時代物など、その作品世界は実に多彩。
近年では若手浪曲師の活躍も目覚ましく、現代的な解釈や新作の上演にも積極的に取り組んでいます。
そんな浪曲に興味を持たれた方に向けて、代表的な作品をここでは紹介します。
入門編としてもぴったりな記事をぜひお楽しみください。
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【入門編】日本の伝統芸能~浪曲の名作を紹介【浪花節】(1〜10)
高橋お伝国本はる乃

明治期に起きた実在の女性殺人事件を題材にした作品ですが、浪曲では単なる「毒婦」として描くのではなく、難病の夫を救いたい一心で名医を求めて東京へ向かう貞女として人間讃歌のテーマを込めて描かれています。
襲いかかる男たちを避けながら必死に夫のために行動するお伝の姿を、語りと三味線の節回しで情感豊かに表現した物語は、愛憎と哀しみが交錯する人間ドラマとして胸を打ちます。
2021年6月に浅草・木馬亭の定席興行で初演され、国本はる乃さんが師匠から許しを得て継承した演目です。
歴史上の人物を新たな視点で描き直した本作は、浪曲という伝統芸能の奥深さと、一人の女性の切ない人生を知りたい方におすすめの一席といえるでしょう。
瞼の母天津羽衣

幼い頃に生き別れた母を慕い続ける渡世人忠太郎の、哀切極まる物語が語られる作品です。
長谷川伸の戯曲を題材とし、三味線の伴奏に乗せて展開される本作は、浪曲ならではの語りと節回しの妙を存分に味わえる一作。
天津羽衣さんが得意とした「母もの」シリーズの代表曲として、1995年11月にテイチクエンタテインメントからリリースされた作品で、2015年11月には復刻盤として再び世に送り出されています。
母と再会しながらも運命が残酷に交錯していく展開は、聴く者の涙を誘います。
浪曲入門として、あるいは母への思いを新たにしたいときに、じっくりと耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
一本刀土俵入り澤孝子

浪曲の代表的な演目として語り継がれる長谷川伸原作の人情噺。
力士を夢見る駒形茂兵衛と芸者お蔦の心の交流を描いた物語です。
お蔦が貧しい茂兵衛に巾着や簪を差し出す場面、そして10年後、横綱への道が絶たれた茂兵衛が借金取りに苦しむお蔦の一家を救いに現れる場面など、人生の悲哀と温かさが三味線の音色とともに胸に迫ります。
この演目は1955年に池上勇さんの脚色で澤孝子さんによって口演され、以降長年にわたり高座で演じられてきました。
浪曲ならではの語りと節回しが一体となり、夢破れた男の矜持と人情の機微を見事に表現しています。
人生の苦楽を味わった方、また義理人情に胸を打たれる物語がお好きな方には心に響く作品でしょう。
【入門編】日本の伝統芸能~浪曲の名作を紹介【浪花節】(11〜20)
南部坂雪の別れ三波春夫

浪曲と歌謡曲を見事に融合させた長編歌謡浪曲の傑作です。
1962年に発売されたこの作品は、忠臣蔵の世界を舞台に、雪降る江戸の南部坂で繰り広げられる武士たちの別れの場面を描いています。
三波春夫さんならではの張りと艶のある声で、語りと歌唱が絶妙に織り交ぜられながら物語が展開。
約15分という長尺のなかで、義理と人情、武士の誇りと切なさが情感豊かに表現されています。
作詞・構成を北村桃児名義で三波さん自身が手がけており、浪曲師としての技術と歌手としての表現力が存分に発揮された作品です。
日本の伝統的な物語を題材にした時代物がお好きな方、また浪曲という芸能の魅力を知りたい方にぜひ聴いていただきたい名作といえるでしょう。
赤城の子守唄初代春日井梅鶯

昭和9年に東海林太郎さんの歌唱で大ヒットした歌謡曲を浪曲化した作品です。
国定忠治が叔父を斬らせてしまった子分の遺児・勘坊を背負い、自らの過ちを悔やみながら子守唄を歌う物語で、任侠の世界に生きる男の哀しみと人情が描かれています。
初代春日井梅鶯さんの美声と「梅鶯節」と称される独特の節回しが、三味線の音色とともに約25分間の長編物語を情感豊かに紡ぎます。
秩父重剛さんによる脚色で浪曲作品として生まれ変わった本作は、2015年11月にテイチクエンタテインメントよりアルバム『赤城の子守唄/天野屋利兵衛』として収録されました。
歌謡曲から浪曲へという珍しいクロスオーバー作品でもあり、浪曲入門にぴったりの一曲といえるでしょう。
義理人情ものや時代劇がお好きな方にはぜひ聴いていただきたい名作です。
高田の馬場春野美恵子

江戸時代の武士の誠義と侠気を描いた浪曲の名作として知られる本作は、赤穂義士の物語と並んで称される名場面を語る演目です。
春野美恵子さんの語りは、民謡で鍛え上げた安定感のある発声とコブシの効いた節回しが見事に融合し、剣戟の緊張感と若き侍の心意気を情感豊かに描き出しています。
師匠である春野百合子さんが1993年に芸術選奨文部大臣賞を受賞した演目でもあり、継承された芸の粋を味わえる一作といえるでしょう。
沢村さくらさんの三味線が物語の抑揚を生み出し、語りと音が一体となって聴き手を江戸の世界へと誘います。
古典浪曲の入門としても最適で、義理人情の世界に触れたい方にぜひ聴いていただきたい作品です。
天保水滸伝 笹川の花会吉野静

三味線の音色が響き渡る中、語り手が江戸時代末期の侠客たちの抗争を情感豊かに演じ分けていく本作。
天保年間の利根川周辺を舞台に、笹川繁蔵一家の宴席を巡る緊迫した駆け引きが展開されます。
語りの間合いと三味線の掛け合いによって場面が鮮やかに転換し、用心棒たちの襲撃シーンでは三味線が効果音のように響いて臨場感を高めますよね。
曲師・吉野静さんの伴奏は、玉川勝太郎さんの語りの呼吸を巧みに支え、物語の推進力を生み出しています。
義理と人情が交錯する任侠の世界を、語りと三味線だけで描き切る浪曲ならではの魅力が詰まった作品です。
浪曲に初めて触れる方にも、ドラマ性の高い物語展開が入門編としておすすめですよ。





